映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

ケイト・ブランシェット

ハンナ

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愛らしい少女が恐るべきリーサル・ウェポンという設定は魅力的。キャストはいいのだが、根本的な設定があいまいでディテールが甘い。

フィンランドの山奥で、元CIAの父親から徹底した戦闘能力や語学、教養を叩き込まれた少女ハンナ。16歳になった彼女はついに父の元を離れ、初めて外の世界へと旅立つ。彼女の目的は、父の同僚であったCIA捜査官マリッサを殺すことだったが、強敵マリッサはハンナが行く先々で追っ手を差し向ける…。

「つぐない」のジョー・ライト監督が、バイオレンス・アクションを撮る。文芸ものが得意な監督なので、かなり意外なのだが、本作は全編にグリム童話への目配せがあり、広義での文学系と言えなくもない。ハンナの出生にはある衝撃的な秘密があり、それは科学と軍事力をからませた恐ろしい企てのなれの果てだ。だが、ハンナを助け育てる父親の立ち位置がはっきりしない。闘わせたいのか、守りたいのか、いったいハンナにどうなってほしいのかが、あいまいなのだ。一方で、芸達者なケイト・ブランシェット演じる悪役マリッサは、なかなか強烈なキャラで“悪い魔女”のイメージをしっかり連想させて面白い。流血しながらの歯磨きには、思わず笑いさえ出る。ハンナとマリッサは、まるで相似形のように似ていて、もしや二人には血のつながりが…と勝手に想像をふくらませたが、その“凡庸な”予想はあっさりとはずれ、童話の世界そのもののような場所でクライマックスを迎える。その対決は、さしずめ、森ガールVS悪い魔女で、妙にハラハラさせられた。ハンナが心臓を狙うことに固執するのが興味深い。童話とは本来残酷なものだということをふと思い起こさせる。
【55点】
(原題「HANNA」)
(アメリカ/ジョー・ライト監督/シアーシャ・ローナン、エリック・バナ、ケイト・ブランシェット、他)
(アクション度:★★★☆☆)



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ハンナ@ぴあ映画生活

映画レビュー「ロビン・フッド」

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◆プチレビュー◆
伝説的義賊の誕生秘話を虚実を巧みに絡めて描く歴史アクション。肉食系オヤジヒーローに注目だ。 【65点】

 12世紀末。イングランドの十字軍遠征の兵士として帰国途上だった弓の名手ロビンは、フランスで、ある英国人騎士の暗殺現場に遭遇。彼の遺言でノッティンガムの父親に剣を届ける。領主サー・ロクスレーから屋敷に留まるように懇願されたロビンは、次第に領民や未亡人のマリアンとも心を通わせていく…。

 中世の吟遊詩人が歌った伝説の義賊ロビン・フッド。だがこの映画での彼は、まるで実在の人物のように歴史に溶け込み、リアリティーをもって観客に迫ってくる。あまりに有名なロビン・フッドの物語は、何度となく映画化され、かつてエロール・フリン、ショーン・コネリー、ケビン・コスナーなどが、それぞれの持ち味で演じてきた。それではこのラッセル・クロウのロビンの存在意義とはなんだろう。すでにヒーローとして正義を行なうロビンではなく、どうやって彼が己の運命と向き合い、戦う意義を見出していったかを、分かりやすく紐解いていく。これはいわば、ロビン・フッド・ビギニングなのだ。

 そんな知られざるロビン・フッドを演じるのがオスカー俳優のラッセル・クロウ。この俳優は、何をやってもオレ様状態なのだが、そんな彼だからこそ、男気たっぷりのアウトロー系オヤジ・ヒーローがぴったりハマる。マリアンとの恋も、出会った途端に一目ぼれという情熱ではなく、ゆっくりと互いの恋を熟成する大人モードだ。しかもマリアン役はケイト・ブランシェット。ただのしおらしい姫君ではないことは、簡単に予想できる。だがジョン王の悪政と凶作で苦しむ民衆の苦悩と、イングランドを狙うフランス軍の侵攻という二つの危機が迫る中、そうそう甘いラブ・ロマンスに時間を割くわけにはいかない。かくして、リドリー・スコット印の壮麗な戦闘へとなだれ込むというわけだ。

