映画通信シネマッシモ


映画通信シネマッシモは、2018年4月をもって、終了しました。

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長い間のご愛顧に心より感謝いたします。

ジョン・ウー

マンハント

映画「マンハント」オリジナル・サウンドトラック
国際弁護士のドゥ・チウは、何者かにハメられ、身に覚えのない女性殺害事件の容疑者として追われる身となる。事件を追う敏腕刑事・矢村は、逃亡したチウを追うが、彼に近づくほど事件に違和感を覚え、徐々に見解を変えていく。ついにチウを捕まえた矢村は、警察への引き渡しを拒否。事件の裏にある陰謀を暴くため、チウと共に真相を追うことになるが…。

殺人の濡れ衣を着せられた国際弁護士と彼を追う刑事が事件の真相を追うサスペンス・アクション「マンハント」。原作は西村寿行の小説で、高倉健主演の映画「君よ憤怒の河を渉れ」のリメイクとなる。中国での「君よ…」の人気は絶大だが、香港ノワールの巨匠ジョン・ウー監督は、とりわけ、高倉健と「君よ…」の熱烈なファンだそうだ。とはいえ映画「君よ…」は正直に言うと、荒唐無稽を通り越してて突飛なエピソードが多すぎる。それをすっきりと整理し、怒涛のアクションとして活写した手腕はさすがだ。大阪を中心に全編が日本ロケ、チャン・ハンユーと福山雅治のダブル主演、キャスト・スタッフは、中国、日本、韓国と国際色豊かだ。ちなみに、女殺し屋の一人は、ウー監督の愛娘のアンジェルス・ウーが演じている。

ウー監督が得意とするモチーフの、男と男の熱い友情、スタイリッシュなアクションは健在で、トレードマークである二丁拳銃や白い鳩、スローモーションも、しっかり登場し、ファンを喜ばせてくれる。ウー作品初登場の女殺し屋が操る二丁拳銃と、手錠でつながれた男二人の二丁拳銃はちょっと凝っていて、それが現実に可能かどうかはさておき、なかなかの見ものだ。川を疾走するジェットスキーでのチェイスもド迫力である。かっこいい男に美しい女、冤罪、陰謀、追跡劇と、あれこれ考えるヒマを与えず、あっという間に駆け抜けるエンタテインメントだ。
【60点】
(原題「MAN HUNT」)
(香港・中国/ジョン・ウー監督/チャン・ハンユー、福山雅治、福山雅治、他)
(スピード感度:★★★★★)


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レイン・オブ・アサシン

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アジア各国のトップ・スターが競演する武侠アクション。創意工夫に満ちた戦術とカメラワークが美しい。

明朝時代の中国。手に入れれば武術界の覇権を握るという“達磨(だるま)大師のミイラ”を狙って、暗殺集団“黒石”が暗躍していた。だが、黒石の首領、転輪王が最も信頼を寄せていた最強の女刺客・細雨が、いまわしい過去と決別するため、組織に背き達磨の遺体と共に姿を消す。やがて細雨は、秘術の整形によって顔を変え、新しい名前・曽静を名乗る。都会の片隅で、配達人の阿生と結ばれ幸せに暮らしていたが、黒石は彼女の正体を見抜き、殺し屋を差し向ける…。

