映画通信シネマッシモ


映画通信シネマッシモは、2018年4月をもって、終了しました。

ブログ終了にあたり、たくさんのあたたかいコメントをお寄せいただき、本当にありがとうございました。
皆さまの映画ライフに少しでもお役に立てたならこれほど嬉しいことはありません。
長い間のご愛顧に心より感謝いたします。

ジュリアン・ムーア

キッズ・オールライト

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少し風変わりな家族の間に起こる騒動をライト・タッチで描く佳作。小さな作品だが実力ある俳優を起用して、現代の新しい家族の形を説得力のあるものにしている。

LA郊外に暮らす18歳のジョニと15歳のレイザーは、レズビアンカップルの2人のママと仲良く暮らしている。ある日、ジョニは大学進学を機に、弟と共に自分たち姉弟の遺伝子上の父親ポールを訪ね、彼と親しくなる。そのことがそれぞれの母親ニックとジュールズにバレてしまったことから、家族間に異変が起き始める…。

一家を経済的に支える医師のニックは厳格すぎるし、不安定なガーデニング業を始めたジュールズはお気楽な独身男のポールと突発的に浮気する。この物語の大人たちは親というには欠点だらけなのだが、それでも確かな愛情で結ばれている。平凡な家族が“小さな波風”を経て、本当の愛情を確認しあい家族の絆を深めるストーリーは、同性愛カップルということを除けば、よくある話だ。だがこの小品の好感度は、作品全体を包むオプティミズムにある。精子提供者であるポールの登場は、ニックとジュールズに、心の底にたまっていた小さな不満や不安を吐露させることに。過ちや失敗は認めながらも自分をしっかりと主張することが、わだかまりを解消していく力になるのだろう。子育てを終えて本当のパートナーにもう一度なろうとするカップルが、これから未来を歩んでいく子供たちに対して喜びと寂しさが入り混じる感情を見せるラストが感動的だ。アネット・ベニングとジュリアン・ムーアという、上手いのに軽味も出せる名女優の組合せの妙が光った。原題を直訳すると「子供たちは大丈夫」ということになるが、この楽天主義がカリフォルニアの明るい太陽とフィットして、さわやかな後味を残してくれる。
【70点】
(原題「THE KIDS ARE ALL RIGHT」)
(アメリカ/リサ・チョロデンコ監督/アネット・ベニング 、ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ、他)
(家族愛度:★★★★☆)
チケットぴあ


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キッズ・オールライト@ぴあ映画生活

映画レビュー「シングルマン」

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◆プチレビュー◆
死を覚悟して初めて知る生の輝き。デザイナーのトム・フォードの手腕は初監督とは思えないほど見事だ。 【75点】

 「愛する者を失った人生に意味などあるのか」。1962年11月30日。8ヶ月前に16年間共に暮らしたパートナーのジムを事故で失ったジョージは、自殺を決意し準備を着々と整えていく。だが彼は、死を前に日常のすべてが違ったものに感じて戸惑いを覚えた。そんな時、親友の女性チャーリーから電話が入る…。

 2人の男がゆっくりと水に沈むポエティックなシーンと、痛々しい交通事故の俯瞰の映像、自殺の決意とその準備の淡々とした連写。映画の序盤に、この一連の流れを無駄のないフォルムで描き、同時に主人公ジョージの人となりが簡潔に浮かび上がる手際の良さは、非常にスマートだ。何度も現れる幸福な日々のフラッシュバックで、今の彼の絶望がいかに深いかを物語る。劇中に登場するさまざまなコントラストが、ストーリーを丁寧に形作っていく。

 英国人の大学教授ジョージは、繊細なキャラクターだ。自殺を前に「発つ鳥跡を濁さず」とばかりにすべてを整理整頓する隙のない人物でもある。銀行の貸し金庫の中身を処分し、家政婦にメモを残し、自分の葬式用のスーツを整え、ネクタイの結び方まで指示する。几帳面な生き方と端正な装いという鎧で脆さを隠しながら生きてきたジョージだったが、50歳を過ぎていても“終わり”が“始まり”になっていく人生の不思議をまだ知らない。観客もまた、死と生が対比する彼の特別な1日につきあうことで、そのことを教えられる。

