映画通信シネマッシモ


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

ジェイソン・ライトマン

とらわれて夏

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シングルマザーと心優しい逃亡犯の愛を13歳の息子の目を通して描く「とらわれて夏」。大人のラブストーリーであると同時に思春期の少年の成長物語でもある。

9月の“レイバー・デイ(労働祝日)”の週末を控えたアメリカ東部の静かな町。シングルマザーのアデルとその息子で13歳のヘンリーは、逃亡犯のフランクと出会い、半ば脅されて自宅にかくまうことになる。最初は互いに緊張していたが、フランクは2人に危害を加えないと約束。3人は次第に心を許しあい、アデルとフランクは恋に落ちる。やがて彼らは人生を変える決断を下すのだが…。

「ジュノ」や「マイレージ、マイライフ」のジェイソン・ライトマン監督が、こんなに直球のラブストーリーを作るとは意外な気がする。だが、不幸な出来事が原因で夫に捨てられ、情緒不安定になった母親アデルと、フラッシュバックから推察するに、これまた不幸な過去から罪を犯したであろう心優しい脱獄囚のフランクが惹かれあうプロセスを、少年の目を通して、憧れや嫉妬をにじませながら描くのは、人生の機微を語るライトマンらしい語り口だ。家を修理し、少年に野球を教え、料理上手なフランクは繊細だが包容力がある男性。彼が追われる身であるという境遇もあって、孤独なアデルの恋心に火をつける。だが大人の2人の恋はあくまでも静かだ。一方、思春期のヘンリーは、一筋縄ではいかない美少女との初恋を経験する。ウィンスレットとブローリンという演技派2人が抑制のきいたエロティシズムを漂わせ、さすがの上手さを見せるが、ヘンリーを演じるガトリン・グリフィスが実にいい。母親の幸せを願いながらも母をとられてしまうことへの嫉妬、少年特有の優しさ、そしてエゴを繊細に表現していた。ウィンスレットは脱ぎっぷりのいい女優だが、本作では脱がないのに、最高にエロティック。ピーチパイを作るシーンはとりわけ濃密だ。3人には皮肉な運命が待っているが、幸福感が漂うエピソードが用意されているのがうれしい。成長したヘンリーをトビー・マグワイアが演じ、短い出演時間ながら鮮やかな印象を残している。
【65点】
(原題「LABOR DAY」)
(アメリカ/ジェイソン・ライトマン監督/ケイト・ウィンスレット、ジョシュ・ブローリン、ガトリン・グリフィス、他)
(エロティック度:★★★☆☆)
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とらわれて夏@ぴあ映画生活

ヤング≒アダルト

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まったく成長しないヒロイン像が新鮮な「ヤング≒アダルト」。美人女優のセロンが演じるからこそ説得力がある。

メイビスは37歳でバツイチ。美人で才能もあるが、仕事はゴーストライターで、執筆中のヤングアダルト(少女向け小説)シリーズは人気が落ち目で打ち切り決定。新作の予定もない。そんな冴えない日々を送るメイビスのもとに、高校時代の元カレのバディから、生まれたばかりの赤ん坊の写真付きのメールが届く。バディとヨリを戻せば、輝かしいあの頃のようにすべてが上手くいく!そう信じ込んだメイビスは、故郷の街に舞い戻るのだが…。

幸せな元カレを不幸せと決めつけた上に、自分と結ばれる運命だと断言して暴走する勘違い女メイビス。イタい。イタすぎる!彼女の頭の中は、若く美しい学園の女王だったティーン・エイジャー時代で足踏みしているのだ。だが面白いことに、最初は不快でしかないこの自分勝手なヒロインが、やがて哀切を帯び、最後にはちょっぴり共感さえ感じるようになる。それは、大人になるにつれて持たねばならない“良識とあきらめ”を、ヒロインが徹底して拒絶して、彼女なりの価値観で踏ん張っているからだ。嫌われ者なのに愛すべきキャラクターという難役を演じるのは、シャーリーズ・セロン。いつもは、よれよれのキティちゃんのTシャツ姿でも、ビシッと決めればまだまだイケる美女役を、コミカルに、でも堂々と演じて素晴らしい。飲み友達で冴えない男マットとのいびつな関係と、それさえスパッと突き抜けたメイビスのラストの決断は、彼女が執筆するヤングアダルト小説の中の少女の声を借りた、メイビス自身の決意表明に思えた。まったく成長しないヒロインという特異なキャラと、毒があるのに温かい物語を作り出したディアブロ・コディの脚本は今回は冴えている。「マイレージ・マイライフ」で他人と距離を置いて生きる現代人の姿を独特のセンスで描いたジェイソン・ライトマン監督との「JUNO/ジュノ」コンビは、やはり相性が抜群だ。
【70点】
(原題「YOUNG ADULT」)
(アメリカ/ジェイソン・ライトマン監督/シャーリーズ・セロン、パトリック・ウィルソン、パットン・オズワルト、他)
(イタい度:★★★★★)
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ヤング≒アダルト@ぴあ映画生活

