映画通信シネマッシモ


映画通信シネマッシモは、2018年4月をもって、終了しました。

ブログ終了にあたり、たくさんのあたたかいコメントをお寄せいただき、本当にありがとうございました。
皆さまの映画ライフに少しでもお役に立てたならこれほど嬉しいことはありません。
長い間のご愛顧に心より感謝いたします。

ジェシカ・チャステイン

ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命

The Zookeeper's Wife [Blu-ray](Import)
1939年、ポーランド。ワルシャワで動物園を営むヤンとアントニーナの夫婦は、愛する動物たちと共に暮していたが、迫りくるナチス・ドイツの侵攻に大きな不安を感じていた。やがて動物園の存続も危うくなるが、街でナチスがユダヤ人を弾圧するのを見て、ヤンは動物園にユダヤ人をかくまうことを決め、アントニーナも賛成する。強制居住区域に暮らすユダヤ人たちを救い出しては動物園にかくまう夫婦だったが、ナチスの監視の目は次第に厳しくなり、夫婦も危険にさらされていく…。

ナチス占領下のワルシャワで、300人ものユダヤ人をかくまった動物園オーナー夫婦の実話「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」。ナチスの暴挙に抵抗したレジスタンス映画であると同時に、人間も動物も、生きとし生けるものすべてを愛する夫婦の絆を描くヒューマンドラマでもある。人間が勝手に起こした愚かな戦争の犠牲になって命を落とす動物たちの描写は、見るのもつらいが、だからこそ動物園を使ってユダヤ人を救う行為に大きな意味が立ち上ってくる。理由もなく迫害される者の存在は、いつの時代にも存在するが、その反面、自らの身を危険にさらしてでも正しいことを行おうと奮闘する人間もまた、確かに存在したのだ。本作は、いわゆる美談の感動物語なのだが、特別な能力や武器など持たないヒロインが見せる勇気は、現代を生きる私たちを励ましてくれる。

劇中では、かつてポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督が描いた、ユダヤ人孤児たちを助けようとした小児科医で作家、教育者であるコルチャック先生も登場し、実話の本作にさらに深みを与えている。動物好きで優しく美しいアントニーナは、快活で愛情深い妻・母だが、同時に知的で機転もきく人物。何より信念を持つ素晴らしい女性だ。そんな実在のアントニーナ・ジャビンスカを演じるのが、今、最も旬な演技派女優の一人ジェシカ・チャステイン。パワフルなCIAエージェントや有能なロビイストの力強さとはまた別の、悲しみを内包した繊細な表情を見せてくれる。やはりこの人は上手い。
【70点】
(原題「THE ZOOKEEPER’S WIFE」)
(チェコ・英・米/ニキ・カーロ監督/ジェシカ・チャステイン、ヨハン・ヘルデンベルグ、ダニエル・ブリュール、他)
(勇気度:★★★★★)
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女神の見えざる手

Miss Sloane [Blu-ray]
敏腕ロビイスト、エリザベス・スローンは、銃の所持を支持する仕事を断り、大手ロビー会社から、銃規制派の小さな会社に数人の部下を連れて移籍する。莫大な財力を誇る敵陣営に、卓越したアイデアと強気の決断力で立ち向かうエリザベスだったが、やがて彼女の赤裸々な私生活が露見し、さらには彼女の部下を巻き込んだ予想外の事件が発生。事態が悪化し、絶体絶命のピンチに陥ってしまう…。

政府や世論を影で動かす戦略のプロで天才ロビイストのヒロインの闘いを描く社会派サスペンス「女神の見えざる手」。ロビイストとは、特定の主張を有する個人または団体の利益を政治に反映させるために、 政党・議員・官僚などに働きかけることを専門とする人々のこと。主人公エリザベスは花形ロビイストで、真っ赤なルージュ、高級ブランドの服、ハイヒールといういでたちで、敵だけでなく味方さえも欺く戦略の天才だ。ワーカホリックで寝る時間も惜しんで働き、恋愛はエスコートサービスで合理的に済ませるという、あまりに好戦的なこのヒロインに共感するのが最初は難しいかもしれない。だが、したたかで巧妙な彼女の手段は時にダークでも、その信念は気高いことに気付いた時、エリザベスが“女神”に見えてくる。

演技派のジェシカ・チャステインが「ゼロ・ダーク・サーティ」よりさらにパワフルな女性を怪演に近い熱演で演じて魅力的だが、脇を固める役者もマーク・ストロング、ジョン・リスゴー等、渋いキャスティングなのがいい。「恋におちたシェイクスピア」などのジョン・マッデン監督の演出は、すこぶるテンポが良く、裏切りやどんでん返しを繰り返しながら、132分を一気に駆け抜け、飽きさせない。欲を言えば、先を読み、罠をしかけ、切り札を隠し持つエリザベス・スローンの、プライドとストレスでせめぎ合う心の内(うち)をもう少し見たかった気がする。銃規制法案というタイムリーな話題、聴聞会のシーンから過去を紐解く語り口の上手さ、政治の腐敗の内幕までも見せてくれる、良質な社会派ムービーだ。同時に、現実社会でこれほど銃乱射事件が頻発し犠牲者が出ても、アメリカが銃社会であり続ける複雑な事情が伝わってきてやるせない。
【70点】
(原題「MISS SLOANE」)
(アメリカ/ジョン・マッデン監督/ジェシカ・チャステイン、マーク・ストロング、ジョン・リスゴー、他)
(辛辣度:★★★★★)
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アメリカン・ドリーマー 理想の代償

