映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週末の公開映画から オススメの1本! ◎
チリ他合作映画「ナチュラルウーマン」

ジャコ・ヴァン・ドルマル

神様メール

神様メール [DVD]
ベルギーのブリュッセルのとあるアパートに家族と一緒に住んでいる神は、慈悲深いイメージとは程遠い嫌なヤツだった。パソコンを使って面白半分に災害や事故を引き起こし、小さな不快の法則を作ったりしながら、世界を管理している。神の娘で10歳のエアは、全知全能なくせに人々を救わない、いじわるな父親に怒りを覚え、家出を決意。アパートを出る直前、エアは立ち入りを禁じらている父の部屋に入り、パソコンをいじって、世界中の人々のスマホに余命を知らせるメールを送信する。エアは大パニックに陥った世界を救う旅に出るが…。

人間に余命を知らせるメールを送ってしまった神様の娘が、行く先々で小さな奇跡をもたらす異色の宗教ファンタジー「神様メール」。ベルギーの鬼才ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の作品は、オフビートなキャラクター、ブラックな笑い、シリアスな設定を奇想天外なアイデアで描くなど、予測不能な作風が特徴だ。本作もまたしかり。神様とその家族がブリュッセルのアパートに住んでいたり、神がひねくれ者のエゴイストだったり、パソコンで人間の運命を管理していたり。設定がいちいち可笑しいが、これは単純なコメディーではない。人々はエアから送られてきたメールで自分の余命を知るのだが、死期を知ることはすなわち、生きることを究極的に見つめなおすことにつながる。残り時間、自分が本当にしたいことは何なのか。北極まで大冒険に出る会社員もいれば、ゴリラと恋に落ちる主婦、不死身の美女を愛してしまう殺し屋もいる。どうせまだ死なないからと遊び半分で自殺(?)を繰り返すものも。そんな極端な人々がいる一方で、自分が亡き後の子どもの行く末を心配する親もいるのだ。生きがいをみつける手伝いをするエアが、それぞれの“心の音楽”を聞かせる設定がしゃれている。神の長男のJC(イエス・キリスト)はどうやら父とソリがあわなかったようで、妹のエアに父の弱点を教えながら「新・新約聖書」を書くようにすすめる。そして、エアのもたらす奇跡がやがて世界を変えていくのだ。教会やバチカンが聞いたら激怒しそうな内容だが、単に宗教を笑いとばすだけでなく、時に揺らいでしまいがちな信仰をもう一度精査してみてはどうかと提案しているかのよう。ラストのぶっ飛んだ幸福感、エアを演じるプリ・グロワーヌのキュートな魅力、笑いの影に隠された深いテーマ。見所満載のファンキーな佳作である。
【75点】
(原題「LE TOUT NOUVEAU TESTAMENT/THE BRAND NEW TESTAMENT」)
(ベルギー・仏・ルクセンブルグ/ジャコ・ヴァン・ドルマル監督/ブノワ・ポールヴールド、カトリーヌ・ドヌーヴ、フランソワ・ダミアン、他)
(ファンキー度:★★★★☆)
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ミスター・ノーバディ

ミスター・ノーバディ [DVD]ミスター・ノーバディ [DVD]
不死の世界の近未来、幾通りものパラレルワールド、迫られる選択。物語は複雑だが、独特の世界観に引き込まれる。

2029年。そこは科学と医学の進歩で人類が不死になった世界。118歳のニモはそんな世界で唯一の“寿命を持つ人間”だ。その死を見ようと世界中が注目する中、ニモは、新聞記者に質問される。「人間が不死になる前の世界とは?」。ニモは、記憶をたどり、別れた両親、愛した女性たち、さまざまな人生の岐路を思い出していく…。

「八日目」から実に13年ぶりのジャコ・ヴァン・ドルマル監督の新作だが、その奇妙で美しいストーリー・テリングと独特の映像世界は健在だ。老人が過去をたどるという手法は「トト・ザ・ヒーロー」を思い出させるが、不死になった未来や宇宙旅行というSF的要素、過去と現在が交錯する語り口、さらには、10通り以上の人生の“可能性”を描くなど、スケールは格段に壮大になっている。キーワードは、小さな出来事がやがて大きな結果の違いをもたらすというカオス理論“バタフライ効果”だ。そもそもの始まりは、わずか9歳のニモ少年が、離婚することになった両親から、母と共に行くか父と残るかと迫られたこと。あまりに残酷な究極の選択が岐路になり、偶然と必然の運命がニモの中でクロスする様が哀しい。ミスター・ノーバディ(誰でもない)と呼ばれるニモが本当に愛した女性とは? そして本当に生きたかった人生とは? 答えは映画を見て確かめてほしい。劇中で引用されるテネシー・ウィリアムズの言葉「人生には他のどんなことも起こり得ただろう。それらには同等の意味があったはずだ」と共に、生きることそのものの喜びを感じるだろう。特殊メイクで難役をこなした主演のジャレット・レトをはじめ、国際的な俳優たちのアンサンブル演技、印象的なサウンドを存分に楽しんだ。
【70点】
(原題「MR.NOBODY」)
(仏・独・加・ベルギー/ジャコ・ヴァン・ドルマル監督/ジャレッド・レト、サラ・ポーリー、ダイアン・クルーガー、他)
(ユニーク度:★★★★☆)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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