映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

ジュード・ロウ

シャーロック・ホームズ シャドウゲーム

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文武両道のホームズ像が新鮮で大ヒットしたシリーズ第2弾「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」。よりアクション色が強くなり、ダイナミックな展開が楽しめる。

ヨーロッパで連続爆破事件が多発、次いで、オーストリア皇太子の遺体が発見される。名探偵シャーロック・ホームズは、一連の事件を、元ボクシング・チャンピオンにして天才数学者、社会的地位も高い宿敵モリアーティ教授の仕業と推定した。ホームズは、相棒のワトソン、事件の鍵を握る女占い師シムと共に、ロンドン、フランス、ドイツ、そしてスイスへと渡り、捜査を続ける。命の危険にさらされる3人だが、モリアーティは常に彼らの一歩先を行く。やがてこの事件の裏には、世界の歴史を変えてしまうほどの陰謀と策略があると分かるのだが…。

コナン・ドイルが生み出した世界屈指の知的キャラ、名探偵シャーロック・ホームズを、やんちゃな武闘派として再構築した試みが大成功した前作は、たとえ知的な謎解きは少なくなっても、とにかく新鮮だった。続編である本作も、その流れに沿って、緻密な頭脳戦というよりは、ハイスピードで展開するアクション・エンタテインメントの趣である。世界征服を企てる強敵の野望を阻止する構図は、まるで「007」か、はたまた「ミッション・インポッシブル」のよう。だが、ガイ・リッチーの遊び心全開のこのシリーは、ロバート・ダウニー・Jr.がハマリ役で演じるホームズのやんちゃなキャラがたまらなく魅力的なのだ。何しろ、親友で相棒のワトソンが結婚するのが寂しくてスネたりするホームズは、恋愛よりも同性同士で転げまわって遊ぶのが何より楽しい10代前半の少年にさえ見える。そんなキャラクター設定が個性的な本作だが、ホームズと対等に渡り合える唯一の敵モリアーティ教授との全面対決で、ヒートアップする。相手にとって不足なし!と全力でぶつかるホームズだが、さすがに今回は手強い。次々に舞台が変わり、文字通り命を賭けたクライマックスへとなだれ込む。映画は派手なジェットコースター・ムービーで、コメディタッチの会話も含めて退屈とは無縁で楽しめる。悪役ながら原作ファンの間で人気が高いモリアーティを演じるジャレッド・ハリス、エキゾチックなジプシーの女占い師シム役のノオミ・ラパスと、欧州の香りを意識したキャスティングが、地味ながら渋いところだ。
【65点】
(原題「SHERLOCK HOLMES: A GAME OF SHADOWS」)
(アメリカ/ガイ・リッチー監督/ロバート・ダウニー・Jr.、ジュード・ロウ、ノオミ・ラパス、他)
(アクション度:★★★★★)
チケットぴあ

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シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム@ぴあ映画生活

レポゼッション・メン

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人工臓器によって長寿を“買う”人類の欲望に手痛いしっぺ返しをクラわせる異色SFだが、終盤にどんでん返しが用意されていてる。近未来、人工臓器によって健康と延命が可能になった世界。ユニオン社は、ローンの返済が滞るとレポゼッション・メンという臓器回収人を送り、強制的に人工臓器を取り立てていた。生きたまま回収するその作業は、債務者にとっては死を意味する。腕利きの回収人・レミーは、ある出来事によってユニオン社の最高額商品である人工心臓を埋め込まれ、多額の借金を背負い、回収する側からされる側に。これは誰かの罠なのか、ユニオン社の陰謀か。謎の女性債務者ベスと共に真実を探ろうとするが…。

