映画通信シネマッシモ


映画通信シネマッシモは、2018年4月をもって、終了しました。

ブログ終了にあたり、たくさんのあたたかいコメントをお寄せいただき、本当にありがとうございました。
皆さまの映画ライフに少しでもお役に立てたならこれほど嬉しいことはありません。
長い間のご愛顧に心より感謝いたします。

スティーヴン・スピルバーグ

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書

「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」オリジナル・サウンドトラック
ベトナム戦争が泥沼化しつつある1971年、アメリカでは反戦運動の気運が高まっていた。国防総省(ペンダゴン)はベトナム戦争についての客観的な調査・分析した膨大な文書を抱えていたが、その一部をニューヨーク・タイムズがスクープする。ライバル紙に先をこされたワシントン・ポスト紙では、女性発行人キャサリン・グラハムと編集主幹ベン・ブラッドリーの二人が残りの文書を独自に入手し、真実を伝えるため全貌を公表しようとする。だが、それはニクソン大統領率いる政府を敵に回す危険な行為だった…。

ベトナム戦争時に政府が隠した機密文書を公表するべく奔走した新聞記者たちの姿を描く社会派ドラマ「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」。最高機密文書のペンタゴン・ペーパーズとは、アメリカ政府とその4代にわたる歴代大統領が、ベトナム戦争に勝機はないとことを知りながら、それを隠したまま戦争になだれこんだた不都合な機密文書を指す。政府と大統領による隠ぺい工作とは、あきれてものが言えないが、これがアメリカ現代史の真実である。だからこそ、スティーヴン・スピルバーグは、トランプ政権誕生の瞬間に映画化しようと決意し、たった1年という短期間で見事に骨太な政治ドラマを作り上げた。まさにタイムリーな映画なのである。

映画は、政府の圧力に屈せずに報道の自由を勝ち取り、真実を公表する使命に燃えたジャーナリストたちを描くが、スピルバーグが偉大なのは、それだけにとどまっていない点だ。物語はサスペンスフルだが、政府が機密文書を隠ぺいした事や、潰しにかかったワシントン・ポスト紙が今も健在なこと、このことが後のウォーターゲート事件の引き金になった史実を私たちは既に知っている。既視感がある事実に、もう一つのタイムリーな視点、フェミニズムを持ち込み、それを軸にした点が上手い。アメリカ主要新聞社史上初の女性発行人キャサリン・グラハムは、父や夫の亡き後に新聞社を継いだ人物だが、社交は好きでも控えめな性格で、仕事では無能な経営者と思われていた。そんな彼女が、徐々に殻を破り、文字通り命がけで政府にケンカを売る決断をするプロセスは、まさに女性の成長物語そのものだ。そんなグラハムを演じる名女優メリル・ストリープの演技が、力演や熱演ではなく、静かで淡々としているのがいい。一人の女性の勇気ある決断が、アメリカを、ひいては世界の歴史を変えてみせた。大きな政治的事件を取り扱っているが、同時に、弱さや迷いを持つ生身の人間の視点を忘れない。スピルバーグが巨匠と言われる理由がよくわかる作品だ。
【80点】
(原題「THE POST」)
(アメリカ/スティーヴン・スピルバーグ監督/メリル・ストリープ、トム・ハンクス、サラ・ポールソン、他)
(フェミニズム度:★★★★☆)


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BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント

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ロンドンの児童養護施設で暮らす10歳の少女ソフィーは、好奇心旺盛で勝気な女の子。ひとりぼっちの彼女が、ある日、真夜中に窓から外を眺めていると、身長約7メートルの巨人が現れた。巨人と目があったソフィーは、大きな手で持ち上げられ、あっという間に巨人の国へと連れ去られてしまう。食べられてしまうのでは…とおびえるソフィーだったが、その巨人は、夜毎、子どもたちに夢を吹き込む仕事をしている、心優しい巨人・BFG(ビッグ・フレンドリー・ジャイアント)だった。次第に心を通わせていく二人だったが…。

