映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ジャッキー」「ムーンライト」「はじまりへの旅」etc.

ケイト・ブランシェット

ボヤージュ・オブ・タイム



ビッグバンによって宇宙が誕生し、惑星が生まれて変化を遂げていく中で、生命が宿り育まれてきた。自然科学から見たその年代記を映像でたどりながら、過去、現在、未来への命の歩みの本質にせまっていく…。

巨匠テレンス・マリック監督が、宇宙創生から生命の歩みを描く映像叙事詩「ボヤージュ・オブ・タイム」。宇宙、惑星、生命の誕生、地球の変化、人間の営み。それらが魅惑的な映像で綴られる本作では、オスカー女優ケイト・ブランシェットが語りを担当している。もはやマリックはストーリーを語ることは放棄しているようだが、「ツリー・オブ・ライフ」の冒頭で描いた宇宙や、恐竜や太古の植物などが存在する地球の形成を、より深く、より壮大に、より美しい映像でつきつめたのが本作だ。人間もところどころに登場し、現代社会の病巣をちらりと見せたりもするが、人間は宇宙空間の中では砂の一粒にも満たない大きさ。人間が映像の中心になることは決してない。革新的な映像技術が用いられているが、正直なところ、流麗な映像が連綿と続き、ブランシェットの低い美声を聞いているうちに、抗いがたい眠気に誘われる。だが決して不快ではなく心地よさを感じるものだ。ずっとずっとこの映像に身を委ねていたいというのが本音だが、何事にも終わりがくる。誕生、愛、そして死。そこに人間がどう関わっていくべきなのか。マリックの40年の映画人生の集大成であるこの映画はそれを問いかけているような気がしてならない。
【65点】
(原題「VOYAGE OF TIME」)
(仏・独・米/テレンス・マリック監督/(ナレーション)ケイト・ブランシェット)
(体感型映画度:★★★★★)
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聖杯たちの騎士

Knight of Cups [Blu-ray]
ハリウッドで脚本家として成功したリックは、華やかで享楽的なセレブの暮らしを送りながらも、心の奥では常に虚しさを感じていた。そんな彼の脳裏に、かつて出会った6人の女性の記憶が蘇る。美しい彼女たちに導かれるように、リックは過去と対峙し、内面に抱えた孤独と向き合っていく…。

ハリウッドで成功した男の心の旅を静かなモノローグと流麗な映像で描く「聖杯たちの騎士」。タロットカートの“聖杯の騎士”にちなみ、物語は章立てで展開する。富と名声を得て享楽的な日々を過ごしながら、崩壊した家族や失った愛を思い、自分はどこで人生を間違ってしまったのか、本当に求めるものとは…と自問しながらさ迷う物語は、テレンス・マリック版の「甘い生活」のようだ。説明らしい説明はほとんどないが、まるで夢のような映像で描かれる抒情詩に、いつしか引きこまれる。ケイト・ブランシェット、ナタリー・ポートマンら、実力派女優が演じる6人の美女は、主人公リックを時に優しく包み、時に見放し、時に導く存在だ。だがリックの思いは満たされることはない。物質的な豊かさで満足できないのと同じように、一人の女性の愛では彼の心は決して満たされないのだ。日本庭園で不要なものは持たずシンプルな生き方を学んでも、教会で苦難は神が与えた愛だと諭されても、それは答えではない。聖杯のタロットカードが正位置と逆位置ではまったく意味が異なり無限の解釈が可能なのと同じように、リックが求める人生の真実もまた、明確な答えはなく、何かを求めてさ迷う心の旅こそが真実となるのだろう。大都会の喧噪、華やかなパーティ、荒々しい荒野、寄せては返す波と包み込むような海と空。撮影監督エマニュエル・ルベツキの、神業の境地に達したカメラワークに酔いしれる至福の映像体験だ。
【70点】
(原題「KNIGHT OF CUPS」)
(アメリカ/テレンス・マリック監督/クリスチャン・ベイル、ケイト・ブランシェット、ナタリー・ポートマン、他)
(映像美度:★★★★★)
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ニュースの真相