アレックス・コックス監督の「レポマン」と何か関係があるのかと思っていたら、物語はまったく別物。回収するものは車ではなく人間の身体に埋め込まれた人工臓器だ。当然、かなりハードな流血シーンがあるので覚悟してほしい。甘い言葉でローンを組ませ非情な手段で回収するその様子は、まるで闇金融。その臓器を買えるもの買えないものの差異は格差社会に拍車をかける。生きたまま臓器を取り出す作業を何の罪悪感もなく“仕事のノルマ”としてこなす主人公レミーと親友のジェイクの心は、相当病んでいる。ただし、物語はそんな社会派の側面は深く追及せず、なぜレポ・マンであるレミーに人工心臓が埋め込まれたのかという謎を追うアクション・バイオレンスの色合いが濃い。ユニオン社の陰謀ではないかとの疑問から社に侵入し、自分で自分の身体を切り裂いて記録を抹消し借金を踏み倒すという荒業に絶句。「それでいいなら最初からそうしたら?!」とツッコミを入れようと思ったそのときに、すべてをひっくり返す驚きが待っていた。結局、人間の幸せは、自らを充足させる幸福感なのか。興味深いのは女性債務者ベスの描写だ。彼女は身体に10個以上の人工臓器を持つが、歌手であるためか、人工臓器によって耳の感覚を人一倍鋭くしている。高額商品を売っては儲ける企業の企みとは別に、臓器レベルで自分の身体や能力をコーディネートするセンスは人類の未来志向を示唆していて面白い。ミュージック・ビデオ出身という新鋭ミゲル・サポチニク監督のテンポのいい演出が、ダーティな“ハッピーエンド”も含めて、シャープな印象を醸し出していた。
【60点】
(原題「REPO MEN」)
(アメリカ・カナダ/ミゲル・サポチニク監督/ ジュード・ロウ、フォレスト・ウィテカー、リーヴ・シュレイバー、他)
(流血度:★★★★☆)

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映画レビュー「シャーロック・ホームズ」

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◆プチレビュー◆
世界一有名な名探偵は、タフな武闘派。科学と魔術が混在する19世紀ロンドンの空気が伝わってくる。 【65点】

 1891年、ロンドン。若い女性を狙う連続殺人事件が起きる。名探偵シャーロック・ホームズと相棒のワトソン博士は、犯人のブラックウッド卿の逮捕に貢献するが、黒魔術を操る卿は、自分はたとえ死んでも蘇ると豪語する…。

 知性、教養、記憶力、もちろん推理力も超人的なシャーロック・ホームズ。誰もが知るこの名探偵を、格闘系のヒーローとして再構築したことで、まったく新しいホームズ像が完成した。シャーロキアン(シャーロック・ホームズの熱狂的ファン)が、この斬新なホームズをどう感じるかはさておき、エネルギッシュな新ホームズからは、とんがった映像感覚と、時間軸をバラして物語を語るスタイルを得意とするガイ・リッチー節が聞こえてくる。

 いつも難事件に挑んでいるホームズだが、今回のそれは前代未聞。儀式めいた殺人を繰り返すブラックウッド卿は、邪悪な組織の頂点に立つことで、大英帝国を崩壊させ、世界を征服しようと企んでいる。国家を動かす貴族階級の鬼っ子である卿のアイテムは、呪い、死者の復活、黒魔術。こんな言葉が必要以上の恐怖を孕んでしまうのが、いかにも19世紀だ。産業革命や科学の発達によって驚異的な発展を遂げたロンドンの街には、同時に闇の世界が存在し、人々は科学で解明できないものを恐れ敬う。ただ一人、冷静なホームズを除いて。

 ただし、本作のホームズは、私たちが知っている今までの彼とは違う。演じるロバート・ダウニー・Jrのイメージそのままの、やんちゃキャラなのだ。何しろ事件がないオフには、うつ状態で散らかり放題の自室に引きこもる。相棒のワトソンが結婚して身を固め、自分とのコンビを解消すると聞けば、ダダをこねた末に相手の女性に意地悪したり。さらに、気取った英国紳士とばかり思っていたこの名探偵は、パワフルな格闘能力をも披露する。武闘派探偵ホームズにとっては、賭けボクシングでさえも先読みして解決可能な“事件”なのだ。

 かつてホームズを出し抜いたこともある知的な美女にして危険な女盗賊アイリーンの人探しの依頼から、事件はトンデモナイ展開に。やがてブラックウッド卿の謎へと収束する。今でもアイリーンにぞっこんのホームズは、食肉解体場や巨大な造船所、建設途中のタワーブリッジで、大奮闘を繰り広げる。手に汗握るのはハンス・ジマーの音楽のおかげだが、これが大仰すぎてやや興ざめ。どうせならガイ・リッチーらしくポップなサウンドがほしかったところだ。

