映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週末の公開映画から オススメの1本! ◎
チリ他合作映画「ナチュラルウーマン」

ソル・ギョング

殺人者の記憶法

殺人者の記憶法 (新しい韓国の文学)
元連続殺人鬼の男ビョンスはアルツハイマーを患いながらも、娘と二人で穏やかに暮らしていた。ある日、偶然出会った男テジュの異様な雰囲気を感じ取り、彼もまた自分と同じ殺人鬼であることを直感する。ビョンスは警察にそれを通報するが、テジュは実は警察官で、誰もビョンスの言うことを信じようとしない。ビョンスは自らテジュの凶行を阻止しようとするが、ビョンスはアルツハイマーによる記憶の喪失に苦しめられる。そんな中、新たな連続殺人事件が発生するが…。

アルツハイマーを患う元連続殺人鬼が新たな殺人鬼と死闘を繰り広げる様を描く異色サスペンス「殺人者の記憶法」。物語は、殺人鬼VS殺人鬼のバトルの構図だが、主人公ビョンスは年老いてアルツハイマー、一方、敵のテジュは若い警察官。あまりに分が悪い戦いだ。何よりもビョンスは自らの記憶の混濁と戦わねばならない。メモを取り、録音し、昨日の自分の行動をたどる様は「メメント」さながらだが、記憶を整理していく過程で、なぜビョンスが殺人を繰り返してきたかという謎や、ビョンスの罪悪感、アイデンティティーに一人娘への愛情など、単純な善悪では割り切れない思いや心理が絡み合う。複雑なのに、それを見事に整理した脚本が巧みだ。

韓国映画のサスペンスは人気のジャンルだが、特に地方の田舎町の閉塞的な空気や土着性、古い慣習などの独特のムードを活かした作品に優れたものが多く、本作もまたそんな系譜につながる1本だ。人殺しを習慣とする二人の殺人者の対決は、周囲を情け容赦なく巻き込みながら、予想外の展開へとなだれこむ。なりきり型の演技派俳優ソル・ギョングが10kg以上減量して作り上げた老いとやつれっぷりがすさまじく、演技に凄みを増している。体重を14kg増やしてテジュを演じたキム・ナムギルの、爬虫類のような薄気味悪さも好対照だ。見終わってみれば、猟奇殺人のサスペンスでありながら、秀逸な人間ドラマを見たことに気付かされる。竹林の場面など、思わずハッとさせられる美しい映像も見所だ。
【80点】
(原題「MEMOIR OF A MURDERER」)
(韓国/ウォン・シニョン監督/ソル・ギョング、キム・ナムギル、ソリョン、他)
(役作り度:★★★★★)


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ザ・スパイ シークレット・ライズ

ザ・スパイ シークレット・ライズ [DVD]
凄腕スパイと夫の正体を知らない妻が大事件に巻き込まれるスパイ・アクション・コメディ「ザ・スパイ シークレット・ライズ」。韓国映画らしいサービス精神がてんこもりだ。

キム・チョルスは大韓民国最高のスパイだが、妻ヨンヒの前では平凡な夫として妻の尻に敷かれている。ある日、タイで極秘任務を遂行していると、突如、レーダー網にヨンヒの姿が。しかも謎のハンサム男ライアンと一緒だ。チョルスの心は妻と任務の間で揺れ動き、集中力を失ってしまう。さらにライアンがからんだ事件により、核兵器を使った国籍不明のテロ事件が発生し、チョルスは妻ヨンヒと共に事件に巻き込まれていく…。

