映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ワイルド・スピード ICEBREAKE」「無限の住人」「帝一の国」etc.

コリン・ファース

ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期

ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期-オリジナル・サウンドトラック
恋に仕事に奮闘するブリジットもアラフォーになり、テレビ局の敏腕プロデューサーとして活躍中。でも、なぜかいまだに独身で、愛した男ダニエルは事故で他界し、友人たちもそれぞれの道へと進む中、ひとりぼっちで誕生日を祝っていた。ある日彼女は、野外音楽フェスで、IT企業の社長で、ハンサムで優しいアメリカ人のジャックと出会い、勢いで一夜を共にしてしまう。一方で、元カレで現在離婚調停中の弁護士マークとも再会する。二人の男性の間で心が揺れるブリジットだったが…。

アラサー独身女性の本音と飾らない日常を描き大ヒットした「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズ第3弾で約10年ぶりの新作「ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期」。アラフォーに突入したブリジットは、仕事ではキャリアップしているが、恋愛は相変わらずだ。ドジで天然、ダサくてだらしないのに、可愛らしく立ち直りが早いところは変わらない。40歳を超えたのに、まったく学んでないじゃないか!と激しくツッコミたくなるが、これがブリジットなのだ。ここを否定してしまうと、もはやブリジットではなくなるので、文句はご法度というものである。だがひとつだけ言いたいのは、主演のレニー・ゼルウィガーの劣化ぶりがあまりにヒドい。ブリジット・ジョーンズは彼女の代表作で、他のキャストは考えられないが、それでもラブコメをやるルックスでは、もはやない。これでイケメン二人が夢中になるヒロインという設定は、いくら何でも無理があるだろう。今回の原題の意味は「ブリジット・ジョーンズの赤ちゃん」なので、何が起こるかは予想がつく。ほぼ同時期にベッドインしてしまった二人の男性のどちらが父親?というのが最大の“ミステリー”で、それにどう決着をつけるのかが見所だろう。今回のブリジットの行動にはまったく共感できないのだが、このラスト、もしかして次もあるの?!これ以上老けたブリジットはかんべんしてほしい。
【50点】
(原題「BRIDGET JONES’S BABY」)
(イギリス/シャロン・マグワイア監督/レニー・ゼルウィガー、コリン・ファース、パトリック・デンプシー、他)
(モテモテ度:★★★★☆)
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キングスマン

KINGSMAN / キングスマン(初回限定版) [Blu-ray]
秘密裡に活躍するスパイ組織が凶悪な敵の陰謀に立ち向かう「キングスマン」。コリン・ファースってアクションもできるのか!

ロンドンの高級スーツ店“キングスマン”の実体は、どこの国にも属さない超エリートスパイ組織。中でもブリティッシュスーツを小粋に着こなす紳士ハリーは、凄腕のスパイで、日々任務を遂行していた。ある時、キングスマンの仲間が何者かに殺害される。ハリーは街の不良少年エグジーにスパイの素質を見出して、彼をスカウトし教育することに。実はエグジーの父親も、かつてキングスマンに属していたのだ。そんな中、巷では科学者の失踪事件が頻発。事件の首謀者のヴァレンタインは恐ろしい人類抹殺計画を進めていた…。

世界平和を守っている組織が実は貴族のスパイ組織だという設定がいかにもイギリスらしい。だが英国映画は階級闘争を描くとき、常に古い貴族社会に労働者階級という爆弾を放り込んで新風を巻き起こす。ハリーは貴族がすでに過去のものになりつつあることを知っているのだろう、かつて自分をかばって死んだ同僚の息子であるという恩義以上に、労働者の家庭で育ったエグジーの中に新時代を生きるスパイの可能性を見出して、一から仕込んでいく。傘や靴、ライターに万年筆といった男の伝統的アイテムに、それぞれ007ばりの仕掛けがあって実に楽しい。だが本作の一番の楽しみは、英国人オスカー俳優コリン・ファースがキレキレのアクションを見せてくれるという嬉しい驚きにあるのだ。街のチンピラたちをパブで蹴散らす場面はまだ序の口。教会での大虐殺アクション・シークエンスには度肝を抜かれた。まるでダンスを踊るかのような動きとリズミカルなカット割りは美しくクール。世界征服を企むヴァレンタインの部下で義足を凶器にした女殺し屋のアクションもまた、冴えている。監督のマシュー・ヴォーンは「キック・アス」でも意外性のあるヒーロー映画を作って見せたが、本作はそれに優雅さを加味した、痛快な進化形だ。
【70点】
(原題「KINGSMAN:THE SECRET SERVICE」)
(イギリス/マシュー・ヴォーン監督/コリン・ファース、マイケル・ケイン、サミュエル・L・ジャクソン、他)
(過激度:★★★★☆)
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マジック・イン・ムーンライト

