映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

ジョニー・デップ

ダーク・シャドウ

ScoreScore
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バートン&デップのテッパンコンビによるダーク・ファンタジー「ダーク・シャドウ」。“浦島太郎”状態のヴァンパイアが笑いを誘う。

18世紀、アメリカ・メイン州の港町の有力者バーナバス・コリンズは、使用人のアンジェリークを失恋させてしまう。彼女は実は魔女で、フラれた腹いせに、バーナバスをヴァンパイアに変え生き埋めにした。200年後の1972年に偶然開放されたバーナバスは、さっそく懐かしい屋敷を訪ねるが、コリンズ家はすっかり落ちぶれ、変人だらけの末裔たちは、それぞれが暗い秘密を抱えて生きていた。当主のエリザベスにだけは真実を教え、他には自分の正体を隠しながら、バーナバスは亡き父の教え「本物の財産は家族だけ」を胸に、コリンズ家再興を目指すことに。だがそこに、憎き魔女アンジェリークが立ちふさがることになる…。

オリジナルは1966年代から5年に渡ってアメリカで放送され、カルト的人気を誇ったTVドラマ。白塗りのデップが時代錯誤のヴァンパイアを演じるというこの設定だけで笑いがこみあげるが、何しろ200年も棺桶の中にいたので、時代の流れについていけず、可笑しな言動が止まらない。何をやってもズレまくり、まるで戻ってきた浦島太郎のよう。それでもメゲないバーナバスだが、変わらないのは家族思いという点だ。コトの発端で、使用人の美女を弄んだということは都合よく脇に置いて、200年後の世界を牛耳っているアンジーこと魔女のアンジェリークと対決することになる。顔面蒼白のデップと、これまた白塗りに近い顔で暴れまくるエバ・グリーンの格闘技のごときラブシーンは、映画の最大の見せ場だ。だが物語はバーナバスvsアンジェリークの構図だけでなく、実はコリンズ家の面々がかかえるトンデモない秘密にも言及する。特にクロエ・グレース・モレッツ扮する思春期の娘キャロリンの秘密には絶句した。今一番勢いがある若手スターであるモレッツを使う以上、バートンがタダの可愛い娘で終わらせるはずはないのだ。終盤にはいかにもバートン好みの幻想的なゴシック・ホラー・コメディとなって、家族安泰の大団円へとなだれ込む。バートンとデップの組み合わせは、少々飽きつつあるのだが、それでもこの毒のある笑いは捨てがたい。のほほんとしたラブ&ピースの空気と、ベトナム戦争の泥沼が同居する矛盾だらけの70年代なら、サングラスと日傘のいでたちで太陽の下を歩くヴァンパイアの復活も悪くないという気になる。
【65点】
(原題「DARK SHADOWS」)
(アメリカ/ティム・バートン監督/ジョニー・デップ、エバ・グリーン、ミシェル・ファイファー、他)
(ダーク・コメディ度:★★★☆☆)
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ダーク・シャドウ@ぴあ映画生活

映画レビュー「ランゴ」

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◆プチレビュー◆
まるで実写のように精緻なCGアニメ。全編がマカロニ・ウェスタン愛にあふれている。 【70点】

 砂漠のハイウェイを走る車から振り落とされたペットのカメレオンは、西部辺境の町ダートに辿り着く。「ランゴ」と名乗り、悪党を退治したホラ話を披露すると、住民からヒーローに祭り上げられ保安官に任命されてしまう。初仕事は水強盗事件の調査だったが、事件の裏には大きな陰謀が隠されていた…。

 主人公はカメレオン。この生物を主役にしようと思い付く美意識(?)が、ホントは理解不能なのだが、それはさておき。カメレオン俳優と呼ばれるジョニー・デップがカメレオンの声を担当するという洒落っ気は楽しい。俳優が演じた動きや表情をそのまま取り込む“エモーション・キャプチャー”はもちろん最新技術で、一流の俳優を惜しげなく使う贅沢さが、さすがはハリウッドだ。

 映画が意識しているのは、明らかにマカロニ・ウェスタンである。超クローズ・アップはセルジオ・レオーネの十八番だし、音楽はエンニオ・モリコーネ風。ランゴという名前だって、カルトな名作「続 荒野の用心棒」の原題「ジャンゴ」にちなんでいる。シビレるタイミングで登場する“西部の精霊”もしかり。ポンチョ姿に葉巻きというルックスからすぐに思い浮かぶのは、もちろんあの大スターだ。彼本人の声が聞けないのが、何とも悔やまれるのだが。

