映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」「ベイビードライバー」etc.

シャーリーズ・セロン

ワイルド・スピード ICE BREAK

ワイルド・スピード アイスブレイク
長い逃亡生活と最悪の敵との闘いを終えたドミニク・トレット(ドム)は、愛するレティや仲間たちと固い絆で結ばれた“ファミリー”を誰よりも大切に思っていた。そのドムが謎の女サイバーテロリスト・サイファーの側に寝返る。残されたレティたちは突然の裏切りにショックを受けながらもドム奪還を狙うが、犯罪のエキスパートにして史上最強のドライバーである彼にかなうものはいなかった。一方、ホブスはドムの裏切りによる任務失敗の責任をとって刑務所送りに。残された手段は、ファミリー最大の敵だったデッカート・ショウと手を組むことだったが…。

大人気カーアクションシリーズの第8弾「ワイルド・スピード ICE BREAK」。ポール・ウォーカーの突然の事故死という悲劇を乗り越えた前作は見事な出来だったが、本作の暴れっぷりはさらに上を行く。ドムの裏切りというまさかの事態には、もちろん深い理由があるのだが、仲間たちはドムをとことん信じて彼を取り戻すために奮闘しつつ、シャーリーズ・セロン演じる天才ハッカーが仕掛ける最凶のテロに立ち向かうというのが大筋だ。ワイ・スピらしい、あきれるほどブッ飛んだカーアクションが次々に登場する。キューバの公道での炎のカーレースに始まり、NYでは無人の車が大挙して暴走し高層ビルから車の“雨”が降る。クライマックスは、氷上で潜水艦や装甲車とのカーチェイスなのだから、もう、笑うしかない…というより、素直に興奮するしかない。ストーリーなどもうでもよろしい!と思ってしまう怒涛の136分では、今回共闘するデッカート役のジェイソン・ステイサムが最も美味しい役どころだ。ロック様演じるホブスとのガチンコバトルも用意されているが、この二人、いがみ合いながらも心の底では互いを尊敬していて、いいコンビなのである。毎回のお約束で、豪華な新キャラが登場するが、今回はあの名女優が意外な役で登場。ワクワクさせてくれる。本作は新たなワイスピ3部作のはじまりとなる作品だ。常識を超えた圧巻のカーチェイス、全員主役級の個性豊かなキャラクター、何よりも大切なのは家族。この3つさえ覚えておけばワイスピは楽しめる。ド派手なお祭りムービーなので、ぜひ映画館の大スクリーンで堪能してほしい。
【70点】
(原題「THE FATE OF THE FURIOUS」)
(アメリカ/F・ゲイリー・グレイ監督/ヴィン・ディーゼル、ドウェイン・ジョンソン、ジェイソン・ステイサム、他)
(ありえない度:★★★★★)
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ダーク・プレイス

ダーク・プレイス [Blu-ray]
1985年、一家惨殺事件で生き残った8歳の末娘リビーは、15歳の兄ベンの犯行だと証言。ベンは逮捕され終身刑を言い渡された。事件から28年後、荒んだ生活を送っていたリビーは、過去の有名な殺人事件を検証する「殺人クラブ」のメンバーのライルが申し出た、事件について証言してくれれば謝礼金を出すという言葉と報酬に目がくらみ、嫌々ながらクラブの会合に出席。事件について調べ始めたリビーは、徐々に記憶がよみがえる。あの夜、いったい何が起こったのか。当時のベンの恋人ディオンドラの存在、たびたび金の無心にきていた父親、殺された姉の日記…。過去と向き合うリビーは、やがて衝撃の事実へとたどりつく…。