マジック・イン・ムーンライト [Blu-ray]
魔術師と占い師の恋の行方を描くロマンチック・ラブコメディ「マジック・イン・ムーンライト」。天真爛漫なラブストーリーは軽やかさが心情。

魔法や超能力など信じないイギリス人マジシャン、スタンリーは、友人からある大富豪が入れあげているアメリカ人占い師、ソフィの正体を暴いてほしいと頼まれ、コート・ダジュールの豪邸へと乗り込む。だがソフィは、実際に会ってみると若くて美しい女性で、スタンリーに対して次々に透視能力を発揮した。悲観主義者のスタンリーは、それまでの人生観を覆され、笑顔が魅力的なソフィに惹かれるようになるのだが…。

前作「ブルー・ジャスミン」での痛々しさから一転、名匠ウディ・アレンが描くのは、1920年代の南仏を舞台に正反対の男女の恋の駆け引きを描くラブ・ロマンス。全編に、明るさとユーモアがあふれている。英国人の魔術師スタンリーは、中国人のフリをして観客を騙すのに自分自身が騙されるのは大嫌い。そもそも魔法なんか信じていないニヒリストだ。一方、アメリカ人の占い師ソフィは、超能力や霊媒を駆使して不可思議な現象を操る女性だが、性格は明るく快活で超ポジティブ。そんな真逆な男女の恋が一筋縄でいくはずがない。もっともストーリーは単純だし種も仕掛けも拍子抜けするような内容なのだが、この映画のテーマは“恋とは魔法のようなもの”ということ。すべてが軽やかなのは見ていて楽しくなるし、1920年代のクラシックで華麗なファッションもまた魅力的だ。思えばアレンの映画には、手品や占い、催眠術や霊媒師などが頻繁に登場する。恋愛をイリュージョンと言いきるのはいささか穿った見方だが、それが人生を幸福へと導くのなら信じてみるのも悪くない。映画だって同じこと。暗闇で見る作りものの物語に心地よく騙される至福を、私たち映画ファンはよく知っているから、この作品が憎めないのだ。
【60点】
(原題「MAGIC IN THE MOONLIGHT」)
(米・英/ウディ・アレン監督/コリン・ファース、エマ・ストーン、アイリーン・アトキンス、他)
(ロマンチック度:★★★★☆)
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マジック・イン・ムーンライト@ぴあ映画生活

レイルウェイ 運命の旅路

レイルウェイ 運命の旅路 [Blu-ray]
第二次世界大戦を背景に英国人将校の壮絶な体験と献身的な妻の愛をつづるヒューマン・ドラマ「レイルウェイ 運命の旅路」。後日談を映像化せず淡々と語ったのはクレバーな演出だった。

第2次世界大戦で日本軍の捕虜となった、鉄道好きの青年将校エリックは、タイとビルマ間を走る“死の鉄道”タイメン鉄道の建設に従事し、過酷な労働を強いられ、非道な拷問を受ける。30年後、エリックは妻パトリシアと静かに暮らしながらも、戦争中の壮絶なトラウマに苦しんでいた。そんな時、自分を拷問した日本人通訳・永瀬が現在も生きていることを知る…。