 誰も自分を知らないなら、どんな自分にもなれる。砂漠では金と同じくらい貴重な水の強盗事件を調べるうちに、ヒーローのフリをしたランゴの自分探しの道は、思いがけない方向へ。どんなものにもなりすますことができるカメレオンは、生まれて初めて本当の自分を見極めることになるのだ。

 要所要所に登場し、ランゴの運命を歌う4匹のマリアッチふくろうの歌が、いいチャーム・ポイントになっている。砂漠に降り立った腰抜けヒーロー、ランゴの運命やいかに?!世界最高峰のデジタル技術を誇るスタジオ、ILMが、本格的にアニメーションを手掛けるのはこれが初というのが、最も意外である。前代未聞のカメレオンのヒーローの出現と共に、新たな伝説の誕生だ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ユニーク度:★★★★☆

□2011年 アメリカ映画 原題「RANGO」
□監督:ゴア・ヴァービンスキー
□出演:(声)ジョニー・デップ、アイラ・フィッシャー、アビゲイル・ブレスリン、他



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ランゴ@ぴあ映画生活

パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉

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4年ぶりのパイレーツの新作に素直に心が躍る。ペネロペ・クルスというゴージャスな美女も参入。だが海賊らしさはほとんど感じられない。

自由をこよなく愛する海賊ジャック・スパロウは、元カノの女海賊アンジェリカと再会する。しかし彼女は、永遠の命を得るという伝説の泉の場所を知るためにジャックに近づいたのだ。そこに、史上最強の海賊“黒ひげ”や、英国海軍に寝返ったバルボッサがからみ、泉をめぐる激しい争奪戦が展開する…。

監督が「シカゴ」のロブ・マーシャルに交代したのは、イベント的要素が強いこのシリーズに、大人の雰囲気と音楽的要素を加えようという試みだろうが、マーシャル監督、荒唐無稽のアクションはあまり得意じゃなさそうだ。物語は永遠の命を巡る、ジャック、アンジェリカ、黒ひげ、バルボッサ、スペイン軍の五つ巴の戦い。それぞれの思惑が異なるところは、誰が敵で誰が味方か区別がつかず面白い。聖杯や人魚の涙をキーアイテムにして泉を探すが、求めているのは決して不死だけではないのだ。だが、このアトラクション・ムービーの醍醐味は、海の上で暴れまわる海賊の活躍にあるというのに、今回は、その大半が陸上での“泉探し”。移動ばかりでアクションシーンも中途半端だ。おかげで3Dの効果もさっぱりという有様である。人魚が登場するシークエンスはさすがに魅せたが、これでは、インディ・ジョーンズやナショナル・トレジャーと変わらない。海賊らしさがほとんどないのは、何とも寂しい。

そんな中、嬉しいのは、ある目的を持って英国将校になったバルボッサとジャックとの息のあったコンビぶりだ。2人のとぼけたかけあいに、シリーズを見守ってきたファンは、海と自由を愛してやまない海賊魂を見るだろう。例によって、長いエンドロールの後にちょっとしたワンシーンがある。物語は完結しているが、もしや続きがあるかも…と期待してしまいそうだ。
【65点】
(原題「PIRATES OF THE CARIBBEAN:ON STRANGER TIDES」)
(アメリカ/ロブ・マーシャル監督/ジョニー・デップ、ジェフリー・ラッシュ、ペネロペ・クルス、他)
(アクション度:★★★☆☆)
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パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉@ぴあ映画生活

ツーリスト

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良くも悪くも古典的なラブ・サスペンス。このメンツで、これでいいのか?!との不満がくすぶる困った作品だ。

傷心を癒やすためにヨーロッパを旅行しているアメリカ人フランクは、ヴェネチアへ向かう列車内で謎めいた美女エリーズに声をかけられる。だが彼は、国際的な金融犯罪者と間違えられ、マフィアから命を狙われるハメに。妖艶なエリーズと行動を共にしながら、危険なアバンチュールに酔いしれるフランクだったが…。