アメリカン・ドリーマー 理想の代償 [DVD]
1981年のニューヨーク。モラルを失くしたつぶし合いと競争が当たり前のオイル業界で、クリーンなビジネスを展開し成功を収めた移民のアベルと妻のアナは、さらなる事業拡大のために、土地購入の頭金として全財産を投入する。だが、直後に彼らの成功を阻止しようとする何者かによってオイルが強奪される事件が発生。さらに、脱税や家族への脅威など、次々に難題が降りかかり、ついに銀行からの融資も断られた上、信頼し合っていた夫婦間にも亀裂が生じてしまう。孤立無援でトラブル解決のために奔走するアベルだったが、破産までの期限は、わずか30日しかなかった…。

オイルビジネスに参入した実業家夫妻の苦悩を描く「アメリカン・ドリーマー 理想の代償」。1981年という年は、暴力が氾濫し、史上もっとも犯罪件数が多かった恐ろしい年だ。クリーンなビジネスを信条とし銃で防衛することを拒否するアベルに対し、ギャングの父親を持ち、会社の経理を担当する妻のアナは「これは戦争よ」ときっぱりと断言する。この物語は誰もが手を汚して生きる時代に、誠実に正義を貫くことは可能なのかと問いかけるものだ。移民であるアベルは自分だけの力で手にするアメリカン・ドリームにこだわっているかに見える。一方で、アナは汚れてしまった現実を冷静に直視している。アベルの理想がどういう形で変質していくかを、静かでドライなタッチで描く物語では、劇的な演出はほとんどない。あえて人間の複雑な心理に寄り添っているので、派手さはないが、玄人好みのドラマに仕上がっている。監督のJ・C・チャンダーは「マージン・コール」では金融界を、「オール・イズ・ロスト 最後の手紙」では海での遭難を描いたが、共通するのは、ちっぽけな人間の懸命なサバイバルだ。犯罪が横行するオイル業界でのサバイバルは、単なる善悪や敵味方では分けられない、苦く曖昧な境界線を越えねばならない。理想と現実の間で苦悩する男をオスカー・アイザックが静かに熱演。寒々しい冬の風景が、崩れ去ったアメリカン・ドリームを象徴していた。
【70点】
(原題「A MOST VIOLENT YEAR」)
(アメリカ/J・C・チャンダー監督/オスカー・アイザック、ジェシカ・チャステイン、デヴィッド・オイェロウォ、他)
(劇的度:★★☆☆☆)
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映画レビュー「ゼロ・ダーク・サーティ」

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◆プチレビュー◆
ビンラディン殺害の裏側を描く「ゼロ・ダーク・サーティ」。ヒロインのラストの表情が報復の連鎖の虚しさを物語る。 【80点】

 ビンラディンの行方をつかめないCIAは、人並み外れた情報収集力と分析力を誇るノン・キャリアのマヤを捜索チームに加える。捕虜の証言や現場証拠から核心に迫ろうとするが、成果は上がらない。そんなある時、親しい同僚が自爆テロに巻き込まれて死亡。それを機に、マヤは狂気にも似た執念でビンラディン暗殺という職務にのめりこみ、ついに潜伏先を特定する…。

 テロ組織アルカイダの指導者にして、9.11同時多発テロの首謀者とされるオサマ・ビンラディン。彼の捕縛・暗殺作戦は、2011年5月2日に実行され、オバマ大統領は「正義はなされた」と勝利宣言を発表した。だがその作戦の詳細は、長らく明らかにされなかった。この作品では、米国側の情報収集の実態と、作戦の中心人物がCIAの若き女性分析官だったという驚きの事実が描かれる。

 驚きとはいっても、世紀の暗殺劇の結末は世界中が知っているし、ストーリーの大筋は、ビンラディンという悪者を正義のアメリカが成敗するという大捕物にすぎない。それでもこの映画の重量感と緊張感はズバ抜けているし、問題を含む現代史をハリウッドがエンターテインメントとして昇華する“自由度”には、いつもながら感心させられる。何より、きわめて政治的な題材を、マヤという一人の若い女性分析官の変貌を通して描く、語り口が優れている。

 映画冒頭、現場に到着したマヤは、非人道的な拷問に立ち会い、思わず目を背ける。だが、巨費を投じても一向に成果が上がらない作戦の中、同僚の死がマヤを変えた。青い瞳と白い肌の、どこか線の細い美女は、上官に噛み付き、CIA長官にも物怖じせず、冷徹な判断でビンラディンの居所を突き止め、自信たっぷりに精鋭部隊の米海軍特殊部隊(ネイビーシールズ)を動かして、殺害作戦を実行していくのだ。この映画は、非常に特殊な状況ながら、男社会で生き抜く一人の女性の“成長”を描いた物語でもある。

 ヒロインのマヤを演じるのは、映画女優としては遅咲きながら、その演技力が高く評価されるジェシカ・チャステインだ。本作では、マヤの執念と葛藤をドライで抑えた演技で、見事に演じきった。特にラスト、一人飛行機に搭乗した時のうつろな表情は絶品。すべてが終わった後に、報復の不毛や、これからも続くテロとの戦いの虚しさが、彼女の複雑な表情から浮かび上がった。

 タイトルは午前0時半を意味する米軍の専門用語。ネイビーシールズがビンラディンの潜伏先に突入した時刻を指す。映画で描かれるCIAの活躍はどれも派手で、ヒロイックなものが多いが、リアル志向の本作では、地味で地道な情報分析が中心で、突入作戦のクライマックスさえも、カタルシスとはほど遠い。マヤの執念は、テロを聖戦と信じるテロリストに打ち勝つためには、自らも狂気に身を投じるしかないと訴えている。つくづく空恐ろしい作品だ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)緊張感度:★★★★☆

□2012年 アメリカ映画 □原題「ZERO DIRK THIRTY」
□監督:キャスリン・ビグロー
□出演:ジェシカ・チャステイン、ジェイソン・クラーク、ジョエル・エドガートン、他
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