ぼくたちのムッシュ・ラザール [DVD]ぼくたちのムッシュ・ラザール [DVD]
教育現場の本音と建前をシビアに描くと同時に不思議なあたたかさを漂わせるカナダ映画「ぼくたちのムッシュ・ラザール」。ラザール先生役のフェラグもいいが、子役たちがとてもいい。

カナダ・モントリオールのとある小学校で、ある冬の朝、女教師が教室で首を吊って自殺した。生徒だけでなく、教師も皆ショックを受け、動揺する。子供たちの心のケアと共に後任の教師探しが急務となるが、事件の後では、なかなか教師は見つからない。そんな中、アルジェリア出身の中年男性バシール・ラザールが代用教員として採用される。ラザール先生は、どこか野暮ったく、教え方も古臭いのだが、その温和で誠実な人柄で徐々に子供たちと打ち解けていく。生徒の中でも、死体を最初に発見した少年シモンと少し大人びた少女アリスは、ラザール先生に特に興味を抱く。だがラザールもまた、祖国でのテロで家族を失いカナダへと移り住み、多くの苦悩を抱えていた…。

とても繊細な映画だ。だが同時にとても力強く品位にあふれた作品でもある。教師の自殺というショッキングな出来事が発端だが、学校側の態度は事なかれ主義。事件に向き合わず、一刻も早く忘れてしまおうと、話題にすることさえ嫌がる。だが、ラザール先生は違った。なぜなら彼の母国アルジェリアは、テロによる恐怖が蔓延し、死はとても身近にある。しかもそれは、病死や事故死ではなく、悪意によってもたらされる死なのだ。ラザール先生の朴訥とした、だが品格のある授業の合間に、彼がカナダでの永住権が取れるかどうかの審議のプロセスが描かれる。ラザール自身の心の傷を観客は少しずつ知ることになるため、ついに彼と生徒が、教師の自殺と死について話し合うシークエンスに緊張感と説得力が生まれている。教師の死は自分に責任があるのではないかと悩むシモンと、前向きで聡明な少女アリスの二人がストーリーをゆるやかに牽引していて、この二人の子役が本当に素晴らしい。ラザール先生のある秘密が発覚し、季節が変わる頃、先生は学校を去ることに。悲しみを押し殺して臨む最後の授業の、なんと感動的なことだろう。授業のテーマの寓話に、この作品のメッセージがすべて込められている。これは、自身も傷ついた一本の大木が、激しい嵐にさらされた“さなぎたち”を守ろうとする物語なのだ。予定調和や安易な結末はあえて避け、静かな詩情の中に、真の教育とは何かを冷徹なまなざしで問いかけた秀作だ。
【80点】
(原題「MONSIEUR LAZHAR」)
(カナダ/フィリップ・ファラルドー監督/フェラグ、ソフィー・ネリッセ、エミリアン・ネロン、他)
(再生度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

ぼくたちのムッシュ・ラザール@ぴあ映画生活