アンジェリーナ・ジョリーとジョニー・デップというハリウッドを代表する美男美女の豪華共演というのが、本作最大にして唯一のウリ。黄金期のハリウッド映画のようにスターだけを強調した、とても21世紀とは思えない“トラッド”な作りだ。アンジーとジョニデの2人が出ているというのに、この平凡な出来ばえは、イエローカードを出したくなる。さらに監督は「善き人のためのソナタ」のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク。あの感動作の作り手が手掛けた作品がこれでは、やはりイエローではなくレッドカードを出さねばならない。久しぶりに“普通の顔”のジョニデを拝めたのは嬉しいが、エキセントリックな役で持ち味を発揮する彼の演技力が生きる場はほとんどなく、いつもはキレのいいアクションでタフな美女を演じるアンジーも中途半端におとなしい。実は登場人物たちにはさまざまな秘密があって…というミステリアスなストーリーの結末を明かすわけにはいかないが、終わってみれば拍子抜け。ストーリーだけ見れば“まるでヒッチコック映画を見ているよう”だが、これが褒め言葉にならないところが本作のツラいところだ。主演の2人が、無駄にゴージャスな装いで華麗な舞踏会に出席しても、ロマンスとしてどうにも盛り上がらないのである。ポール・ベタニーやティモシー・ダルトンまで出ているというのに、あまりに残念。サスペンスとしてもラブロマンスとしても弱いようでは、パリやヴェネチアの風景を堪能するしかなさそうだ。舞台は、数々の名画の舞台になった、世界一ロマンティックな水の都で、そこに美男美女が収まっている図はまるで絵葉書のように美しい。抜群のロケーションの旅情サスペンスと割り切れば楽しめる。
【50点】
(原題「The Tourist」)
(アメリカ・フランス/フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督/アンジェリーナ・ジョリー、ジョニー・デップ、ポール・ベタニー、他)
(ロマンティック度:★★★★☆)

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GONZO 〜ならず者ジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンのすべて〜

GONZO −ならず者ジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンのすべて [DVD]GONZO −ならず者ジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンのすべて [DVD]
今も米国民に愛され続け、ゴンゾー・ジャーナリズムと評される手法を生みだした伝説の作家・ジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンの真髄に迫るドキュメンタリー。「ラスベガスをやっつけろ」でハンターをモデルにした人物を演じ、彼の大ファンを公言するジョニー・デップがナレーションをつとめている。政治、音楽、カルチャーなど、あらゆるものが激しくうねった激動の1960年から70年代に活躍したジャーナリストのハンター・S・トンプソンは、取材対象に深く入り込み、その本質を伝える独自のスタイルを生みだす。同時に、勝手気ままに行動し、ドラッグと酒、パーティーに溺れるという奔放な人物でもあった。家族、友人、有名政治家のインタビューや、未発表の写真や映像から、真のトラブルメーカーと呼ばれながらも、信念を曲げなかった人間像をあぶりだしていく。

ハンターは、ゴンゾー(ならず者)と呼ばれるくらいなので、その人生は挑発的、かつ破天荒なものだ。ギャング集団と言われたヘルス・エンジェルスへの密着取材で注目された彼は、ニクソン、マクガバン、カーターら、大物政治家たちに対しても切れ味鋭くペンを運ぶ。「書くことで何かを変えられる」と信じた男の書く記事は、世論を動かすほどの力を持ち、ジャーナリズム界のロックスターとの異名をとった。一方でハンターは、保安官に立候補するかと思えば、過度の銃マニアで、ドラッグ愛好を公言するなど、矛盾した人物。初めは書くことで社会の不正義や権力の腐敗を糾弾していた彼が、自らが有名人になってしまったことで、書く側から書かれる側へと変化し、ペンの力を失っていく過程が興味深い。それでも溢れる魅力で周囲から愛されたハンターが、現代に生きていたら、ジャーナリズムも違ったものになったかもしれないと想像するのは私だけではないだろう。彼は2005年に拳銃自殺して命を絶った。泥沼化したベトナム戦争の時代と、9.11テロから始まったイラク戦争による混迷が不思議なほど重なって見える。今、ゴンゾー・ジャーナリズムの本質を思い出すことは決して無駄ではないのだ。テリー・ギリアム監督の映画「ラスベガスをやっつけろ」はハンターの著書「Fear and Lothing in Las Vegas」を原作としたもので、ドラッグに溺れる人間の意識を映像化し、アメリカン・ドリームの代名詞である、自由と正義が崩壊する様子を異様なタッチで描いた怪作だ。「ラスベガスをやっつけろ」の根底にあるスピリットが「あぁ、そうだったのか」とこの映画を見てやっと腑に落ちた気がする。
【65点】
(原題「Gonzo: The Life and Work of Dr.Hunter S. Thompson」)
(アメリカ/アレックス・ギブニー監督/ボブ・ブラウディス、チャールズ・ペリー、ダグラス・ブリンクリー ナレーション:ジョニー・デップ、他)
(過激度:★★★★☆)

