映画通信シネマッシモ


【本音で語る新作映画レビュー】
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ジェームズ・アイヴォリー

最終目的地

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南米の辺境の豪邸に暮らす人々の人間模様を描く「最終目的地」。国際的なキャストの中で、真田広之が潤滑油のような役割を自然体で演じている。

アメリカの大学院生オマーは、たった1冊の著書を残して自殺した作家ユルス・グントの伝記執筆のため、遺族に伝記公認の許可を得る目的で、南米ウルグアイの辺境の地にやってくる。その豪邸には、作家の未亡人キャロライン、愛人アーデンとその娘、作家の兄アダムとそのパートナーの男性ピートという、奇妙な家族が暮らしていた。オマーという“侵入者”の滞在によって、彼らは皆、それぞれの人生を見つめ直していく…。

国際的なキャスト、異国情緒、ノスタルジー、のっぴきならない人間関係。ジェームズ・アイボリーらしい静かで格調高い文芸ドラマだ。原作はアメリカ人作家ピーター・キャメロンの同名小説。物語は、閉鎖的な小さな世界で、人生をあきらめたかのように暮らす人々の群像劇である。劇的な事件は何も起こらず、けだるい午睡のような空気の中で、深みのあるセリフが静かに語られる。妻、愛人、兄らを結び付けているのは、自殺した作家ユルスの“不在”で、故郷を喪失して、身動きできなくなってしまった彼らの呪縛をゆっくりと解くのがオマーの役割だ。オマーという“よそ者”が、図らずも彼らに、本当はどこに行きたいのか、あるいは誰と行くべきなのかを問い、人生の最終目的地へと向かわせることになる。そこにナチスの迫害を逃れてドイツから南米に渡ったユダヤ系の先代のホームビデオや、母親が残した宝石類などが、人々が“動き出す”きっかけとしてミステリアスな味付けを加えている。アイヴォリー監督とは「上海の伯爵夫人」で組んだ真田広之は、今回は名優アンソニー・ホプキンスのゲイの恋人という難役。停滞とも平和ともつかない世界の潤滑油のような役割を、不思議な優しさとユーモアを漂わせつつ、自然体で演じて、国際派俳優として見事な存在感だった。新しい何かを手に入れるためには、今持っている古い何かを捨てねばならない。互いに惹かれあうアーデンとオマーだけでなく、誰もが自分の居場所をみつけるラストには、愛憎入り乱れる人間関係の不可思議と共に、柔らかな希望も。人生の機微を知る大人のための物語だ。
【65点】
(原題「THE CITY OF YOUR FINAL DESTINATION」)
(アメリカ/ジェームズ・アイヴォリー監督/アンソニー・ホプキンス、ローラ・リニー、真田広之、他)
(優雅度:★★★★☆)
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最終目的地@ぴあ映画生活

眺めのいい部屋

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E・M・フォスターの原作を、「日の名残り」「ハワーズ・エンド」の名匠ジェームズ・アイヴォリーが映画化。イギリス人のイタリア、とりわけルネサンスの花開いた都市フィレンツェへのあこがれが強く感じられる作品。

20世紀初頭。イギリスの良家の令嬢ルーシーは、年上の従姉妹シャーロットと一緒にフィレンツェを訪れる。予約した部屋からの眺めにがっかりしていたら、同じ宿に宿泊していた労働者階級のエマソンと息子のジョージ父子がアルノ川が見える美しい眺めの部屋との交換を申し出てくれる。階級意識に影響されない彼らにとまどいながらも、その好意に甘える二人。やがてルーシーは、情熱的なジョージと恋に落ちるのだが…。

映画冒頭から印象的に流れるのは、ジャコモ・プッチーニのオペラ「ジャンニ・スキッキ」の最も有名なアリア「私のお父さん」。ジェームズ・アイヴォリー監督が得意とするノーブルで美しい映像にぴったりフィットする選曲で、映画を強く印象付ける。オペラそのものは、中年男ジャンニ・スキッキが、大富豪の遺産を巡る騒動と、若い男女の恋を見事に解決するさまをコミカルに描いた喜劇で、決して映画のストーリーにあっているわけではない。だが、物語が転がっていくきっかけとなる部屋の眺めに対し「アルノ川が見えないわ」と文句というセリフと、「彼を愛してはいけないというのなら、アルノ川に身を投げて死んでしまいます」と歌う歌詞の内容がリンクしているのが心憎い。

階級意識や封建的思想が残るイギリス上流社会を舞台に、大人の自我に目覚める女性を描いた格調高い恋愛映画の名作だ。

(出演:ヘレナ・ボナム=カーター、ジュリアン・サンズ、ダニエル・デイ・ルイス、マギー・スミス、他)
(1986年/イギリス/ジェームズ・アイヴォリー監督/原題「A ROOM WITH A VIEW」)

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