「チャーリーとチョコレート工場」の作者として知られるロアルド・ダールの児童文学を映画化した「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」。近年、シリアスな作品が続いていたスティーヴン・スピルバーグが、「E.T.」のスタッフを再び集めて作り上げたファンタジー・アドベンチャーだ。家族向けというより子ども向けに作られたであろうこの映画は、わかりやすさと確信犯的単純構造が目に付く。ひとりぼっちの少女が、これまた巨人の国では浮いた存在である孤独なBFGと仲良くなるのは異なる種の交流で、王道の展開。他の巨人が人間を食べて暴れまわるのを、人間にシンパシーを感じているBFGは良しとしていない。そこで二人がとった行動が、現実世界に戻って、英国女王に助けを求めて軍隊を出動させて悪い巨人をやっつけるという作戦だ。短絡的すぎやしないか? いきなり軍隊って…? と、ツッコミたくなるのだが、よく考えると英国女王がいる現実世界は、巨人の国同様、ソフィーが暮らしていた“現実”とは異なるもうひとつの世界なのだと解釈すれば、とりあえず腑に落ちる。どこか民話のような素朴な世界観には親しみが持てるし、人間の眼をくらませるため、BFGがマントや身体を使って影絵のように“隠れ身の術(擬態化)”を披露する場面には、素直にワクワクした。勧善懲悪のシンプルなストーリーで子どもを楽しませ、潤沢な資金と最先端のテクノロジーで、ファンタジーの世界を贅沢に構築する。この余裕こそが、巨匠の懐の深さかもしれない。
【55点】
(原題「THE BFG」)
(アメリカ/スティーヴン・スピルバーグ監督/マーク・ライランス、ルビー・バーンヒル、レベッカ・ホール、他)
(ファンタジー度:★★★★☆)
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ブリッジ・オブ・スパイ

ブリッジ・オブ・スパイ 2枚組ブルーレイ&DVD(初回生産限定) [Blu-ray]
アメリカとソ連が冷戦下だった1950〜60年代。保険関連の敏腕弁護士ドノヴァンは、実直な人柄と堅実な仕事ぶりでキャリアを積み重ねてきたベテランの弁護士だ。ある日、彼は、米国が身柄を拘束したソ連のスパイ、アベルの国選弁護人をほぼ強引に委ねられる。周囲の冷ややかな視線にさらされながらも、どんな人間も正当な裁判を受ける権利があると信じるドノヴァンの弁護により、アベルは死刑を免れる。数年後、ドノヴァンは、CIAから、ソ連に捕えられたアメリカ人スパイとアベルの交換を成し遂げる大役を任されることに。それは米ソの全面核戦争を阻止するという、世界平和を左右する重大な任務だった…。

東西冷戦下の1960年に実際に起きた、ソ連による米国偵察機撃墜事件“U-2撃墜事件”の舞台裏を描くヒューマン・ドラマ「ブリッジ・オブ・スパイ」。監督スピルバーグ、主演トム・ハンクス、実話の映画化とくれば、オスカー狙いがミエミエの感動作、社会派ドラマかと思うだろう。たしかにそういう側面はあるが、本作は、思った以上にサスペンス色が濃いエンタメ作品だ。同時にとぼけたユーモアやアイロニーまであって、これまでのスピルバーグ作品とはちょっと印象が異なる。それは間違いなく、脚本を担当したコーエン兄弟のカラーが反映されているからだろう。実直な弁護士ドノヴァンは、たとえ米国中から憎まれている敵国のスパイでも、きちんと弁護する、法に忠実な愛国者。一方、ソ連のスパイのアベルもまた、決して祖国を裏切らない。自分の信念に忠実な二人の間に生まれる奇妙な友情は、本作の見所のひとつだ。映画後半、東ベルリンでのスパイ交換のプロセスは、息詰まるサスペンスで、ブルーグレーの画面の中でのスリリングな演出はさすがである。良き夫、良き父、良き市民として、平凡な人生を歩んできた男が、全力で不可能に立ち向かった知られざる実話は、見応えたっぷりのドラマだ。主演のハンクスはもちろん、アベルを演じた英国俳優マーク・ライアンスの抑えた演技が素晴らしい。何より、人と人とのつながりを肯定するメッセージが感動的で、期待通りの秀作に仕上がっている。
【85点】
(原題「BRIDGE OF SPIES」)
(アメリカ/スティーヴン・スピルバーグ監督/トム・ハンクス、ビリー・マグヌッセン、マーク・ライアンス、他)
(ヒューマニズム度:★★★★☆)
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ブリッジ・オブ・スパイ@ぴあ映画生活