 ともあれ、ブラックウッド卿の陰謀のからくりを、ホームズが知識と科学とユーモアで鮮やかに解き明かすプロセスは、娯楽映画ならではのテンポの良さで大いに楽しめる。しばしば暴走するホームズと良識派のワトソン。このアクション・エンタテインメントには、凸凹コンビの刑事ものの原点を見る思いだ。音楽にしろアートにしろ、後世まで残る英国のムーブメントは、何らかの形で階級闘争をテーマにしてきた。架空の人物であるシャーロック・ホームズもまたしかり。知識だけでなく時には拳を使ってさまざまな階級に踏み込んでいく。ちなみにホームズの生みの親のアーサー・コナン・ドイルは、眼科医から作家に転業した人物。本作のストーリーはオリジナルだが、やがてホームズがこんなアクション・ヒーローとして蘇ることも“見えていた”かもしれない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)アクション度:★★★★☆

□2009年 イギリス映画 原題「Sherlock Holmes」
□監督:ガイ・リッチー
□出演:ロバート・ダウニー・Jr、ジュード・ロウ、レイチェル・マクアダムス、他

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映画レビュー「マイ・ブルーベリー・ナイツ」

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◆プチレビュー◆
世界一おいしいブルーベリー・パイに恋の予感がする。心地よい浮遊感とスタイリッシュな映像に酔いしれよう。 【65点】

 失恋したエリザベスは、カフェのオーナー、ジェレミーとの会話と彼の焼くブルーベリー・パイに癒されるが、どうしても恋人が忘れられず、新しい恋に踏み出せない。彼女は、NYからメンフィス、ラスベガスへと自分探しの旅に出るのだが…。

 快適なとりとめのなさとでも呼びたいウォン・カーウァイの作品は、映画全体よりも、断片的な時空間のイメージがいつまでも残る。これを“おしゃれ”のひと言で片付けるのは惜しい。だが、カーウァイ映画を味わうのに理屈は必要ないのだ。ドリーミーで不思議な映像にセンスのいい音楽が重なり、物語は流れていく。観客はただその流れに身を任せる。これが正しい鑑賞法だ。初の英語作品である本作では、グラミー賞受賞シンガーのノラ・ジョーンズを主役に起用。彼女が演じるのは、失恋の痛手から立ち直れない女性エリザベスで、少女の面影を残す彼女が旅で成長し、もと居た場所へと戻るという「青い鳥」的なストーリーである。香港からアメリカに舞台を移しても、音へのこだわりと無国籍なムードはそのままだ。

 NYを離れたエリザベスは、時折、ジェレミーに近況を知らせる手紙を送るが、ジェレミーは旅暮らしの彼女と連絡を取ることができない。この物理的な距離が二人の心を近づける演出がユニークだ。捕まえられそうになるとスルリと逃げる小鳥のようなエリザベスにジェレミーは虜になってしまう。このあたり恋愛心理を実に鋭くついているが、それをサラリと描くのがカーウァイの音楽的な感性なのである。

 生々しさを感じさせないのは、ヒロインの描写にも顕著だ。エリザベスは、メンフィスで傷つけ合う夫婦のやるせない愛情を知り、ラスベガスで人間不信の女性ギャンブラーと出会う。周辺の人々の心の傷や優しさは、実力ある俳優たちによって丁寧に描かれるが、主人公の人間描写は極めて希薄だ。旅での出来事も彼女の心の成長を想像させるに留まり、直接的には影響しない。ダイナーの乱闘騒ぎが、監視カメラごしに映されるように、何事も付かず離れずの距離で見せるのが心地よさの秘密だ。物語より感性を優先させ、観客がイメージと戯れることをカーウァイは許してくれる。

 得意のMTV的な映像は健在だが、かつて「花様年華」で見せた濃密な空間とは真逆の、背景の広がりが本作の見所。スコープサイズのスクリーンに映し出されるのは、ロード・ムービー特有の開放的な空と果てしなく続く道路だ。典型的なアメリカの風景であるはずなのに、どこか異空間に見えてしまうのは、カーウァイ自身が、ここではないどこかを常に夢想している映画作家だからだろうか。

 独特の浮遊感がクセになるカーウァイ映画だが、今回特に印象的なのは、この作品を端的に表している、美しいキス・シーンだ。旅を終えてNYに戻り、唇にアイスクリームをつけたままうたた寝するエリザベスに、カウンター越しにそっとキスするジェレミー。紫色のブルーベリーと白いクリームが混じりあうように、ようやく二人は触れ合うことができた。それを見るとこの物語は“邯鄲の夢(かんたんのゆめ)”のような気がしてしまう。すべてヒロインがカウンターの上でまどろんだ間に見た、はかない夢だったのではないか。カーウァイの映画ならそんな解釈も悪くない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)夢見心地度:★★★★★