映画レビュー「マイレージ、マイライフ」

マイレージ、マイライフ [DVD]マイレージ、マイライフ [DVD]
◆プチレビュー◆
人との大切なつながりはマイルには換算できない。クルーニーの演技が味わい深い秀作。 【85点】

 敏腕リストラ宣告人のライアンは、面倒な人間関係を避け、効率良く人生を生きてきた。年間322日も出張しマイレージを貯めることが唯一の生きがいの彼だったが、ある日、ネット世代の新人ナタリーの教育係に任命される…。

 主人公ライアンは“バックパックに入らない荷物は背負わない”がモットー。リストラ宣告で相手と向き合い、巧みな話術で解雇を納得させ希望を与えはするものの、罪悪感はほとんどない。淡々と上手く仕事をこなして次に行く。こんなライアンと、地上に足がついていない分だけ貯まる数字マイレージの組み合わせとは、何とも上手いメタファーではないか。「JUNO/ジュノ」で非凡な才能を見せ付けたジェイソン・ライトマン監督は1977年生まれとまだ若いが、意表を突く素材とユーモラスな語り口で問題提起する才能に長けている。

 ライアンという人物の面白さは、人を切る非情な仕事をしながら、あくまでも“軽く”生きる男だということ。彼は決して悪人ではなく、他者と深く係わらないのは、予め自分を防御するバリアを張っているからに他ならない。空港やホテルで無駄なく動き、スマートにキメているつもりのライアンの、滑稽なまでのこだわりを見ていると、彼もまた社会の犠牲者に思えてくる。

 そんな彼をピンチに陥らせるのは、ネットでリストラを宣告することで経費が節減できると提案するドライな新人ナタリーの出現だ。解雇宣告人の自分が切られるかもしれない危機感よりも「それでは出張がなくなりマイルが貯まらない!」との憤りの方が先に立つから可笑しい。切実な思いを抱いてナタリーと行動を共にしながら、ライアンは次第に自分の人生を見つめ直すことになる。さらに同じ出張族の女性アレックスとの出会いから、家族の存在を意識することに。気楽な生活を理想としてきた彼が、空っぽのバックパックに何かを入れたいと思い始めたそのとき、地に足を付けたものだけが感じる痛みが訪れる。

 映画は、リストラそのものを批判せず、インターネットを含むデジタルの世界を否定もしない。フォ−カスしているのは人間の危機的思考だ。マイレージのように、私たちは人生の多くの要素をデジタル化された数字に置き換えてしまってはいないか。リストラを見極めるのは成績という数字だし、ポイント生活による消費の連鎖は依存症をも生むだろう。現代社会は便利なはずのツールにいつしか縛られている。私たちの内部にも“小さなライアン”がいる。そのことに気付けば、荷物を背負う力はまだ健在と思っていい。

 それにしてもジョージ・クルーニーは素晴らしい俳優だ。ハリウッドでもとびきりのイイ男であることは言うまでもないが、2枚目なのに3枚目の味もあり、自信に満ちてゴージャスでありながら、どこか空虚な影を感じさせる。こんな風情を感じさせる役者は、マルチェロ・マストロヤンニ以来ではなかろうか。ラスト、空港で行き先を告げるボードを見上げるクルーニーの複雑な表情は絶妙だ。これから先の人生の行き先はライアンにも観客にもまだ分からないが、立ち止まったことで確実に見えた何かがある。あくまでも軽やかなタッチで、それでいて鋭い同時代性を湛え、深い余韻に満ちた映画に出会うことは、劇中に登場する超特権カード“コンシェルジェ・キー”級に貴重なことだ。見事な脚本の人間ドラマは、米映画の伝家の宝刀なのである。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ペーソス度:★★★★☆