ニュースの真相 [Blu-ray]
2004年のアメリカでは、ジョージ・W・ブッシュ大統領が再選を目指していた。米国最大のネットワーク、CBSの敏腕プロデューサーのメアリー・メイプスは、ベテランの名司会者ダン・ラザーと共に、ブッシュの軍歴詐欺疑惑のスクープを報道し、たちまち大反響を巻き起こす。だが、後に証拠は偽造されたものだと保守派のブロガーが指摘したことから、メアリーやダンら番組スタッフは、世間から猛烈なバッシングを受けることになる…。

2004年、アメリカで一大センセーションを巻き起こした、ブッシュ大統領の軍歴詐欺疑惑をめぐる「ラザーゲート事件」のスクープと、その報道の裏側を描く社会派ドラマ「ニュースの真相」。CBSの看板番組のプロデューサーだったメアリー・メイプスの自伝ベースにしているが、真相は今も闇の中だ。日本ではあまり大きく報道されなかった「ラザーゲート事件」は“21世紀最大のメディア不祥事”と言われた実在の事件。実際、アメリカではこの報道は捏造ということで定着しているらしく、映画化は、いまさら感満載だそうだ。だが、メイプスサイドにたって描いた本作を見ると、大手メディアと政権の結託や利益至上主義のテレビ報道の実態が浮かび上がってくる。隠ぺいされた不祥事を暴くというと、オスカーを取った「スポットライト」が思い浮かぶが、じっくりと取材をし裏をとる時間が許された新聞と違い、本作のTV番組は、常に時間に追われ、大切な部分はCM放送のために容赦なくカット。あげくのはてに証拠の捏造ばかりが話題になって、肝心のブッシュの軍歴詐欺疑惑の話はいつのまにかうやむやになってしまうという皮肉な展開だ。ハリウッド屈指の名女優ケイト・ブランシェットがメアリーを熱演するが、ダン役のロバート・レッドフォード(あぁ、こんなに老けて…)もいい味を出している。メアリーが事件を追う背景には、家族の問題があったり、共倒れに近いダンは戦友のようでありながら、擬似父娘的な関係。社会派映画ながら、家族ドラマとしての味わいも加味されている。アメリカのジャーナリズムの苦い失敗を描いた映画だが、ラストに一筋の希望の光がみえたのが救いだった。
【65点】
(原題「TRUTH」)
(米・豪/ジェームズ・ヴァンダービルト監督/ケイト・ブランシェット、ロバート・レッドフォード、エリザベス・モス、他)
(苦み度:★★★★☆)
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キャロル

キャロル スペシャル・エディション [Blu-ray]
1952年、ニューヨーク。クリスマスシーズンでにぎわう高級デパートのおもちゃ売り場で働くテレーズは、ある日、娘へのプレゼントを探す、優雅で気品に満ちた人妻キャロルと出会う。テレーズは、裕福そうだがどこかミステリアスな雰囲気を持つキャロルにたちまち心を奪われる。やがて親しくなると、テレーズは、キャロルが娘の親権を巡って泥沼の離婚訴訟中であることを知る。クリスマス休暇を孤独に過ごすキャロルから、車での小旅行に誘われたテレーズは、キャロルへの憧れが予想もしない感情へと変化していくことに気づくのだった…。