「ゴーン・ガール」の原作者ギリアン・フリンによるミステリー小説「冥闇」を映画化したサスペンス「ダーク・プレイス」。31歳になったリビーが事件の記憶をたどる姿と、事件当時の映像を交錯させながら描く。あの日、見たものとは? いや、見なかったものとは? 定職もなく、支援金も底をついたことでやむを得ず当時の関係者を訪ね歩くリビーの歩みは、いわば、過去の呪縛からの解放の旅だ。心に深い傷を負ったヒロインは、終始、仏頂面で、態度も投げやり、粗末な服装で化粧っ気もない。社会に適応する努力さえしない、孤独で後ろ向きの人間を、とびきりの美女であるセロンが演じているのが興味深い。実は、幼い頃のトラウマという点では、この主人公と主演のシャーリーズ・セロンには共通点がある。何しろセロンは15歳で、アルコール依存症で暴力をふるう実父を実母が射殺するという衝撃的な事件を体験しているのだ。映画は、ミステリーなので詳細は明かさないが、アメリカ南部で流行した悪魔崇拝、大不況と生活苦がキーポイントであるとだけ言っておこう。不自由な刑務所にいる兄ベンは、妹リビーに対して恨み言ひとつ言わず、誇り高さと諦念が同居する。一方、自由なはずのリビーはずっと過去に囚われたかのような人生を生きてきた。彼らが再び前を向くには、どんなにつらくてもあの事件をたどって咀嚼し、乗り越えていくしかなかったのだ。ラスト、リビーは忌まわしい生家を再び訪ねるが、そこに住む少女に小さく手をふる姿に、かすかな希望と未来を感じる。D.フィンチャー監督の「ゴーン・ガール」のような衝撃はない。だが「サラの鍵」でユダヤ人迫害の真相を描いたジル・パケ=ブランネール監督は、最後に、ずっと暗い場所にいたヒロインにあたたかい光を投げかけている。見ているこちらも救われた気がした。
【70点】
(原題「DARK PLACES」)
(英・仏・米/ジル・パケ=ブランネール監督/シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、クロエ・グレース・モレッツ、他)
(呪縛度:★★★★☆)
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スノーホワイト 氷の王国

スノーホワイト-氷の王国- ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]
スノーホワイト(白雪姫)とハンターのエリックによって、邪悪な女王ラヴェンナは滅ぼされた。だがラヴェンナには、強大な魔力を持つ妹フレイヤがいた。かつて、ある事件によって心を閉ざし、氷の魔法を操る力に目覚めたフレイヤは、氷の王国で訓練した軍隊を使って魔法の鏡を奪い、ラヴェンナを復活させて姉妹の魔力で世界を手に入れようと目論んでいた。フレイヤの軍隊で育ったエリックとサラは愛し合っていたが、フレイヤによって引き裂かれる。エリックは、フレイヤの恐ろしい計画を阻止しようと鏡を破壊しようとするが…。

前作「スノーホワイト」の前日譚にして続編となるファンタジー・アクション「スノーホワイト 氷の王国」。前作のヒロインの白雪姫(スノーホワイト)のクリステン・スチュワートの不倫騒動のおかげ(せい?)で、続編である本作にはスノーホワイトは登場しない。戦士エリックが一応主役という位置付けだが、滅んだはずの邪悪な女王ラヴェンナには、実はさらに強大な魔力を持つ妹のフレイヤがいたという、かなり強引なストーリー展開だ。こういう設定なら、妹、弟、兄、姉、従妹…とどこまでも続編が作れるじゃないか…!と心の中でツッコミを入れてしまうが、妹にして氷の女王フレイヤがあまりに「アナ雪」のエルサ的で思わず苦笑する。それでも、ラヴェンナ役のシャーリーズ・セロン、フレイヤ役のエミリー・ブラントの2人の女優が圧倒的に美しく存在感たっぷりなので、ムチャな設定のストーリーも何とかセーフだ。ラヴェンナが金、フレイヤが銀と、ビジュアル的にもゴージャスで、2人が過去の秘密によって激突する終盤のバトルは、VFXの迫力とともにその美しさに目を見張る。この美人姉妹の前では、ハンターのエリックと戦士サラの恋愛模様など、ほとんど付けたしのよう。ストーリーは二の次にして、アクションとビジュアルに比重を置いた作りは、監督のセドリック・ニコラス=トロイアンが視覚効果出身だからだろうか。本作が初の長編監督デビュー。次回作に期待しよう。
【50点】
(原題「THE HUNTSMAN: WINTER'S WAR」)
(アメリカ/セドリック・ニコラス=トロイアン監督/クリス・ヘムズワース、シャーリーズ・セロン、エミリー・ブラント、他)
(ゴージャス度:★★★★☆)
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マッドマックス 怒りのデス・ロード

マッドマックス 怒りのデス・ロード 3D&2Dブルーレイセット(初回限定生産/2枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]
荒廃した世界をさまようマックスの新たな死闘を描く「マッドマックス 怒りのデス・ロード」。あぁ、最高の映像体験で、私、幸せ(笑)!

