映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ジャスティス・リーグ」「火花」「ギフテッド」「光」etc.

ソン・ガンホ

密偵

The Age of Shadows [Blu-ray]
日本統治下の1920年代の朝鮮半島。朝鮮人でありながら日本警察に所属するイ・ジョンチュルは、部長のヒガシから、武装独立運動組織“義烈団(ウィヨルダン)”を監視するよう特命を受ける。義烈団のリーダー、キム・ウジンに接近し、懇意になったジョンチュルだったが、それは義烈団の団長チョン・チェサンが、ジョンチュルを義烈団に引きこむために仕組んだ餌だった。日本警察の中でジョンチュルを見張るライバルや、それぞれの組織に潜入させた情報屋などが流す出所不明の情報が飛び交う中、義烈団は、上海から京城(現ソウル)へ向かう列車に大量の爆薬を運び込むことに成功する。誰が敵で誰が味方か判らない探り合いの状況の中、列車は国境を越えて京城へと向かうが…。

韓国の独立運動をめぐる秘密諜報戦の駆け引きを描く歴史サスペンス・アクション「密偵」。日本警察で働く主人公ジョンチュルは、独立など夢と諦め、権力側についた“売国奴”だが、心の底では愛国心を失っておらず、義烈団の行動や理念を知れば知るほど、ジョンチュルの意識と心情は揺れ動く。一見、日本を悪役にした抗日愛国映画のスタイルだが、時の権力におもねる者、保身に走る者が韓国の側にもいた事実を冷静な視点で盛り込んだ点は、評価したいところだ。裏切りや内通などが繰り返され物語はスリリングに進んでいくが、裏切る側の理由をきちんと描いているので、観客の感情に訴える内容になっている。

ハリウッドにも進出したキム・ジウン監督は、主人公を複雑な内面を抱える人間として描き、戦争が時に人間性を破壊する様や、裏切りや騙し合いの中でも決して奪えない誇りがあることを訴える。思わず目を背けたくなるような残虐な拷問シーンや殺戮シーンもあるのだが、基本は娯楽サスペンスなので、演出はスピーディーだ。名優ソン・ガンホはさすがの名演を見せるし、人気急上昇のコン・ユが、動く密室の列車の中で攻防を繰り広げるシークエンスは、彼が出演した大ヒット映画「新感染」を彷彿とさせる。ジウン監督作品の常連イ・ビョンホンも美味しい役で貫禄たっぷり。1920年代の衣装や家具調度品などが美しく、艶やかで湿度を帯びたダークな映像が歴史ものらしい重厚感を与えている。
【65点】
(原題「THE AGE OF SHADOWS」)
(韓国/キム・ジウン監督/ソン・ガンホ、コン・ユ、ハン・ジミン、他)
(スパイ映画度:★★★★☆)
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凍える牙

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奇妙な連続殺人事件を追う、男女の刑事コンビの姿を描くクライム・サスペンス「凍える牙」。“狼犬”に導かれ、女性刑事が疾走する場面が素晴らしい。

ソウルで不可解な人体発火事件が発生。車中の遺体には獣の噛み跡があった。昇進を逃し続けているベテラン刑事のサンギルは、新米の女性刑事ウニョンとコンビを組まされ憤慨しながらも、彼女の細かい観察眼から新事実をつかんでいく。やがて同じ獣による第二、第三の咬殺事件が続発。事件を調べるうちに、この連続殺人事件の背後に、犬と狼の交配種で、高度に訓練された狼犬の存在と、売春組織から娘を廃人同様にされた男の復讐が浮かび上がる…。