共同監督とはいえジョン・ウーの意向が強く反映されているであろう本作は、華麗なワイヤー・アクションとスタイリッシュな剣法によって豪華絢爛な歴史活劇となった。リアリズムよりも様式美を重視する動きの美しさは、ヒロイン・曽静が操る、高速で鞭のようにしなる剣の描写に顕著に表れて、思わずほれぼれする。緑深い竹林や薄暗い墓地、雑然とした室内と、場所が変わるごとに戦い方も変化し、曽静を狙う敵の刺客の使う武術もまたバラエティ豊かだ。武侠映画に出生の秘密はお約束だが、この映画では中国医術の秘儀の整形が使われてその出自を屈折させているのが面白い。そこには意外な人物の意外な秘密が隠されているという仕掛けだ。心優しい配達人で曽静の夫の阿生を演じるのは、韓国のトップ・スターのチョン・ウソン。このキャスティングで、彼にはただならぬ素性があるはずと容易に想像できる。予想通り、クライマックスには華麗な見せ場が用意されていた。殺し屋たちのそれぞれの思惑や黒石の首領の真の目的など、サイドストーリーが整理されておらず、終盤はバタバタした印象なのが惜しい。それでも、最後のセリフを聞くと、ジョン・ウーという人はユーモアを愛するロマンチストに違いないと思ってしまうのだ。やっぱり中国映画のアクションは美しく面白いと、改めて感じてしまうのはこういう作品を見たときである。
【60点】
(原題「REIGN OF ASSASSINS」)
(中国・香港・台湾/スー・チャオピン、ジョン・ウー監督/ミシェル・ヨー、チョン・ウソン、ワン・シュエチー、他)
(活劇度:★★★★★)



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レイン・オブ・アサシン@ぴあ映画生活

映画レビュー「レッドクリフ PartII −未来への最終決戦−」

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◆プチレビュー◆
またもジョン・ウーの悪い癖が出た。それでも、待ちに待った赤壁の戦いに興奮必至である。 【60点】

 西暦208年。撤退した曹操軍が80万の大軍を率いて逆襲。劉備・孫権の軍は、5万と圧倒的に戦力で劣る上、敵の策略で疫病が蔓延する。戦意を喪失し劉備は撤退、連合軍は分裂してしまう。諸葛孔明だけは周瑜の元に残るのだが…。

 大ヒットした歴史絵巻のパート2は、全編これスペクタクル。パート1では、いざ、決戦!というところでプツリと終った物語に拍子抜けした観客も多かったろう。そのフラストレーションを、今度こそぶっちぎってくれる完結編である。赤壁の戦いは、三国志の中でも特別にエモーショナルな合戦だ。だが、ジョン・ウーという人は、いつだってやりすぎる悪い癖がある。

 ウー監督流のサービス精神なのか、香港映画の娯楽の素地がそうさせるのか。何しろ彼は大の爆発好きだ。メリハリという言葉を忘れたかのような爆破に次ぐ爆破で、何とも騒々しい。火薬の量を誇示するように延々と続く戦闘シーンに、いつしか、アジアの歴史大作のハリウッド化という図式が浮かぶ。何より、前作がなくても本作だけで成り立つ物語なのだ。もしやパート1は、ジョン・ウー得意の長い長いスローモーションだったのか。

 個人的に期待していた女性の活躍だが、文字通り“女子供”的で、哀しくなった。決戦を前に勝手に敵の司令官に会いに行く周瑜の妻・小喬といい、兵士に変装しスパイ活動をする孫権の妹・尚香といい、敵陣に長居が過ぎる。女性の活躍で現代性をもたせる意図はわかるが、ここでもやっぱりやりすぎなのだ。こういうディティールの甘さがジョン・ウー作品を真の人間ドラマから遠ざける。まぁ、ウー監督に女を描けという方が無理な相談なのだが。

 文句を並べてしまったが見所は山ほどある。ダイナミックな物語の中、少数の連合軍が知力で大軍を破るプロットは“判官贔屓”の伝統を持つ日本人のツボに間違いなくハマるだろう。10万本の矢を集める孔明の奇策の興奮。激しい炎が揺らめく海上戦の熾烈。相変わらず美しく魅力的な登場人物たち。すべてが映画的興奮に満ちている。特に、天候を読み、風水を操り、ベストの瞬間に思いもよらない方法で戦う孔明のビジョンは別格だ。気象を制するものは天下を制す。現在でも、市場経済やスポーツなどあらゆる分野に共通する絶対ルールだ。自然という巨大な力を武器に変えるからこそクライマックスは神懸かる。

