映画通信シネマッシモ


映画通信シネマッシモは、2018年4月をもって、終了しました。

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サラ・ポーリー

テイク・ディス・ワルツ

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人妻の心の空白と孤独を静かな演出で描く「テイク・ディス・ワルツ」。ミシェル・ウィリアムズの虚ろな表情がすべてを物語る。

フリーライターのマーゴは、料理のレシピ本を作る夫ルーと幸福に暮らしている。結婚5年目を向かえ、恋愛時代のような刺激は薄れたものの、穏やかな愛に包まれる日々だ。そんなある日、マーゴは旅先でダニエルという情熱的な青年と出会い強く惹かれるが、彼が偶然にも家の向かいに住んでいると知り、動揺してしまう。結婚していることをダニエルに告げるが、意図せずにダニエルと過ごす時間が増え、夫ルーとは全く違うタイプの彼に惹かれる気持ちを抑えられなくなっていく…。

カナダ出身の女優サラ・ポーリーは監督第一作「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」で、老夫婦間に生まれる緊張と寂寞を描いて、ただならぬ手腕をみせたが、本作でもまた、繊細で鋭い人間心理をすくい取っていて、このまだ若い女優は監督としても一流で、年齢とは不釣合いなほど老獪な演出力を持っていると確信した。物語は、平凡だが幸せな日々を送る人妻が、不倫に走るという一見他愛無いものだが、単なる浮気話とは一線を画している。ミシェル・ウィリアムズ演じるヒロインが、時折みせる虚ろな表情。これが本作のキモだ。幸福なはずなのに、何か満ち足りない。優しい夫に不満などないのに、憂鬱で孤独を感じる。そんな漠然とした思いを、ウィリアムズの茫然自失の顔つきと、昼下がりの午後のけだるい光のようなカメラワークが絶妙に物語る。穏やかな日々にひそむ空虚のブラックホールに堕ちたヒロインは、それに気付かないふりをする周囲の空気を感じつつも、ある結論に達する。ウィリアムズは脱ぎっぷりのいい女優で、本作でも惜しみなく裸体をさらして熱演するが、あどけない少女のような雰囲気と不思議な色香が同居するウィリアムズの存在そのものがエロティックだ。コメディが得意のセス・ローゲンやサラ・シルヴァーマンをシリアスな役で起用するなど、キャスティングも上手い。冒頭、お菓子を焼きながらふとその場にしゃがみこむマーゴ。その虚脱感は、ラストにも登場し、終わりなき欠落感は、凡百のホラー映画よりよほど戦慄を覚える。本能とモラル。そのどちらにも“永遠”などあり得ない。よくある浮気話にみえて、なかなかシビアで深い映画だ。
【65点】
(原題「TAKE THIS WALTZ」)
(カナダ/サラ・ポーリー監督/ミシェル・ウィリアムズ、セス・ローゲン、ルーク・カービー、他)
(空虚度:★★★★☆)
チケットぴあ

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テイク・ディス・ワルツ@ぴあ映画生活

スプライス

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ホラー風味のモンスターパニックと思わせておいて、実は人間のエゴと狂気を描く心理サスペンス。DVDスルーになっても不思議はないキワモノ映画なのに、確信犯的に演技派俳優を使うミス・マッチが興味深い。科学者のカップルのクライヴとエルサは、ある禁断の実験に身を投じてしまう。最初は難病治療のため、次第に学者としての好奇心と名誉欲も加わったその実験とは、人と動物のDNAを配合して新生命体を創造することだった。実験は成功し、2人は新種の生命体にドレンという名を付けて秘密裏に育てていく。ドレンは急速に成長するが、2人の予想を超える変貌を遂げモンスターと化してしまう…。

人間が新しい種を生みだすのは、神への冒涜。そこには法律や倫理もからむのだが、製薬会社の意図は利益を上げることだし、科学者は実験の成果への好奇心から歯止めが効かなくなる。誕生した新生命体のルックスはかなり強烈なインパクトで、うっすらと嫌悪感を感じる、いわゆる「キモかわいい」系だ。これは製作総指揮に名を連ねているギレルモ・デル・トロの好みが反映されているに違いない。身体はモンスターでも顔だけはだんだんと人間っぽくなる様子や、知識や嗜好を学んでいることから、やがてくる惨劇は想像できる。だが人間とモンスターの両方の顔を持つドレンとクライヴ、さらにエルサとの関係は、グロテスクで異様なものだ。特にエルサの行動は狂気とも暴走ともとれるもので、最初は、実験対象として、やがて子供のような存在として、ついには一種のライバルとしてドレンと対峙していく。エルサがドレンに対して持つ愛情と憎悪が入り混じり、物語はますます禁断のドラマの様相を呈していくのだが、残念なのは、新生命体に執着するエルサの背景がはっきりしないことだ。どうやら幼い頃の母親との関係がトラウマになっているようだが、そのことをほのめかすセリフはあるものの、物語はエルサの過去には最後まで言及しない。これではラストの彼女の“決断”に対して、説得力が薄くなってしまう。ただ「失うものは何もない」とつぶやくエルサの中に明らかな狂気が見えた。監督のヴィンチェンゾ・ナタリは意欲作「CUBE キューブ」で名を挙げたカナダの鬼才だ。タイトルのスプライスとは結合の意味。彼独特の閉塞感が、作品全体に漂っている。
【50点】
(原題「SPLICE」)
(カナダ・仏・米/ヴィンチェンゾ・ナタリ監督/エイドリアン・ブロディ、サラ・ポーリー、デルフィーヌ・シャネアック、他)
(キモかわいい度:★★★★☆)

