映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ワンダーウーマン」「エル」「関ケ原」「ボブという名の猫」etc.

ジェレミー・レニエ

午後8時の訪問者

ベルギーの小都市。小さな診療所で熱心に働く若い女医ジェニーは、ある日、診療時間を過ぎた午後8時に鳴ったベルに応じなかった。翌日、診療所近くで身元不明の少女の遺体が発見される。診療所の監視カメラに写っていたその少女は、助けを求めていた。少女は誰なのか。なぜ死んだのか。あの時、ドアを開けていれば…と罪の意識にかられたジェニーは、少女のことを調べ始めるが、死の謎を探るうちに、意外な真実が浮かび上がってくる…。

時間外に診療所に来た少女の助けに応じなかったことで彼女の死に責任を感じる女医の葛藤を描くヒューマン・サスペンス「午後8時の訪問者」。カンヌ映画祭の常連であるダルデンヌ兄弟監督は、しばしば社会の底辺で生きる人々が抱える、貧困、差別、犯罪、移民問題などを題材にしてきた。それらの矛盾した実態を淡々と描くことで、社会問題が浮かび上がるのが作風の特徴だが、決して政治的なメッセージを声高に叫ぶことない。本作でもしかり。亡くなった少女の死に責任を感じるヒロインのジェニーは、自分がドアを開けて応じていれば、彼女の命を救えたかもしれないと考える。それは医者という職業柄もあるが、何よりもジェニーが誠実な人物だからだ。アフリカ系のその少女は不法滞在の娼婦で、いわば誰からも顧みられない存在だ。だが、ジェニーは、せめて彼女の名前を調べて故郷の家族に連絡したいと願って事件を調べ、時に危険な領域にまで入り込んでいく。なぜ少女は殺されたのか、犯人は誰か、という謎解きのスタイルで進んでいくことで、本作は今までの作品に比べてぐっと娯楽性が高まっていて飽きさせない。ジェニーの患者である少年ブライアンの嘘や、彼の両親の思惑、娼婦だった少女の背後にある闇組織などの存在が明らかになり、事件は意外な結末へ。償いの旅をするジェニー自身にも、医者として、人間として、心の変化が訪れるストーリーが秀逸だ。ヒロインを演じる仏の人気女優アデル・エネルの、繊細で寂しげな、それでいて強い意志を感じる表情が忘れがたい。
【75点】
(原題「LA FILLE INCONNUE/THE UNKNOWN GIRL」)
(ベルギー、フランス/ジャン=ピエール、リュック・ダルデンヌ兄弟監督/アデル・エネル、オリヴィエ・ボノー、ジェレミー・レニエ、他)
(ミステリアス度:★★★★☆)
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少年と自転車

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育児放棄された少年と彼に関わる大人たちを描く「少年と自転車」。少年が里親と自転車で川辺を走る場面が素晴らしい。

児童養護施設で暮らす12歳のシリルは、父親が必ず迎えに来ると信じている。だが父は息子を引き取る気はなく、生活のためシリルの自転車を売り、行先も告げずに引っ越してしまう。シリルは、偶然知り合った美容師の女性サマンサに「週末だけ里親になって」と頼み、なんとか父を探し出すが…。

ダルデンヌ兄弟は、社会の底辺で生きる人々の家族関係をみつめ続けているが、本作は血のつながりを超えた親子の絆を描き、少年と彼の里親になる女性の両方の成長を描いている。日本の施設の少年のエピソードから着想を得たそうだ。親から捨てられるという現実は、12歳の少年にはあまりに残酷で、シリルがそのつらさに耐えられずに、身体をかきむしる場面が痛々しい。それは、すぐ近くにいる里親サマンサの愛情さえ感じとれなくなるほどの痛みなのだ。愛し愛されることの意味を知らない不幸を、幼い少年が全身で体現している。反抗を繰り返したシリルはやがて事件を起こし、サマンサの真の愛情を知るのだが、彼は事件収束後に、ある“罰”を受けることに。その時シリルが、自分の犯した罪を自覚し、サマンサとのつながりを信じて再び歩き始めるのが感動的だ。タイトルの自転車は、少年のイノセンスの象徴だが、同時に、父親、里親、彼を惑わせる不良少年ら、社会の中の他者と関わるツールの役割を果たしている。里親になることで自身も成長し母性に目覚めたサマンサと、信じられる大人がいることを知ったシリルが、自転車で一緒に川辺を走る場面が心に残った。愛情を求めて街を疾走していたシリルに、共に寄り添い光の中で併走してくれる存在がいることが、この場面の幸福感につながっている。厳しい現実の中から生まれるひとすじの希望を描いた物語だ。
【70点】
(原題「LE GAMIN AU VELO」)
(ベルギー・仏・伊/ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ兄弟監督/セシル・ドゥ・フランス、トマ・ドレ、ジェレミー・レニエ、他)
(痛々しさ度:★★★★☆)
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映画レビュー「約束の葡萄畑 あるワイン醸造家の物語」

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◆プチレビュー◆
ワイン作りに人生を賭ける男を導くのは謎めいた天使。ブルゴーニュの風景が圧倒的に美しい。 【60点】