原作は「エスクァイア」誌ノンフィクション大賞に輝いたエリック・ローマクスの自叙伝。戦争中に日本人が捕虜に対して行った強制労働や拷問の実態は、日本人にはつらい内容なのだが、学校の教科書には決して載らないこういう真実を教えてくれるのが映画の魅力であり役割のひとつでもある。鉄道マニアの青年将校だったエリックは、戦況を知るためにラジオを作るが、それが日本軍にバレて激しく拷問される。エリックの拷問現場に立ちあい通訳をしていた永瀬が、戦後、タイで戦争体験を伝える活動をしていると知ったエリックは、激しく動揺するが、悩んだ末に永瀬に会うことを決意する。終盤に描かれるこの2人が相対する“決闘”シーンは、緊張感がみなぎる迫真の場面だ。エリックは永瀬の非道と嘘を問い詰めるが、彼が最終的に下した決断は、キリスト教的な愛に基づく崇高な行為だった。戦争は単純な勝ち負けでは語れない。本作のテーマは赦しと贖罪。戦後、長く友情を育んだというエリックと永瀬のことを美談にして映像化せず、淡々と描いた演出が功を奏した。心に傷を負った人物を演じるコリン・ファースと真田広之の、共に抑えた熱演が素晴らしい。
【65点】
(原題「The Railway Man」)
(豪・英/ジョナサン・テプリツキー監督/コリン・ファース、ニコール・キッドマン、真田広之、他)
(歴史秘話度:★★★★☆)
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モネ・ゲーム

モネ・ゲーム [Blu-ray]
モネの贋作をめぐる凸凹コンビの犯罪コメディ「モネ・ゲーム」。どこか昔懐かしい香りがするドタバタ劇だ。

億万長者で傲慢な雇い主シャバンダーからの屈辱に耐えかねた英国の美術鑑定士ハリーは、モネの贋作を売りつける大がかりな詐欺計画を立てる。行方不明のモネの名画「積みわら」の信ぴょう性を高めるため、その名画と縁があるテキサスのカウガールのPJをロンドンに呼び、持ち主に仕立て上げる。シャバンダーに贋作を売り付け、まんまと大金をせしめる計画だったが、PJの天然すぎる性格のため、計画はハプニングの連続。思いがけない事態へと転がっていく…。

この映画のオリジナルは1966年の「泥棒貴族」だが、詐欺のお話ということ以外は、ほとんどが大胆にアレンジされている。計画の小さなほころびからのっぴきならない状態に陥る犯罪劇を得意とするコーエン兄弟が脚本を手掛ける本作は、カタブツの英国男と自由奔放なテキサス娘の凸凹コンビによる予測不能の犯罪コメディになった。屈辱に耐えながら懸命に気品を保とうとするも、予期せぬピンチにボロボロになっていくハリーを、オスカー俳優のコリン・ファースが大真面目に演じて微苦笑を誘う。怖いもの知らずのアメリカ娘を演じるキャメロン・ディアスは、少々年齢オーバー気味ながら、ラブコメで鍛えたはじけっぷりで元気いっぱいだ。物語は、完璧な計画のはずがどんどんおかしな方向へと進み、ハリーが鑑定するはずの絵は別の鑑定士にまかされ、忍び込んだシャバンダーの別荘ではまさかのライオンに遭遇という、トンデモない事態に。だがこの映画、最後の最後にあっと驚く仕掛けがあるのだ。ここで一気に溜飲が下がるのは、憎憎しいシャバンダーを演じるアラン・リックマンが魅力的なため。何から何までイヤなヤツなのに、どこかトボケていて笑わせる。その上、劇中ではヌード姿まで披露するのだから、あっぱれな役者根性だ。英国発の犯罪劇をハリウッドがリメイクするときは豪華キャストで華やかさアップがお約束。そして、英国風の少し気取ったユーモアでくるむのもまたお約束なのだ。
【60点】
(原題「GAMBIT」)
(アメリカ/マイケル・ホフマン監督/コリン・ファース、キャメロン・ディアス、アラン・リックマン、他)
(どんでん返し度:★★★★☆)
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映画レビュー「裏切りのサーカス」

裏切りのサーカス コレクターズ・エディション [Blu-ray]裏切りのサーカス コレクターズ・エディション [Blu-ray]
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◆プチレビュー◆
地味だが渋く、複雑だが緻密な“大人仕様”のスパイ映画「裏切りのサーカス」。ゲイリー・オールドマンがいぶし銀の演技を見せる。 【70点】

 1980年代の東西冷戦下、英国諜報部“サーカス”の元スパイ、スマイリーは、新たな指令を受ける。それは組織の中枢に20年も潜入しているソ連の二重スパイを捜し始末せよ、というものだった。4人の幹部組織の男たちに標的を絞り、容疑者を洗い出していくスマイリーは、やがて意外な真実にたどり着く…。

