映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

コリン・ファレル

フライトナイト 恐怖の夜

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1985年の同名ホラー映画をリメイクした「フライトナイト 恐怖の夜」。3Dで見た目は派手になったが中身は普通の“怪物退治”。

チャーリーは、ラスベガス郊外の街で暮らす平凡な高校生。ある日、隣家に引っ越してきたセクシーな男・ジェリーが実はヴァンパイアだと知り、驚愕する。失踪事件が相次ぐ町で、ジェリーがヴァンパイアだという証拠を探すチャーリーだったが、なす術がない。やがて恋人のエイミーにも魔の手が。ついにチャーリーは、母親と恋人を守るために戦うことを決意する…。

トム・ホランドが監督し、今もカルトな人気を誇る隠れた人気ホラー「フライトナイト」を、3Dと派手なVFXを使って賑やかにリメイクしたのが本作。オリジナルでは主人公の孤独感が通奏低音のように漂っていたのだが、本作の主人公は元オタク少年ではあるが、基本的に元気キャラだ。だがそれは青春映画として楽しめるので良しとする。惜しいのはヴァンパイアというこの世ならぬものへの恐れと憧れがあまり感じられないこと。オリジナルでは母親や恋人は、どこかで魔性の存在に惹かれていたのに、今回、そういうムードは皆無なので、ただの吸血鬼退治と言えなくもない。無論、このリメイクも良いところはある。なんといっても特殊メイクや衣装を含むヴィジュアルが面白い。ラスベガスのマジシャンであり、主人公を助けるヴィンセントがこだわるショーの細部も凝っている。主役のアントン・イェルチンのヘタレな顔つきも青春ホラーにぴったりだ。監督は、シャイな男性がリアル・ドールに恋をする異色の恋愛映画「ラースと、その彼女」のクレイグ・ギレスピー。この監督がホラー?と最初は首をかしげたが、主人公が、人間以外の存在に対峙することによって結果的に成長を遂げるという意味では相通じる。
【55点】
(原題「FRIGHT NIGHT」)
(英・米/クレイグ・ギレスピー監督/コリン・ファレル、アントン・イェルチン、クリストファー・ミンツ=プラッセ、他)
(青春映画度:★★★★☆)
チケットぴあ

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フライトナイト/恐怖の夜@ぴあ映画生活

ホームレス・ワールドカップ

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サッカーは世界中で愛されるスポーツだが、ホームレスによるW杯が開催されていることを、この作品で初めて知った。これは2006年南アフリカのケープタウンで開催された、世界各国のホームレスによるミニ・サッカーの世界大会に出場する選手たちを追った異色のドキュメンタリーだ。選手たちの背景を知ることで、その国の社会事情まで伺い知ることができる。ナレーションは、自身もサッカー好きで知られるダブリン出身のコリン・ファレルが務めている。

映画が注目するのは、主に6ヶ国の選手たち。彼らがホームレスになったきっかけは多種多様だ。アイルランドのダミアン(23歳)は麻薬に手を出し母親から家を追い出される。スペインのヘスース(62歳!)は、若い頃は名門レアル・マドリードでプレーした経験を持つのだが、銀行強盗にまで落ちて今はアルコール中毒を患っている。アメリカのクレイグは家庭内暴力で深く傷つき、常に怒りを爆発させる。彼らの問題は個人的な側面が大きい。一方、国家や社会の問題によって家を失うのは、以下だ。ケニアのアレックス(29歳)はスラムの貧困。アフガニスタンのナジブ(23歳)は内戦とタリバンの圧政によって。ロシアのスラヴァ(27歳)はソ連の崩壊後のロシア内の不法滞在という問題を抱える。

そんな彼らがサッカーへ情熱を傾けるのは、自分にも何か出来ると証明して自信を取り戻したいと切望するから。だが、代表に選ばれるのは簡単ではない。運営側の主旨により、大会に出場できるのは一人一回までと決まっている。彼らは、家も収入もない貧困の中で、懸命の努力によって国の代表の座を勝ち取っているのだ。ミニ・ゲームなのでルールも異なるし、プレーする人数も少ない。それでもチームで戦い勝利する喜びは同じである。負け続けたスペインチームが初勝利をあげたときは、思わず見ているこちらも嬉しくなった。決勝はロシア対カザフスタン。通常のW杯ではありえないカードで、興味深い。