ソル・ギョングとムン・ソリ。韓国映画界を代表する演技派俳優たちは、かつて秀作「オアシス」で共演していて、本作は約10年ぶりの顔合わせとなる。凄腕の諜報員でありながら、家庭では妻に頭が上がらない夫という設定、さらに妻と任務の間で公私混同する展開と聞くと、すぐにシュワルツェネッガー主演の「トゥルーライズ」を思い出してしまう。なるほど設定はそっくりで、終盤にはご丁寧にヘリから宙づりになるという、これまたソックリのアクションシーンもあって苦笑してしまった。韓国版「○○」という作品には、こんな風に、臆面もなくハリウッドの過去作をトレースするものが多い。だが、韓国映画らしい味付けをするのも忘れておらず、そこに必ず登場するのが南北問題。北朝鮮からの亡命を希望する科学者、六か国協議に軍需産業の陰謀…と、政治的設定はなかなか深くてリアルだ。さらに、女性が強く、母親の力が絶大な韓国社会を反映し、妻に頭が上がらない設定や跡継ぎ作りに励む姿など、大いに笑わせる。ドタバタコメディもソル・ギョングとムン・ソリの演技派2人なら安心というものだ。IT大国の韓国らしいガジェットもまた楽しく、韓国映画界が近年力を入れるアクションの頑張りが見て取れる作品だ。
【55点】
(原題「SPY」)
(韓国/イ・スンジュン監督/ソル・ギョング、ムン・ソリ、ダニエル・ヘニー、他)
(コミカル度:★★★★☆)
チケットぴあ

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ザ・スパイ シークレット・ライズ@ぴあ映画生活

カメリア

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タイ、日本、韓国の3つのアジアの才能が結集し、釜山を舞台にした3話オムニバス映画が出来上がった。テーマは愛。過去、現代、未来と、時を飛び越えるように展開する物語は、無国籍な都市の空気を醸し出している。

第1話「IRON PUSSY」:1979年、タイから来て、女装して釜山でスパイ活動をしているアイアン・プッシーは、ある時、韓国人男性ジホンと恋に落ちる。だが次なる暗殺のターゲットは、ジホンその人だった…。第2話「Kamome」:映画の撮影で釜山にやってきたカメラマン、ヨンスは、夜、裸足で街をさまよう美少女カモメと出会う。不思議な雰囲気の少女に付き合って歩き回るうちに、やがてほのかな恋心を抱くのだが…。第3話「LOVE FOR SALE」:近未来の釜山では、脳から愛の感情と記憶を取りだして売り買いするビジネスが流行。かつてこのビジネス組織から愛する人との仲を引き裂かれたジェイは、復讐を誓い、すべてを賭けて闇の組織に立ち向かう…。

3話とも釜山を舞台とするが、いわゆる観光案内的な映像がないところがいい。共通するのは、男のピュアな愛情だ。「IRON PUSSY」は、女装するスパイが若くも美しくもないのに、レトロシックな装いでキメキメなのが妙に可笑しい。デタラメさが魅力のコメディかと思いきや後半は不必要にシリアスになるのが残念。一方、行定勲の「Kamome」が、とても綺麗にまとまっているのが、いかにも真面目で“日本的”だ。なりきり俳優として知られる名優ソル・ギョングの無骨さに、ふわふわしたイメージの吉高由里子がうまくマッチング。この物語のオチは予想できるが、それでもピュアな切なさが残る好編だ。面白いのは「LOVE FOR SALE」。イケメン俳優カン・ドンウォンが愛に翻弄される姿は、ファンにはたまらないだろう。釜山らしさはあまり感じないが、愛の記憶を売り買いするというアイデアは、ハリウッドが買いそうなプロットで、冴えている。3人の監督は、いずれも釜山国際映画祭と縁がある監督たちだ。オムニバス映画としては荒削りで、決して洗練されているとは言い難いが、こういう形でアジアの才能がコラボする企画は大歓迎。都市を変え、作り手を変えての次回作を期待したい。
【60点】
(原題「Camellia」)
(タイ・日本・韓国/ウィシット・サーサナティアン、行定勲、チャン・ジュナン監督/ミシェル・シャオワナサイ、キム・ミンジュン、ソル・ギョング、吉高由里子、カン・ドンウォン、ソン・ヘギョ、他)
(男の純情度:★★★★☆)