 派手な銃撃戦に、最新鋭の武器、華麗な立ち回りと美女たち。英国諜報部のスパイというと、どうしても007が思い浮かぶため、ついつい華やかなイメージを抱いてしまう。だが、実際のスパイというのは、ずいぶん地味で勤勉である。神経をすり減らす情報戦の中、登場人物の誰もが疲労感たっぷりなのも頷ける。

 原作は、元・英国情報局MI6諜報員の経歴を持つ作家で、スパイ小説の大家ジョン・ル・カレの代表作「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」。彼がMI6在職中に、実際に起こった大事件を基にしているという。

 二重スパイ“モグラ”を探る初老の元幹部スマイリーが、容疑者と目星をつけたのは、組織幹部ティンカー(鍵師)、テイラー(仕立屋)、ソルジャー(兵士)、プアマン(貧者)。東西冷戦期は、情報こそが最大の武器で、そこに権力闘争がからみ、さらにその先には、男たちの野心と哀愁、悲しい愛と理想の影が浮かぶのだ。

 主人公スマイリーを演じるのは、英国の名優ゲイリー・オールドマンだ。悪役もこなせる彼は、かつてはロックスターのシド・ヴィシャスや吸血鬼ドラキュラを演じるなど、尖がった役を得意とした個性派である。その幅広い演技力はそのままに、本作では、不実な妻を愛し抜きながら、冷静な洞察力と静かな行動力で、二重スパイを洗い出す内向的な老スパイを演じ、見る者を魅了する。ほとんど表情を変えないこの主人公の、非情な世界で生きる決意と秘めた正義感が胸を打つ。

 70年代に名優アレック・ギネス主演で約5時間のTVシリーズになったこの物語は、登場人物が多く、設定もかなり複雑で、一度で細部まで理解するのは骨が折れる。物語は遅々として進まないが、一気に謎が氷解するクライマックスの演出が見事だ。シャンソンの名曲「ラ・メール」のメロディにのって、真相がくっきりと姿を現す。そこにはあまりに哀しいロマンスがあった。残ったのは涙の形の銃痕。これこそ大人のためにある渋いミステリーである。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)いぶし銀度:★★★★★

□2011年 英・仏・独合作映画 □原題「TINKER TAILOR SOLDIER SPY」
□監督:トーマス・アレフレッドソン
□出演:ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、マーク・ストロング、他
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映画レビュー「英国王のスピーチ」

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◆プチレビュー◆
英国王と型破りなスピーチ矯正専門家との友情を描く傑作「英国王のスピーチ」。威厳と繊細さを同時に表現したコリン・ファースが見事。 【90点】

 第二次世界大戦前夜の英国。王家の次男ヨーク公ジョージは、幼い頃から吃音に悩んでいた。夫を心配した妻のエリザベスは、オーストラリア人のスピーチ矯正専門家ライオネルを訪問。ユニークで破天荒なレッスンが始まるが…。

 王室に生まれるプレッシャーなど、我々庶民には実感しようもないが、常に国民の目にさらされ、規範となるべき人間であれと命じられる苦労は想像できる。それだけでも大変なのに、この映画の主人公ジョージ6世の歩んだ人生は、あまりにドラマチックだ。左ききやX脚を無理やり矯正され、兄を贔屓する乳母から虐待されていた幼年期。成長してからも、厳格な父王や奔放な兄の間でどう振舞っていいのか分からない。そんな内気な彼が、兄が王冠を捨てて恋を選んだために、望んでもいない王位につくことになる。吃音で悩む王にとって、スピーチで始まりスピーチで終わる公務は苦痛でしかない。どんな治療でも改善しない夫を心配した妻エリザベスは、あるスピーチ矯正専門家の家を自ら訪れ、助けを求める。すると彼は静かにこう言った。「私なら治せます」。

 その男ライオネルは、大胆にも王をバーティと愛称で呼び、王の固定観念をどんどん打ち砕いていく。コミカルな治療シーンが物語をリズミカルなものにしているが、吃音の原因は心の問題によるものと診断したのが、何より達観だった。伝統や体裁を気にする上流社会にはない、ライオネルの実直さに触れて、王が自己の内面と向き合っていくプロセスは、この映画の大きな見所だ。王もまた、外国人で民間人、正式な言語聴覚士の資格さえないライオネルに全幅の信頼を置く勇気を示し、立場を越えて歩み寄った。自己解放と真の友情こそが、主人公を変えたのである。