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映画レビュー「アリス・イン・ワンダーランド」

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◆プチレビュー◆
鬼才ティム・バートンにしてはあまりに凡作。それでもこってりと濃厚な映像美は楽しめる。 【60点】

 19歳のアリスは退屈な園遊会を抜け出し白うさぎの後を追って穴に落ちる。そこは不思議なアンダーランドで、住民たちは皆アリスのことを知っていた。アリスこそ残忍な赤の女王の支配に終止符を打つ伝説の戦士だと言うのだが…。

 ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」と「鏡の国のアリス」が「マトリックス」をはじめ多くの映画にインスピレーションを与えたことは知られている。パラレルワールド、救世主としての覚醒、運命の選択などのプロットは、すべてアリスがベースだ。本作はそんなアリスのその後を描くオリジナルストーリー。消えるチェシャ猫や狂った帽子屋マッドハッター、三月うさぎに賢者の芋虫らが入り乱れる奇天烈な世界を、ティム・バートンが3Dで映像化する企画は、一見パーフェクトに思える。だが、蓋を開けてみれば、映像はにぎやかだが、物語にバートンらしさはほとんど感じられなかった。

 ティム・バートンらしさ。それは、弱者や異形のものへのいたわりの眼差しだ。ハサミ手の人造人間やハロウィン・タウンの住人、はたまた残虐な理髪師まで、マイノリティに対する優しさが、悲哀と感動を生んできた。それなのに本作ときたら、どこにでもある勧懲ストーリーではないか。冒険心を忘れたアリスは、アンダーランドを再訪し、自分とは何者かという壮大な問いに向き合いながら自らの意志で戦う大人へと成長する。目的は、邪悪な赤の女王を倒し、善良な白の女王が統治する平和な国を取り戻すことだが、ここでは初めから善と悪が決めつけられている。アンダー(地下)にワンダー(驚き)などない。見た目はシュールだが、そこは毒気の抜けた予定調和の世界なのだ。

 もちろん見所はある。人気・実力共にトップスターのジョニー・デップが、グロテスクな風貌で奔放に活躍する様はまさに非日常。エンタテインメントとしては平均以上だ。ビジュアルのこだわりもハンパではない。お茶会の様子は、食器やケーキなど細部まで執拗なほどに作り込まれていて、もっとじっくり見せて!と言いたくなるほどだ。地上と地下、縮小化と巨大化、赤の恐怖と白の慈愛。万人に理解できる対立の構図もメリハリが効いて見事である。だがここが急所だ。3D映画では情報量が膨大なため、物語はシンプルなものが求められる。だとすれば、3Dという最新ツールが、バートンの才能の飛翔を妨げてしまったのではないか。結果、器は豪華だが盛られた料理は冷凍食品のような有様になった。そもそも世界は善悪で単純に二分化などできない。それなのに、アリスは地下世界で何の疑いもなく勧善懲悪をキメて地上に戻っていく。

 アリスが倒すジャバウォッキーは「鏡の国のアリス」のナンセンス詩に登場する異形のモンスターだ。前衛的な作風で知られるチェコの映像作家ヤン・シュヴァンクマイエルも、かつて短編映画「ジャバウォッキー」で描いている。作り手自身が個性を見失ったこの作品、ティム・バートンに思い入れのない人にとっては、少女が成長し自立する冒険ファンタジーとして、十分な出来栄えだろう。だが、バートンのディープなファンはきっと嘆くに違いない。本来の彼ならばジャバウォッキーへの愛を忘れたりしないはずなのに…と。大人になるということは、現実を受け入れて折り合いをつけていくことでもある。バートンはこの3D大作で、映像の自由を得た代償に、ありきたりな物語に甘んじた。そう思って、この映画にパラドックスを見るしかない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)奇想天外度:★★★☆☆