「太陽がいっぱい」で知られる作家パトリシア・ハイスミスが別名義で発表した小説「よろこびの代償」を映画化した大人の恋愛ドラマ「キャロル」。テレーズとキャロルは強く愛し合うが、時は50年代。同性同士の恋愛は禁忌で病気とみなされていた時代だ。だが映画は同性愛であることや女性の自立といったフェミニズムには傾かない。むしろ、恋人との恋愛に違和感を感じ、自分の将来を模索する若い女性テレーズ、お飾りの妻であることを強要する周囲の不寛容に耐えられない人妻キャロルという二人の人間が、どうしようもなく惹かれあう純然たるラブ・ストーリーなのだ。二人は、年齢、階級、境遇などまったく異なるが、それでもあふれる思いは抑えられない。トッド・ヘインズ監督の演出は「エデンより彼方へ」以上に、艶やかで美しく、クラシックでエレガントな衣装、きめ細やかな美術セットなど、時代色豊かな映像は見応えたっぷりだ。何より、ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラの二人の実力派女優が素晴らしく、まなざしひとつ、指先の動きひとつで繊細な感情を表し、見事である。保守的な時代に、周囲の重圧に負けず人間として成長する姿に、気高さを感じる。「心に従って生きなければ人生は無意味よ」。キャロルのこの言葉こそ、本作が本当に伝えたいメッセージなのだ。それがどんなに困難で、だからこそ価値があることだということも。
【80点】
(原題「CAROL」)
(英・米/トッド・ヘインズ監督/ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ、サラ・ポールソン、他)
(映像美度:★★★★★)
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シンデレラ

シンデレラ MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
名作アニメをディズニーが実写映画化した「シンデレラ」。舞踏会シーンの美しさは圧巻。

幼い頃に母を亡くしたエラは、父親の再婚で継母トレメイン夫人とその連れ子である姉妹と暮らすことに。しかし父が事故で急死し、エラは継母たちに使用人のようにこき使われる。母の教えである“勇気と優しさ”を胸につらい仕打ちに耐えるエラだったが、ある日涙をこらえきれずに家を飛び出し、森へと馬を走らせる。そこで青年キッドに出会い心惹かれるが、実はキットは王国の王子だった…。

最近のディズニーの十八番である名作アニメの実写版は、それまで知られた物語を変化させるのがテクニックだったが、本作は私たちがよく知る「シンデレラ」の物語にほぼ忠実だ。それでもヒロインのエラは随所に現代的な魅力を放つ。王子と森で出会ったエラは質素な身なりで自分の境遇を隠さない。王子は最初は身分を伏せてはいるが次第に格式や因習から自由になっていく。王道のストーリーといえども、やはり現代的なテイストは必須なのだ。何より継母の悪巧みに対しシンデレラことエラが「あなたから王子と王国を守る」と宣言するのが新しい。シェイクスピア俳優でもあるケネス・ブラナー監督の格調高い演出は、大人の観客も十分に楽しませるもので、色彩の洪水のように華麗な舞踏会や、美しい馬車がかぼちゃにもどっていくスピード感あふれる演出には目をみはった。ヒロインのリリー・ジェームズの清純な美しさもいいが、継母役のケイト・ブランシェットの上手さもまた際立っていた。自分の幸せは自分でつかむ。そのためには“ありのまま”でなくてはいけない。ディズニーの新・王道はここでもしっかり活きている。
【70点】
(原題「CINDERELLA」)
(アメリカ/ケネス・ブラナー監督/リリー・ジェームズ、ケイト・ブランシェット、リチャード・マッデン、他)
(ゴージャス度:★★★★★)
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シンデレラ@ぴあ映画生活

ブルージャスミン

ブルージャスミン [Blu-ray]
セレブから転落したヒロインが精神を病む悲喜劇「ブルージャスミン」。ケイト・ブランシェットのなりきり演技がすごすぎる!

ジャスミンは資産家の夫とNYでセレブ生活を送っていたが、結婚生活も資産もすべて失い、サンフランシスコに住む妹ジンジャーの家に身を寄せる。庶民的な妹とは対照的にセレブ気分が抜けないジャスミンは、慣れない生活と仕事で次第に精神のバランスを崩していく。そんな時、あるパーティで裕福な独身男性ドワイトと出会い、彼こそが自分をもう一度上流階級に引き戻してくれると信じ込んだジャスミンは、虚栄と現実逃避から自分の身の上について嘘をついてしまう…。