 コンプレックスだらけのシャイな国王は、やがて国民に愛される、強く優しいリーダーへと変わることに。その記念すべき第一歩をしるすのが、クライマックスの感動的なラジオ演説だ。ナチスドイツとの開戦を告げるスピーチは、ひとつひとつの言葉の重みが心の奥にまで響いてくる名場面である。ライオネルが指揮者、王が類まれなる演奏者にも見えるそのスピーチは、まるで名匠が初めて世に出すシンフォニーのよう。不器用に、でも力強く、愛と威厳を持って国民に語りかける真摯な言葉は、ベートーベンの交響曲第7番第2楽章の荘厳なメロディーにのって、私たちを感動の頂点へと導いていく。

 俳優たちのアンサンブルが絶妙なのは言うまでもない。生真面目なコリン・ファースと、飄々としたジェフリー・ラッシュの演技合戦は、品格とユーモアが同居する秀逸なものだ。妻エリザベスを演じるヘレナ・ボナム=カーターも、いつものトンガッた雰囲気とは異なり、ぐっとエレガントで魅力的である。

 ジョージ6世は現英国女王エリザベス2世の父に当たる。有名なのは兄王の“王冠を賭けた恋”でも、国民に本当に愛されたのは、英国史上最も内気なジョージ6世その人だ。国王夫妻は、戦中・戦後を通し、疲弊した国民を励ます言葉を発信し続けたという。華麗な恋愛や派手なアクションなど何一つないこの映画こそ、人と人との信頼関係が、最高の形でスクリーンに結実した傑作だ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)感動度:★★★★★

□2010年 イギリス・オーストラリア合作映画 原題「The King's Speech」
□監督:トム・フーパー
□出演:コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーター、他

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映画レビュー「シングルマン」

シングルマン コレクターズ・エディション [DVD]シングルマン コレクターズ・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
死を覚悟して初めて知る生の輝き。デザイナーのトム・フォードの手腕は初監督とは思えないほど見事だ。 【75点】

 「愛する者を失った人生に意味などあるのか」。1962年11月30日。8ヶ月前に16年間共に暮らしたパートナーのジムを事故で失ったジョージは、自殺を決意し準備を着々と整えていく。だが彼は、死を前に日常のすべてが違ったものに感じて戸惑いを覚えた。そんな時、親友の女性チャーリーから電話が入る…。

 2人の男がゆっくりと水に沈むポエティックなシーンと、痛々しい交通事故の俯瞰の映像、自殺の決意とその準備の淡々とした連写。映画の序盤に、この一連の流れを無駄のないフォルムで描き、同時に主人公ジョージの人となりが簡潔に浮かび上がる手際の良さは、非常にスマートだ。何度も現れる幸福な日々のフラッシュバックで、今の彼の絶望がいかに深いかを物語る。劇中に登場するさまざまなコントラストが、ストーリーを丁寧に形作っていく。

 英国人の大学教授ジョージは、繊細なキャラクターだ。自殺を前に「発つ鳥跡を濁さず」とばかりにすべてを整理整頓する隙のない人物でもある。銀行の貸し金庫の中身を処分し、家政婦にメモを残し、自分の葬式用のスーツを整え、ネクタイの結び方まで指示する。几帳面な生き方と端正な装いという鎧で脆さを隠しながら生きてきたジョージだったが、50歳を過ぎていても“終わり”が“始まり”になっていく人生の不思議をまだ知らない。観客もまた、死と生が対比する彼の特別な1日につきあうことで、そのことを教えられる。

 ジョージはゲイだという設定なのだが、そのことはこの物語ではポイントではない。むしろ立ち上がってくるのは、ミドルエイジ・クライシス(中高年男性の不安)と、米国で暮らす英国人の孤立感だ。さらに60年代初めという古き良き時代の夕映えにも似た最後の輝きが、ジョージの悲しみに寄り添っている。世界を大きな不安が包む季節の直前に、人生を終えようとしていたジョージが気付いたのは、ささやかな日常にこそ宿る幸福感だった。

