映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

ジェット・リー

海洋天堂

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自閉症の息子を持つ父親の深い愛情を描く物語。ジェット・リーがノー・アクション、ノー・ギャラで出演している。

中国、チンタオ。水族館に勤めるシンチョンは、妻に先立たれ、自閉症の息子ターフーを男手ひとつで大切に育ててきた。そんな彼は、ある日、自分が末期ガンで余命わずかだと知る。自分がいなくなった後、ターフーはどうなるのか。シンチョンはターフーが一人でも生きていける術を何とか教えようとするが…。

監督のシュエ・シャオルーは、14年間にわたる自閉症施設でのボランティア活動の経験があるという。患者と家族のことを知り尽くした人だからこそ、その視線は厳しさと愛情に満ちている。冒頭、自分と息子の両方の足に縄を結び海へ投身自殺しようとする場面は、見るものの胸を打つ。心中まで考えるシンチョンには、息子を残して逝くのが、自分が死ぬことよりもつらいのだ。だがターフーは泳ぎが得意で入水自殺には失敗。それからはターフーを預かってくれる施設を探し一人でも生きていけるよう、さまざまなことを教える日々が始まる。卵の割り方、バスの乗り方、モップのかけ方。日常のディテールがとても丁寧で、生きることそのものの尊さが伝わってくる。そんな名もない市井の人を演じるのが世界的なアクション・スターのジェット・リーなのだから、これは彼の演技開眼の作品ともいえよう。時に優しく、時に厳しく。強い絆で結ばれた父子の残りわずかな日々が切なくも美しい。演出は抑制されていて、余命ものにありがちな過剰な“泣き”が入らないところが好感が持てる。名撮影監督クリストファー・ドイルによる青い水のイメージが印象的で、作品全体を覆う穏やかなトーンとなっている。
【65点】
(原題「海洋天堂」)
(中国/シュエ・シャオルー監督/ジェット・リー、ウェン・ジャン、グイ・ルンメイ、他)
(親子愛度:★★★★★)
チケットぴあ


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海洋天堂@ぴあ映画生活

映画レビュー「エクスペンダブルズ」

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◆プチレビュー◆
アナログ感覚で勝負する豪華キャストのアクション映画。悪役に大スターがいないのが惜しい。 【50点】

 バーニーは最強の傭兵軍団“エクスペンダブルズ”のリーダー。ナイフの達人のリーやマーシャルアーツの天才のヤンらと共に危険な仕事をこなしてきた。ある日、謎の人物から、南米の島国ヴィレーナで圧政を敷いている独裁者の殺害依頼が舞い込むが…。

 監督・脚本・主演を務めるシルベスター・スタローンが、映画界でいまだアクション俳優のトップとしてリスペクトされていることが、この作品で証明された。何しろ、彼のツルの一声で、主演級のスターたちが大集合している。スタローンの脇を固めるのは、ジェイソン・ステイサムとジェット・リー。ブルース・ウィリスと現カリフォルニア州知事のアーノルド・シュワルツェネッガーの二人がアクションを披露しないのは残念だが、その代わりに格闘界からスターが参加して暴れまくる。よくまぁこれだけの面子が揃ったものだ。この映画、全員がセンター・フォワードのサッカーチームのようで、無論、フツーの試合、すなわち物語重視の作品は成り立たない。

 独裁者をやっつけるために大暴れ。ストーリーを説明するならばこれだけで事足りる。一応、CIAがらみの陰謀はあるものの、そのことを深く追求するわけでもない。一応、島の下調べには行くものの、本番に向けての上手い作戦があるわけでもない。いいのか、これで?! いいのである!目的は各々のスターに見せ場を用意しつつ、シンプルな勧善懲悪で溜飲を下げること。ヘタに複雑な物語などないほうが気分がいい。アクションは、これまたいまどき珍しいほどアナログ感覚に満ちていて、CGやワイヤーアクションはいっさいなし。肉弾戦と火薬が炸裂し、陸、海、空と縦横無尽に飛び回る。