 勝負を決したのは東南の風だった。風とは古来より目に見えないものを象徴し、深い意味を持つ空気の流れ。“風はいずこより来たりて、いずこへ行くかを知らず。されど、風の吹くところ命が生まれる”という。天候を熟知した天才軍師は、やがては三国すべてが潰(つい)え、新しい国が興る運命を見通していたのだろうか。悠久の歴史には、カンマはあってもピリオドはない。英雄たちは見果てぬ夢を追い、風のように消えていくさだめだ。歴史に名高い赤壁の戦いもまた、風の通過点に過ぎない。「勝者はいない」。このセリフは、いみじくも、傑作「七人の侍」のラストと同じ言葉だった。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)副題がクドい度:★★★★☆

□2009年 米・中国・日本・台湾・韓国合作映画 
□原題「Red Cliff PartII/赤壁 決戦天下」
□監督:ジョン・ウー
□出演:トニー・レオン、金城武、ヴィッキー・チャオ、他

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レッドクリフ Part II −未来への最終決戦−@ぴあ映画生活

映画レビュー「レッドクリフ PartI」

レッドクリフ Part I スタンダード・エディション [DVD]レッドクリフ Part I スタンダード・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
アクション映画の詩人ジョン・ウーならではの三国志の世界。金城武の諸葛孔明が魅力的だ。 【80点】

 3世紀の中国。80万の大軍を率いて天下統一を目論む曹操に対し、民を思う劉備は、曹操に屈しようとしていた孫権と同盟を結ぶ。連合軍の兵力は5〜6万と圧倒的に劣るが、知将・周瑜と天才軍師・諸葛孔明は奇策を講じていた…。

 香港映画の戯画的要素とハリウッドの洗練されたテクニック、加えて中国映画らしい人海戦術で活写するのは、極上のエンタテインメント・三国志だ。ベースとなる「三国志演義」は史実とフィクションを巧みにブレンドした英雄譚。映画の軸である“赤壁の戦い”とは、西暦208年、長江沿いの赤壁で対峙した、曹操軍と孫権・劉備連合軍の水軍戦で、三国志の白眉の一つである。

 本作では、赤壁の戦いに至るまでの経緯と、人間関係の相関図を陸上戦の中で形作っていく。軍事演習や戦闘では、古代中国の兵法や、軍師の孔明が発案した奇策が俯瞰でとらえられ、独特の陣形が見事だ。これらのシークエンスは、男気溢れる豪傑たちの顔見世も兼ねていて、軍の規模や猛者たちの特徴を分かりやすく説明する。ウー監督得意のスローモーションを駆使して描く武将たちのプレビューは、映画のテンポを削いではいるが、名だたる英雄たちの魅力を端的に伝えるメリットの方が大きかろう。最初は互いに警戒していた孫権軍と劉備軍は、共に戦ううちに次第に結束し信頼し合っていく。それは両軍のリーダーも同じだ。

 そのリーダーとは三国志の中でもとびきりの切れ者の二人。圧倒的に不利な戦いを知恵と勇気で勝利に導こうとする、孫権軍の知将・周瑜と劉備軍の天才軍師・諸葛孔明だ。いずれ劣らぬ知性と人徳でならす二人のカリスマが、心を通わせるように琴を奏でる場面は、土煙と血しぶきの物語の中で、豊潤なオアシスのように美しい。互いを認め合う男たちの友情こそが、物語をリードする。さらに嬉しい驚きは、金城武の諸葛孔明が思いがけず素晴らしいことだ。英知の象徴として伝説を残す孔明は、冷静沈着でしたたかな策士のイメージだが、この天才軍師を、時におちゃめでユーモラスな若者のように、時に芸術を愛する夢見がちなアーティストのように演じて新鮮だ。ひょうひょうとした表情で、トレードマークの扇を優雅に携えながら軍を指揮する金城武の若々しい孔明に魅了される。

 ヒロイックな人物にこと欠かない三国志だが、ウー監督はこの英雄伝に、美しく魅力的な女性の存在を加えることも忘れない。曹操の野望の陰の目的が周瑜の美人妻を奪うことという設定は、今後のストーリーに悲劇の予感を漂わせる。また蜀の皇帝・孫権の、おてんばな妹の存在もフレッシュでほほえましい。この男勝りの美女は、後にひと波乱起こしてくれそうだ。