 いつもと変わらないはずの英文学の講義、煩わしいはずの隣家の少女、敏感に変化を感じ取る教え子や、駐車場でふと言葉をかわした青年。死を決意したことで日常を別のアングルでとらえ直し、新しいまなざしで世界を受け止めていくジョージを演じるコリン・ファースが卓越して素晴らしい。繊細で抑性が効いた彼の演技が、この映画を比類ないものにしている。さらにジョージとは正反対でありながら、同じ孤独を内包するチャーリーを演じるジュリアン・ムーアとの共鳴が効いている。心から笑いあえる友がまだそばにいる幸福を呼び起こし、ジョージが生へと心を解放したその時、思いがけない運命が訪れる。

 監督のトム・フォードは、グッチやイヴ・サンローランなどで活躍し大きな成功を手にしたカリスマ・ファッションデザイナー。近年では「007」の衣装を担当し存在感を示していた。そんな彼がかねてより関心があった映画作りに挑戦、脚本まで自ら手掛け、とても初監督とは思えない高い完成度の作品を作り、世界を驚かせた。思えば映画界では、異業種の才能は珍しいことではない。たとえば、勅使河原宏は華道家、ジャン・コクトーは詩人、北野武は自分の本業はコメディアンと公言する。そんな中、トム・フォードの“武器”は、他の追随を許さない並はずれた美意識だ。繊細で哀歓漂うこの作品、キャスティングの妙も含めて、まるで仕立ての良いスーツのように美しい。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)端正度:★★★★★

□2009年 アメリカ映画 原題「A SINGLE MAN」
□監督:トム・フォード
□出演:コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、ニコラス・ホルト、他

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映画レビュー「マンマ・ミーア!」

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◆プチレビュー◆
ABBAのナンバー全22曲にのって、熟年男女がハジケまくる。こういう映画は楽しまなきゃソン! 【55点】

 ギリシャの小島でホテルを営むシングルマザーのドナは、娘の結婚式を控えて大忙し。一方、母親の日記を盗み読んだ娘ソフィは父親候補が3人もいてビックリ。母に内緒で自分の結婚式に彼ら3人を招待するのだが…。

 既成の曲だけを使って構成されるミュージカルを、ジュークボックス・ミュージカルと呼ぶ。「マンマ・ミーア!」は、ABBA(アバ)のナンバーをたっぷりと使用して作られた人気ミュージカルの映画化だ。アバは、70年代から80年代にかけて、世界中で大ヒットを連発したスウェーデン出身の男女4人のポップス・グループ。彼らの曲のテンションの高さは並みじゃない。

 お話は娘ソフィの父親探しが軸だが、映画の本流は、母ドナと彼女の昔の恋人3人との再会からはじまる大騒動だ。ドナを演じるのは名女優のメリル・ストリープだが、ここにきて、この人のフル・ミュージカルを見ることになろうとは。ストリープの歌を聴くのは初めてではないし上手いのは知っていたが、時に独唱、時に群舞と頑張るサマは、まるでアクション映画のように激しい。オーバーオール姿で、ベッドの上で飛び跳ね、屋根から落下し、桟橋から海中へ飛び込む。ハリウッドきっての演技派女優のはしゃぎっぷりに、思わずドン引きしてしまったのだが、こんなメリルを見ているうちに、本当のパパを知りたい娘心より、元カレと再会してパニくる母ドナの心の揺れが気になってくるから、さすがは大女優の牽引力というしかない。歌い踊るナンバーはどれも陽性の明るさに満ちているが、熟年男女のド派手なコスプレは、舞台ならまだしも映画のスクリーンでは浮きまくり。少々品位に欠ける気さえする。

 そんな文句を並べながらも、世代を越えて愛されるアバのヒット曲が鳴り響けば、大味な演出も「まぁ、いいか」という気持ちになるから不思議だ。ソフィを演じる新星アマンダ・セイフライドがみずみずしい存在感と抜群の歌唱力でさわやさを体現しているのも、忘れちゃいけない。マンマ・ミーアとはイタリア語で「なんてこった!」というニュアンスの感嘆の言葉だ。にぎやかなストーリーの中、全員に“マンマ・ミーア!”な瞬間が訪れる。それぞれ「自分が父親なのか!」と叫ぶ3人の中年男たちの驚きと喜びの行方は、映画を見てのお楽しみだ。どんな結果が待っていようと、母娘の絆は何よりも強いし、愛の形は自由だ。かつては奔放な恋に生きた母と、20歳で花嫁になり人生を決めてしまおうとする娘。登場人物たちの運命の行方を見届けたあとは、エンドクレジットまで、ダンサブルでハッピーな音楽が導いてくれる。