1年1本の新作をコンスタントに作る巨匠ウディ・アレン。本作は、近年の、ちょっぴり能天気なラブ・コメから一転し、転落人生の中でもがく主人公をシビアに描いている。過去の栄光にすがり精神を病むヒロインの物語と言えば「サンセット大通り」や「欲望という名の電車」がすぐに思い浮かぶが、本作のケイト・ブランシェットの鬼気迫る演技は、グロリア・スワンソンやヴィヴィアン・リーと肩を並べるほどの熱演で、観客は圧倒されるはずだ。無一文のくせにブランドものに身を包み、華やかなセレブ・ライフが忘れられないヒロイン・ジャスミンの行動は、すべてがちぐはぐで、その言動はあまりにイタい。だが本人は真剣そのもので、そこがまたイタい笑いを誘うのだ。自分のことしか考えないヒロインの悲劇を、どこかコミカルに描いてしまうのがいかにもアレンらしい。さらに、ジャスミンが暮らしていた、優雅だがモラルに欠ける上流階級も、妹が所属する、現実的だが品位に欠ける庶民階級も、両方を冷徹に観察し、そのイヤらしい部分をシニカルな会話で描くのもアレン流だ。悲惨さと滑稽さが同居する難役をケイト・ブランシェットがさすがの演技力で演じていて、オスカー受賞も納得の熱演。名曲「ブルー・ムーン」のメロディが忘れがたい余韻を残してくれる人間ドラマだ。
【80点】
(原題「BLUE JASMINE」)
(アメリカ/ウディ・アレン監督/ケイト・ブランシェット、サリー・ホーキンス、ピーター・サースガード、他)
(虚栄心度:★★★★★)
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ハンナ

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愛らしい少女が恐るべきリーサル・ウェポンという設定は魅力的。キャストはいいのだが、根本的な設定があいまいでディテールが甘い。

フィンランドの山奥で、元CIAの父親から徹底した戦闘能力や語学、教養を叩き込まれた少女ハンナ。16歳になった彼女はついに父の元を離れ、初めて外の世界へと旅立つ。彼女の目的は、父の同僚であったCIA捜査官マリッサを殺すことだったが、強敵マリッサはハンナが行く先々で追っ手を差し向ける…。

「つぐない」のジョー・ライト監督が、バイオレンス・アクションを撮る。文芸ものが得意な監督なので、かなり意外なのだが、本作は全編にグリム童話への目配せがあり、広義での文学系と言えなくもない。ハンナの出生にはある衝撃的な秘密があり、それは科学と軍事力をからませた恐ろしい企てのなれの果てだ。だが、ハンナを助け育てる父親の立ち位置がはっきりしない。闘わせたいのか、守りたいのか、いったいハンナにどうなってほしいのかが、あいまいなのだ。一方で、芸達者なケイト・ブランシェット演じる悪役マリッサは、なかなか強烈なキャラで“悪い魔女”のイメージをしっかり連想させて面白い。流血しながらの歯磨きには、思わず笑いさえ出る。ハンナとマリッサは、まるで相似形のように似ていて、もしや二人には血のつながりが…と勝手に想像をふくらませたが、その“凡庸な”予想はあっさりとはずれ、童話の世界そのもののような場所でクライマックスを迎える。その対決は、さしずめ、森ガールVS悪い魔女で、妙にハラハラさせられた。ハンナが心臓を狙うことに固執するのが興味深い。童話とは本来残酷なものだということをふと思い起こさせる。
【55点】
(原題「HANNA」)
(アメリカ/ジョー・ライト監督/シアーシャ・ローナン、エリック・バナ、ケイト・ブランシェット、他)
(アクション度:★★★☆☆)



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ハンナ@ぴあ映画生活

映画レビュー「ロビン・フッド」

ロビン・フッド ディレクターズ・カット版 (2枚組) [DVD]ロビン・フッド ディレクターズ・カット版 (2枚組) [DVD]
◆プチレビュー◆
伝説的義賊の誕生秘話を虚実を巧みに絡めて描く歴史アクション。肉食系オヤジヒーローに注目だ。 【65点】

 12世紀末。イングランドの十字軍遠征の兵士として帰国途上だった弓の名手ロビンは、フランスで、ある英国人騎士の暗殺現場に遭遇。彼の遺言でノッティンガムの父親に剣を届ける。領主サー・ロクスレーから屋敷に留まるように懇願されたロビンは、次第に領民や未亡人のマリアンとも心を通わせていく…。