□2007年 フランス・香港合作映画 原題「MY BLUEBERRY NIGHTS」
□監督:ウォン・カーウァイ
□出演:ノラ・ジョーンズ、ジュード・ロウ、デイヴィッド・ストラザーン、他

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スルース

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英国を代表する俳優ケインとロウの二人芝居で魅せる作品は、男のエゴがむき出しで興味深い。初老の推理小説家と彼の妻の浮気相手が、屋敷の中で壮絶な心理戦を繰り広げる。ほとんど演劇を見ているのと同じ空間は、映画的広がりは感じないのだが、この作品ではそれは欠点ではなく魅力になっている。高慢で陰湿なケインが抜群だが、野卑なロウも負けてない。ただし女にはどちらも願い下げ。オリジナルと見比べるのも一興だろう。
【70点】
(原題「SLEUTH」)
(アメリカ/ケネス・ブラナー監督/マイケル・ケイン、ジュード・ロウ、他)
(スタイリッシュ度:★★★☆☆)

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こわれゆく世界の中で

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妻子ある男性がボスニア難民の女性と出会い人生を見つめ直すことに。ペンとビノシュが好対象の女性を演じて上手い。真の愛情や人間同士の絆とは何かを問う大人の映画だが、恋愛以外にも深刻な要素を含むので良さが伝わりにくい。邦題が判りにくいのも惜しい。
【60点】
(原題「BREAKING AND ENTERING」)
(アメリカ/アンソニー・ミンゲラ監督/ジュード・ロウ、ジュリエット・ビノシュ、ロビン・ライト・ペン、他)
(不安誘発度:★★★★☆)

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オール・ザ・キングスメン

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たたきあげの熱血政治家が権力を手にした途端に汚職にまみれる辛口政治ドラマ。オスカー受賞の名作のリメイクで、実力派俳優揃いだが、出来はいまいち。全ての敗因はショーン・ペンのオーバーアクションにある。オリジナル映画を知るきっかけとしてはいい。
【30点】
(原題「All the King's Men 」)
(アメリカ/スティーヴン・ゼイリアン監督/ショーン・ペン、ジュード・ロウ、ケイト・ウィンスレット、他)
(無駄に豪華キャスト度:★★★★☆)

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ホリデイ

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ほぼ完璧なデート・ムービー。物語は、往年のハリウッド風ラブ・コメだが、キャスティングの冴えが映画を現代的にした。欧米では流行中と噂のホームエクスチェンジを考える女性の全てが妄想する、ベストのシナリオがこれ。単純な展開とハッピーエンドが嬉しい。
【60点】
(原題「The Holiday」)
(アメリカ/ナンシー・メイヤーズ監督/キャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレット、ジュード・ロウ、ジャック・ブラック、他)
(ロマンス度:★★★★☆)

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クローサー

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◆プチレビュー◆
クローサー(接近)は原題通りで内容にも合っているが、香港映画で同名のものがあるので、せめて副題がほしかった。私が男性なら絶対にジュリア・ロバーツよりもナタリー・ポートマンを選ぶ。

ロンドン。小説家志望の新聞記者ダンは、交通事故でケガをしたアリスを助ける。NYでストリッパーをしていたいう彼女とダンはすぐさま恋に落ちた。1年後、処女小説の出版を控えたダンは、女性写真家のアンナに一目惚れ。アンナもまた、ダンに惹かれるが、彼女はダンの悪ふざけで出会った医師のラリーと結婚。それぞれの交錯した愛には、運命的な出会いと分かれが用意されていた…。

この話は、もともと舞台劇。舞台劇の映画化にあたっていつも感じるのは、時間の経過がわかりにくいということだ。この物語でも実は3〜4年の間の出来事が描かれているのだが、凝縮された演出のおかげか、ごく短い間のように感じてしまう。だが、さすがは元が舞台劇だけあって、練りに練ったセリフは鋭いものばかり。もっとも、凝ったセリフと複雑な人間関係の割には、物語そのものの抑揚は低めだ。