リンカーン

リンカーン [Blu-ray]
理想の実現のために権謀術数も厭わないリンカーン像が新鮮な「リンカーン」。スピルバーグ渾身の作品だが、重苦しく生真面目な作りで少々疲れる。

1865年、エイブラハム・リンカーンは大統領に再選されるが、南北戦争は4年目の泥沼に突入していた。リンカーンは永久的な奴隷制度廃止のため、幾度となく議会で否決されてきた、憲法13条の修正に挑むことに。側近さえも難色を示す中、国務長官のスワードらと共に、多数決で票を確保するため、なりふりかまわぬ議会工作に乗り出す。そんな中、息子のロバートが大学を中退し両親の反対を押し切って北軍に入隊してしまう。大統領として、夫として、父として、リンカーンはある決断を下すことになるのだが…。

タイトルはアメリカ合衆国の大統領の名前だが、この映画の内容から見ると、むしろ「憲法修正第13条」という題名の方がふさわしい気がする。映画序盤に、彩度の低い映像で悲惨な戦場の様子が映るが、その後はむしろ修正法案を通すための政治のかけひきのドラマだ。超有名な偉人の伝記で結果は分かっているし、演出は動きが少なく地味。しかも終始、重苦しいトーンが続く。それでもリンカーン大統領が、自らの理想を貫くために、時に狡猾な政治手腕を発揮し、奴隷制存続を主張する政敵を出し抜くために権謀術数を駆使したという視点はなかなか新鮮だ。リンカーンは奴隷制の賛否が戦争を長引かせていることを百も承知している。だが、人間は平等だと信じる彼は、奴隷制廃止は絶対に譲れない。平和のためには血を流して戦わねばならないというジレンマは、アメリカという国が血まみれの歴史の上に成り立っていることを改めて示すものだ。内に秘める激情とはうらはらに、議会での激論はあっても、リンカーン自身は常に静かで穏やか。いや穏やかというより無表情に近く、すでに死相が表れている。なりきり系の名優ダニエル・デイ=ルイスの演技は例によって的確で、猫背なシルエットで、理想と現実の狭間で苦悩しながら修正法案成立へ執念をみせる大統領を熱演。奴隷制廃止急進派の議員を演じるトミー・リー・ジョーンズがこれまた素晴らしい。戦争終結や暗殺の場面をさらりと流したのは、平和を望み戦ったリンカーンの思いを際立たせるためだろう。いたって真面目な作風だけに堅苦しさは否めないが、リーダーの資質を改めて問いかける力作。「シンドラーのリスト」で組んだ名撮影監督、ヤヌス・カミンスキーの見事なカメラワークを堪能したい。
【70点】
(原題「LINCOLN」)
(アメリカ/スティーヴン・スピルバーグ監督/ダニエル・デイ=ルイス、サリー・フィールド、デヴィッド・ストラザーン、他)
(渋み度:★★★★☆)
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リンカーン@ぴあ映画生活

映画レビュー「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」

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◆プチレビュー◆
不思議な手触りの映像が魅力の「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」。冒険活劇を描かせたら、スピルバーグの右に出るものはいない。 【70点】

 少年記者タンタンは、購入した帆船の模型に隠された羊皮紙を発見する。そこには、宝の在り処を記したメッセージが。謎の男サッカリンから命を狙われたタンタンと愛犬スノーウィは、暗号を解く鍵を握る、大酒飲みのハドック船長と共に、危険な冒険の旅に出ることになる…。

 くるりと跳ね上がった前髪とニッカボッカーがトレードマークのタンタンと、相棒の白いフォックステリア犬スノーウィの冒険物語の原作は、ベルギーのアニメ作家エルジェによって生み出された人気コミックだ。世界的な大ベストセラーの映画化となると、ハンパな覚悟では臨めない。