 中世の吟遊詩人が歌った伝説の義賊ロビン・フッド。だがこの映画での彼は、まるで実在の人物のように歴史に溶け込み、リアリティーをもって観客に迫ってくる。あまりに有名なロビン・フッドの物語は、何度となく映画化され、かつてエロール・フリン、ショーン・コネリー、ケビン・コスナーなどが、それぞれの持ち味で演じてきた。それではこのラッセル・クロウのロビンの存在意義とはなんだろう。すでにヒーローとして正義を行なうロビンではなく、どうやって彼が己の運命と向き合い、戦う意義を見出していったかを、分かりやすく紐解いていく。これはいわば、ロビン・フッド・ビギニングなのだ。

 そんな知られざるロビン・フッドを演じるのがオスカー俳優のラッセル・クロウ。この俳優は、何をやってもオレ様状態なのだが、そんな彼だからこそ、男気たっぷりのアウトロー系オヤジ・ヒーローがぴったりハマる。マリアンとの恋も、出会った途端に一目ぼれという情熱ではなく、ゆっくりと互いの恋を熟成する大人モードだ。しかもマリアン役はケイト・ブランシェット。ただのしおらしい姫君ではないことは、簡単に予想できる。だがジョン王の悪政と凶作で苦しむ民衆の苦悩と、イングランドを狙うフランス軍の侵攻という二つの危機が迫る中、そうそう甘いラブ・ロマンスに時間を割くわけにはいかない。かくして、リドリー・スコット印の壮麗な戦闘へとなだれ込むというわけだ。

 リドリー・スコットのこだわり。それはやはり映像美。中世イングランドのなだらかな田園や深い森の自然描写の美しさは言うまでもない。歴史ものらしい衣装や建築、生活様式も、細部まで目配せが効いている。だがスコット監督の真骨頂は、クライマックスの戦闘シーンにつきるだろう。迫力の大俯瞰で見せる白い崖・ドーヴァーでのバトルには、目を見張った。何より、森のイメージのロビン・フッドを、海辺で戦わせるところがニクい。英国出身のスコットは、やがて世界の海を制するイングランドへの誇りを込めているのだろうか。それならば、黄金時代の象徴的君主エリザベスを演じたケイト・ブランシェットをキャスティングしたことも納得がいく。

 領主ロクスレーの息子の身代わりになるという設定はかなり突飛なのだが、ロビンがノッティンガムにやってきたのは、運命だったに違いない。自らの出自を知り、母国のために戦うと決めたとき、ロビンは、得意の弓だけでなく剣をも握る。主人公が戦うモチベーションを高めていくプロセスが、歴史に絶妙に重なった。伝説とフィクション、さらに重厚な史実を上手くブレンドさせた脚本は、娯楽性にあふれていて、手堅い出来栄えだ。何よりハリウッド大作ならではのスター共演で華やかさはバツグン。見る前は、手垢のついたヒーローものを何をいまさら…と思っていたが、見終われば、見事にスコット版ロビン・フッドを楽しめた。シャーウッドの森に住む義賊は最初から正義のヒーローだったわけではない。悪代官をこらしめて得意になる単純な暴れん坊でもない。ロビンは自らの意思で“ロビン・フッドになった”のだ。ヒーローとは、皆が望むその場所に誕生するものなのである。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)男気度:★★★★★

□2010年 米・英合作映画 原題「Robin Hood」
□監督:リドリー・スコット
□出演:ラッセル・クロウ、ケイト・ブランシェット、ウィリアム・ハート、他

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アイム・ノット・ゼア

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ここまで個性的でシュールな伝記映画は珍しい。現役のトップ・ミュージシャン、ボブ・ディランを、人種、年齢、性別までもバラバラの6人の俳優が演じ分ける。これはディランの多面性の表現形態だ。6人全員が名演だが紅一点のブランシェットの存在感は群を抜く。ただ役名や時系列もバラバラなので非常に難解で手強い作品なのは確か。ディランの歩みを予習しておくと多少は判りやすいが、この個性にただ身をゆだねるのもお勧めの映画体験だ。
【75点】
(原題「I'M NOT THERE」)
(アメリカ/トッド・ヘインズ監督/ケイト・ブランシェット、クリスチャン・ベイル、リチャード・ギア、他)
(ユニーク度:★★★★★)

