映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」「ユダヤ人を救った動物園」etc.

ジャファル・パナヒ

人生タクシー



イランの首都テヘラン。ジャファル・パナヒ監督が運転する1台のタクシーに、さまざまな乗客が乗り込んでくる。死刑制度について議論する女性教師と路上強盗、海賊版DVDを売って一儲けを企むビデオ業者、ある女性は夫が交通事故に遭ったと泣き叫び、金魚鉢を抱えた老女2人は何やら急いでいる。さらに、映画の題材に悩む小学生の姪っ子まで。個性豊かなな乗客たちが繰り広げる人生模様から、知られざるイラン社会の“今”が見えてくる…。

ジャファル・パナヒ監督がタクシー運転手に扮してテヘランに住む人々の人生模様を切り取る異色のドキュメンタリー風ドラマ「人生タクシー」。アッバス・キアロスタミ監督の愛弟子のジャファル・パナヒ監督は、カンヌ、ヴェネチア、ベルリンの世界三大映画祭を制覇したイランの名匠だ。だがパナヒは、2010年に、反体制的活動を理由に“20年の映画製作禁止令”を言い渡されている。つまり母国イランで映画を作っちゃダメ!と法的に言われてしまっているのだ。もちろん勝手に出国するのも禁止である。だがパナヒはそんな圧力には屈しない。自らタクシーを運転し、ダッシュボードに置かれた監視カメラで撮影した映像を通して、厳しい情報統制下にあるイラン社会を映し出した本作には、ドキュメンタリー風でありながら、かなり綿密な演出が感じられる。タクシーには、さまざまな境遇の人々が乗り込んでくるが、その会話はどれも軽やかでユーモラス、同時に鋭く深いもので、飽きさせない。特に監督の実の姪で、小学生の少女が“国内で上映可能な映画”を撮ろうと頭を悩ませるエピソードは秀逸だ。少女らしい無邪気さと大人顔負けの聡明さを併せ持つこのタフな少女が、カメラに映るものの裏と表をしっかりと体現し、汚い現実を覆い隠してしまうイラン映画の情報統制を鮮やかに皮肉ってみせる。それにしてもタクシーというのは実に映画的なモチーフだ。「ナイト・オン・ザ・プラネット」では社会の縮図を、「タクシードライバー」では都会の孤独を、「月はどっちに出ている」では方向音痴のタクシードライバーの恋模様を描いた。一定の空間(狭い車内)に現れては消えていく乗客と常にそこにいる運転手という構図は、人生そのもののように感じてしまう。一時期、自宅に軟禁されていたパナヒの日常の詳細は分からないが、映画製作禁止令をものともせず、理不尽な圧力への怒りを映画愛に昇華し、驚くべき方法で秀作映画を作っては届けてくれる。監督にはただ一言、“ありがとう”と言いたい。
【75点】
(原題「TAXI」)
(イラン/ジャファル・パナヒ監督/ジャファル・パナヒ、他)
(風刺度:★★★★★)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
人生タクシー|映画情報のぴあ映画生活

オフサイド・ガールズ

オフサイド・ガールズ
イラン人のサッカー好きは相当なものだ。もちろん女性のサッカーファンも大勢いるはず。それなのに、イランでは、女性が男性のスポーツを公共の場で観戦することが法律で禁じられている。だが、サッカー狂の女の子たちはメゲたりしない。これは、そんなサッカー大好き少女たちの奮闘を描いた、ユーモラスなハートフル・ドラマだ。

テヘランで、イラン代表が、2006年ドイツ・ワールドカップ出場をかけたイラン対バーレーンを戦う大切な試合が行われる。男装した少女は、何とかスタジアムにもぐりこみ、生で試合を観戦しようとするが、厳重な警備体制の中、兵士に捕まってしまう。だが、同じように逮捕された“つわもの”の少女たちは他にもいて…。

俳優たちの多くは素人で、作品としても素朴なものだが、何しろ本物のスタジアムで撮影されている臨場感がある。他にも、日本人から見ると理不尽な法律、ジェンダー問題、都会と地方の格差など、なかなかどうして見所が多い映画だ。何よりも元気いっぱいの女の子たちがとにかく魅力的。サッカーの場面は少ないが、兵士の一人が少女たちに聞かせる実況が楽しい。

兵士と少女の間の会話や行動からイランの現実が見えてくる。女性のスポーツ観戦を禁止するなんてトンデモナイ!と思うのだが、スタジアムの中の罵声や、施設内のトイレ(もちろん女性用はない)の落書きの汚い言葉を見せたくないと言う兵士の思いには、素朴な優しさもあったりと、現実は単純な横暴ではない。対して、一番勝気な少女が言う「なぜ女はダメなの?」「父親や兄弟と一緒ならいいわけ?」「日本人の女性観光客は観戦してたじゃないの!」という言葉も、いちいちもっともなのである。

唐突に終わるラストにやや消化不良の感はあるが、W杯出場の喜びに沸く市内の熱狂に溶け込み、去っていく少女たちは、きっとまたスタジアムに向かうことだろう。

ちなみに、オフサイドとは、ごく簡単に言うと、味方の選手が前方へのパスを出した瞬間、そのパスを受ける選手が相手キーパーと1対1になることを禁じるルール。サッカーの中で、最もジャッジが難しく、過去に起こったトラブルも数多い。スタジアムにもぐりこもうとする行動。女性の観戦を禁止する法律。だんだん近づく少女と兵士の心の距離。すべてがオフサイドという微妙で分かりにくいルールに重なって見えてくる。

(2006年/イラン/ジャファル・パナヒ監督/原題「OFFSIDE」)

人気ブログランキング用バナー

←この記事が気に入ったら、ポチッとクリックしてもらえると嬉しいです\(^o^)/

シネマッシモにようこそ
◇ シネマッシモについて ◇

このブログが気に入ったら、ポチッとクリックお願いします♪
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

映画レビュー用BRバナー
インフォメーション


映画ライター渡まち子が運営するセカンド・ブログ「映画の中に猫がいる」もよろしく!【猫目線】で語る映画評で、のんびり、まったり運営中です(笑)。 猫好きの方、映画好きの方、ぜひ遊びにきてください。相互リンクも募集中!
こちらからどうぞ!
おすすめ情報
作品検索はこちら
Google
WWW を検索
このブログ内を検索
コメント(承認済)
映画レビュー(長文)索引

    
    
    
    
    
    
    
  
    

A−Z
0−9
カテゴリ
お仕事受注
映画評やコラムの執筆、講演など、映画に関する仕事を承ります。連絡はメールでお気軽にどうぞ。

 メールはこちらから↓
cinemassimo555★jcom.home.ne.jp
(★を@に変更して下さい)

執筆やラジオ出演など、メールと電話で対応可能な場合は、全国から仕事を受注していますので、まずはお問合せください。
プロフィール
プロフィール more
◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
おすすめ情報
おすすめ情報

おすすめ情報

楽天市場
おすすめ情報

Archives
相互リンクについて
相互リンクについて

  ↑ 必ずお読みください。
タグクラウド
  • ライブドアブログ