映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
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(点数は100点が、★は5つが満点)
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どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週末の公開映画から オススメの1本! ◎
英・仏合作映画「パディントン2」

ジョン・ル・カレ

われらが背きし者

われらが背きし者 [Blu-ray]
イギリス人の大学教授ペリーとその妻ゲイルは、休暇で訪れたモロッコで、偶然知り合ったロシアンマフィアのディマから、組織のマネーロンダリング情報が入ったUSBをMI6(イギリス秘密情報部)に渡して欲しいと懇願される。ペリーは当惑するが、ディマとその家族の命が狙われていると知ってやむを得ず引き受けることに。だが、その日を境にペリーは世界を股に掛けた危険な亡命劇に巻き込まれてゆく…。

平凡な大学教授とその妻が、マフィアの依頼を引き受けたことで危険な運命に巻き込まれるサスペンス「われらが背きし者」。原作は「裏切りのサーカス」など多くの作品が映画化されている作家ジョン・ル・カレの小説だ。ジョン・ル・カレといえば、英国の秘密情報部MI5とMI6出身ということで、本格スパイ小説が多いのだが、本作はMI6は登場するものの、むしろヒッチコックばりの“巻き込まれ型サスペンス”という方が的確だろう。映画序盤からショッキングな殺人シーンがあり、ただならぬ気配を醸し出しながら、パナマ文書を彷彿とさせる国家的大事件へと発展していく。とはいえ、そもそも筋金入りのロシアンマフィアが、英国の政治家も関与する不正の情報という超重要機密を、見ず知らずの人間に託すだろうか?という根源的な疑問も。それでも、ごく普通の民間人が、国家的な陰謀劇に精一杯の勇気で立ち向かう様は、観客にスリリングな冒険をより身近に疑似体験させてくれる。ディマとその家族、そして告発の行方がどうなるかは映画を見て確かめてほしい。ダミアン・ルイス演じるMI6の工作員ヘクターは敵か味方か判別しにくく、共感しにくいキャラクターなのだが、彼が上司や政治家とのあつれきの中で行動し、時に無謀な作戦に出たり、挫折感を味わう様は、綺麗ごとだけではすまないスパイ組織の実情を知るジョン・ル・カレらしい設定だ。原題は“裏切者の同胞”の意味。出演者は主演のユアン・マクレガーをはじめ、実力派が揃う。地味だがいぶし銀のようなスパイ・エンタテインメントである。
【65点】
(原題「OUR KIND OF TRAITOR」)
(英・仏/スザンナ・ホワイト監督/ユアン・マクレガー、ステラン・スカルスガルド、ダミアン・ルイス、他)
(巻き込まれ度:★★★★★)

映画レビュー「裏切りのサーカス」

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◆プチレビュー◆
地味だが渋く、複雑だが緻密な“大人仕様”のスパイ映画「裏切りのサーカス」。ゲイリー・オールドマンがいぶし銀の演技を見せる。 【70点】

 1980年代の東西冷戦下、英国諜報部“サーカス”の元スパイ、スマイリーは、新たな指令を受ける。それは組織の中枢に20年も潜入しているソ連の二重スパイを捜し始末せよ、というものだった。4人の幹部組織の男たちに標的を絞り、容疑者を洗い出していくスマイリーは、やがて意外な真実にたどり着く…。

 派手な銃撃戦に、最新鋭の武器、華麗な立ち回りと美女たち。英国諜報部のスパイというと、どうしても007が思い浮かぶため、ついつい華やかなイメージを抱いてしまう。だが、実際のスパイというのは、ずいぶん地味で勤勉である。神経をすり減らす情報戦の中、登場人物の誰もが疲労感たっぷりなのも頷ける。

 原作は、元・英国情報局MI6諜報員の経歴を持つ作家で、スパイ小説の大家ジョン・ル・カレの代表作「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」。彼がMI6在職中に、実際に起こった大事件を基にしているという。

 二重スパイ“モグラ”を探る初老の元幹部スマイリーが、容疑者と目星をつけたのは、組織幹部ティンカー(鍵師)、テイラー(仕立屋)、ソルジャー(兵士)、プアマン(貧者)。東西冷戦期は、情報こそが最大の武器で、そこに権力闘争がからみ、さらにその先には、男たちの野心と哀愁、悲しい愛と理想の影が浮かぶのだ。

 主人公スマイリーを演じるのは、英国の名優ゲイリー・オールドマンだ。悪役もこなせる彼は、かつてはロックスターのシド・ヴィシャスや吸血鬼ドラキュラを演じるなど、尖がった役を得意とした個性派である。その幅広い演技力はそのままに、本作では、不実な妻を愛し抜きながら、冷静な洞察力と静かな行動力で、二重スパイを洗い出す内向的な老スパイを演じ、見る者を魅了する。ほとんど表情を変えないこの主人公の、非情な世界で生きる決意と秘めた正義感が胸を打つ。

 70年代に名優アレック・ギネス主演で約5時間のTVシリーズになったこの物語は、登場人物が多く、設定もかなり複雑で、一度で細部まで理解するのは骨が折れる。物語は遅々として進まないが、一気に謎が氷解するクライマックスの演出が見事だ。シャンソンの名曲「ラ・メール」のメロディにのって、真相がくっきりと姿を現す。そこにはあまりに哀しいロマンスがあった。残ったのは涙の形の銃痕。これこそ大人のためにある渋いミステリーである。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)いぶし銀度:★★★★★

□2011年 英・仏・独合作映画 □原題「TINKER TAILOR SOLDIER SPY」
□監督:トーマス・アレフレッドソン
□出演:ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、マーク・ストロング、他
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
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新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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