 この原作の大ファンだったスピルバーグは、タンタンの世界観をパーフェクトに実現するために、フルデジタル3D(立体)と、役者の演技をコンピューターに取り入れてアニメーション化する“パフォーマンス・キャプチャー”を採用した。最新テクノロジーで描かれた、実写ともアニメとも違う独特の雰囲気の映像は、あまりにも見事である。

 物語は、財宝を探す大冒険と、17世紀に沈没した伝説の帆船ユニコーン号にまつわる世代を超えた因縁の対決だ。タンタンとスノーウィ、ハドック船長らは、乗り込んだ貨物船から脱出して海へ、飛行機で逃避して砂漠へ、さらには17世紀の海賊船のバトルの記憶へと、壮大なアドベンチャーを繰り広げる。

 注目したいのは、アニメでしか成しえないカメラアングルの映像だ。愛犬スノーウィが、拉致されたタンタンを追ってジャンプする躍動感、砂漠が海へと変貌するスペクタクル、モロッコの街でのカーチェイスなど、見所が満載だ。あまりにめまぐるしいので、終盤にはドキドキ感がマヒしてしまうほど。むしろ、映画序盤の、どこかフィルム・ノワールの香りを漂わせる、静かで不穏な空気の方が、記憶に焼きついた。

 気合の入った映像と、息をもつかせぬ大冒険。じっくりとドラマを味わう時間は与えてくれないが、久しぶりにスピルバーグらしいエンタテインメントに出会えた喜びは大きい。原作者エルジェいわく「タンタンのターゲットは7歳から77歳までのすべての若者」だそう。映像革命という名の宝探しに一緒に出かけてみよう。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)冒険活劇度:★★★★★

□2011年 アメリカ・ニュージーランド合作映画 
原題「THE ADVENTURES OF TINTIN: THE SECRET OF THE UNICORN」
□監督:スティーヴン・スピルバーグ
□出演:(声)ジェイミー・ベル、アンディ・サーキス、ダニエル・クレイグ、他

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タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密@ぴあ映画生活

映画レビュー「イーグル・アイ」

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◆プチレビュー◆
ノンストップで駆け抜けるサスペンス・アクション。全編にヒッチコックの香りが漂っている。 【65点】

 コピー・ショップの店員ジェリーとシングルマザーのレイチェルは、突然、謎の女からの電話を受ける。「私の指示に従わないと死ぬことになる」と告げられ、とまどう2人。電話の声は次々に命がけのミッションを課すのだが…。

 映画とは、つくづく拡大再生産型のメディアだと思う。トーキーやカラーのような真に革新的な技術は数えるほどで、新作の役目の多くは偉大な過去を継承することにある。すべての芸術の進歩は“美しい模倣”が基本なのだ。スピルバーグ原案の本作は、サスペンスの神様ヒッチコックの応用作品のよう。コンセプトは、監視社会とテクノロジーの脅威への警鐘だ。それ自体は目新しくないが、21世紀スタイルのジェットコースター・ムービーは間違いなく観客を興奮させる。

 何しろ最初から最後までハイ・テンションで息つく暇がない。それでも、冒頭のアフガンでのテロ討伐と、ジェリーが一卵性双生児という2つだけはしっかりと覚えておこう。全く面識がなかったジェリーとレイチェルは“選ばれて”相棒となる。物語の中盤までは、逃げまくる彼らの姿を追うだけで精一杯だ。電話の指示があまりにムチャなので守りたいのか殺したいのか疑いたくなるが、その読みは確実に追っ手の先をいく。怒涛の展開すべてがヤマ場状態で、もちろん大迫力のカーチェイスも満載だ。ATMや携帯電話、街の信号や電光掲示板などを自由自在に操って2人を導く電話の女の目的とは? 女の正体と極秘のイーグル・アイ計画の実態が分かる中盤以降は、その敵は牙をむいて襲ってくる。