□2009年 アメリカ映画 原題「UP IN THE AIR」
□監督:ジェイソン・ライトマン
□出演:ジョージ・クルーニー、ヴェラ・ファーミガ、アナ・ケンドリック、他

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映画レビュー「JUNO/ジュノ」

JUNO/ジュノ <特別編> [DVD]JUNO/ジュノ <特別編> [DVD]
◆プチレビュー◆
10代の少女の望まない妊娠を、微塵の暗さもなく描く快作。里親制度も含め、日本との違いが面白い。 【85点】

 興味本位のセックスで妊娠してしまった16歳のジュノ。中絶は思いとどまり、親友の力を借りて、養子を希望しているヴァネッサとマークという夫婦を見つけて里親の話をつける。それからジュノと周囲の人々の珍騒動が始まった…。

 望まない妊娠を描く映画は、シリアスになりがちだ。だが本作には、重苦しい空気はまったくない。風変わりな高校生ジュノのあっけらかんとした態度にとまどうやら笑うやら。でもそんな彼女の内面にも実は色々な葛藤があって…。この内側の悩みと外側の軽味の絶妙なバランスが、リズミカルで心地よい。

 何しろ、主人公ジュノが素晴らしくユニークで魅力的なキャラなのである。みんなと一緒が安心の没個性文化の日本では、なかなかこんな女の子には出会えない。妊娠という一大事に対するジュノのビジョンは「これは自分の責任」と腹をくくること。暴言すれすれの発言だって、彼女流のクールな決意表明なのだ。やせ我慢を含むにしても、相手に責任など求めず、泣き言も言わない。実に根性が座っている。娘の妊娠を知った両親が、彼女や相手を責めず、養子に出すという娘の決断を尊重する姿も、日本と違って大いに感心させられる。親と子の関係は、この映画を理解する重要アイテムだ。

 この物語には、いくつかの形の親が登場する。実の父と義理の母。二人は共に娘を愛している。さらにジュノが新聞広告で見つけた“親として理想的な”夫婦。里親制度の普及と利用法は、現実的でいかにもアメリカ風だ。弁護士立会いで書類を作り、テキパキと物事を決定する。とはいえ、すべてがドライに処理されるわけではない。理想的と思った夫婦の意外な姿が見えてくるあたりが、この作品の非凡なところだ。ホラー映画やパンクロックの話で盛り上がるマークとジュノの微妙な関係を見せつつ、子供を切望するヴァネッサの切なさを語ることも忘れない。ヴァネッサがジュノのおなかを触る場面は、女同士の母性のつながりを感じさせるものだ。それを伏線にジュノの勇気ある決断へとつなげていく巧みな展開にうなる。予定外のことが起こった時、何を最善とするか。観客も主人公と一緒に考えることになろう。

 簡単に先を読ませないヒネリの効いたストーリーを生み出したのは、新鋭脚本家ディアブロ・コーディ。元ストリッパーという超変わり種だ。主演のエレン・ペイジとジェイソン・ライトマン監督と共に、三位一体で観客の心をつかむ。センスのいい音楽やポップなアニメなど、魅力は尽きないが、サラリと描くのは、人が大人になる時に味わう痛みと優しさだ。見かけによらず懐が深い。

 最終的にはジュノの隣には誰がいるのだろうか。確かなのは、周囲の愛情と、やっと見えてきた本当の自分の気持ちだ。父親が言う「今度は自分のためにここ(産院)に来るんだよ」という言葉がグッとくる。もはや血縁だけでは家族を構成できなくなった米国社会。その片隅で奮闘する愛すべき女の子ジュノ。この物語は、そんな少女の心のアドベンチャーなのだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)音楽センス度:★★★★★

□2007年 アメリカ映画 原題「JUNO」
□監督:ジェイソン・ライトマン
□出演:エレン・ペイジ、マイケル・セラ、ジェニファー・ガーナー、他

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