映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ラ・ラ・ランド」「トリプルX 再起動」「彼らが本気で編むときは、」etc.

ジュード・ロウ

グランド・ブダペスト・ホテル

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東欧の格調高いホテルを舞台に伝説のコンシェルジュとベルボーイが繰り広げる冒険ミステリー「グランド・ブダペスト・ホテル」。レイフ・ファインズにコメディセンスがあるなんてビックリ!

1932年、格式高いグランド・ブダペスト・ホテル。多くの客が、究極のおもてなしを信条とし、老マダムたちの夜のお相手も務める伝説のコンシェルジュのグスタヴ・Hを目当てにホテルを訪れる。だが常連客のマダムDが殺される事件が起き、グスタヴは莫大な遺産を巡る争いに巻き込まれ、さらには殺人容疑をかけられてしまう。グスタヴと彼を慕うベルボーイの少年ゼロは、ホテルの威信と誇りを賭けて事件の謎を解くべく、ヨーロッパ中を駆け巡るが…。

ウェス・アンダーソンの映画は一目見れば彼の作品だとすぐ分かる作家性がある。究極のオタクと見るか、おしゃれの極みと見るか、それは見る人の好みだが、大戦前の東欧の豪華ホテルを舞台にしたミステリ仕立てのコメディである本作は、ウェス印の美学が頂点に達した作品ではなかろうか。まるでドールハウスのように作り込まれた美術、おかしな登場人物を豪華キャストが演じる贅沢、さらにとぼけた味わいのストーリーに加えて、ウェスお得意の懐古趣味も全開。ファンにはたまらない映画だ。物語は入れ子になっていて、現在、60年代、大戦前夜の30年代を、それぞれ回想形式で語り、時代によってスクリーンサイズを変えるという凝りようである。殺人事件の謎を解く冒険は、次々と場所を変え新たな事件を生むが、砂糖菓子のようにスウィートな映像で描くのは、一種の滅びの美学なのだ。殺人事件や逃避行さえも優雅な、あの美しく懐かしい世界は、今はもうどこにもない。ウェス組初参加のレイフ・ファインズが意外なほどコメディにハマッているのには驚いた。真の演技派は何でもできるという証拠だ。
【65点】
(原題「THE GRAND BUDAPEST HOTEL 」)
(英・独/ウェス・アンダーソン監督/レイフ・ファインズ、トニー・レヴォロリ、F・マーレイ・エイブラハム、他)
(ノスタルジー度:★★★★☆)
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アンナ・カレーニナ

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ロシア文学の古典をオリジナリティあふれる演出で映画化した「アンナ・カレーニナ」。人生を文字通りの舞台にたとえた演出が見事だ。

19世紀末のロシア。政府高官の妻で美貌のアンナ・カレーニナはサンクトベテルブルク社交界の華だ。兄夫婦のいさかいを仲裁するためにモスクワへと向かった彼女は、青年将校ヴロンスキーと出会い、互いに惹かれあう。最初は平常心を保とうとしたアンナだったが舞踏会で彼と再開し、禁断の恋に落ちる。夫カレーニンへの愛はなく、欺瞞に満ちた社交界にも未練はないアンナは、家庭を捨て、ヴロンスキーとの愛に溺れるが、それは同時に破滅への道でもあった…。

原作は言うまでもなくロシアの文豪トルストイの恋愛小説の金字塔。映画では、かつてグレタ・ガルボやヴィヴィアン・リー、ソフィー・マルソーなどの名だたる美女がヒロインを演じてきた。つまり万人がよく知る素材で、ストーリー展開に驚きは少ない。よく言えば古典、悪く言えば手垢のついた物語をどう面白く、新しく見せるのか。この難題に、ジョー・ライト監督は“舞台のような人生”という鮮やかな演出で答えてみせた。オペラ劇場、舞踏会場、競馬場まで内部に納める巨大な劇場セットにまず驚く。さらに、真実の恋に生きるアンナが動くその背景で、世間体や表層的な道徳観念に縛られる周囲はピタリと動きを止めるという、独創的な演出には、ハッとさせられた。さらに絢爛豪華な衣装や美術はこれ以上ないほど贅沢なもの。特にキーラ・ナイトレイが身にまとうドレスの数々にはため息が出てしまう。衣装や美術もまた、登場人物たちのキャラクターや状況を語る重要な役割を果たしているのだ。愛のない結婚生活を送っていたヒロインの初めての恋は、不倫という不道徳のため、当然のように破滅へと至る。だが偽りのない人生をまっとうするアンナの美しさは、悲劇的な恋だからこそ際立って見えるのだ。古典文学を実験精神あふれる演出で再構築したジョー・ライトの才気に感心させられる、個性的な文芸ロマンで、一見の価値がある。
【70点】
(原題「ANNA KARENINA」)
(イギリス/ジョー・ライト監督/キーラ・ナイトレイ、ジュード・ロウ、アーロン・テイラー=ジョンソン、他)
(絢爛豪華度:★★★★★)
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アンナ・カレーニナ@ぴあ映画生活