各国の代表選手や応援団が集うこの大会では、選手同士の交流も温かい。ナジブは、なんとパラグアイ代表の少女と出会い、恋が生まれるという嬉しいオマケ付きだ。母国アフガンでは、女性の肩に手を回したりすると、即刻、逮捕・銃殺(!)だそう。そんなバカな…と思うのは、平和な国に住む人間ののんきな感覚だ。世界は広い。いろんな意味で。

大会の創始者であるメル・ヤングは「サッカーは人生をやり直すチャンスをくれる」と言っていたが、まさに名言だ。もちろんサッカーだけですべてが好転するわけではなく、大会後、仕事を得たり麻薬を絶ったりする者がいる反面、再び路上生活に戻り命を失ったものもいる。それでも、W杯でプレーする選手たちの表情は、喜びに満ち溢れていた。サッカーが、彼らに一歩前に踏み出すきっかけを与えていることは間違いない。人生に「最後の試合」なんてない。勝つチャンスは必ず巡ってくる。ホームレスへの偏見を打ち砕くのが目的で作られた本作だが、スポーツが内包するパワーを感じさせてくれる作品だった。ところで世界48ヶ国が集う大会には欧州や南米の国が目立つが、わが日本からは、確か“野武士ジャパン”というチームがあったはず。彼らの“今”がちょっと気になっている。

(出演:ナレーション:コリン・ファレル)
(2008年/アメリカ/スーザン・コッホ、ジェフ・ウェルナー監督/原題「KICKING IT」)

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ウディ・アレンの夢と犯罪

ウディ・アレンの夢と犯罪 [DVD]ウディ・アレンの夢と犯罪 [DVD]
ロンドン三部作の最終章は、ささやかな野心と皮肉な運命を描く人間ドラマ。ビジネス界での成功を夢見る兄イアンと、ギャンブル好きの弟テリーは、小型クルーザーを購入し、カサンドラズ・ドリーム号と名付ける。イアンは恋人相手に分不相応な見栄をはりながらも、新生活を夢見ていた。だがギャンブルで大負けしたテリーが巨額の借金を背負ってしまう。兄弟は大金持ちの伯父ハワードに助けを求めるが、彼からとんでもない“頼みごと”を持ちかけられ…。

カサンドラズ・ドリームは、テリーがドッグレースで大勝した時のゲンのいい犬の名前。だがカサンドラとは実は、ギリシャ神話に登場する王女で、神から未来を予言する力を授かるが彼女の予言は誰からも信じてもらえないという悲劇の預言者の名前なのだ。このことから兄弟の運命は見えてくる。彼らはどこにでもいる労働者階級の人間で、決して不幸なわけではないのに現在の生活レベルに漠然とした不満がある。さしたる努力もせず、才能もなく、なんとなく“金持ちになりたい、華やかな暮らしがしたい”と望む小心者だ。伯父からの頼みとはなんと殺人。悩み抜いた二人の行動とその顛末は、人生に楽な一発逆転の機などなく、悪事には高い代償が伴うことを教えるものだ。アレンは、ロンドンを舞台にした作品群では、上流階級に食い込もうとする人間の野心をテーマにしているが、本作は「タロットカード殺人事件」の明るさはなく「マッチポイント」の男女の危うさとも無縁のシリアスな悲劇。だからこそ、ラストがもっと効果的であるために、小市民の出来心や悪事など珍しくもないとばかりの会話で潔く終わった方が鮮やかだったと思う。ともあれ兄弟が乗る船の下には、罪悪感という海が広がっていたというわけだ。北欧の巨匠ベルイマンに心酔しているだけあって「人生において確実なのは死ぬことだけ」と言い切るアレンは、コメディであれシリアスであれ、いつも悲観的である。
【65点】
(原題「CASSANDRA'S DREAM」)
(イギリス/ウディ・アレン監督/ユアン・マクレガー、コリン・ファレル、他)
(皮肉度:★★★★☆)