 19世紀のフランス・ブルゴーニュ地方。若く才能あふれる葡萄農夫のソブランは、最高のワインを造ることを夢見ていた。そんな彼の前にある夜、天使のザスが現われ葡萄の苗木を授けた。彼らは年に一度、同じ場所で会うことを約束する。ソブランはやがて醸造家になり、結婚して子供にも恵まれるが…。

 キリストの血とも呼ばれるワイン。とりわけブルゴーニュのそれは宝石に例えられるほど愛好家垂涎の逸品だ。ワイン好きなら、葡萄とワインに魅せられた主人公が、葡萄の苗木をひとつひとつ布で守り、生活費を削ってでもワイン作りの高みを目指す生き方を理解するだろう。そして自然が相手の葡萄の育成には人間の力とは別の、天の恵みが必要ということも。それを象徴するのが、不意に大空から現れる天使ザスだ。ナポレオンが君臨しやがて敗れ去るその時代、ブルゴーニュの田舎にまで戦争が影を落とすが、そこにはまだ天使のようなスーパーナチュラルな存在を許す豊かさがある。

 この映画の個性は、非常にアンバランスな印象を持つことだ。物語はシャルドネやピノ・ノワールといった葡萄の品種や、ワイン作りそのものについて深くは言及しない。主人公ソブランは才能ある醸造家だが、彼ならではの醸造の独創性もごく表層的な描き方だ。激動の時代に変化する階級問題にもほとんど目を向けない。さらにどこか同性愛の香りがする天使ザスとの関係や、やがてザスが下す驚きの決断や運命も納得しがたいものだ。一方で、物語の背景となるブルゴーニュの風景は抒情的な美しさで、すべての時間、すべての季節がまるで絵画のよう。見ていていつまでも飽きることがない魅力がある。物語の核心の曖昧さと、あまりにも美しいビジュアルはまったく異質で戸惑ってしまう。

 しかもストーリーは相当に波乱万丈だ。戦争、子供の死、精神を病む妻、壊滅的な葡萄病害。長い年月、ソブランはワインと関わりながら、人生の夢や挫折を経験する。だが同時にいつもそこには愛情があった。子供を産み情熱的な愛をソブランに注ぐ妻セレスト。高貴な美しさと知性を兼ね備えソブランを魅了する男爵夫人オーロラ。天国も地獄も知る中性的な天使ザス。肉体と精神、魂の3つが出会って初めて奇跡の土壌が誕生することを、ワインを作るソブランに教えるのが、この3人の存在なのかもしれない。ニュージーランド出身のニキ・カーロ監督は、マオリ族の少女のチャレンジの物語「クジラの島の少女」では、伝統と革新のバランスをテーマにしたが、本作ではさらにスピリチュアルなレベルも含めて人生の不可思議と豊饒との調和を描いている。

 天使のザスは、ワインの奥深さを“凶作があるから豊作がある”との言葉で表した。喜びと悲しみが、寄せては返す波のように繰り返す人生を、ワイン作りに重ねた物語の原題は「ワイン醸造業者の幸運」。主人公の幸運とは何だったのか。思うに、天使と出会ったことよりも、ブルゴーニュという土地に生まれたことではないか。多様性と気品とを併せ持つ“神に愛された土地”。ワイン作りに大切な環境をテロワールと呼ぶが、その言葉は、単に土壌や地質だけではなく、気候や地形、風土、そこに暮らす人々までも含めた生育環境を指す。まさにそれは人生そのもの。偉大なテロワールだけに許される幸運は、壊滅的な状況の中にも小さな緑の芽を残すミラクルだ。主人公が3つの違った愛と関わりながら、ブルゴーニュを愛し続けた理由がよく分かる。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ファンタジー度:★★★★☆

□2009年 ニュージーランド・フランス映画 原題「THE VINTNER'S LUCK」
□監督:ニキ・カーロ
□出演:ジェレミー・レニエ、ギャスパー・ウリエル、ヴェラ・ファミーガ、ケイシャ・キャッスル=ヒューズ、他

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ロルナの祈り

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感傷的なセリフや説明はないが、愛と尊厳が伝わってくる。ダルデンヌ兄弟が得意とする社会の底辺で生きる人間の物語だが、今回テーマにしたのは命そのものだ。アルバニア人のロルナは麻薬中毒の青年クローディと偽装結婚し闇組織から収入を得るが、組織が彼を殺そうとしていることを知って抵抗する。クローディもロルナも弱い人間だ。だが心の奥底にある良心を捨てることだけはできない。ロルナが救おうとするひとつの命は、実際に存在するかどうかは問題ではない。命を守ると決めた時、ロルナは本物の人間になった。ラストに流れる音楽に、かすかな希望を感じる。
【75点】
(原題「Le Silence de Lorna/LORNA'S SILENCE」)
(ベルギー・仏・伊/ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督/アルタ・ドブロシ、ジェレミー・レニエ、ファブリツィオ・ロンギオーヌ、他)
(母性愛度:★★★☆☆)

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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