水や石油などの資源が尽き荒廃した近未来。元警官のマックスは妻子を殺されて絶望し、ただ本能だけで生きながらえていた。資源を独占し人々を恐怖で支配する凶悪なジョーの軍団に捕えられたマックスは、深い傷を負う。ジョーに反逆を企てる女隊長フュリオサ、全身白塗りの謎の男ニュークス、さらにジョーと敵対する勢力…。マックスは生き残るため、彼らと手を組み、ジョーの軍団に挑んでいくが…。

メル・ギブソンをスターにしたシリーズだが、トム・ハーディを新たな主役に据えての新シリーズのスタートだ。マックスとW主演ともいえるタフな女リーダーのフュリオサが、超大型戦闘車、ウォー・タンクに乗ってからは、ほぼノンストップのアクションが続くので、息つくヒマもない。生きる意欲のないものは容赦なく淘汰されるクレイジーな世界観は、完璧に突き抜けていて、これが70歳をこえるジョージ・ミラー監督の仕事とは!と恐れ入った。過去作でも監督を務めたミラーだが、明らかに本作の方が、自由で過激でマッド。「正気を失ったのは俺か、世界か?」のモノローグを聞いたときから、この映画の虜になる。様式美に満ちたアクションと、恋愛や友情などバッサリ切り捨てた潔いストーリー、CGに頼らない本物のカースタントの迫力。これほど圧倒的な刺激に満ちた映画なら“ランボー”チックでダサい副題のことは許す!過激な冒険活劇を褒めちぎるのはちょっと照れるが、映画館の大スクリーンで見るのに、これほどふさわしい映画があろうか。つべこべ言わずに劇場へGO!だ。
【85点】
(原題「MAD MAX: FURY ROAD」)
(オーストラリア/ジョージ・ミラー監督/トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、他)
(ハイテンション度:★★★★★)
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マッドマックス 怒りのデス・ロード@ぴあ映画生活

スノーホワイト

スノーホワイト Blu-ray & DVD (デジタルコピー付)スノーホワイト Blu-ray & DVD (デジタルコピー付)
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覚醒した白雪姫が邪悪な女王に挑戦状を叩きつける「スノーホワイト」。この話、王子サマなんていらないんじゃないの?!

恐ろしい魔法を操るラヴェンナ女王によって父王を殺され、城に幽閉されたスノーホワイト。自分より美しい彼女の心臓を食べれば永遠の若さと美貌を手に入れることができると知った女王はスノーホワイトを殺すチャンスを待っていた。隙を見て城を逃げ出したスノーホワイトは、女王の魔力が及ばない黒い森へと逃げ込む。自分を捕らえにきたハンターのエリックを味方につけ、剣や戦術を学んだ彼女は、たくましく生き抜く術を身につけるが…。

