俳優レイフ・ファインズの初監督作品「英雄の証明」。シェークスピアの悲劇を現代に置き換えたサスペンス・アクションだ。
国民を愛する小国のリーダー、オーフィディアスは、強国ローマ侵略を狙うが、その度にローマの英雄マーシアス・コリオレイナスに打ち負かされていた。マーシアスは数々の武勲により権力を増していくが、その独裁性と民衆を見下した態度を嫌悪する政治家の策略によって、ついにローマを追放されてしまう。暴徒と化した国民に飲み込まれ、祖国ローマに絶望したマーシアスが、放浪の果てに向かったのは宿敵オーフィディアスのところだった…。
英国人俳優レイフ・ファインズはロイヤル・シェイクスピア・カンパニー出身。そんな彼が初監督作に選んだのは、シェイクスピア劇の中でもマイナーな悲劇「コリオレイナス」だ。格調高いセリフを生かしながら、舞台を大胆に現代に置き換えて、政治的衝突や陰謀、親子の因縁、壮絶な復讐などのシェイクスピア的世界を構築。デモや激しい市街戦と共に波乱万丈のドラマが繰り広げられる。主人公は軍人としての資質はあるが政治には不向き。移ろいやすい民衆心理を心得ているのに、コントロールする器用さがない。そのため、祖国のために命がけで闘ったのに、己を貫いたあげくに民衆から追放されてしまう。嫉妬、絶望、そして復讐。ストーリーには、人間同士の猜疑心と共に、民主主義の名のもとでの人心の薄情さや愚かさが浮かび上がる。だがこの作品、本来の軸はどこなのかがどうもはっきりしない。マーシアスとオーフィディアスの愛憎半ばのライバル関係と宿命の対決かと思いきや、そこはさほど掘り下げないので、何だか盛り上がらないのだ。その分、権力を欲し息子を愛しながらも支配しようとする母親を演じる大女優バネッサ・レッドグレーブの存在感が群を抜いた。セルビアでロケをしたという荒々しい戦闘シーンの映像は「ハート・ロッカー」の撮影監督によるもので、さすがの迫力である。荒削りではあるが、男たちの悲劇と運命の皮肉、民主主義の本質までも視野にいれた野心的な作品で、初監督にしては力作。次回作に期待したい。
【65点】
(原題「CORIOLANUS」)
(イギリス/レイフ・ファインズ監督/レイフ・ファインズ、ジェラルド・バトラー、バネッサ・レッドグレーブ、他)
(アクション度:★★★★☆)

・英雄の証明@ぴあ映画生活

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