シャーロック・ホームズ シャドウゲーム

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文武両道のホームズ像が新鮮で大ヒットしたシリーズ第2弾「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」。よりアクション色が強くなり、ダイナミックな展開が楽しめる。

ヨーロッパで連続爆破事件が多発、次いで、オーストリア皇太子の遺体が発見される。名探偵シャーロック・ホームズは、一連の事件を、元ボクシング・チャンピオンにして天才数学者、社会的地位も高い宿敵モリアーティ教授の仕業と推定した。ホームズは、相棒のワトソン、事件の鍵を握る女占い師シムと共に、ロンドン、フランス、ドイツ、そしてスイスへと渡り、捜査を続ける。命の危険にさらされる3人だが、モリアーティは常に彼らの一歩先を行く。やがてこの事件の裏には、世界の歴史を変えてしまうほどの陰謀と策略があると分かるのだが…。

コナン・ドイルが生み出した世界屈指の知的キャラ、名探偵シャーロック・ホームズを、やんちゃな武闘派として再構築した試みが大成功した前作は、たとえ知的な謎解きは少なくなっても、とにかく新鮮だった。続編である本作も、その流れに沿って、緻密な頭脳戦というよりは、ハイスピードで展開するアクション・エンタテインメントの趣である。世界征服を企てる強敵の野望を阻止する構図は、まるで「007」か、はたまた「ミッション・インポッシブル」のよう。だが、ガイ・リッチーの遊び心全開のこのシリーは、ロバート・ダウニー・Jr.がハマリ役で演じるホームズのやんちゃなキャラがたまらなく魅力的なのだ。何しろ、親友で相棒のワトソンが結婚するのが寂しくてスネたりするホームズは、恋愛よりも同性同士で転げまわって遊ぶのが何より楽しい10代前半の少年にさえ見える。そんなキャラクター設定が個性的な本作だが、ホームズと対等に渡り合える唯一の敵モリアーティ教授との全面対決で、ヒートアップする。相手にとって不足なし!と全力でぶつかるホームズだが、さすがに今回は手強い。次々に舞台が変わり、文字通り命を賭けたクライマックスへとなだれ込む。映画は派手なジェットコースター・ムービーで、コメディタッチの会話も含めて退屈とは無縁で楽しめる。悪役ながら原作ファンの間で人気が高いモリアーティを演じるジャレッド・ハリス、エキゾチックなジプシーの女占い師シム役のノオミ・ラパスと、欧州の香りを意識したキャスティングが、地味ながら渋いところだ。
【65点】
(原題「SHERLOCK HOLMES: A GAME OF SHADOWS」)
(アメリカ/ガイ・リッチー監督/ロバート・ダウニー・Jr.、ジュード・ロウ、ノオミ・ラパス、他)
(アクション度:★★★★★)
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シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム@ぴあ映画生活

レポゼッション・メン

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人工臓器によって長寿を“買う”人類の欲望に手痛いしっぺ返しをクラわせる異色SFだが、終盤にどんでん返しが用意されていてる。近未来、人工臓器によって健康と延命が可能になった世界。ユニオン社は、ローンの返済が滞るとレポゼッション・メンという臓器回収人を送り、強制的に人工臓器を取り立てていた。生きたまま回収するその作業は、債務者にとっては死を意味する。腕利きの回収人・レミーは、ある出来事によってユニオン社の最高額商品である人工心臓を埋め込まれ、多額の借金を背負い、回収する側からされる側に。これは誰かの罠なのか、ユニオン社の陰謀か。謎の女性債務者ベスと共に真実を探ろうとするが…。