言わずと知れたグリム童話の「白雪姫」だが、本作は大胆にアレンジした“戦う白雪姫”の物語だ。王子様を待つプリンセスではなく、自ら甲冑に身を包むスノーホワイトは、森へ逃げ込んだ間に訓練を積み、兵士へと生まれ変わった。自分の命を狙う邪悪な女王から逃げても何も解決しない。ガチで勝負するしかないと決心した背景には、自分のために罪もない民が苦しめられ、自然が破壊されていると知ったから。このモチベーションの設定はなかなか上手い。映像がこれまた素晴らしいもので、女王が住む薄暗い城はあくまで不気味。一方で、スノーホワイトが世界を救うことができる救世主だと分かる森の場面は、幻想的で夢のよう。美術スタッフのセンスと高度なCGのおかげで、ビジュアルは見応えがある。新時代の白雪姫をクリステン・スチュアートが熱演するが、何しろ女王を演じるシャーリーズ・セロンが美しすぎて、完全に貫禄負けしてしまっている。悪役にも関わらず、その闇の心と悲しい出自、美への執着までも説得力があり、感情移入してしまうのは、セロンの高貴な存在感のため。この映画の主役はラヴェンナ女王だと言っても過言ではない。女性キャラのりりしさや迫力に対し、なんとも影が薄いのが男性陣だ。ハンターのエリックはスノーホワイトを助けはするが演出が中途半端だし、スノーホワイトの幼馴染のウィリアム王子に至っては、何のために存在しているのやらさっぱり分からない。ともあれ、オスカーを受賞した華麗でクールな衣装も含め、映像のマジックをたっぷりと堪能できるアクション・ファンタジーに仕上がった。
【65点】
(原題「SNOW WHITE AND THE HUNTSMAN」)
(アメリカ/ルパート・サンダース監督/クリステン・スチュアート、クリス・ヘムズワース、シャーリーズ・セロン、他)
(幻想的度:★★★★☆)
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スノーホワイト@ぴあ映画生活

ヤング≒アダルト

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まったく成長しないヒロイン像が新鮮な「ヤング≒アダルト」。美人女優のセロンが演じるからこそ説得力がある。

メイビスは37歳でバツイチ。美人で才能もあるが、仕事はゴーストライターで、執筆中のヤングアダルト(少女向け小説)シリーズは人気が落ち目で打ち切り決定。新作の予定もない。そんな冴えない日々を送るメイビスのもとに、高校時代の元カレのバディから、生まれたばかりの赤ん坊の写真付きのメールが届く。バディとヨリを戻せば、輝かしいあの頃のようにすべてが上手くいく!そう信じ込んだメイビスは、故郷の街に舞い戻るのだが…。

幸せな元カレを不幸せと決めつけた上に、自分と結ばれる運命だと断言して暴走する勘違い女メイビス。イタい。イタすぎる!彼女の頭の中は、若く美しい学園の女王だったティーン・エイジャー時代で足踏みしているのだ。だが面白いことに、最初は不快でしかないこの自分勝手なヒロインが、やがて哀切を帯び、最後にはちょっぴり共感さえ感じるようになる。それは、大人になるにつれて持たねばならない“良識とあきらめ”を、ヒロインが徹底して拒絶して、彼女なりの価値観で踏ん張っているからだ。嫌われ者なのに愛すべきキャラクターという難役を演じるのは、シャーリーズ・セロン。いつもは、よれよれのキティちゃんのTシャツ姿でも、ビシッと決めればまだまだイケる美女役を、コミカルに、でも堂々と演じて素晴らしい。飲み友達で冴えない男マットとのいびつな関係と、それさえスパッと突き抜けたメイビスのラストの決断は、彼女が執筆するヤングアダルト小説の中の少女の声を借りた、メイビス自身の決意表明に思えた。まったく成長しないヒロインという特異なキャラと、毒があるのに温かい物語を作り出したディアブロ・コディの脚本は今回は冴えている。「マイレージ・マイライフ」で他人と距離を置いて生きる現代人の姿を独特のセンスで描いたジェイソン・ライトマン監督との「JUNO/ジュノ」コンビは、やはり相性が抜群だ。
【70点】
(原題「YOUNG ADULT」)
(アメリカ/ジェイソン・ライトマン監督/シャーリーズ・セロン、パトリック・ウィルソン、パットン・オズワルト、他)
(イタい度:★★★★★)
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ヤング≒アダルト@ぴあ映画生活

映画レビュー「ザ・ロード」

ザ・ロード [DVD]ザ・ロード [DVD]
◆プチレビュー◆
荒廃した大地を旅する父と子のロード・ムービー「ザ・ロード」。淡々としてストイックな終末譚だ。 【65点】

 文明が崩壊し人類のほとんどが滅亡したアメリカ。僅かに生き残った人々が互いの人肉を食らう狂気の生き物と化す中、かすかな希望を求めて南を目指す父子がいた。父は幼い息子に、人間のモラルと生きる術を教えるが…。