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カメリア@ぴあ映画生活

TSUNAMI−ツナミ−

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韓国映画界が巨費を投じて制作した正統派ディザスター・ムービーだが、人間ドラマが無駄に騒々しい。加えて、あまりに設定が巨大すぎて現実から遠ざかってしまった。マンシクは遠洋漁船に乗っていて事故と津波に遭遇し、幼馴染のヨニの父親を死なせてしまう。それを悔やむあまりヨニへの恋心を打ち明けられずにいた。海洋救助隊員のヒョンシクは海で溺れていた若く快活な女性ヒミと恋に落ちる。一方、地質学者キムは、日本海で連続して発生する地震から、やがて韓国の沿岸を巨大な“メガ津波”が襲うと予告するが、地震のない韓国に津波なんて…と信じてもらえない。そんな彼らの前にメガ津波が現実となって押し寄せてきた…。

釜山のヘウンデは、美しい海岸線で韓国八景に選ばれるほどの高級リゾート地。その“韓国のマイアミ”が地獄絵図と化す様は、なるほど映画的ではある。前半は、年齢も職業も違う男女それぞれの、平凡だがかけがえのない日常がコミカルに描写される。これがいかにも韓国映画らしい情の濃いエピソードばかり。最近は韓国映画も随分洗練されてきて、アート系の小品などは物静かな作品が多いが、これは久しぶりに見たコテコテの人間描写だ。メガ津波に襲われて大パニックになり、理性を失いながらも、友情や愛、家族の絆など、定番の思いが、極めて意識的に泥臭く描かれる。技術的には、アジア映画の進化と銘打った高度なCGが売りなのだが、やはりハリウッドのそれを見なれた目にはどこかしらじらしい。ハリウッドのディザスター映画はそれだけを単体で見ているといろいろと文句を言いたくなるが、やはり他国の映画と比べてダントツにレベルが高い。水のCGカット数とかデータ量とかいう数字の問題ではなく、米国産パニック映画は、映像全体を構成するセンスがいいのだと改めて思う。

ただ本作の問題は別のところにある。それは、巨大津波が100メートルを超えるという設定だ。資料を見ると、あのとてつもない被害をもたらしたスマトラ沖大地震による津波ですら10から20メートルの間。となると100メートルというのは、いくらなんでもやりすぎだ。釜山のヘウンデはおろか、韓国全体を、いや朝鮮半島全部を呑みこんで木端微塵にしてしまいそうである。これでは別の意味で、南北統一しかねない。ともあれ、韓国映画界のディザスター・ムービー制作へのチャレンジ第一歩として評価したい。
【50点】
(原題「TSUNAMI/HAEUNDE」)
(韓国/ユン・ジェギュン監督/ソル・ギョング、ハ・ジウォン、パク・チュンフン、他)
(コミカル度:★★★☆☆)

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ペパーミント・キャンディー

ペパーミント・キャンディー
韓国映画「光州5・18」では、光州事件の全貌が描かれている。この事件は、1980年5月18日から27日にかけて、韓国の光州市で発生した民主化運動弾圧事件。韓国の歴史の中でも特に悲劇的な傷跡を残す出来事と言っていい。

光州事件を、初めて“正面から”描いた「光州5・18」だが、それ以前にもさりげなくこの事件について触れている映画は、いくつかある。その中の1本が、イ・チャンドン監督、ソル・ギョング主演の「ペパーミント・ジャンディー」だ。

物語の主人公は、全てを失くして自殺しようとする男ヨンホ。病床にある初恋の女性を見舞う3日前に遡るのを発端に、ストーリーは、時間を逆行するというユニークな構成で描かれる。事業では成功するものの妻の浮気を知る。警察が国家に隷属していると知りつつ刑事になる。苦く痛烈な思いをする徴兵時代。愛する人と未来に対して輝く夢を語った20歳の頃。これは、自殺寸前の中年男が、最後に希望に満ちた若者へと変わる皮肉な仕掛けだ。

