映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ジャスティス・リーグ」「火花」「ギフテッド」「光」etc.

ジェニファー・ジェイソン・リー

グッド・タイム

Good Time… Raw [解説付 / 国内限定盤CD] (BRC561)
ニューヨークの最下層で生きる若者コニーは、知的障害の弟ニックと銀行強盗を企てる。だが、強盗は失敗に終わり、途中でニックが警察に捕まってしまう。ニックは刑務所の中でいじめられた末に暴れて大怪我を負い、病院に送られることに。逃げ延びたコニーは、ニックを救おうと奔走するが、保釈金が用意できず、病院に忍び込んで何とか弟を取り戻そうとする。だが思いがけない事態に遭遇し、コニーは次第に追い詰められていく…。

投獄された弟を取り戻そうともがく兄の一夜の出来事を描くクライム・ムービー「グッド・タイム」。ドキュメンタリーを思わせるザラザラした質感の映像で描かれるのは、最愛の弟ニックを取り戻そうとする兄コニーの、あまりにも無計画な暴走ぶりだ。不運と滑稽さも加わって、コニーの運命はトンデモない方向へと舵を切る。彼の行き当たりばったりの行動は、やればやるほど事態を悪くしていて、このヤバい状況、分っているのか?!とツッコミたくなるが、コニーに迷いがないのは、ニックへの深すぎる愛情ゆえだ。兄弟の背景はほとんど説明されないが、劣悪な環境で生きてきたであろう彼らには、互いの存在だけが心の支えなのである。

前半、綱渡りにも似たコニーの衝動的な行動は、意外にも成功率が高いが、病院から弟を連れ出すところから大きすぎる誤算が生じ、そこからは“何でこーなるの?!”と言いたくなる展開に。色々な意味で目が離せなくなるが、共感とか応援などではなく、あっけにとられて見守るというのが正直なところだった。それでも、必死すぎるコニーの姿から、社会の底辺であえぐ若者の閉塞感や、都市にひそむ狂気がゆっくりと立ち上ってくる。コニーを怪演に近い熱演で演じるロバート・パティンソンは、ただならぬ迫力で素晴らしいの一言だ。地元ニューヨークのリアルを切り取った物語、クローズアップを多用した映像など、随所でインディペンデント映画の父、ジョン・カサヴェテスを思わせる。それでいて、今まで見たこともないような息苦しいほどのパワーを発散する本作。「神様なんかくそくらえ」で注目されたサフディ兄弟監督の名前は、映画ファンならぜひ覚えておきたい。
【70点】
(原題「Good Time」)
(アメリカ/ジョシュア・サフディ、ベニー・サフディ監督/ロバート・パティンソン、ベニー・サフディ、ジェニファー・ジェイソン・リー、他)
(疾走感度:★★★★★)
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ヘイトフル・エイト

ヘイトフル・エイト コレクターズ・エディション [Blu-ray]
南北戦争から数年が経ったアメリカ中北部のワイオミング。賞金稼ぎのマーキス・ウォーレンは折からの大雪で馬を失い、駅馬車に同乗する。その中には同じく賞金稼ぎのルースと、彼が捕まえた重罪犯の女ドメルグがいた。途中、元略奪団のリーダーで新任保安官のマニックスを拾い、猛吹雪から避難するため山小屋であるミニーの雑貨店へ。そこには、メキシコ人の店番ボブや怪しげな絞首刑執行人オズワルドら4人のいわくありげな男たちがいた。偶然集まったはずの8人だが、その過去は複雑に絡まっている。やがて密室と化した山小屋で殺人事件が起こるが…。

密室劇「ヘイトフル・エイト」は、ワケありの男女8人が騙しあうミステリー・アクションだ。ジャンルは「ジャンゴ」に続いてタランティーノが偏愛する西部劇である。チャプター(章)仕立てや、後半になって突如時間を遡る演出、マシンガン・トークに流血のバイオレンスと、見慣れたタランティーノ印の映画に仕上がっている。だが本作が今までと違うのは密室殺人事件というミステリー仕立てのスタイルをとっていることだ、映画は冒頭から巧妙な伏線がはられている。特に前半のせりふは一見物語に無関係に思えるが、後半にジワジワと効いてくるから要注意だ。出演者はおなじみのクセモノ役者が揃うが、今回タランティーノ映画初出演となるジェニファー・ジェイソン・リーの存在感が半端なく素晴らしい。破壊力抜群で、急展開するストーリーの中心軸となっていくのは見事だった。音楽は巨匠エンニオ・モリコーネが担当。70ミリフィルムの「ウルトラ・パナビジョン70」で撮影(日本では残念ながら普通サイズで上映)するなど、随所に強いこだわりが感じられる。欲を言えば、上映時間165分はやや冗長に感じることか。もう少し潔い編集がほしかったところだ。しかしこの長さには理由がある。ストーリーの詳細は映画を見てもらうとして、この物語には“秘密の9人目の人物”がいる。若手のビッグネームが演じるこの人物が突如登場し、物語に爆弾を落とすから、これだけの時間が必要なのだ。セリフで圧倒しセリフで魅せる本作、身も凍る猛吹雪の中でのドラマだが、まるで舞台劇のような熱っぽさだった。
【80点】
(原題「THE HATEFUL EIGHT」)
(アメリカ/クエンティン・タランティーノ監督/サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ジェニファー・ジェイソン・リー、他)
(バイオレンス度:★★★★☆)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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