 二部構成で描くため、第一部である本作は赤壁の戦い前夜まで。いざ、決戦!というところで「続く」となるのが何とも悔しい。第二部は水と火の壮絶な戦いになるだろう。大河・長江とそこに集結する大船団を俯瞰映像のパノラマでとらえ、さらにジョン・ウー印の白い鳩の視点でその全貌を鳥瞰すれば、三国志のダイナミックな世界はもう目の前だ。魏・呉・蜀の三国が屹立した歴史の結果は先刻承知。それでも英雄たちの物語の続きを期待せずにはいられない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)スペクタクル度:★★★★★

□2008年 米・中・日・台・韓合作映画 原題「Red Cliff/赤壁」
□監督:ジョン・ウー
□出演:トニー・レオン、金城武、チャン・チェン、他

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エクスマキナ

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「アップルシード」の続編のCGアニメ。映像は美しく進化したが、今回はSFアクションというよりラブストーリーの要素が強い。人間、サイボーグ、クローンが共存する未来社会で女性特殊部隊員デュナンが大規模な陰謀に挑む物語。製作はジョン・ウーで、白い鳩、スローの多用、二挺拳銃と、露骨なウー風の演出に笑いが出そう。衣装の一部がプラダなど、製作スタッフに一流どころを揃え、世界市場を狙っている。
【65点】
(英語原題「EX MACHINA/APPLESEED SAGA: EX MACHINA」)
(日本/荒牧伸志監督/(声)小林愛、山寺宏一、岸祐二、他)
(一流キャスト度:★★★★☆)

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ペイチェック 消された記憶

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◆プチレビュー◆
脚本でオスカーを取った才能の持ち主と知っていても、どうしてもベンアフが知的な人物には見えないので困る。ジョン・ウー映画のお約束の“白い鳩”も健在だ。

近未来。コンピューター・エンジニアのマイケルは、極秘の仕事を請け負い、記憶消去を条件に企業から多額の報酬を得ている。だが、特別に提供された莫大な報酬と引き換えに3年間の記憶を消された後、彼が受け取ったのは、報酬を辞退した自分の誓約書と19個のガラクタだった。混乱する彼はFBIからも追われるハメになる…。

思えば最近の映画には、記憶を扱ったものが何と多いことか。「ボーン・アイデンティティー」「メメント」「カンパニー・マン」「過去のない男」と枚挙にいとまがない。本作の原作者のディックの小説で、映画化された「トータル・リコール」や「JM」も記憶がテーマだ。人類に残された最後の秘境。それは脳なのか。

「男たちの挽歌」のジョン・ウー、「パール・ハーバー」のベン・アフレック、「パルプ・フィクション」のユマ・サーマン。何やら食い合わせの悪そうなメンバーが集まって、SF界の巨匠フィリップ・K・ディックの小説を映画化するという。あの名作SF「ブレードランナー」でさえ原作ファンからは非難の嵐だというのに。イヤな予感が胸をよぎり、期待度は限りなくゼロに近かった。結果、このネガティブな姿勢が功を奏して、予想外に楽しめてしまったのだ。人間、無欲が一番である。

とりあえず近未来SFなのだが、SF色は極めて薄味。“ほぉ”と思うのは記憶を消す場面くらいだ。その分、ウー印のアクションが炸裂し、バイク・スタントや銃撃戦など派手な場面の大盤振舞い。展開はスピード感に溢れているため、飽きることはない。封筒に入った19個のガラクタがひとつひとつ意味を持ち“活躍”する様子は、突っ込みどころでありながら、中々楽しい仕掛けだ。ハリウッド切っての“イイ女”ユマ・サーマンの役柄に魅力が乏しいのが残念だが、ジョン・ウーの作品で女性を魅力的に描けたためしなどないので、潔くあきらめよう。