主人公が人生の敗北者であることは、映画冒頭ではっきりと分かる。なぜこうなったのかということを時間を遡って語っていくのだが、主人公ヨンホの人生を狂わせるきっかけになったのが、徴兵時代に経験した光州事件という設定だ。一兵士だったヨンホは、戒厳令下の中、暗闇の中で負傷し、誤って発砲。不可抗力で女子高生を射殺してしまう。平凡で前向きな青年だった彼の心に、この出来事は、大きな傷となって残ってしまい、その後、自暴自棄の人生をおくることになってしまうのだ。

「光州5・18」は民衆の側に立ったドラマで、何の説明もなく丸腰の市民や学生に発砲した軍は、匿名性の強い無個性な人間たちとして描かれる。だが「ペパーミント・キャンディー」の主人公のように、何が何だかわからないまま命令を受けた若者も大勢いたに違いない。事実、当時の軍事政権によって、厳しいマスコミ統制が行われていたため、一部の例外を除いて、外国メディアはおろか、韓国国民にも事件について詳しく説明されることはなかった。長い間、光州市民は暴徒と考えられていたというから、まさしく悲劇だ。両方の作品を見ると、いかにこの事件と時代が不当なものであったか理解できる。

主人公が徴兵される前に勤めていた工場で作っていたのがペパーミント・キャンディー。純粋さと希望の象徴に思える。時間を遡るという個性的な演出法が印象に残る作品だったが、事件を正面からとらえた「光州5・18」が世に出た後ならば、逆に本作の演出意図も伝わりやすくなろう。一人の男の人生を語る形で、韓国の近・現代史をたどり、同時に現代へとつながる民主化への苦い流れを検証しているのだ。

ちなみに本作は、日本のNHKと韓国の共同制作で、韓国の日本文化開放後、両国が最初に取り組んだ記念すべき作品だということも付け加えておきたい。

出演は、ソル・ギョングほか、ムン・ソリ、キム・ヨジン、他。

(1999年/日本・韓国/イ・チャンドン監督/原題「Peppermint Candy」)

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力道山

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◆プチレビュー◆
修行時代は本当はもっと差別されたはず。日本にやや遠慮した作りでは?力道山の得意技「空手チョップ」は日本と日本人に振り下ろされたものだろうか。試合の場面では多くのプロが出演しているので格闘技ファンの人は必見。

北朝鮮出身の金(キム)は、日本で横綱を目指して相撲にはげむ日々を送る。実力もありスポンサーにも恵まれて力道山という名前をもらうが、彼の前には常に激しい国籍差別が横たわっていた。相撲界での可能性に見切りをつけた彼は、新しいスポーツであるプロレスに転向して活躍してゆく…。

映画は力道山がクラブで刺されるという衝撃的な場面から始まり、彼の苦難の半生を回想するスタイルを取る。プロレスラーの力道山という名前は知っていても、本当の姿を知る機会はなかった。朝鮮人と侮蔑され、その出自を隠して生きていかねばならないつらさ。有名になればなるほど深まる孤独。映画は昭和のヒーローという輝かしい姿をことごとく打ち砕く。

実在の人物を描く場合、演じる役者のアプローチが何よりものを言うが、主演のソル・ギョングの役者根性は凄い。彼は本物の韓国実力派俳優だが、その人物が体重を28キロ増量し、プロレスの技を修得し、さらに映画の97パーセントのセリフを日本語でこなしている。外国人が話す日本語は概ねたどたどしいが、本作では、たくましい格闘家という役柄上、不器用な話し方がかえって効果的となった。そもそも力道山はいつのときも全身で闘ってきた人物。セリフはもともと重要ではないのかもしれない。

「自分は何人でもない。世界人なんだ」とは、力道山の有名な言葉だ。朝鮮人でありながら、日本にやってきて、アメリカへも修行に行き、敗戦後の昭和の日本人のヒーローとなった男。この前向きなセリフの裏側には、どこにも帰る場所がない、故郷を持たない深い悲しみが満ちあふれている。