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ニュー・ワールド

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◆プチレビュー◆
しびれるほど美しい映像だけでも見る価値がある。コリン・ファレルは一見マリック映画にそぐわないように見えるが、意外にも似合っていた。

17世紀の新大陸アメリカ。イギリス人の冒険家ジョン・スミスは、ネイティブ・アメリカンの王の娘ポカホンタスと出会い、恋に落ちる。しかし、イギリス人開拓者と原住民たちの間に争いが起こり、二人は引き裂かれてしまう…。

ゆったりと流れるような音楽と神秘的に美しい映像。さらに瞑想のようなヴォイス・オーバーが静かにかぶる。心地よすぎて眠気さえ誘う映像美だが、描かれる物語は悲劇的なものだ。かつてディズニーでも描かれたポカホンタスの恋と冒険の物語とは、全く異なる映画になっている。

スミスとポカホンタスの恋は破れ、彼女はやがて英国人貴族のジョン・ロルフの穏やかな愛情を受け入れる。英国に招かれ国王に謁見するが、帰国途中で病に倒れる。自然の一部のようだったポカホンタスが、徐々に文明化する姿は、進歩というより喪失感の方が強い。のびやかに走る姿はコルセットで締め付けられた服に変わり、王に謁見する時の悲しげな表情は、全てをあきらめたかのようだ。

極端なロー・アングルでとらえた人物の向こうには、美しい樹木と木漏れ日の映像。水面を滑る船、蛇行しながら奥地へ消える川。自然は人間の行いや全ての物事を見守るように存在している。テレンス・マリックは寡作の監督だが、送り出す作品はどれも質が高い。開拓者たちは平和に暮らす原住民の穏やかな暮らしを奪った。現在のアメリカはポカホンタスの自由と命の犠牲の上に成り立っているというのがマリック監督の解釈だろう。

□2005年 アメリカ映画  原題「THE NEW WORLD」
□監督:テレンス・マリック
□出演:コリン・ファレル、クオリアンカ・キルヒャー、クリスチャン・ベール、他

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アレキサンダー

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◆プチレビュー◆
一人の人物を真摯に描いているのにますます霧の中…という印象は「ニクソン」を見たときも感じたものだった。美しいバビロン入場のシーンが、アメリカ軍の中東入りに見えてしまうのが、時世の悲しさか。

謎に包まれたマケドニアの王アレキサンダー。史上最大の帝国を築いた若き王は、利己的な父や、息子を支配する母との葛藤に苦しみながら育った。わずか20歳で王になった彼は、世界を統一するという大きな夢を追い続けて、遠くアジアの果てまでも旅を続けるが…。

本作の主人公アレキサンダーは、歴史の教科書にも登場する有名人物。実在ながら伝説の英雄アキレスの子孫であると全編に暗示がある。舞台は神話の世界と同じくらい遠い昔だ。記録が少ない人物を描写するのは、逆に言えば自由に構築できるということ。だが、この作品では“結局、彼のことはよくわかりませんでした”と言われているようで何とも釈然としない。

難点は、狂言回しを務めるアンソニー・ホプキンスが映画の中で浮いてしまったことだ。大王の部下で後のエジプト王プトレマイオスが王の生涯を記録するという形で物語が進行するが、老プトレマイオスに戻るたびに話が中断され、違和感を感じてしまう。おかげで映画を見終わった後に記憶に残るのが、マザコンと同性愛嗜好ばかりなのだ。

評価すべきはアンジェリーナ・ジョリーで、息子を支配しようとする母親を、妖気と愛情に溢れる演技で熱演。このキャラは見ようによってはかなり笑えるシロモノで、注目だ。ペルシャ軍を打ち破った戦闘場面やインドでの象を使った戦いは、監督得意の凄惨な戦争映画のノリで見応えがある。だが、肝心の主人公の人物造形に深みがない。アレキサンダーが本気で信じた民族融合による平和な世界は、今の世の中では、原理主義という形でしかお目にかかれないのだ。ならば、伝説の英雄は魅力溢れる人物であってほしいし、そうでなくては映画の主人公は務まらない。