 原作は、現代米国文学の雄コーマック・マッカーシーがピューリッツァー賞を受賞した同名小説だ。映画の舞台は文明を失って10年以上たった世界。なぜ世界が終ったのかという説明はいっさいない。人間に残された選択肢は、餓死か、自殺か、生存者に食い殺されるか。すでに理性を失くした者たちの蛮行だけがはびこる世界で生きる意味とは何だろう。主人公は息子に「私たちは“火”を運んでいる」と言う。この火とは、希望の灯(ともしび)の意味だ。物語は、一組の父子の旅をヒロイックな要素を排除して淡々と追っていく。
 
 “善き者”であろうとする父が息子に教えるのは、どれほど空腹でも自分たちと同じ人間を食べたりはしないというルールだ。道徳、理性、誇り。それを息子に何としても教えなければならない。さらに、他者だけでなく自分に対しても非情であれということも。父が息子に自殺の方法を教える様が痛ましい。

 ヴィゴ・モーテンセンと、息子役のコディ・スミット=マクフィーの、枯れた熱演が胸にしみる。父子の旅は悲痛なものだが、それでも時にはささやかな癒しの場面も。豊富な食料を見つけて喜ぶ場面もさることながら、自動販売機に残った缶コーラを初めて飲む息子が「おいしい」と目を輝かせる場面は、まるで闇夜に見る明かりように安らぐ瞬間だ。生まれて初めての飲み物コーラを見て「泡が立つんだね」と無邪気に驚く場面は泣けてくる。立ち上がっては消える泡にも似て、この息子は、はかなげで、無垢な存在だ。父子が共に歩いてきた道を離れて海を見た後、彼らには思いがけない運命が待つことになる。

 暗く重い雲に覆われた空、寒冷化が進んだ寒々しい空気、ボロをまとった野獣のような人間たち。こんな荒れ果てた画面の中に、ロバート・デュバルら、名優たちが一見それとはわからぬほどの姿で登場してくる。全員がホームレスのような有様の中、回想の中の母親役シャーリーズ・セロンは、あまりにも美しい。ただ、この母親が心を病み自ら死を選ぶ展開には、不満が残る。父親はなぜ強引にでも妻を引きとめないのか。妻と運命を共にするより息子との先の見えない旅を選ぶその訳に、何も説明はない。観客に委ねたのかもしれないが、ここは説得力のある理由がほしかった。 

 近年、数多く作られている終末映画の中でも、本作のドライなタッチは群を抜く。T・S・エリオットは、その詩「うつろな人間」で、人類が終末を迎えるその時を“これが世界の終わり方だ。世界はパーン!ではなく、メソメソと泣いて終わる”と綴っている。派手でも乱暴でもなく、ゆっくりとフェイドアウトしていく終焉にはヒロイズムもロマンティシズムも存在しない。この映画には人類滅亡というビッグ・イベントでさえも冷淡にみつめる達観したまなざしがある。主人公には、何ら特別の能力はない。その証拠に父も子も名前がない。だがそれ故に普遍的な“私たちの物語”になりうるのだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)絶望感度:★★★★☆

□2009年 アメリカ映画 原題「THE ROAD」
□監督:ジョン・ヒルコート
□出演:ヴィゴ・モーテンセン、コディ・スミット=マクフィー、ロバート・デュヴァル、他



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映画レビュー「ハンコック」

ハンコック エクステンデッド・コレクターズ・エディション [DVD]ハンコック エクステンデッド・コレクターズ・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
嫌われ者のスーパーヒーローという設定が新しい。前半は面白いのに後半失速するのが残念。 【65点】

 スーパーヒーロー・ハンコックは嫌われ者の困ったヤツ。人助けはするが勢いあまってビルや道路をメチャクチャにし、常に市民からヒンシュクを買っていた。酒好きでだらしない彼だが、偶然助けたレイからある提案を受ける…。

 人々の窮地を救うヒーローが非難されるという悲喜劇を、コミカルに見せる前半がとにかく楽しい。なぜか力加減ができないハンコックは、悪人退治に駆けつけるものの、着地に失敗して道路を破壊、建物をぶっ壊してブーイングをあびている。クジラを投げ飛ばして海に戻せば沖のヨットに命中して沈めてしまうし、車や列車を片手で持ち上げては大破させる。裏目に出るとか、世間に不満があるとか、そんな理由じゃない。要するに雑なのだ。力をもてあます子供のような男。それがハンコックである。