 ジョージはゲイだという設定なのだが、そのことはこの物語ではポイントではない。むしろ立ち上がってくるのは、ミドルエイジ・クライシス(中高年男性の不安)と、米国で暮らす英国人の孤立感だ。さらに60年代初めという古き良き時代の夕映えにも似た最後の輝きが、ジョージの悲しみに寄り添っている。世界を大きな不安が包む季節の直前に、人生を終えようとしていたジョージが気付いたのは、ささやかな日常にこそ宿る幸福感だった。

 いつもと変わらないはずの英文学の講義、煩わしいはずの隣家の少女、敏感に変化を感じ取る教え子や、駐車場でふと言葉をかわした青年。死を決意したことで日常を別のアングルでとらえ直し、新しいまなざしで世界を受け止めていくジョージを演じるコリン・ファースが卓越して素晴らしい。繊細で抑性が効いた彼の演技が、この映画を比類ないものにしている。さらにジョージとは正反対でありながら、同じ孤独を内包するチャーリーを演じるジュリアン・ムーアとの共鳴が効いている。心から笑いあえる友がまだそばにいる幸福を呼び起こし、ジョージが生へと心を解放したその時、思いがけない運命が訪れる。

 監督のトム・フォードは、グッチやイヴ・サンローランなどで活躍し大きな成功を手にしたカリスマ・ファッションデザイナー。近年では「007」の衣装を担当し存在感を示していた。そんな彼がかねてより関心があった映画作りに挑戦、脚本まで自ら手掛け、とても初監督とは思えない高い完成度の作品を作り、世界を驚かせた。思えば映画界では、異業種の才能は珍しいことではない。たとえば、勅使河原宏は華道家、ジャン・コクトーは詩人、北野武は自分の本業はコメディアンと公言する。そんな中、トム・フォードの“武器”は、他の追随を許さない並はずれた美意識だ。繊細で哀歓漂うこの作品、キャスティングの妙も含めて、まるで仕立ての良いスーツのように美しい。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)端正度:★★★★★

□2009年 アメリカ映画 原題「A SINGLE MAN」
□監督:トム・フォード
□出演:コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、ニコラス・ホルト、他

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シェルター

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科学では解明できない超常現象を信仰と結びつける展開がいかにも欧米らしい。カーラは、解離性同一性障害疾患(多重人格)を認めていない精神分析医。ある日、多重人格と思われるデヴィッドと名乗る男性を診察すると、彼の中から別人格が現われる。この時点では疾患を認めてなかったカーラだが、デヴィッドの過去を調査するうちに、次々に別の人格が入れ替わり混乱をきたしていく。デヴィッドは実は25年前に亡くなった故人であることが判明、さらにカーラが辿り着いたのは歴史の闇に葬られたおぞましい事実だった…。

タイトルからSFと勘違いしそうだが、これはスーパーナチュラルなスリラーだ。シェルターとは、通常は核シェルターや防空壕、避難所を指す言葉だが、本作では人間の魂を“隔離する”という意味で使われている。過去の因縁が、次々に現代に生きる人間を取り込んでいくが、特筆なのは、主人公カーラは夫を無慈悲な事件で亡くした過去があるにも係わらず、神への信仰を失くさない女性だということ。こういう人間にわざわざ邪悪な闇を見せることで、まるで信仰心を試すかのように、物語は科学や常識、正しいと信じる宗教からも離れ、禁断の領域へと導かれる。多重人格という難役に挑むジョナサン・リス・マイヤーズが熱演で、人格が入れ替わる瞬間の演技は狂気を感じさせるほど。故意に乱した映像は演出としては安易だが、身体を大きく反らせ悶絶する姿は何とも薄気味悪い。信仰を失くした牧師、山の裁き、喉に詰めた泥。事件は20世紀初頭にまで遡る。終盤に古い記録映画が登場し、これによって秘密が明らかになるが、この映像メディアを現代にもっと強く結びつければ、面白くなっただろう。映像というのは生と死の両方を記録して二つを結びつけてしまう。さらにそこに人間の強い怨念が映りこむ。この映画の多重人格とは人間をチェーンのように繋げた負の記録だということだ。
【55点】
(原題「SHELTER」)
(アメリカ/マンス・モーリンド、ビョルン・ステイン監督/ジュリアン・ムーア、ジョナサン・リス=マイヤーズ、ジェフリー・デマン、他)
(驚愕度:★★★☆☆)

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映画レビュー「ブラインドネス」

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◆プチレビュー◆
謎の病の発生により人間の本性がむき出しになる心理パニック・サスペンス。メイレレスの手腕が見事。 【90点】