 それにしてもこの映画のヒッチコック度の高いことと言ったらない。まず、巻き込まれ型サスペンスというのがヒッチだ。ケーリー・グラントやジェームズ・スチュワートの上品さには劣るが、シャイア・ラブーフのポカンとした表情はいかにもこのテの物語にフィットする。広々とした平原で襲われる場面は「北北西に進路を取れ」だし、オーケストラ演奏をモチーフにするのは「知りすぎていた男」だ。D・J・カルーソーという監督、よほどのヒッチコキアンに違いない。

 謎の女の名はアリア。金色に輝く彼女と対面した主人公は驚愕するが、これは正直、予想通りだ。こんな人間離れしたマネが出来るのは他にはいない。ただ、ジェリーに比べレイチェルが選ばれた理由に説得力が薄いのが気になる。演奏する子供たちの中でなぜ彼女の息子サムなのか。あらゆる情報操作が可能なアリアなら、もっと簡単で迅速で確実な方法を選べるだろうに。そもそも、目的達成のためにこんな手の込んだプロセスが必要か?との疑問もわく。まぁ、それを言っては身もふたもなくなるが。

 ともあれ、平穏な日常は命懸けの非日常へ。最先端のテクノロジーの暴走を描いた本作の怖さは、国家がミスッたらどういうツケを払うことになるかをシミュレーションしたことだ。私たちには、国家的陰謀を知る機会も阻止する術もないが、アリアは間違いなくもう生まれている。興奮冷めやらぬまま映画館を出て、安全な現実にホッとする人も多いはず。だが本当にそこが安全かどうかは、そろそろ考えた方が良さそうだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)恋愛度:★☆☆☆☆

□2008年 アメリカ映画 原題「EAGLE EYE」
□監督:D・J・カルーソー
□出演:シャイア・ラブーフ、ミシェル・モナハン、ビリー・ボブ・ソーントン、他

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ミュンヘン

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◆プチレビュー◆
記録映画やTV映画にもなった手垢のついた事件をいまなぜ映画化なのか?ラストの世界貿易センターの映像は、あまりにも“読める”演出で苦笑。いっそ得意のSFにでもして、未来のイスラエルをシュミレーションするくらいの心意気をみせてほしかった。

1972年ミュンヘン・オリンピック開催中に、パレスチナ・ゲリラによるイスラエル選手団襲撃事件が勃発。これに激怒したイスラエル側は、事件後ひそかに暗殺チームを編成し、報復を企てる。愛国心の強いアヴナーはこのチームのリーダーに任命されるが、任務を遂行するうちに彼の心に恐怖と疑問が沸き起こる…。

物語の軸は、選手団襲撃事件の後の、長い時間と膨大な経費をかけた殺人計画。雇い主はイスラエル国家だ。複雑な政治と歴史がからむ話なので、できれば72年の五輪の前からの中東情勢を予習して見ると、テロと報復の悪循環をより深く理解できる。

妻や子どもを愛し料理が大好きという細やかな面を見せるアヴナー。彼を人間的な好人物にすることで、報復行為のむなしさと極限の緊張からくる心の強迫が際立った。また、爆弾テロによる流血沙汰は、スピルバーグらしく生々しいまでのリアリズム。銃弾の数までも綿密にリサーチして作り上げたというからすごい。この映画にかける意気込みが伝わってくるようだ。

映画のメッセージは、平和の尊さを訴える真面目で素晴らしいものだ。暴力に暴力で応えても殺し合いは永遠に続き、決して平和などない。同じ人間同士、もっと歩み寄ろう。大いに賛成だ。しかし、事件から30年以上たった今もテロの連鎖が止まない現実は世界中が知っている。もつれにもつれた中東情勢は「きれいごと」では解決できないところまできているのではないのか。それを知っているはずのユダヤ人スピルバーグが描く映画なら、もっと違う、驚くような答えがほしかった。私たち観客は、スピルバーグにはより高いレベルのものをいつも要求してしまう。なぜなら、彼にはそれを映像化できる実力も経済力もあるのだから。

□2005年 アメリカ映画 原題「Munich」
□監督:スティーヴン・スピルバーグ
□出演:エリック・バナ、ダニエル・クレイグ、ジェフリー・ラッシュ、他

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