映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ワンダーウーマン」「エル」「関ケ原」「ボブという名の猫」etc.

セシル・ドゥ・フランス

少女ファニーと運命の旅

ナチスドイツ支配下の1943年フランス。13歳のユダヤ人少女ファニーは、両親と離れ、二人の幼い妹たちと一緒に協力者による児童施設に匿われていた。密告者の通報でナチスの捜査が迫り、別の施設に移動することになるが、そこもまた危険が迫る。ファニーを含む9人の子どもたちはスイスを目指して移動するが、途中、引率者の大人とはぐれてしまう。リーダー役となったファニーは、子どもたちをまとめながら、数々の困難を、知恵と勇気で乗り越え、スイス国境を目指すのだった…。

ナチス支配下のフランスからスイスを目指したユダヤ人の子供たちの逃避行の旅を描くドラマ「少女ファニーと運命の旅」。実在した女性ファニー・ベン=アミの自伝をもとにした実話だ。ナチスの手を逃れるため、子どもたちだけでスイスを目指したサスペンス風味のドラマなのだが、極限状態の中でも、フランスの田舎の風景は牧歌的で美しく、無邪気な子どもの目を通した旅はどこか冒険旅行のような趣さえ感じられる。リーダー役となったファニーは、頑固で勝気だが、同時に心優しい女の子だ。子どもたちの中には、まだ戦争や迫害といった現実を理解できないほど幼い子がいる一方で、複雑な出自をかかえ悩む子もいる。そんな“混合チーム”を率いる小さな指揮官ファニーの、どれほどの逆境でも決してあきらめない意志の強さと健気な姿が感動的だ。ファニーは心の中の不安を封じて皆を引っ張り、旅を通して大きく成長していくことになる。

監督のローラ・ドワイヨンは、「ポネット」などの名匠ジャック・ドワイヨンの娘だそう。才能は確かに受け継がれているようだ。不安な現代に、平和の尊さを訴えるのは、いつだって希望を失わない子どもたちのまっすぐなまなざしだ。子どもたちの生命力と、危険を顧みず正義を行った大人たちの存在が、胸を打つ佳作である。
【70点】
(原題「LE VOYAGE DE FANNY/FANNY’S JOURNEY」)
(仏・ベルギー/ローラ・ドワイヨン監督/セシル・ドゥ・フランス、ステファン・ドログロート、レオニー・スーショー、他)
(健気度:★★★★★)
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少年と自転車

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育児放棄された少年と彼に関わる大人たちを描く「少年と自転車」。少年が里親と自転車で川辺を走る場面が素晴らしい。

児童養護施設で暮らす12歳のシリルは、父親が必ず迎えに来ると信じている。だが父は息子を引き取る気はなく、生活のためシリルの自転車を売り、行先も告げずに引っ越してしまう。シリルは、偶然知り合った美容師の女性サマンサに「週末だけ里親になって」と頼み、なんとか父を探し出すが…。

ダルデンヌ兄弟は、社会の底辺で生きる人々の家族関係をみつめ続けているが、本作は血のつながりを超えた親子の絆を描き、少年と彼の里親になる女性の両方の成長を描いている。日本の施設の少年のエピソードから着想を得たそうだ。親から捨てられるという現実は、12歳の少年にはあまりに残酷で、シリルがそのつらさに耐えられずに、身体をかきむしる場面が痛々しい。それは、すぐ近くにいる里親サマンサの愛情さえ感じとれなくなるほどの痛みなのだ。愛し愛されることの意味を知らない不幸を、幼い少年が全身で体現している。反抗を繰り返したシリルはやがて事件を起こし、サマンサの真の愛情を知るのだが、彼は事件収束後に、ある“罰”を受けることに。その時シリルが、自分の犯した罪を自覚し、サマンサとのつながりを信じて再び歩き始めるのが感動的だ。タイトルの自転車は、少年のイノセンスの象徴だが、同時に、父親、里親、彼を惑わせる不良少年ら、社会の中の他者と関わるツールの役割を果たしている。里親になることで自身も成長し母性に目覚めたサマンサと、信じられる大人がいることを知ったシリルが、自転車で一緒に川辺を走る場面が心に残った。愛情を求めて街を疾走していたシリルに、共に寄り添い光の中で併走してくれる存在がいることが、この場面の幸福感につながっている。厳しい現実の中から生まれるひとすじの希望を描いた物語だ。
【70点】
(原題「LE GAMIN AU VELO」)
(ベルギー・仏・伊/ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ兄弟監督/セシル・ドゥ・フランス、トマ・ドレ、ジェレミー・レニエ、他)
(痛々しさ度:★★★★☆)
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映画レビュー「ヒア アフター」