 リドリー・スコットのこだわり。それはやはり映像美。中世イングランドのなだらかな田園や深い森の自然描写の美しさは言うまでもない。歴史ものらしい衣装や建築、生活様式も、細部まで目配せが効いている。だがスコット監督の真骨頂は、クライマックスの戦闘シーンにつきるだろう。迫力の大俯瞰で見せる白い崖・ドーヴァーでのバトルには、目を見張った。何より、森のイメージのロビン・フッドを、海辺で戦わせるところがニクい。英国出身のスコットは、やがて世界の海を制するイングランドへの誇りを込めているのだろうか。それならば、黄金時代の象徴的君主エリザベスを演じたケイト・ブランシェットをキャスティングしたことも納得がいく。

 領主ロクスレーの息子の身代わりになるという設定はかなり突飛なのだが、ロビンがノッティンガムにやってきたのは、運命だったに違いない。自らの出自を知り、母国のために戦うと決めたとき、ロビンは、得意の弓だけでなく剣をも握る。主人公が戦うモチベーションを高めていくプロセスが、歴史に絶妙に重なった。伝説とフィクション、さらに重厚な史実を上手くブレンドさせた脚本は、娯楽性にあふれていて、手堅い出来栄えだ。何よりハリウッド大作ならではのスター共演で華やかさはバツグン。見る前は、手垢のついたヒーローものを何をいまさら…と思っていたが、見終われば、見事にスコット版ロビン・フッドを楽しめた。シャーウッドの森に住む義賊は最初から正義のヒーローだったわけではない。悪代官をこらしめて得意になる単純な暴れん坊でもない。ロビンは自らの意思で“ロビン・フッドになった”のだ。ヒーローとは、皆が望むその場所に誕生するものなのである。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)男気度:★★★★★

□2010年 米・英合作映画 原題「Robin Hood」
□監督:リドリー・スコット
□出演:ラッセル・クロウ、ケイト・ブランシェット、ウィリアム・ハート、他

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アイム・ノット・ゼア

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ここまで個性的でシュールな伝記映画は珍しい。現役のトップ・ミュージシャン、ボブ・ディランを、人種、年齢、性別までもバラバラの6人の俳優が演じ分ける。これはディランの多面性の表現形態だ。6人全員が名演だが紅一点のブランシェットの存在感は群を抜く。ただ役名や時系列もバラバラなので非常に難解で手強い作品なのは確か。ディランの歩みを予習しておくと多少は判りやすいが、この個性にただ身をゆだねるのもお勧めの映画体験だ。
【75点】
(原題「I'M NOT THERE」)
(アメリカ/トッド・ヘインズ監督/ケイト・ブランシェット、クリスチャン・ベイル、リチャード・ギア、他)
(ユニーク度:★★★★★)

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映画レビュー「エリザベス:ゴールデン・エイジ」

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◆プチレビュー◆
エリザベス1世の心の葛藤を描く華麗な歴史劇。存在感のある演技を披露するブランシェットが魅力的だ。 【75点】

 16世紀末の英国。プロテスタントの女王エリザベス1世は、カトリックの強国スペインとの勢力争いの渦中にいた。国内外の陰謀が渦巻く中、エリザベスは新大陸から帰国した探検家ウォルター・ローリーに惹かれていく…。

 25歳で即位したエリザベスが、いかにして内憂外患を振り払いながら黄金時代(ゴールデン・エイジ)の礎を築いたか。前作から9年後の続編である本作は、本物の歴史建造物や華麗な衣装などで彩られた重厚な歴史劇だが、内容はラブストーリー寄りの人間ドラマの色合いが濃い。一人の人間としてのエリザベスの心の揺れをきめ細かく描いて、遠い中世英国の偉大な女王と、現代社会との共通項を探っている。

 時代は、カトリックVSプロテスタントの争いで大揺れだ。当時の弱小国英国のエリザベスは、女王に忠誠を誓うのなら信仰は自由という政教分離を謳う現代的な君主として描かれている。対するのはカトリック原理主義的なスペインのフェリペ2世。多くの観客が、スペイン王にイスラム原理主義の妄信を、エリザベスには寛容な自由の空気を感じるはずだ。欧州は、新大陸への野望にあふれ、勢力地図が流動的な大変革期である。命がけで生き抜くエリザベスは、大国スペイン相手にも大胆だった。

 フェリペ2世と対立した原因の一つに、英国がスペイン船への海賊行為を黙認したことがある。本作で女王の心をつかむのは、そんな海賊稼業も得意な冒険家ウォルター・ローリー卿だ。映画では、女王はストイックな姿で描かれるが、実際には何人かの愛人がいた。中でもローリーは豪放かつ知的で、実に魅力がある。詩人でもあった彼は、女王が歩く地面の水たまりに惜しげもなく自分のマントを置いてみせる、ちょっと粋な男だ。女はこういう行為に弱い。新世界を知る彼は、女王とは無縁の自由の香りがしたのだろう。それは彼女が“こうありたい”と願う姿だったに違いない。