□2010年 アメリカ映画 原題「ALICE IN WONDERLAND」
□監督:ティム・バートン
□出演:ミア・ワシコウスカ、ジョニー・デップ、アン・ハサウェイ、他


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アリス・イン・ワンダーランド@ぴあ映画生活

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映画レビュー「Dr.パルナサスの鏡」

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◆プチレビュー◆
鬼才ギリアムが描く摩訶不思議ワールド。ヒース・レジャー急逝の大ピンチを乗り切る必殺技が見事だ。 【65点】

 現代のロンドン。悪魔との契約で不死になったパルナサス博士が率いる移動式劇場は、鏡で人々を別世界に誘う見世物で大人気だ。だが博士は最近、何かに怯えている。そんなある日、記憶を失くした男トニーが一座に加わるが…。

 テリー・ギリアム監督が作る映画には、トラブルがお約束だ。「未来世紀ブラジル」では、内容の改ざん問題で配給会社ともめる。「バロン」では、ずさんな予算管理で思い描いたとおりの作品が撮れない。「ドンキホーテを殺した男」を作ろうとして頓挫した無念は、ドキュメンタリー「ロスト・イン・ラ・マンチャ」をご覧いただきたい。よくまぁ、映画制作に嫌気がささないものだと感心しているのだが、毒気とシニカルな味が売り物のモンティ・パイソンに参加していただけあって、ギリアムはメゲないのだ。

 そうは言えども、若き名優ヒース・レジャー急逝のニュースは、彼を主要キャストとする本作の撮影半ばだったギリアムを絶望させたに違いない。そんなピンチを救ったのが、鏡の内・外の人物を別々の俳優が演じる4人1役という卓越したアイデアだ。複数一役は他の映画でも時折みかけるが、ルックスの変化を人間の欲望の多様性として用いると、物語と絶妙にシンクロする。苦肉の策とはいえ、結果的にこれが本作のエッセンスになった。

 パルナサス博士は不死の代償として、愛娘ヴァレンティナが16歳になったら差し出すという取引を悪魔とかわしていた。だが博士は、何とかして悪魔を出し抜こうと賭けを試みる。鏡の中に誘った人間5人を正しい道に導けば賭けに勝てるのだが、ヴァレンティナが鏡に入ってしまい、物語は思わぬ方向へ。ヒースの分身ともいえる役を演じるのは、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルという3人の人気俳優だ。それぞれ、人間の潜在的な欲望を体現。その願いは良識ある選択で博士に、堕落への誘惑で悪魔に味方する。

 鏡の中の場所「イマジナリウム」の造形は、森の中、砂漠、雲の上と変幻自在。まさにギリアム・ワールドだ。緻密なCGなのに、どこか古色蒼然とした手作り感もあり奇抜な世界が広がる。一方で、ヒースが演じるトニーがいる現実の世界が哀しみに満ちているのは見逃せない。現実と夢を行き来する案内役を、今は故人の俳優が務めることが、観客をよりシュールな幻想に誘う。破天荒な世界観についていくのは難儀だが、映画のテーマが“幸せとは何か”の問いであることさえ忘れなければ、めくるめく迷宮にどっぷりと浸って構わない。

 ともあれ、ヒースの死という悲劇を乗り越え、映画が無事に完成してくれたことを喜ぼう。基本的に一人で作り上げる小説や絵画と違い、複数でクリエイトする映画においては、物事は計画通りに進んではくれないものだ。むしろ、必ず起こる予想外の事態をどう収めるかで、作り手の腕が試される。臨機応変に、マイナスをプラスに変える。そんな監督こそが真に才能ある映画人といえるのではなかろうか。七転八起の鬼才監督ギリアムには、映画という名の悪魔を相手に、今後も比類なき賭けに挑んでほしいと願っている。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ファンタジック度:★★★★☆

□2009年 イギリス・カナダ合作映画 原題「The Imaginarium of Dr.Parnassus」
□監督:テリー・ギリアム
□出演:ヒース・レジャー、クリストファー・プラマー、リリー・コール、他

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映画レビュー「パブリック・エネミーズ」

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◆プチレビュー◆
伝説の銀行強盗の生き様が熱い。物語はシンプルだが、その分、ジョニー・デップの魅力が際立った。 【70点】