 その大きな子供は、記憶がない。超人パワーや不死身で歳をとらない理由はおろか、自分が誰なのかもわからない。アイデンティティーの喪失は孤独へとつながり、心はいつも寂しいというわけだ。そんな彼が偶然助けたのがPR会社の営業マンのレイだった。お人よしの彼は、命の恩人のハンコックに何とかお礼をと、イメチェンを買って出る。「誰からも愛される本当のヒーローにならないか?僕が手伝うよ」。まずは、礼儀正しく、相手を思いやり、身なりも整える。不本意なボディースーツを身にまとい、ギクシャクと正しいヒーローになっていくハンコックが、なんだか可愛くなる。

 前半はこのようにファンキーなヒーロー像をたっぷり堪能でき、まったく飽きない。だが後半ときたら、いきなりトーンダウンし別の映画のようなのだ。家族ぐるみのつきあいをしてくれるレイに、気がついたら病院に寝ていたことやそれ以来不死身になったことなど、自分の覚えている少ない過去をポツリポツリと語りはじめるハンコック。ここから、レイの美人妻メアリーが意外な形でからんでくる。これには正直驚くが、いきなりのシリアス・モードはいかがなものか。パワーダウンの理由や過去の秘密もはっきりしない。ヒップホップでノッていたスミスが、急にムード歌謡を歌いだすくらいの落差があり、すっかり調子が狂ってしまった。後半は怒涛のアクションもあるというのに、壮快感を失っていくストーリーがもったいなくて仕方ない。

 物語のバランスには納得できないものの、そんな時こそウィル・スミスである。92分の短時間だ。興行成績請負人でミスター・サマームービーの異名を取る大スターの魅力があれば十分と言わんばかりにぶっちぎる。実際、スミスほどヒーローがよく似合う男はいない。たとえヨレヨレの服装で、言葉使いが悪くても。たとえキレやすくて、空気が読めなくても。ちなみにヒーロー像は世相を表すという。はたしてハンコックの体現するものとは?ズバリ、型破りということだ。既成観念を打破する人物。私たちは現実でも映画でも、そんなヒーローを待っている。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)グッドジョブ度:★★★☆☆

□2008年 アメリカ映画 原題「HANCOCK」
□監督:ピーター・バーグ
□出演:ウィル・スミス、シャーリーズ・セロン、ジェイソン・ベイトマン、他

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映画レビュー「告発のとき」

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◆プチレビュー◆
イラクから帰還した息子の死の真相はまさに狂気。重い人間ドラマだが見応えがある。 【75点】

 2004年、元軍人警官のハンクは息子のマイクがイラクから帰還後に失踪したとの知らせを受ける。女刑事エミリーの助けを借りてマイクを探すハンクだったが、予想外の真実と息子の心の闇を知ることになる…。

 PTSD(心的外傷ストレス障害)という言葉がある。衝撃的な出来事がトラウマになり、後に様々なストレス障害を引き起こす心の病だ。原因は、地震、火事のような災害、事故、戦争といった人災、テロ、虐待、レイプなど犯罪による被害と、多様で複雑だ。この物語が描くのはイラク戦争の帰還兵を蝕む深刻なPTSDで、実際に起こった殺人事件が基だという。

 映画は、いなくなったマイクを探すミステリーとしてスタートするが、彼の行く末は早々に観客に明かされる。マイクはむごい殺され方で遺体となって発見され、そこから物語は犯人探しへと移行。調査の過程で、マイクがイラクで何を見、何をしたのかが明かされるあたりから、ストーリーは凄みを増していく。携帯の動画、ペットの虐待、悲痛な電話の声。計算された緻密な脚本によって、ジワリジワリと近づく望まない真実は、ボディーブローのように効いてくる。父親として軍人として、ハンクが知ることになる息子の姿はショッキングだが、マイクを殺した犯人の淡々とした告白はそれ以上の衝撃だ。「本当に申し訳ありません」と丁寧に謝るその目は、とっくの昔に死んでしまっている者のそれなのだ。正常な人間が戦場で暴力に呑み込まれ、狂気と共に帰国する。なぜこんな事が起こるのかと問うことさえ苦しくて出来ない。