 ローリーをめぐって侍女のベスと微妙な三角関係になるが、このときのケイト・ブランシェットの演技は必見だ。嫉妬や不安といった脆さを、気品を損なうことなく熱演。やっぱりこの女優は上手い。さらにブランシェット演じるエリザベスには、ローリーになりたいと憧れる反面、彼に素直に愛されるベスでもありたいと願う複雑な感情が透けて見えるのだ。女王の中には男女二人の人間がいて、それがどこか中性的なブランシェットの中でせめぎ合う。男の仕事である君主を務め、ジェンダーフリーの存在だったこと。これがエリザベスという名君を今も輝かせている理由ではないか。

 ままならぬ恋愛で小さくなりかけたドラマに物足りなさを感じる頃、絶妙なタイミングで無敵艦隊が攻めてくる。映画は、一気に壮大な歴史絵巻に突入し、中世の海原へ。世界史でお馴染みのアルマダの海戦が物語のクライマックスだ。絶対に不利だった英国艦隊の奇策には、まさしく歴史の風が吹く。私的な感情を封印し、君主の威厳を取り戻したエリザベス。勝負服である甲冑に身を包む女王に、もう迷いはない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)絢爛豪華度:★★★★★

□2007年 イギリス映画 原題「ELIZABETH:THE GOLDEN AGE」
□監督:シェカール・カプール
□出演:ケイト・ブランシェット、ジェフリー・ラッシュ、クライヴ・オーウェン、他

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あるスキャンダルの覚え書き

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女の孤独を描いた上質の心理スリラー。好きなタイプの映画じゃないが、2大オスカー女優があまりに上手いので目が釘付けで、かなしばり状態だ。15歳の教え子と不倫関係にある若い女教師に近づくオールドミスの屈折した心を表現するデンチが迫力。ラストはまるでホラー映画並に怖い。
【80点】
(原題「NOTES ON A SCANDAL」)
(イギリス/リチャード・エアー監督/ジュディ・デンチ、ケイト・ブランシェット、ビル・ナイ、他)
(女は怖い度:★★★★☆)

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コーヒー&シガレッツ

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◆プチレビュー◆
まさに“おしゃれな映画”と形容したい。11編の中では「カリフォルニアのどこかで」と「いとこ同士」がお気に入り。

11本のオムニバス作品の共通のテーマは、タバコとコーヒー(時には紅茶)とさりげないおしゃべり。どこか居心地悪そうなロベルトとスティーブン。双子は変な店員に付きまとわれる。禁煙を破る勝手な説を唱えるイギーとトム。「問題なし」の押し問答や、ヘンテコな共鳴体の実験、カフェでバイト中のビル・マーレイ…。クセがあって、どこかかみ合わない会話が、多くの男女によってカフェで淡々と繰り返される。

モノクロ映像でつづる11編は“物語”と呼ぶのもためらわれるような、何気ないひとこまだ。特にオチがあるわけでもなく、教訓めいた含みがあるわけでもない。だが、これがオムニバスの名手のジム・ジャームッシュの手にかかると、何ともイイ感じにまとまってしまうから不思議。まったり、ゆったり、リラックス。カフェインとニコチン並みに、病みつきになる。

日本公開は05年だが、これらの作品はジャームッシュが18年かけて少しずつ撮り貯めていたもの。サイド・ワークとしてコツコツと築いてきた愛しい作品たちだ。中には世界の有名映画祭での受賞作もあり、短いながらにジャームッシュの美意識と実力が反映されている。ケイト・ブランシェットやアルフレッド・モリーナなど、出演俳優も豪華で、その俳優たちのほとんどが本人の役をやっているのが妙に笑える。

無関係なようでいて、11本がちょっとずつ係わりをもっていることや、過去の作品にも目配せしていることに、ファンならきっと気付くだろう。明確なストーリーらしきものがないので、時には退屈するかも。だが、このグルーヴ感がジャームッシュ独特の空気なのだ。人に勧めるのは難しい。でも自分さえこの映画の素晴らしさを堪能できればそれでいい。そんな身勝手な気持ちになるほど、最高に気に入っている。

□2004年 アメリカ映画  原題「Coffee & Cigarettes」
□監督:ジム・ジャームッシュ
□出演:ロベルト・ベニーニ、ケイト・ブランシェット、ビル・マーレイ、他

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◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
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古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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