 男臭い豪華キャストの中で、ひと際おいしい役は、刺青師ツール役のミッキー・ロークだ。元エクスペンダブルズの最強戦士で、今はバーを経営する彼は、皆が疲れた体を癒す港のような存在だ。争いの虚しさを誰より知るツールだが、それでも戦わずにはいられない男たちを温かく見守っている。だからこそ、女に裏切られたとき、友と決別するとき、命懸けの仕事を追えたとき、エクスペンダブルズはここに帰ってくる。自身も元ボクサーだったロークは、やろうと思えばアクションもこなせただろう。だが“静”に徹したことが逆に筋肉合戦の娯楽作の中で、いぶし銀のように光った。残念なのは、悪役にスタローンと同等レベルの俳優を配せなかったこと。ドルフ・ラングレンが一瞬“狂う”が、結局は…という程度では物足りない。やはり魅力的な悪役がいてこそヒーローは輝くものだ。いくら単純な物語でも、そこだけは押さえてほしかった。

 エクスペンダブルズとは消耗品の意味だ。老いたりとはいえスタローン健在を印象付けた夢の競演、これだけのコマは二度とは揃わないかもしれないが、続編の期待は高まる。大味だが目的がはっきりしているこういうアクション映画こそ活劇の醍醐味。日常のモヤモヤなど、どこかへ吹っ飛ばしてくれる。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)命知らず度:★★★★★

□2010年 アメリカ映画 原題「THE EXPENDABLES」
□監督:シルヴェスター・スタローン
□出演:シルヴェスター・スタローン、ジェイスン・ステイサム、ジェット・リー、ミッキー・ローク、他


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エクスペンダブルズ@ぴあ映画生活

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ウォーロード/男たちの誓い

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ラブストーリーのイメージのピーター・チャン監督の映画とは思えないほど、骨太で男っぽい作品だ。19世紀、内乱状態の中国で、義兄弟の契り“投名状の誓い”を結んだ男たちの、友情と裏切りのドラマが展開する。ジェット・リー、アンディ・ラウ、金城武という豪華スターの競演だが、アクションよりも複雑にからみあう人間ドラマが中心。3人の信念、野心、嫉妬、愛などの悲痛な思いが、すべて清朝の重臣たちのコマとして利用され、友情と絆が壊れていくのが哀しい。実話に基づくが、権力志向のパン将軍と元盗賊のアルフの間で揺れる純粋なウーヤンの視点が、物語にロマンと悲哀を加えている。名手ジェット・リーのアクションの見せ場は少ないが、その分、彼の確かな演技力が確認できる。ワイヤーアクションに頼らない、リアルで血生臭い戦闘シーンは迫力たっぷりだ。
【70点】
(原題「THE WARLORDS/投名状」)
(香港・中国/ピーター・チャン監督/ジェット・リー、アンディ・ラウ、金城武、他)
(男気度:★★★★☆)

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ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝

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冒険家にとって何よりも怖いのは退屈すること。この映画の作り手こそまさにそれで、観客を退屈させまいと、てんこもりの活劇を用意してくれた。1946年、リックとエヴリン夫妻は伝説のダイヤに導かれ、呪われた皇帝のミイラと対決する。“旬の場所”中国を舞台にした時空を越えたバトルは、ありえない展開の連打だが、パンチの効いたギャグが楽しい。残念なのは、妻役がレイチェル・ワイズではないこと。見せ場が多すぎてメリハリは薄いが、ここまでサービスされたら奇想天外なアドベンチャーを楽しむしかないだろう。
【65点】
(原題「The Mummy: Tomb of the Dragon Emperor」)
(アメリカ/ロブ・コーエン監督/ブレンダン・フレイザー、マリア・ベロ、ジェット・リー、ミシェル・ヨー、他)
(ユーモア度:★★★★☆)

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ドラゴン・キングダム

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夢のタッグとはまさにこのこと。不思議な如意棒に導かれ古代中国にタイムスリップしたジェイソンは、武道の達人2人と共に冒険の旅に出る。ジャッキー・チェンとジェット・リーが一歩も引かず繰り広げるバトルは、フレッド・アステアとジーン・ケリーの競演にも似て華麗だ。だが見所は2大スターの競演のみ。一人二役などお得感はあるものの、お話は単純なので、いっそ主人公の米国人青年はいらないとさえ思える。ジャッキーの酔拳が懐かしい。
【60点】
(原題「THE FORBIDDEN KINGDOM」)
(アメリカ/ロブ・ミンコフ監督/ジャッキー・チェン、ジェット・リー、マイケル・アンガラーノ、他)
(アクション満喫度:★★★★★)