 街角で若い男性が突然視力を失う。それから各地で失明者が続出し、白い闇の病“ブラインドネス”は驚異的なスピードで拡大した。発症者は強制的に療養所に隔離されるが、そこは無法地帯と化し、人々から人間性を奪っていく…。

 物語の場所や時代は特定されていない。性別、年齢、人種が異なる登場人物には名前はなく、ただ、医者、医者の妻、バーテンダー、最初に失明した男というふうに記号化されている。この物語で注目すべきテイストは、普遍性とボーダーレスな世界観だ。そんな作品にふさわしく各国の実力派俳優が集まった。日本からは伊勢谷友介と木村佳乃が重要な役で参加。高い演技力を披露し、豪華キャストの中でしっかりと存在感を示している。監督はブラジルの俊英フェルナンド・メイレレスだ。派手なアクション・ヒーローものやゾンビ系ホラーにもできるところを、深みのある人間ドラマに仕上げて見事な実力を見せる。

 その奇病が奪うのは視力だけではない。見えないことによって皮膚の下に隠れていた本性が丸見えになり、人間性を奪っていくパニック劇に背筋が凍る。療養所を支配したのは、拳銃を入手して権力を握ったグループだ。彼らは、食料と薬の代わりに金品を要求。ついには食料の対価として「女を出せ!」と言い放つ。略奪、レイプ、殺人。さながらそこは生き地獄だ。これは、見えない世界に出現した凶暴な格差社会である。このストーリーは、今までとまったく違うルールの中で生きねばならない人間の、モラルを問う寓話だ。

 だが、一人のマイノリティが無秩序な世界から人々を救う役割を担う。全員が失明しているはずの収容所の中に、一人だけ“見えている”人間が紛れ込んでいた。失明した夫を守るため、見えることを隠して病棟に入った医者の妻は、虐げられるグループでリーダーとしての責任を果たすことに。だが、視力は彼女にメリットを与えず、逆に、見えないことを共有する人々の中で孤立し、夫の裏切りにさえ遭う。見えることが強烈な孤独につながる展開は、ゾクリとするほどシニカルだ。しかも彼女の苦悩を理解してくれる人は誰もいない。

 それでも彼女を中心にしたグループが、収容所内のサバイバルをくぐりぬけ、外界に出て行くことができたのは、異種である彼女が理性と希望を失わない強さを持つ人間だからだ。外界は想像以上の荒廃ぶりだが、命の危険にさらされつつも、食料と安全が確保できる医者の自宅を目指す。閉ざされた恐怖から開かれた絶望へ。白い闇の中を行進する男女の行く末には何が待つのか。 

 見えることとはいったい何だろう。ひょっとして私たちは、何か大切なものを見失っているのではないか。一列に並び前の誰かの肩に手を置いて進む人々はあまりにも弱々しい。その中で、ふと何かにぶつかっただけで列から離れ、まったく違う方向へ一人で離れてしまう人間がいるのが象徴的だ。結んだ手を簡単に離してはいけない。離れた手で空中を模索し再び温かい肩に触れたときの喜びを、忘れてはいけないのだ。善悪の臨界点をハードな内容で描きながら、信じあうことが出来れば希望はあると物語は提示する。ラストのまぶしい光から、新しい一歩が始まると感じたならば、この映画は福音となろう。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)カオス度:★★★★☆

□2008年 日本・ブラジル・カナダ映画 原題「BLINDNESS」
□監督:フェルナンド・メイレレス
□出演:ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ、木村佳乃、他

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美しすぎる母

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美貌の演技派女優ジュリアン・ムーアのいい所は、作品選びがいつも挑戦的なこと。イメージを損なうかもしれない危険な役でも積極的に出演する。上流階級の一家で実際に起こった、息子による母親殺害事件を、母と息子のいびつな愛を軸に語る物語だ。貧しい出自で美しく上昇志向の強い女性が、夫と別れた後に別の男性ではなく、ほぼ息子一筋になるのが理解できないのだが、不安定でもろい息子と二人でひとつのような魂が哀しい。
【60点】
(原題「SAVAGE GRACE」)
(西・仏・米/トム・ケイリン監督/ジュリアン・ムーア、スティーヴン・ディレイン、エディ・レッドメイン、他)
(コンプレックス度:★★★★☆)

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