アレックス・コックス監督の「レポマン」と何か関係があるのかと思っていたら、物語はまったく別物。回収するものは車ではなく人間の身体に埋め込まれた人工臓器だ。当然、かなりハードな流血シーンがあるので覚悟してほしい。甘い言葉でローンを組ませ非情な手段で回収するその様子は、まるで闇金融。その臓器を買えるもの買えないものの差異は格差社会に拍車をかける。生きたまま臓器を取り出す作業を何の罪悪感もなく“仕事のノルマ”としてこなす主人公レミーと親友のジェイクの心は、相当病んでいる。ただし、物語はそんな社会派の側面は深く追及せず、なぜレポ・マンであるレミーに人工心臓が埋め込まれたのかという謎を追うアクション・バイオレンスの色合いが濃い。ユニオン社の陰謀ではないかとの疑問から社に侵入し、自分で自分の身体を切り裂いて記録を抹消し借金を踏み倒すという荒業に絶句。「それでいいなら最初からそうしたら?!」とツッコミを入れようと思ったそのときに、すべてをひっくり返す驚きが待っていた。結局、人間の幸せは、自らを充足させる幸福感なのか。興味深いのは女性債務者ベスの描写だ。彼女は身体に10個以上の人工臓器を持つが、歌手であるためか、人工臓器によって耳の感覚を人一倍鋭くしている。高額商品を売っては儲ける企業の企みとは別に、臓器レベルで自分の身体や能力をコーディネートするセンスは人類の未来志向を示唆していて面白い。ミュージック・ビデオ出身という新鋭ミゲル・サポチニク監督のテンポのいい演出が、ダーティな“ハッピーエンド”も含めて、シャープな印象を醸し出していた。
【60点】
(原題「REPO MEN」)
(アメリカ・カナダ/ミゲル・サポチニク監督/ ジュード・ロウ、フォレスト・ウィテカー、リーヴ・シュレイバー、他)
(流血度:★★★★☆)

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映画レビュー「シャーロック・ホームズ」

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◆プチレビュー◆
世界一有名な名探偵は、タフな武闘派。科学と魔術が混在する19世紀ロンドンの空気が伝わってくる。 【65点】

 1891年、ロンドン。若い女性を狙う連続殺人事件が起きる。名探偵シャーロック・ホームズと相棒のワトソン博士は、犯人のブラックウッド卿の逮捕に貢献するが、黒魔術を操る卿は、自分はたとえ死んでも蘇ると豪語する…。

 知性、教養、記憶力、もちろん推理力も超人的なシャーロック・ホームズ。誰もが知るこの名探偵を、格闘系のヒーローとして再構築したことで、まったく新しいホームズ像が完成した。シャーロキアン(シャーロック・ホームズの熱狂的ファン)が、この斬新なホームズをどう感じるかはさておき、エネルギッシュな新ホームズからは、とんがった映像感覚と、時間軸をバラして物語を語るスタイルを得意とするガイ・リッチー節が聞こえてくる。

 いつも難事件に挑んでいるホームズだが、今回のそれは前代未聞。儀式めいた殺人を繰り返すブラックウッド卿は、邪悪な組織の頂点に立つことで、大英帝国を崩壊させ、世界を征服しようと企んでいる。国家を動かす貴族階級の鬼っ子である卿のアイテムは、呪い、死者の復活、黒魔術。こんな言葉が必要以上の恐怖を孕んでしまうのが、いかにも19世紀だ。産業革命や科学の発達によって驚異的な発展を遂げたロンドンの街には、同時に闇の世界が存在し、人々は科学で解明できないものを恐れ敬う。ただ一人、冷静なホームズを除いて。

 ただし、本作のホームズは、私たちが知っている今までの彼とは違う。演じるロバート・ダウニー・Jrのイメージそのままの、やんちゃキャラなのだ。何しろ事件がないオフには、うつ状態で散らかり放題の自室に引きこもる。相棒のワトソンが結婚して身を固め、自分とのコンビを解消すると聞けば、ダダをこねた末に相手の女性に意地悪したり。さらに、気取った英国紳士とばかり思っていたこの名探偵は、パワフルな格闘能力をも披露する。武闘派探偵ホームズにとっては、賭けボクシングでさえも先読みして解決可能な“事件”なのだ。