SFは、ある意味で虚構を描くもの。虚構は現実味のある設定からスタートしてこそ信じてもらえるというものだ。テクノロジーの誤用というテーマには多くの観客が共感するに違いない。3年間の空白を遡るタイム・スリップ的な逃亡劇は、まるでゲームのよう。金のために自分の記憶を切り売りしていた男に残っていたひとかけらの道徳心が鍵となる。ペイチェックとは小切手で支払われる報酬のことだ。映画のラストには気の利いた“報酬”が主人公に用意されている。人間ドラマの深みにはイマイチ欠けるが、限りなく今に近い近未来のサスペンスとして楽しめる作品だろう。

□2003年 アメリカ映画  原題「PAYCHECK」
□監督:ジョン・ウー
□出演:ベン・アフレック、ユマ・サーマン、アーロン・エッカート、他

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ウインドトーカーズ

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◆プチレビュー◆
苦悩する男が十八番のニコラス・ケイジ。脚本が悪いとこういう結果になる。

1944年、激戦のサイパン島に上陸したアメリカ軍は激しい戦闘を繰り広げる。暗号をことごとく日本軍に解読された米軍は、ナバホ族の言語を通信の暗号として採用。心に傷を持つ海兵隊兵士ジョー・エンダースは通信兵ヤージーを護衛する任務につく。ジョーはヤージーを守る任務と同時に、ナボホ族の兵士を生きて日本軍へ渡さないという非情な極秘任務をも課せられていた…。

いわゆる戦争秘話で、ナバホ族というあまり知られていない部族の暗号、心に傷を負った主人公、任務と友情の間での苦悩…と素材はおもしろいはずなのに、残念ながら脚本で失敗している。メリハリが全くないのだ。トラウマを背負った男をやらせるとピカイチのN.ケイジは実に上手いのだが。

ジョン・ウー作品のお約束である二丁拳銃も白い鳩も出てこないかわりに、これまた定番の爆発シーンが前半から炸裂。しかし、いくらなんでも多すぎる。サイパンが激戦の地だったことは判るが、こんなに似たような映像がてんこもりじゃ、どれが一番の山場だったのか判らない。ウー監督はアクション映画の詩人と呼ばれるだけあって、爆破シーンはかなり独創的で、リアリティよりも、スローを多用し、炎の色や方向を工夫して美しく仕上げるのが特徴。そんな芸術品の大爆発は、やっぱりここ一番というところで見せてもらわなくては。人物の描写でしっかりしてるのは、苦悩する男を演じきるN.ケイジくらい。他の人物はその背景すら見えてこない。

しかし、いいところが全然ないわけではない。最近のアメリカ至上主義的な戦争映画ブームの一連の作品とは一線を画す部分がある。それは、人種問題に重きをおいているところ。ナバホ族は通信兵として戦場に借り出されるが、軍隊の中でかなり露骨な差別を受ける。黒人の差別はよくあるけれど、先住民族を暗号として利用したのも秘話ならば、彼らに対する差別を正面から描写したのも珍しい。もっとも、ナバホそのものの事を深く描いてほしかったし、日本人に成りすます場面などは都合がよすぎて苦笑したけれど。

ジョーは、人ではなく暗号を守る事が任務で、もしヤージーが敵の捕虜となったときは、彼の命を奪わねばならない。それ故に、最初はヤージーと親しくなるのを拒む。しかし、常に行動を共にし、ヤージーによって癒される自分に気付いたり、ある事件により、狂気にかられるヤージーの姿に自分自身を見たとき、ジョーの中で何かが変わる。民族の違いや任務による人間性の喪失に視点がおかれているのは注目すべき点だ。最近よくある、戦争は恐ろしいものだが、戦友はすばらしい、みたいな安易なメッセージではなく、人間同士として友情が芽生えていく大切さを感じさせられた。

第二次世界大戦当時、ナバホ族が暗号通信兵として活躍していたという興味深い事実を、よりドラマチックに脚色した異色の戦争映画である本作。脚本次第ではおもしろい映画になったかもしれないのに、残念だ。

ウインドトーカーズとは、暗号通信兵(コードトーカー)と、風を神聖なものと考えるナバホの文化に由来した題名である。

□2002年 アメリカ映画 原題「WINDTALKERS」
□監督:ジョン・ウー
□出演:ニコラス・ケイジ、アダム・ビーチ、クリスチャン・スレイター、他

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