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ローグ アサシン

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東西アクション・スターの激突が売り物のこの作品、日本の描写が笑いどころで、マニアックな珍作だ。熱血FBI捜査官と伝説の殺し屋ローグの対決を描くが、終盤に驚きが用意されている。ミステリー要素を前面に出したためジェット・リーの華麗なアクションが少ないのが残念。怪しげな中国マフィアに扮するのはお久しぶりのジョン・ローンだ。ステイサムのおかしな日本語がかなりウケる。もしやコメディなのか?!
【65点】
(原題「War」)
(アメリカ/フィリップ・G・アトウェル監督/ジェット・リー、ジェイソン・ステイサム、ジョン・ローン、他)
(日本国辱度:★★★★☆)

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HERO

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◆プチレビュー◆
久しぶりに故国に凱旋したJ.リー。初めて彼を“美しい”と感じた。ただ、中国全国武術大会総合優勝の実力を誇る彼が、ほとんどワイヤー・アクションで演じているのは、ちょっと残念。地に足をつけて闘っても強いというのに。

7つの国が覇権を争う紀元前の戦乱の中国。後に始皇帝となる秦王のもとに謎の刺客“無名”が謁見に現われる。各国が放つ刺客の中でも最強の3人を倒したというその男は、秦王に問われるままに、どのように彼らと対峙したかを語り始めた…。

一つの真実に対して証言が食い違い、謎が深まっていく物語展開を黒澤明監督の傑作「羅生門」に敬して羅生門スタイルと呼ぶが、本作もまさにこの形を踏襲している。無名の報告、秦王の推理、無名による真相告白と推移し、幾重にも謎が広がって、最後になされる選択へと導くミステリー仕立てだ。始皇帝の暗殺では、実在の荊軻が有名だが、本作はさしずめ“始皇帝暗殺・外伝”と言えよう。

槍の名手の長空と棋館で闘う場面は黒、恋人同士の刺客、残剣と飛雪を嫉妬を利用して倒した物語では赤。更に、青、緑、白とそれぞれの場面をテーマカラーで統一し、極彩色で壮麗に展開。オペラの演出も手がけるイーモウ監督の色彩へのこだわりは、「紅夢」「菊豆」などの、初期の情念溢れる作品群にも表れていた。ここではそれを更に飛躍させ、あきれるほど手が込んだ舞台セットとロケを用いて画面の隅々まで芸術の香りを漂わせている。大金を投じたであろう物量作戦で、弓矢の雨は空を黒く染め、黄金色の銀杏は瞬時にして真紅に染まる。シビれる映像美だ。

C.ドイル、ワダエミ、T.ドゥン、鼓童など、出演俳優陣だけでなく、アジア各国からエキスパートを集めた上に、アクションは「マトリックス」のCGスタッフによるVFX。中国映画の世界進出の決意表明のようなメンバーだ。彼らを束ねるには、中国政府に批判的な作品で国際的知名度のイーモウ監督しかいない。近年はハートウォーミングな作風だっただけに、初のアクション映画ではワイヤーアークのやり放題。そんなバカな…の連続のハジケッぷりに、もしや長年たまっていたものでもあったかといらぬ心配までした。しかし、さすがは撮影監督出身。東洋的美意識に基づき、リアリティよりビジュアルに比重をおいた作りで、舞踏のようなアクションは、すこぶる情緒がある。

無名の語る武勇伝の矛盾を秦王がつく度に物語は二転三転し、少しずつ真実へと歩み寄る。残忍なイメージの始皇帝を、諸国を統一し民の平和を願う人物としてアプローチしているのが新鮮だ。この設定には中国本国では非難が多いと聞くが、物語は歴史フィクション。紀元前のことで、いちいち言い掛かりをつけているようでは、映画は楽しめない。ただ、秦王が立ち回りを演じる場面には疑問が残った。語られる武勇伝の中、刺客のアクションの“動”に対し、秦王の“静”が素晴らしい対比をなしているのに、王自らが暴れてはせっかくの効果が弱まってしまう。

武侠映画でありながらギリシャ古典劇を思わせる演出で、色彩のパズルの中に登場人物の感情を埋め込んでいる。現代にも通じる真理を最後に配し、全体に薄いドラマ性とのバランスをとって平和へのメッセージをも込める趣向は、イーモウ監督らしい。この作品でチャン・イーモウという監督を再認識した人も多いだろう。彼自身の映画のテリトリーも広がり、次回作が大いに楽しみである。

□2002年 中国映画  原題「HERO/英雄」
□監督:チャン・イーモウ
□出演:ジェット・リー、トニー・レオン、マギー・チャン、他

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古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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