 かつてホームズを出し抜いたこともある知的な美女にして危険な女盗賊アイリーンの人探しの依頼から、事件はトンデモナイ展開に。やがてブラックウッド卿の謎へと収束する。今でもアイリーンにぞっこんのホームズは、食肉解体場や巨大な造船所、建設途中のタワーブリッジで、大奮闘を繰り広げる。手に汗握るのはハンス・ジマーの音楽のおかげだが、これが大仰すぎてやや興ざめ。どうせならガイ・リッチーらしくポップなサウンドがほしかったところだ。

 ともあれ、ブラックウッド卿の陰謀のからくりを、ホームズが知識と科学とユーモアで鮮やかに解き明かすプロセスは、娯楽映画ならではのテンポの良さで大いに楽しめる。しばしば暴走するホームズと良識派のワトソン。このアクション・エンタテインメントには、凸凹コンビの刑事ものの原点を見る思いだ。音楽にしろアートにしろ、後世まで残る英国のムーブメントは、何らかの形で階級闘争をテーマにしてきた。架空の人物であるシャーロック・ホームズもまたしかり。知識だけでなく時には拳を使ってさまざまな階級に踏み込んでいく。ちなみにホームズの生みの親のアーサー・コナン・ドイルは、眼科医から作家に転業した人物。本作のストーリーはオリジナルだが、やがてホームズがこんなアクション・ヒーローとして蘇ることも“見えていた”かもしれない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)アクション度:★★★★☆

□2009年 イギリス映画 原題「Sherlock Holmes」
□監督:ガイ・リッチー
□出演:ロバート・ダウニー・Jr、ジュード・ロウ、レイチェル・マクアダムス、他

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映画レビュー「マイ・ブルーベリー・ナイツ」

マイ・ブルーベリー・ナイツ スペシャル・エディション
◆プチレビュー◆
世界一おいしいブルーベリー・パイに恋の予感がする。心地よい浮遊感とスタイリッシュな映像に酔いしれよう。 【65点】

 失恋したエリザベスは、カフェのオーナー、ジェレミーとの会話と彼の焼くブルーベリー・パイに癒されるが、どうしても恋人が忘れられず、新しい恋に踏み出せない。彼女は、NYからメンフィス、ラスベガスへと自分探しの旅に出るのだが…。

 快適なとりとめのなさとでも呼びたいウォン・カーウァイの作品は、映画全体よりも、断片的な時空間のイメージがいつまでも残る。これを“おしゃれ”のひと言で片付けるのは惜しい。だが、カーウァイ映画を味わうのに理屈は必要ないのだ。ドリーミーで不思議な映像にセンスのいい音楽が重なり、物語は流れていく。観客はただその流れに身を任せる。これが正しい鑑賞法だ。初の英語作品である本作では、グラミー賞受賞シンガーのノラ・ジョーンズを主役に起用。彼女が演じるのは、失恋の痛手から立ち直れない女性エリザベスで、少女の面影を残す彼女が旅で成長し、もと居た場所へと戻るという「青い鳥」的なストーリーである。香港からアメリカに舞台を移しても、音へのこだわりと無国籍なムードはそのままだ。

 NYを離れたエリザベスは、時折、ジェレミーに近況を知らせる手紙を送るが、ジェレミーは旅暮らしの彼女と連絡を取ることができない。この物理的な距離が二人の心を近づける演出がユニークだ。捕まえられそうになるとスルリと逃げる小鳥のようなエリザベスにジェレミーは虜になってしまう。このあたり恋愛心理を実に鋭くついているが、それをサラリと描くのがカーウァイの音楽的な感性なのである。

 生々しさを感じさせないのは、ヒロインの描写にも顕著だ。エリザベスは、メンフィスで傷つけ合う夫婦のやるせない愛情を知り、ラスベガスで人間不信の女性ギャンブラーと出会う。周辺の人々の心の傷や優しさは、実力ある俳優たちによって丁寧に描かれるが、主人公の人間描写は極めて希薄だ。旅での出来事も彼女の心の成長を想像させるに留まり、直接的には影響しない。ダイナーの乱闘騒ぎが、監視カメラごしに映されるように、何事も付かず離れずの距離で見せるのが心地よさの秘密だ。物語より感性を優先させ、観客がイメージと戯れることをカーウァイは許してくれる。