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映画レビュー「アウェイ・フロム・ハー 君を想う」

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◆プチレビュー◆
老夫婦の愛情と罪悪感を静かにみつめる目がシビアだ。女優サラ・ポーリーの初長編監督作。 【65点】

 結婚して44年になるフィオーナとグラントは、互いに深い愛情で結ばれ、静かな生活を送っていた。だがある日、フィオーナにアルツハイマー型認知症の症状が現れる。彼女は自ら介護施設への入所を決めるのだが…。

 これは“赦(ゆる)す”物語だ。老いを受け入れて、忘れていくことを赦す。過去の過ちを赦し、現在に生まれた愛情を赦す。そして夫婦は新しい愛を得る。

 認知症といっても、フライパンを冷蔵庫にしまったり、ワインという単語を忘れたりは“うっかり”程度だ。だが、外出して家に帰れなくなった時、フィオーナは病を受け入れ、施設に入ると決める。一方、グラントは妻が自分から離れることそのものに耐えられずにゴネる。老人介護の苦渋の決断を見る思いがする。施設の描写や介護師の対応もリアルなものだ。同情や綺麗事だけでは、この病には対応できない。しかし、グラントを襲うその後の衝撃に比べたら、寂しさなど序の口だ。施設に入って1ヶ月後、妻は夫を忘れた上、同じ施設の男に恋をしているのだ。記憶の病の悲劇がこんな形をとろうとは。

 認知症では、古い記憶は鮮明なことが多く、正気に戻る瞬間もある。夫である自分が分からず、優しいが他人行儀な態度をとるフィオーナを見て、もしや自分を罰するための芝居では…と、グラントが疑心暗鬼になるところはサスペンスのようだ。愛情の傷は心の深い場所で疼いているのである。

 なぜグラントは罰せられるのか。かつて浮気で妻を苦しめたグラントの過去の不実を見抜き、女性介護師が言うセリフが印象的だ。「振り返って悪い人生じゃなかったと言うのはいつも男性の方よ。奥様は違う」。進退窮まったグラントが、妻の“恋人”オーブリーの妻マリアンと接するうちに、それぞれの関係は意外な方向へと進みはじめる。

 熟年夫婦の老いをテーマに人間を見つめたのは、カナダの若手実力派女優のサラ・ポーリーだ。1979年生まれの彼女は、長編劇映画の監督は今回がはじめて。だが、脚本も自ら手がけ、女優業を2年も休業してまで打ち込んだ本作の出来栄えは見事なもので驚かされる。久々の女優復帰となる名優ジュリー・クリスティを主演に据えたことも、作品の品格を大きく上げた。乱れた白い髪で認知症のヒロインを演じるクリスティは例えようもなくエレガントで、彼女の笑顔は陽だまりのように明るい。その笑顔が夫の苦悩と対になってやるせない。

 妻の幸せを願うなら、彼女の恋を応援すべきなのか。この老いた男女は、ある種の極限状態だ。記憶がなくなるということは夫婦の積み重ねがゼロになってしまうこと。そんな時の選択とは、自分も含め、ただ赦すことしかない。それが悲しみを浄化する唯一の手助けになろう。相手のことを思えばこそ相手から離れようと決める。原題の“アウェイ・フロム・ハー”とは、そんな切ない愛の形を表した言葉なのだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)シビア度:★★★★☆

□2006年 カナダ映画 原題「AWAY FROM HER」
□監督:サラ・ポーリー
□出演:ジュリー・クリスティ、ゴードン・ビンセント、オリンピア・デュカキス、他

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あなたになら言える秘密のこと

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孤独な女性ハンナが、海で孤立する油田で新しい出会いを経験する。映像はないがセリフだけで語られるハンナの秘密があまりにもスゴいので血の気が引く思いがした。重い映画だが後味は決して悪くない。いい意味で期待を裏切られた1本。
【70点】
(英語原題「The Secret Life of Words」)
(スペイン/イサベル・コイシェ監督/サラ・ポーリー、ティム・ロビンス、ハビエル・カマラ、ジュリー・クリスティ、他)
(秘密を知って驚き度:★★★★☆)

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