オリバー・ストーンがライフワークとしてベトナム戦争を描き続け、映画でアメリカの過ちを検証していることは自他ともに認めるところ。この人の演出手腕は、やはりアメリカ現代史において最も冴える。素材と調理法の両方を誤ってしまった、料理人の一皿を食すような映画だった。しかも、本当は腕がいいことを誰もが知っているだけに、大いに悔やまれる。

□2004年 アメリカ映画  原題「ALEXANDER」
□監督:オリバー・ストーン
□出演:コリン・ファレル、アンジェリーナ・ジョリー、ヴァル・キルマー、他

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フォーン・ブース

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◆プチレビュー◆
怖いのは、都会型の偏執狂(アーバン・パラノイア)なのだ。米映画の中では呼び出しが出来る公衆電話の機能を上手く使う場面が多い。最後にチラリと登場する電話の声の主の存在感も抜群。山椒は小粒でもピリリと辛い。

スチュはNYで活躍する自称一流パブリシスト。今日も忙しぶりながら携帯電話を駆使して、情報をやりとりする。女優の卵をくどこうと結婚指輪をはずし、電話するために入った公衆電話でふいにベルが鳴る。反射的に受話器を取ると、見知らぬ男の声が告げた。「銃でお前を狙っている。電話を切ったらお前の命はない」…。

面白い。電話ボックスというごく限られた空間に主人公を閉じ込め、見えない犯人によって彼を追い詰めていく設定の見事さ。主人公スチュの背景や性格を、最初の数分でテンポ良く見せる演出の手際の良さ。観客はスチュがどれほどいけすかないヤツなのかを冒頭で知らされるため、彼の虚飾に満ちた生き方を攻撃する犯人の言動を、スムーズに受け入れることが出来る。例え犯人の意図は不明だとしても。

場所を特定したドラマの場合、しばしば舞台劇のような趣をかもすが、この物語はあくまで映画的空間の中で進行する。クルクルと変わるカメラの視点と、エスカレートする犯人の要求。状況を見守るしかない観客は、恐怖と不安に怯える主人公と、彼を狙う犯人の目線の両方を疑似体験する仕掛けだ。限定空間ながら人間模様も非常に濃く、見応えたっぷりである。

通行人が行きかう大都会にあるガラスばりの電話ボックスは、開放的でありながら人間を閉じ込める相反した性質のスポット。携帯電話が主流の今では、特殊な空間にさえ見える。主人公は、突然過酷なゲームに放り込まれ、スナイパーという“神”から公衆の面前で一枚一枚虚勢をはがされていく。愛人の存在を妻に告げ、邪険にしていたアシスタントに謝罪。電話ボックスは、ここでは大衆に公開された懺悔室と化すわけだ。薄っぺらな人物のスチュは自己の内面と初めて向き合い変化する。

スチュを演じるのは今最もノッている俳優のコリン・ファレル。傲慢で平気で嘘をつく嫌味なギョーカイ人ぶりが上手いが、理由も判らず命を狙われた人物のとまどいを熱演。一人芝居といってもいいほど出ずっぱりなのに、演技の緊迫感が持続するので全く飽きさせない。生意気でゴシップの方が先行する俳優だが、女癖の悪さもこれほど演技が上手ければ許してしまいそうになる。

大都会NYでは勝ち組こそ正義。大勢の人間が、自分の利益にならない者を切り捨て他人の情報を売り買いしながら肥え太っていく。そんな風潮を、映画という法律で裁いているのだろうか。主人公が体験する81分を同時進行で観客も味わえる。低予算ながら名人芸の技が冴える一流のエンターテインメント作品だと感心した。

□2003年 アメリカ映画  原題「PHONE BOOTH」
□監督:ジョエル・シューマカー
□出演:コリン・ファレル、フォレスト・ウィティカー、ケイティ・ホームズ、他

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◆映画ライター、映画評論家
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新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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