□2005年 韓国・日本合作映画 英語原題「Rikidozan」
□監督:ソン・ヘソン
□出演:ソル・ギョング、中谷美紀、萩原聖人、他

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シルミド

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◆プチレビュー◆
韓国では主人公たちを重犯罪者として描いたことに不満の声があったらしいが、封印されてきたこの事件に陽が当たり、事件そのものに興味を持って歴史を紐解く人々が少しでもいれば、映画を作った価値は十分にある。

60年代後半、北朝鮮の工作員による韓国の政府要人暗殺未遂事件が起こる。このことに危機感を抱いた韓国政府は死刑囚を密かに無人島のシルミ島(ド)に集めて684部隊として軍事訓練を施した。目的は北朝鮮に潜入して最高指導者の金日成を暗殺すること。しかし朝鮮半島の政治は常に流動しており、緊張していた状態から融和政策へと路線を変更した。このことにより、秘密裏に計画された軍事暗殺は中止、さらに部隊を極秘の内に抹消するように厳命が下される…。

非常にやるせない話である。実話と聞くとなおさらだ。映画は政治に利用された人間が国家から見捨てられていく悲劇を描くと同時に、このような事件を何十年も封印してきた韓国の歴史に告発の声を上げている。映画「オアシス」で迫真の演技を披露したソル・ギョングが強靭な精神力で訓練に耐え、684部隊のリーダーとなる人物カンを演じている。物語は父親が北朝鮮に亡命したため、ヤクザものとしてしか生きる術がなかったカンと、最初はカンに敵意を持っていたが次第に心を通わせるハン、さらに彼らを訓練する軍人のチェ准尉を中心に描いていく。

実話といっても映画化にあたり脚色はなされている。軍事訓練を受ける集団は死刑囚だが、実際は様々な職業の人々の寄せ集めだったらしい。劇中では、社会のはみだし者が何かを成し遂げ世間から認めてもらおうとする希望や、仲間との友情など、随所に盛り上げる要素があり、映画としての道筋を作っているようだ。しかし、ひとつだけ大きな疑問が頭から離れない。暗殺計画の中止を知り、政府側の裏切り行為を薄々感じた彼らが、島を脱出して向かう場所が、韓国の大統領府だということだ。なぜ無理やりにでも北朝鮮を目指さないのか?そのためだけに地獄の訓練を耐え、北への潜入を体に叩き込まれた特殊部隊じゃないか。エリート軍人ならともかく、底辺で生きてきたはずの彼らが権力者に何を訴え何を期待するというのか。北に亡命した父を持つ男という設定もこれでは全く活きない。ソウルへ向かったのは事実なので納得するしかないが、物語として辻褄があってないように思う。

決断を下すことを放棄し結局は誰のためにもならない“行動”をしてしまう隊長を演じるのは韓国の国民的俳優アン・ソンギだ。彼は部隊の男たちにとって父性の象徴ともいえる。目上の者や両親を尊敬する韓国社会の定義が、70年代初めにして既に崩壊していたと解釈できる。

戸籍を奪われたことを知りつつ自らの名前に誇りを持って最期の時を迎える684部隊。情緒的な音楽にのって涙を誘う演出は、韓国エンタテインメントの十八番だ。硬派な素材なのに“いつもながらの”演出スタイルに少々辟易しないでもないが、自国の歴史の最もさらしたくない部分に光をあてて骨太の映画に仕上げ、興行的にも成功してしまうところは今の韓国映画界の勢いそのままだ。珍しく恋愛部分が全くないのでむさくるしいが、男のドラマを描くのも韓国映画の一大潮流なのである。

□2003年 韓国映画  原題「SILMIDO」
□監督:カン・ウソク
□出演:ソル・ギョング、アン・ソンギ、チョン・ジェヨン、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
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新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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