主な登場人物は4人。役者は皆上手い。J.ロウとJ.ロバーツが人気の点では格が上のように感じるが、ずば抜けて素晴らしいのは、ストリッパーという汚れ役を体当たりで演じたN.ポートマン。ヌードこそないが、かなり刺激的なポーズやきわどいセリフもあって「レオン」の子役や「スター・ウォーズ」のアミダラのイメージを完全に叩き壊す。この映画は彼女の女優人生のターニング・ポイントになりそうだ。

恋愛に関してかなり自由になったはずの現代においても、人は愛する者が自分以外の人間と関係するのを好まない。肉体的にも精神的にも、たとえどんな“正当な”理由があろうとも。登場人物は皆、お互いを騙しあい、傷つけあう。観客は、彼らの誰かに感情移入するのは難しいだろう。身勝手な言い分や、品性のなさを、おもしろがるか、軽蔑するかのどちらかだ。私の場合、後者だが、なぜか映画を見終わって嫌悪感はなかった。主人公を好きになることはないのに、作品は愛おしい。不思議な魅力の映画である。

□2004年 アメリカ映画  原題「Closer」
□監督:マイク・ニコルズ
□出演:ジュード・ロウ、クライブ・オーエン、ジュリア・ロバーツ、ナタリー・ポートマン、他

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コールドマウンテン

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◆プチレビュー◆
話はメロドラマだが真面目な力作。脱走兵士狩りに執念を燃やす男たちの心情がやや説得力に欠けるのが気になるし、エイダへの執着もあっさりとしたものだが、文芸ものを得意とするミンゲラ監督の品格ある演出で、うまくまとまった。

南北戦争末期の19世紀半ば。南軍の脱走兵士インマンは、ただひたすら故郷のコールド・マウンテンを目指して旅を続けていた。脳裏に浮かぶのは、彼を待つ愛しい人エイダの面影。ただ一度の口づけを交わした彼女への愛だけを信じて、過酷な道のりを歩むインマン。一方残されたエイダもまた、生活苦や様々な試練と戦わねばならなかった…。

「イングリッシュ・ペイシェント」でもそうだったが、ミンゲラ監督は自然描写がとても巧みだ。連なる山々は青く霞み、尾根沿いに恋人たちの想いが伝わるよう。辺境の地も四季のうつろいで美しく印象的なものとなり、映画のもうひとつの主役となっていく。懐かしい風景はそこに愛する人がいるということと共に、主人公を帰路へと向かわせる説得力に溢れていた。自分が生まれ育った場所。それは何よりも強い磁場となる。

たった一度のキスでお互いを思い続けるという設定には、J.ロウとN.キッドマンは少し年齢が高すぎるのではないかと思うが、何しろ演技力には定評のある美男美女なので、多少の無理は押し通してしまう勢いがあった。世間知らずの深窓の令嬢が逞しく成長する姿は、多くの観客に好感を与えるだろうが、これは、やや強引に登場してくる女性ルビーの存在によるところが大きい。レニー・ゼルウィガー演じる野生児のようなルビーは、エイダの頼もしい協力者。美しさでニコールに張り合うなどという愚かしいことはせず、思い切り野太く“ドスコイ”なキャラとして演じたことで、レニーはルビーに生命力を吹き込んだ。思ったより賢い女優のようである。

旅の途中で出会う様々な登場人物も、皆サイド・ストーリーが作れそうなほど緻密な設定だ。不良牧師のフィリップ・シーモア・ホフマンと若い戦争未亡人のナタリー・ポートマンが特に印象深い。戦争はいつの時代にもさまざまな悲劇を生むのだ。緑豊かな風景に響く、カントリーミュージックの歌声が恋人たちを運命の再会へと導く。未来が見えるという伝説を持つ井戸で目にしたものは、美しくも哀しかった。

主人公インマンは脱走兵だが、映画は軍隊から逃げて故郷を目指す彼を、終始肯定的に描いていく。映画前半の激しい戦闘場面は迫力十分だが、そこに個々の人格描写はなく、匿名の命が奪われる地獄絵があるのみだ。一組の男女のラブ・ストーリーと故郷を目指すロード・ムービーのスタイルではあるが、作り手のスタンスは明らかに反戦にある。

□2003年 イギリス・イタリア・ルーマニア合作映画  原題「COLD MOUNTAIN」
□監督:アンソニー・ミンゲラ
□出演:ジュード・ロウ、ニコール・キッドマン、レニー・ゼルウィガー、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
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新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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