 そもそもアバのナンバーは、なぜ今も世界中から愛されているのか。ポップスの難しい音楽的解釈はさておき、理屈抜きの明るさと健康的なメロディーラインに、誰もが生きる喜びを感じるからではなかろうか。ノーテンキを絵に描いたようなこの作品が、見終われば何とも愛しくなるのは、苦笑しながらもノセられて楽しんだ自分を発見できるから。さぁ、栄養剤みたいにグッと一気飲みして楽しもう。きっと、元気をもらえるはずだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)高揚感度:★★★★★

□2008年 アメリカ映画 原題「MAMMA MIA!」
□監督:フィリダ・ロイド
□出演:メリル・ストリープ、アマンダ・セイフライド、ピアース・ブロスナン、他

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ブリジット・ジョーンズの日記

ブリジット・ジョーンズの日記 [DVD]ブリジット・ジョーンズの日記 [DVD]
◆プチレビュー◆
太ったままで幸せをつかむところがヨイ。ブリジットの愛読書がセルフヘルプ本というのもリアル。

ロンドンの出版社に勤める32歳の独身女性ブリジット。お堅い弁護士マークを紹介されるが、気が合わず険悪に。憧れの上司ダニエルと急接近するも、ダニエルは浮気性。よし!今年こそは、酒もタバコも止め、ダイエットに励み、恋人もみつけるぞ!との新年の誓いにも、すぐに迷いが…。みっともない所ばかり見られたはずのマークの好意的な言葉を聞いても、ダニエルのことも忘れられないし、さぁ、どうするブリジット…?!

イギリスの新聞「インディペンデント」に、ロンドンに住む30代独身女性ブリジット・ジョーンズの架空の日記がコラムとして連載、たちまち大反響。全世界で読まれた大ベストセラーとなった。赤裸々すぎる内容は、女性に対してまだ淡い夢を抱いている10代前半の少年たちが見たら、きっと幻滅するだろう。

なにしろこのブリジット、酒とタバコはガブ飲みするし、痩せると決心しても、その意思は薄氷のようにもろい。家の中を覗いてみると、脱ぎっぱなしの服はだらしなく散らかってるし、洗面台にはメーク用品が散乱、吸殻がこぼれ落ちそうな灰皿に、捨てればいいのに、妙なガラクタが散らばってる室内。二日酔いで寝起きのブリジットは、ズルっと脱いだショーツを足で器用に洗濯カゴへ。素敵な大人の女性とは程遠い人物で、ちっともヒロインらしくない。どこかに思い当たるフシがある?

しかし、ブリジットにはいじけたところが微塵もない。一種の天然ボケともいえる。ダイエットに失敗し、上司にフラれ、パジャマ姿で「オール・バイ・マイセルフ」を熱唱する合間に、時には落ち込むことはあっても、基本的にいつも前向き、ポジティブシンキングだ。深く考えないせいか、行動も早い。爆裂ぶりもすごいけど、立ち止まって引き返すくらいなら、暴走して転ぶ方を選ぶのだ。おおらかなところが見ていてうれしいし、つい応援したくなる。それに、新年に「今年こそは去年と違った自分になるんだ!」との決心は、誰もが経験あるのでは?つまり彼女は憎めないヤツなのだ。この人と一緒ならきっと心があったかくなる。その証拠に、ブリジットはとびきりイイ友達をもっている。落ち込んだ彼女を励まし、マズイ手料理だって食べてくれる愛すべき友人たちを。

30代、中年にさしかかる独身女性が自分を慰め希望を持つための映画、なんてうがった見方はダメ。ちっぽけなことで泣いたり笑ったりする私たちだ。人間は、幾つになっても他愛ない生き物なのだから。ラストのクレジットが流れる部分も楽しい。「ありのままの君が好き。」これ以上の褒め言葉がこの世にあろうか。見終わったあと、記憶に残るのは、ブリジットのはじける笑顔。ヒロインの天真爛漫さを楽しもう。

□2001年 アメリカ映画 原題「BRIDGET JONES's Diary」
□監督:シャロン・マグワイア
□出演:レニー・ゼルヴィガー、ヒュー・グラント、コリン・ファース、他

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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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