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◆プチレビュー◆
死と隣接した3人の男女が巡り会う物語「ヒア アフター」。これまでのイーストウッド作品とは少し違う手触りだ。 【65点】

 仏人ジャーナリストのマリー、霊能力がある米国人ジョージ、双子の兄を亡くした少年マーカス。臨死体験をしたマリーが書きあげた本が発売され、3人は何かに導かれるようにマーカスの住むロンドンで巡り会う。死に直面した彼らが見い出す答えとは…。

 死を深くみつめることで生の意味を知る。本作のテーマを端的に表すと、こういう言葉になるが、それは決して簡単なことではない。死後の世界や、死者との交流というスーパーナチュラルな物語を、常に現実をみつめてきたイーストウッドが監督するのは少し意外で、むしろ製作総指揮のスティーブン・スピルバーグの好みに近いように思う。だがイーストウッドには、信仰や宗教を隠し味にした「ペイルライダー」のような作品もあることを考えると、スピリチュアルな題材に対する興味はこの人の意識の根底にあったのかもしれない。

 運命的に巡り会う、国籍も性別も年齢も異なる3人は、皆、死によって影響を受けているが、死との“出会い”はそれぞれ異なる。マリーは東南アジアで津波に巻き込まれ、臨死体験をする。触れたのは自分の死だ。彼女は、それ以来、現実と上手く向き合えなくなってしまう。一方、死者と交信ができるジョージが自分の能力を持て余すのは、他人の死にまつわる情報に苛まされるため。「この能力はギフト(贈りもの)なんかじゃない。カースト(呪い)なんだ」。ようやく心が通い始めた愛する女性メラニーも、その力のためにジョージから離れてしまい、彼の孤独はますます深まった。この哀しいエピソードは、ジョージの能力の功罪を象徴していて、とても印象に残る。

 痛ましいのはマーカスだ。強い絆で結ばれていた双子の兄を突然失い、母とも引き離され、深い喪失感を感じている幼い少年は、もう一度兄に会いたいと願っていて、子供らしいまっすぐな思いで霊能力者を訪ね歩く。マリーやジョージのエピソードより、マーカスのそれがより切実なのは、彼が経験したのが、自分にとって大切な人に訪れた死だからだ。近年のイーストウッド作品では、愛する人を失う悲しみがしばしば描かれ、そのことがストーリーを激しくうねらせるのだが、本作ではイーストウッドの、登場人物たちを救済したいとの思いが、より強く感じられた。だからこそ、映画は、死を描きながら生を肯定するストーリーへと昇華していくのである。

 人間は死んだあとはどうなるのだろう? 誰もが一度は頭をよぎる疑問だ。イーストウッドは、ディザスター映画さながらの巨大津波をCGによってスクリーンに叩きつけて観客の意表を突いた後に、水中に、死後の世界の輪郭をぼんやり浮かび上がらせた。その不思議なビジョンはまるで夢のように静かに存在している。穏やかな死の世界と登場人物たちが、イーストウッド作品特有の渋い色彩や、そっと寄り添うように流れる音楽と溶け合う様は、コーヒーにじんわりとミルクが溶け込んでいく様子にも似て、ごく自然だ。生と死を明確に分離するのではなく、私たちの周辺に当然あるものとしての死を、肯定的に受け入れる。そのことをスピリチュアルな体験を通して描くスタイルは、リアルな人間ドラマを得意とするイーストウッドの新しい挑戦なのだ。1930年生まれの老巨匠は、映画に対して果敢なチャレンジ精神を決して忘れない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)スビリチュアル度:★★★★☆

□2010年 アメリカ映画 原題「HEREAFTER」
□監督:クリント・イーストウッド
□出演:マット・デイモン、セシル・ドゥ・フランス、ブライス・ダラス・ハワード、他


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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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