 スリリングな逃亡劇と美男美女が織り成すラブ・ストーリー。本作には、観客がスクリーンで最も見たいと望む要素が詰まっている。1930年代の米国。大恐慌で苦しむ庶民が英雄視したのは、鮮やかな手口で銀行から大金を奪い、不可能に見える脱走を繰り返す、ジョン・デリンジャーその人だ。大胆不敵な彼は、毎日を熱く生きることが本望のような男だが、運命的に出会った美女ビリーを愛したことで、何があっても彼女を守り抜くと誓う。だが、そんなデリンジャーをFBIは“社会の敵”と称して執拗に追い続ける…。

 不況で苦しむ大衆が犯罪者デリンジャーを義賊としてもてはやしたのは、理由がある。まず弱者からは何も奪わず、利益を独り占めする銀行から大金を奪ったこと。仲間を決して見捨てないなど、独自のルールを貫いたこと。ハンサムでおしゃれ、物腰が柔らかく紳士的だったというルックスの良さ。マスコミを巧みに利用するしゃれっ気もあった。デリンジャーという人物は、映画の主人公そのものではないか。だが、ノミ行為で大金をせしめる犯罪組織が台頭するなか、あえて危険な銀行強盗にこだわる彼は、大衆に人気はあっても時代に取り残されていく運命だった。そんな彼の最期は簡単に予想できるが、短い生涯の最後に燃えた一途な恋愛を中心に据えたことで、映画は、主人公の男気を際立たせている。当代一の人気俳優ジョニー・デップに「俺の好きなもの。野球、映画、高級服、速い車。そして君だ」と言われては、女性なら誰でもシビレてしまう。コートを華麗になびかせて、銀行のカウンターをひらりと飛び越える様は、今では滅多に見られないダンディな銀幕のスターそのものだ。美男美女の熱い恋に、1930年代のモダン・クラシックな衣装が華を添える。

 FBIに指名手配され命懸けの逃亡の中で、愛するビリーとの未来を夢見るロマンチシズムが切ない。デリンジャーという男は、殺人も辞さない犯罪者であることは間違いない。だが、映画は彼を運命的な恋に燃え尽きた男として描ききる。本作にはFBI捜査官のメルヴィンとの対決の構図もあるが、男臭くクールな映画を得意とするマイケル・マンは、意外にもラブ・ストーリーの方に比重を置いた。実在の銀行強盗ジョン・デリンジャーを、スタイリッシュでエレガントなアウトローとして描いたマン監督。彼も、どこかで太く短い人生に憧れるロマンチストなのかもしれない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)エレガント度:★★★★☆

□2009年 アメリカ映画 原題「PUBLIC ENEMIES」
□監督:マイケル・マン
□出演:ジョニー・デップ、クリスチャン・ベイル、マリオン・コティヤール、他

(ショート・バージョンの映画レビューでお届けしています)

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映画レビュー「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」

スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 特別版 (2枚組)スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 特別版 (2枚組)
◆プチレビュー◆
バートン印のグラン・ギニョール劇は哀しい復讐の物語。ミュージカル初挑戦のデップの歌声が見事だ。 【75点】

 19世紀のロンドン。天才理髪師スウィーニー・トッドはフリート街に店を構える。彼は、15年前に自分を無実の罪で投獄した上、妻子まで奪ったターピン判事への復讐の機会を狙っていた。パイ屋のラベット夫人はそんな彼にある提案を持ちかける…。

 人間というのは本来残酷なものが大好きな生き物なのではなかろうか。それを見抜き、見世物にした娯楽が19世紀末から20世紀半ばまでパリに存在した大衆芝居グラン・ギニョールだ。アブノーマルな登場人物が演じる、荒唐無稽で血生臭い物語。けれん味たっぷりの演目を、人々は大いに楽しんだ。「スウィーニー・トッド」はもともとは大人気のブロードウェイ・ミュージカルだが、鬼才バートンは自分の波長に合わせてグラン・ギニョール風に映画化してみせた。倒錯的でおぞましい物語に、独特の“間”を与えるのは、今までミュージカルとは無縁だった俳優たちの力強くて美しい歌声だ。人気と実力がパーフェクトに結びついた俳優ジョニー・デップが、異様なルックスで初めて歌を披露するが、これが実に魅力的なのである。映画は、残酷描写が満載なので万人向けではないが、完成度はかなり高い。