 思えばアメリカ映画界には、自己告発や自己批判の伝統がある。特に戦争が人間性を破壊するとの主張はアメリカン・ニュー・シネマ以降、顕著だ。ベトナム戦争に行く前の訓練から殺人マシーンになってしまう「フルメタル・ジャケット」、湾岸戦争を真正面から取り上げた「戦火の勇気」など、枚挙に暇がない。だが、愚かで悲惨な争いは繰り返される。秀作映画がどれほど作られても、抑止力などないのだと思うとやるせない。トミー・リー・ジョーンズがいぶし銀の名演で演じる実直な父親ハンク同様に、米国の現実を思い知らされる。

 ただ、かすかな光を感じるとしたら、シングルマザーの女刑事エミリーと彼女の幼い息子の存在だ。男社会の中で奮闘するエミリーと、暗闇の恐怖を自ら克服しようとしている少年。この母子に希望を見出すことを、作り手はきっと許してくれるだろう。

 この映画には、分かりやすい答や救いはない。だが劇中に2度登場する、アメリカ国旗を揚げる場面が作品のメッセージを象徴している。逆さまの星条旗は、国家の救難信号の意味だ。米国は今、逆旗をあげねばならない状況にある。名手ポール・ハギスは大上段に構えて反戦を訴えず、あくまで個人の悲痛な体験をとらえた。救いを求める息子からの信号に応えられなかった父親の、深い絶望の表情にあらゆる思いを託して。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)やるせなさ度:★★★★★

□2008年 アメリカ映画 原題「IN THE VALLEY OF ELAH」
□監督:ポール・ハギス
□出演:トミー・リー・ジョーンズ、シャーリーズ・セロン、スーザン・サランドン、他

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スタンドアップ

スタンドアップ 特別版 [DVD]スタンドアップ 特別版 [DVD]
◆プチレビュー◆
ミネソタ州の寒々とした映像が素晴らしい。この北の国の雪景色は、まるで一人のキャラクターのように物語を引っ張る。でも劇中の女性イジメはヒドすぎ!

子どもを連れて故郷ミネソタにもどったシングル・マザーのジョージー。彼女は生活のために、賃金のいい鉱山で働き始めるが、男の仕事を女が奪うと考える労働者たちは、数少ない女性労働者に対し、時には企業ぐるみで壮絶ないやがらせを行う…。

セクハラやいじめとかいう言葉があるが、この映画のそれはそんな生易しいものではない。もはや虐待だ。実話をベースにしたこの物語の素材は、全米で初めて、企業を相手取って起こした、セクハラの集団訴訟。保守的な田舎町で、伝統や権力に対してNOという難しさは想像してあまりある。見ていてつらい場面も多いが、男女ともに目をそむけてはいけない。

物語は進行中の裁判を中心に、回想を交えて進んでいく。ジョージーが過去に受けた傷や家族との溝も含めて、彼女の過酷な人生とそれに負けない人間性を描くことで観客を映画に引き込んでいく。ニキ・カーロという監督は思った以上に実力者だ。さらに脇を固める“地味”系のオスカー女優たちが見事。この脇役の俳優たちが、フェミニズムの説教くささを消し、女性映画というよりも、全ての不正に対して立ち上がる人間のための物語にしてくれた。

典型的なハリウッド・ビューティーのシャーリーズ・セロンが「モンスター」に勝る熱演で、この汚れ役を演じている。結婚に失敗し実家に戻ったヒロインは、保守的な町では完全な異分子。容姿の良さを全面に出す場面もほとんどない。人生負け組の主人公は、同僚の女性からの協力もなく、孤立無援の中で立ち上がる。この孤独な姿がヒロインの勇気をより崇高なものにしている。

□2005年 アメリカ映画 原題「North Country」
□監督:ニキ・カーロ
□出演:シャーリーズ・セロン、フランシス・マクドーマンド、ウッディ・ハレルソン、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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