映画通信シネマッシモ


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

コーマック・マッカーシー

悪の法則

悪の法則 21分拡大版本編ディスク付豪華2枚組 (初回生産限定) [Blu-ray]
危険な裏ビジネスに手を染めたことから壮絶な運命をたどる人々を描く心理サスペンス「悪の法則」。主役級スターが勢ぞろいし、不条理劇を豪華に彩る。

テキサス、メキシコ国境付近の町で弁護士をしている若くハンサムな“カウンセラー”は、美しい恋人ローラとの結婚を控え、何不自由なく暮らしているが、ふとした出来心で、友人の実業家ライナーや、裏社会に精通するブローカーのウェストリーと組んで、メキシコの麻薬カルテルを相手に、危険な裏ビジネスに手を染める。だが正体不明の黒幕が仕掛けた罠によりカウンセラーと彼の周囲のセレブリティたちは、命さえ脅かす危険で巨大なトラブルに巻き込まれていく…。

金も社会的地位も、美しい容姿さえも、何不自由ない“カウンセラー”が出来心で裏ビジネスに手を出したその理由は、恋人をより満足させ、自分もより豊かな暮らしがしたいという「ちょっとした欲」だった。だが“素人”のカウンセラーの欲など、この物語の黒幕のそれにくらべるとひよっこ並み。裏ビジネスに安易に手を出したのはなるほど悪いことだが、実はカウンセラーには一連の危機に値するような落ち度はない。つまり身に覚えのない出来事によって、カウンセラーは周囲の人々を地獄への道連れにして悲劇へとひた走るのだ。その不条理ぶりときたら、壮絶という言葉以外、思いつかない。全員が主役クラスのスターたちが従来のイメージを覆す役に挑戦しているが、人間の闇をあぶりだす名手の作家コーマック・マッカシーによる脚本は、それぞれに衝撃的な運命を用意して、情け容赦ない。とりわけライナーの愛人マルキナを演じるキャメロン・ディアスの得体の知れない妖艶な演技には、ド肝を抜かれた。ブラピ演じるブローカーは何度も「手を引け」と忠告するが、それでもカウンセラーは道を誤る。悪とはこんなにも甘美な誘惑の香りがするものなのだろうか。真の主役はさておき、とりあえず物語の軸はカウンセラー。マイケル・ファスベンダー演じる彼だけが名前がないのが象徴的だ。つまり誰もが同じ落とし穴に落ちる可能性があるということである。全体を通して会話劇で成り立っている作品なのに、こんなにも緊張を強いられるとは。人間性の極北をドライに描いた恐ろしい傑作である。
【75点】
(原題「THE COUNSELOR」)
(米・英/リドリー・スコット監督/マイケル・ファスベンダー、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス、他)
(不条理度:★★★★☆)
チケットぴあ

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悪の法則@ぴあ映画生活

映画レビュー「ザ・ロード」

ザ・ロード [DVD]ザ・ロード [DVD]
◆プチレビュー◆
荒廃した大地を旅する父と子のロード・ムービー「ザ・ロード」。淡々としてストイックな終末譚だ。 【65点】

 文明が崩壊し人類のほとんどが滅亡したアメリカ。僅かに生き残った人々が互いの人肉を食らう狂気の生き物と化す中、かすかな希望を求めて南を目指す父子がいた。父は幼い息子に、人間のモラルと生きる術を教えるが…。

 原作は、現代米国文学の雄コーマック・マッカーシーがピューリッツァー賞を受賞した同名小説だ。映画の舞台は文明を失って10年以上たった世界。なぜ世界が終ったのかという説明はいっさいない。人間に残された選択肢は、餓死か、自殺か、生存者に食い殺されるか。すでに理性を失くした者たちの蛮行だけがはびこる世界で生きる意味とは何だろう。主人公は息子に「私たちは“火”を運んでいる」と言う。この火とは、希望の灯(ともしび)の意味だ。物語は、一組の父子の旅をヒロイックな要素を排除して淡々と追っていく。
 
 “善き者”であろうとする父が息子に教えるのは、どれほど空腹でも自分たちと同じ人間を食べたりはしないというルールだ。道徳、理性、誇り。それを息子に何としても教えなければならない。さらに、他者だけでなく自分に対しても非情であれということも。父が息子に自殺の方法を教える様が痛ましい。

 ヴィゴ・モーテンセンと、息子役のコディ・スミット=マクフィーの、枯れた熱演が胸にしみる。父子の旅は悲痛なものだが、それでも時にはささやかな癒しの場面も。豊富な食料を見つけて喜ぶ場面もさることながら、自動販売機に残った缶コーラを初めて飲む息子が「おいしい」と目を輝かせる場面は、まるで闇夜に見る明かりように安らぐ瞬間だ。生まれて初めての飲み物コーラを見て「泡が立つんだね」と無邪気に驚く場面は泣けてくる。立ち上がっては消える泡にも似て、この息子は、はかなげで、無垢な存在だ。父子が共に歩いてきた道を離れて海を見た後、彼らには思いがけない運命が待つことになる。