 物語の主人公は剃刀で喉をかき切る殺人鬼で、人間を殺した上にその肉を加工してパイに詰めて売りさばくというからすさまじい。だが、猟奇的な話を、どこかポップでコミカルにするのがバートンとデップのゴールデン・コンビの得意技だ。そして根底には愛を仕込む。映画の両輪は、妻子を奪われた男スウィーニーの狂気と、彼を秘かに愛するラベット夫人の妄想だ。殺人の共犯者でありながら全く心が通じ合わない関係性は、物語の重要なメタファーとなる。この二人のズレが小さな秘密を生み、大きな勘違いとなって、取り返しの付かない悲劇へとつながる仕組みだ。映像はすべて殺伐としたグレートーンで統一され、ただならぬ雰囲気を醸し出している。ただし、幸福な過去の回想シーンは美しい花園のような色調で、その対比が絶妙だ。美術はフェリーニ作品を多く手掛けたイタリアの名手ダンテ・フェレッティによるもので、主人公の心理を雄弁に物語るビジュアルは、作品のレベルを確実に上げている。

 実在したとも伝説とも伝えられるスウィーニー・トッドの物語から立ち上ってくるのは、肥え太った近代都市への強烈な嫌悪感だ。時代はまさしく産業革命の渦中。スウィーニーの愛用する特製の回転椅子よろしく、世の中の価値観は逆転した。人々は他人に無関心になり、物の生産はスピードと規格と効率のみを追求するようになる。理髪店の椅子で命を断たれ、ズルリと階下に落ちた死体はあっという間に処理され、パイの中身になって店頭へ。ロンドンで一番マズいラベット夫人のパイ店はたちまち大繁盛というわけだ。鮮血に染まったスウィーニーの陰惨な合理主義に、人間性など無用なだけである。しかし、復讐とはすこぶる人間的な行為ではないのか? これが主人公の運命のパズルの最後のピースだ。デップの優れて有機的な演技は、私たちにこの都市伝説の皮肉と哀しみとを語りかけてくる。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)流血度:★★★★☆

□2007年 アメリカ映画 
原題「SWEENEY TODD:THE DEMON BABER OF FLEET STREET」
□監督:ティム・バートン
□出演:ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーター、アラン・リックマン、他

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パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド

パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド 2-Disc・スペシャル・エディションパイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド 2-Disc・スペシャル・エディション
デップが完全主役扱いになり、伝説の海賊たちの活躍がアクション満載で描かれる「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」。シリーズ最終章で期待感は頂点に。それに答えるように、世界の果てへの入り口、難破船入り江の幻想的な造形、大渦巻きの海のうねりなど、ビジュアルは迫力と美しさの両方を楽しめる派手なものだ。登場人物たちの運命の結末はかなり驚かされるが、意外にも(?)感動の余韻が残ったりする。今回は、とりわけキャプテン・バルボッサのりりしさが光った。物語の影のけん引役も実は彼なのだ。もちろん、突っ込みどころは多々あるが、この作品でそれはヤボ。映画を見ることそのものがイベントなので、思い切り楽しもう。ちなみにジャックのパパ役で、噂通りキース・リチャーズが登場、チラリとギターを弾いてくれる。長〜いエンドロールの後で大事なシーンが用意されているので、最後まで席を立たずに見てほしい。
【75点】
(原題「PIRATES OF THE CARIBBEAN: AT WORLD'S END」)
(アメリカ/ゴア・ヴァービンスキー監督/ジョニー・デップ、オーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイ、他)
(お祭り騒ぎ度:★★★★★)

追記:ひとりごと

配給会社から「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」特製携帯ストラップをいただきました。その名も“ジャック・スパロウ身代わり人形”。説明書によると、世界の果てからやってきた、災いを食べてくれる守り神だそうな(笑)。
ハリウッド随一のヒットメーカーのプロデューサー、ジェリー・ブラッカイマーの作品にはいまひとつノレない私ですが、このシリーズだけは別。古き良き時代の冒険活劇の香りを感じ、本当にワクワクさせてくれます。映画が唯一無二の娯楽だった時代の観客は、きっといつもこんな気分で映画を見ていたんだろうなぁ。何だか、うらやましい気がしてきた。しかし、たかが遊園地のアトラクションがこんなビッグビジネスになろうとは。


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パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド@ぴあ映画生活

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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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