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映画レビュー「エリザベス:ゴールデン・エイジ」

エリザベス : ゴールデン・エイジ [DVD]エリザベス : ゴールデン・エイジ [DVD]
◆プチレビュー◆
エリザベス1世の心の葛藤を描く華麗な歴史劇。存在感のある演技を披露するブランシェットが魅力的だ。 【75点】

 16世紀末の英国。プロテスタントの女王エリザベス1世は、カトリックの強国スペインとの勢力争いの渦中にいた。国内外の陰謀が渦巻く中、エリザベスは新大陸から帰国した探検家ウォルター・ローリーに惹かれていく…。

 25歳で即位したエリザベスが、いかにして内憂外患を振り払いながら黄金時代(ゴールデン・エイジ)の礎を築いたか。前作から9年後の続編である本作は、本物の歴史建造物や華麗な衣装などで彩られた重厚な歴史劇だが、内容はラブストーリー寄りの人間ドラマの色合いが濃い。一人の人間としてのエリザベスの心の揺れをきめ細かく描いて、遠い中世英国の偉大な女王と、現代社会との共通項を探っている。

 時代は、カトリックVSプロテスタントの争いで大揺れだ。当時の弱小国英国のエリザベスは、女王に忠誠を誓うのなら信仰は自由という政教分離を謳う現代的な君主として描かれている。対するのはカトリック原理主義的なスペインのフェリペ2世。多くの観客が、スペイン王にイスラム原理主義の妄信を、エリザベスには寛容な自由の空気を感じるはずだ。欧州は、新大陸への野望にあふれ、勢力地図が流動的な大変革期である。命がけで生き抜くエリザベスは、大国スペイン相手にも大胆だった。

 フェリペ2世と対立した原因の一つに、英国がスペイン船への海賊行為を黙認したことがある。本作で女王の心をつかむのは、そんな海賊稼業も得意な冒険家ウォルター・ローリー卿だ。映画では、女王はストイックな姿で描かれるが、実際には何人かの愛人がいた。中でもローリーは豪放かつ知的で、実に魅力がある。詩人でもあった彼は、女王が歩く地面の水たまりに惜しげもなく自分のマントを置いてみせる、ちょっと粋な男だ。女はこういう行為に弱い。新世界を知る彼は、女王とは無縁の自由の香りがしたのだろう。それは彼女が“こうありたい”と願う姿だったに違いない。

 ローリーをめぐって侍女のベスと微妙な三角関係になるが、このときのケイト・ブランシェットの演技は必見だ。嫉妬や不安といった脆さを、気品を損なうことなく熱演。やっぱりこの女優は上手い。さらにブランシェット演じるエリザベスには、ローリーになりたいと憧れる反面、彼に素直に愛されるベスでもありたいと願う複雑な感情が透けて見えるのだ。女王の中には男女二人の人間がいて、それがどこか中性的なブランシェットの中でせめぎ合う。男の仕事である君主を務め、ジェンダーフリーの存在だったこと。これがエリザベスという名君を今も輝かせている理由ではないか。

 ままならぬ恋愛で小さくなりかけたドラマに物足りなさを感じる頃、絶妙なタイミングで無敵艦隊が攻めてくる。映画は、一気に壮大な歴史絵巻に突入し、中世の海原へ。世界史でお馴染みのアルマダの海戦が物語のクライマックスだ。絶対に不利だった英国艦隊の奇策には、まさしく歴史の風が吹く。私的な感情を封印し、君主の威厳を取り戻したエリザベス。勝負服である甲冑に身を包む女王に、もう迷いはない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)絢爛豪華度:★★★★★

□2007年 イギリス映画 原題「ELIZABETH:THE GOLDEN AGE」
□監督:シェカール・カプール
□出演:ケイト・ブランシェット、ジェフリー・ラッシュ、クライヴ・オーウェン、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
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新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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