 得意のMTV的な映像は健在だが、かつて「花様年華」で見せた濃密な空間とは真逆の、背景の広がりが本作の見所。スコープサイズのスクリーンに映し出されるのは、ロード・ムービー特有の開放的な空と果てしなく続く道路だ。典型的なアメリカの風景であるはずなのに、どこか異空間に見えてしまうのは、カーウァイ自身が、ここではないどこかを常に夢想している映画作家だからだろうか。

 独特の浮遊感がクセになるカーウァイ映画だが、今回特に印象的なのは、この作品を端的に表している、美しいキス・シーンだ。旅を終えてNYに戻り、唇にアイスクリームをつけたままうたた寝するエリザベスに、カウンター越しにそっとキスするジェレミー。紫色のブルーベリーと白いクリームが混じりあうように、ようやく二人は触れ合うことができた。それを見るとこの物語は“邯鄲の夢(かんたんのゆめ)”のような気がしてしまう。すべてヒロインがカウンターの上でまどろんだ間に見た、はかない夢だったのではないか。カーウァイの映画ならそんな解釈も悪くない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)夢見心地度:★★★★★

□2007年 フランス・香港合作映画 原題「MY BLUEBERRY NIGHTS」
□監督:ウォン・カーウァイ
□出演:ノラ・ジョーンズ、ジュード・ロウ、デイヴィッド・ストラザーン、他

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スルース

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英国を代表する俳優ケインとロウの二人芝居で魅せる作品は、男のエゴがむき出しで興味深い。初老の推理小説家と彼の妻の浮気相手が、屋敷の中で壮絶な心理戦を繰り広げる。ほとんど演劇を見ているのと同じ空間は、映画的広がりは感じないのだが、この作品ではそれは欠点ではなく魅力になっている。高慢で陰湿なケインが抜群だが、野卑なロウも負けてない。ただし女にはどちらも願い下げ。オリジナルと見比べるのも一興だろう。
【70点】
(原題「SLEUTH」)
(アメリカ/ケネス・ブラナー監督/マイケル・ケイン、ジュード・ロウ、他)
(スタイリッシュ度:★★★☆☆)

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こわれゆく世界の中で

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妻子ある男性がボスニア難民の女性と出会い人生を見つめ直すことに。ペンとビノシュが好対象の女性を演じて上手い。真の愛情や人間同士の絆とは何かを問う大人の映画だが、恋愛以外にも深刻な要素を含むので良さが伝わりにくい。邦題が判りにくいのも惜しい。
【60点】
(原題「BREAKING AND ENTERING」)
(アメリカ/アンソニー・ミンゲラ監督/ジュード・ロウ、ジュリエット・ビノシュ、ロビン・ライト・ペン、他)
(不安誘発度:★★★★☆)

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オール・ザ・キングスメン

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たたきあげの熱血政治家が権力を手にした途端に汚職にまみれる辛口政治ドラマ。オスカー受賞の名作のリメイクで、実力派俳優揃いだが、出来はいまいち。全ての敗因はショーン・ペンのオーバーアクションにある。オリジナル映画を知るきっかけとしてはいい。
【30点】
(原題「All the King's Men 」)
(アメリカ/スティーヴン・ゼイリアン監督/ショーン・ペン、ジュード・ロウ、ケイト・ウィンスレット、他)
(無駄に豪華キャスト度:★★★★☆)

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ホリデイ

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ほぼ完璧なデート・ムービー。物語は、往年のハリウッド風ラブ・コメだが、キャスティングの冴えが映画を現代的にした。欧米では流行中と噂のホームエクスチェンジを考える女性の全てが妄想する、ベストのシナリオがこれ。単純な展開とハッピーエンドが嬉しい。
【60点】
(原題「The Holiday」)
(アメリカ/ナンシー・メイヤーズ監督/キャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレット、ジュード・ロウ、ジャック・ブラック、他)
(ロマンス度:★★★★☆)

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
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新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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