 暗く重い雲に覆われた空、寒冷化が進んだ寒々しい空気、ボロをまとった野獣のような人間たち。こんな荒れ果てた画面の中に、ロバート・デュバルら、名優たちが一見それとはわからぬほどの姿で登場してくる。全員がホームレスのような有様の中、回想の中の母親役シャーリーズ・セロンは、あまりにも美しい。ただ、この母親が心を病み自ら死を選ぶ展開には、不満が残る。父親はなぜ強引にでも妻を引きとめないのか。妻と運命を共にするより息子との先の見えない旅を選ぶその訳に、何も説明はない。観客に委ねたのかもしれないが、ここは説得力のある理由がほしかった。 

 近年、数多く作られている終末映画の中でも、本作のドライなタッチは群を抜く。T・S・エリオットは、その詩「うつろな人間」で、人類が終末を迎えるその時を“これが世界の終わり方だ。世界はパーン!ではなく、メソメソと泣いて終わる”と綴っている。派手でも乱暴でもなく、ゆっくりとフェイドアウトしていく終焉にはヒロイズムもロマンティシズムも存在しない。この映画には人類滅亡というビッグ・イベントでさえも冷淡にみつめる達観したまなざしがある。主人公には、何ら特別の能力はない。その証拠に父も子も名前がない。だがそれ故に普遍的な“私たちの物語”になりうるのだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)絶望感度:★★★★☆

□2009年 アメリカ映画 原題「THE ROAD」
□監督:ジョン・ヒルコート
□出演:ヴィゴ・モーテンセン、コディ・スミット=マクフィー、ロバート・デュヴァル、他



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映画レビュー「ノーカントリー」

ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション
◆プチレビュー◆
暴力的なのに抗いがたい魅力がある逃亡/追跡劇。コーエン兄弟独特のノワールな笑いが彩りを添える。 【90点】

 80年代のアメリカ・テキサス。砂漠でハンティング中だったモスは、偶然に、死体の山と麻薬、現金200万ドルを見つけ、危険を承知で現金を奪う。必死で逃亡する彼を追うのは冷徹な殺し屋シガー。モスを救おうと、老保安官ベルも動き始めるが…。

 初めてお目にかかるタイプの映画だ。空虚なのに内臓の深い部分をえぐられる感じがして、見終わった後いつまでも心をザワつかせる。原作は、コーマック・マッカーシーの「血と暴力の国」。映画を見てすぐにこれを読んだ私は、改めてコーエン兄弟の才能に感服した。小説は独特の乾いたタッチだが、映画にはさらに絶妙なユーモアが加味されている。原作と映画は別物というのが私の持論だが、この映画のように優れた小説を扱うときは、細心の注意と敬意が必要だ。意味のある作品にするためには、映像メディアならではの“言語”が求められる。そして、本当に才能がある映画人だけが、その難しい要求に応えることが出来る。

 何しろ、ハビエル・バルデム演じる几帳面で異常な殺し屋シガーの存在感がもの凄い。おかっぱ頭、黒い服、武器は高圧ボンベ付きの家畜用スタンガン。外見だけでも不気味きわまりないが、中身はもっと恐い。非情とはシガーのためにある言葉だ。彼は人殺しに快楽も苦悩も感じていない。殺人という作業を淡々と確実に、礼儀正しく片付ける。過去はいっさい不明で、彼がどこから来てどこへ行くのかは何の説明もない。必要な言葉以外は発しないシガーという存在は、つまるところ「運命」ということになろう。理解不能な運命は、世界中のどの場所にもどの時代にも存在するが、とびきり理不尽なそれは、アメリカにこそ良く似合う。どこかで正義を信じている昔気質の老保安官ベルが、深いため息をつくのも無理のない話だ。

 時代に取り残された実直な保安官ベルが、法の名のもとに殺し屋を追い詰めることができると思ったのと同様に、麻薬がらみの大金を持ち逃げしたモスも、ベトナム戦争の地獄を生き抜いた自らの経験値から、逃げ切れると踏んでいた。この“過信”が、物語を転がしている。米国社会の病理のような逃亡劇は、テキサスからメキシコ国境へ。彼らが通った後には、死体の山が出来ている筋書きだ。運悪くシガーという名の運命に少しでも触れたら、その人間の末路は決まる。

 何もかも超越したピュアな悪意を、どう受け止めればよいのだろうか。この映画を見た後は誰もが不安になり、答を探すだろう。アメリカの闇を見る。現代人の嘆きを聞く。はたまた暴力は無意味なのだと訳知り顔で悟る。さまざまな解釈が可能だが、ひとつ読み解く鍵があるとすれば、シガーが雑貨屋の店主相手に行うコイン投げではなかろうか。「賭けに勝ったら何をもらえるんですか?」と問う老人に「おまえは全てを手に入れる」と哲学者のように告げるシガー。一見、遊んでいるように見えるが、生真面目な“絶対悪”は、物事に不確定性原理、すなわち偶然を加えているのだ。そのゆらぎさえ支配できるかのように。私たち人間は、図らずもコインの賭けに乗ってしまっているのではないか。そして、とっくの昔に勝負に負けているのではないか。暗黒神話のようなこの映画の主題はそこにあると見る。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)インパクト度:★★★★★

□2007年 アメリカ映画 原題「NO COUNTRY FOR OLD MEN」
□監督:ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
□出演:トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、他

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