原作は、乃南アサの直木賞受賞小説。日本でも2度ドラマ化された本作を、韓国で「マルチュク青春通り」などのユ・ハ監督が映画化したのが本作である。男女の刑事コンビはどちらもはみ出し者だ。名優ソン・ガンホが演じる中年刑事サンギルは、実力はあるのに昇進できないことにいらだつあまり、チームワークよりも個人プレーに走る。そんなサンギルとコンビを組むことになった美人女性刑事ウニョンは、白バイ警官からようやく憧れの刑事になったものの、女性蔑視やセクハラまがいの視線が横行する職場で、自分の実力を発揮できずに悩んでいる。難事件に挑む主人公たちの背景には、警察組織での立ち回りの難しさと、不当に低い女性の地位という簡単ではない問題が横たわっているのだ。事件は売春組織への復讐が目的であることが判明するが、犯人が、犬と狼の交配種であるウルフドックを使うのがユニークで、一級の腕を持つドッグトレーナーの苦悩もまた深みがある設定だ。陵辱された娘の復讐に、愛情こめて育てた愛犬を殺人マシーンにせざるをえないとはあまりに悲しい。クライマックス、大型バイクを操り、悪党たちの隠れ家へと向かうため、ウニョンが夜の道をウルフドッグと共にひた走する場面の疾走感が素晴らしい。孤高の犬と孤独な女刑事は、悲しみとやるせなさという共通の思いを感じあったに違いない。最初は反発し合っていたサンギルとウニョンが、共に捜査するうちに互いを認め、心を通わせるプロセスもまた、絆を感じるものだ。社会や家族から取り残された孤独なキャラクターと、殺人犬という特異な設定、理不尽な事件の真相からスリリングなラストまで、ヒリヒリするような鋭さと悲哀に満ちた作品である。
【65点】
(原題「HOWLING」)
(韓国/ユ・ハ監督/ソン・ガンホ、イ・ナヨン、他)
(スリリング度:★★★★☆)
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凍える牙@ぴあ映画生活

青い塩

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引退した伝説のヤクザと暗殺者の少女の絆を描く異色のラブストーリー「青い塩」。ブルーを基調とした映像の透明感が目を引く。

ドゥホンは裏社会で伝説と呼ばれた男だが、今は引退しプサンで食堂を開こうとしている。料理教室で出会った、無愛想だが料理が上手い少女セビンと心を通わせるが、セビンは実は組織の命令でドゥホンを監視するために意図的に彼に近付いていたのだ。かつては優秀な射撃選手だったセビンは多額の借金を背負い、便利屋として闇組織で働いているのだが、ついに彼女にドゥホン暗殺の指令が下る…。

何かと過剰に走る韓国映画だが、この作品のタッチは終始穏やかだ。暴力の世界を描いてはいるが、むしろ料理教室で出会った中年男と少女の孤独な魂のふれあいを、静かに、時にユーモラスに語っていく。ドゥホンは引退したが、かつての恩人の仇を撃つために再び暴力の世界へ舞い戻る。この展開はヤクザ映画の定番で、新鮮味はないが、そこに親子ほども歳の離れた少女セビンが自分の命を狙っていることを知りながら、それでもセビンを信じて守ろうとする切ない愛情がからむところが新しい。ストーリーの語り口が冗長で、テンポの悪さには閉口するが、それでも名優ソン・ガンホのどこかとぼけた味わいや、食事がらみのエピソードは面白い。なんといっても、プサンやソウルの風景を切り取った映像が素晴らしく、冷え冷えとした青い塩田で迎えるクライマックスのヴィジュアルはスタイリッシュだ。少々都合が良すぎるラストは、意外性とも取れるが、それでも「イルマーレ」で、時を超えた切ない愛を描いたイ・ヒョンスン監督の、あたたかいまなざしには好感が持てる。
【60点】
(原題「BLUE SALT」)
(韓国/イ・ヒョンスン監督/ソン・ガンホ、シン・セギョン、チョン・ジョンミョン、他)
(映像美度:★★★★☆)
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青い塩@ぴあ映画生活

義兄弟 SECRET REUNION

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互いに敵同士の男たちの不思議な絆を、緊張感の中にユーモアとペーソスを盛り込んで活写した、南北ドラマの佳作だ。国家の裏切者を葬るため、北朝鮮の工作員として韓国に潜入していたジウォン。彼らの計画を嗅ぎ付け現場を指揮した国家情報員ハンギュは、市民の生活を脅かした銃撃事件にまで発展した責任を問われて組織を追われる。探偵まがいの仕事で生計を立てていたハンギュは、偶然の出会いから潜伏してたジウォンと仕事をすることに。互いの正体を知りながら寝食を共にするうちに二人は次第に心を通わせていくが…。

韓国映画界を代表する俳優で、シリアスもコミカルも自在に操る演技派ソン・ガンホと、若手イケメン俳優カン・ドンウォンとの相性が意外なほど良い。ドンウォンは役柄上、ほとんど笑顔を見せないが、命を削る緊張の日々の中で、北に残した家族への思い、任務への責任、本来は敵である南の男への持ってはならない親近感という葛藤を、静かに熱演している。緩急をつけた演技が持ち味のソン・ガンホと共演した俳優は、男優も女優も必ずレベルアップするように思う。今回のガンホも実に上手い。何しろこの人は“顔”だけで語って見せる上手さがある。物語は腹の探り合いのような心理ドラマの側面があり、特に、互いの正体を知りながら行動を共にして、先祖への供養の場面でついに本心を明かす場面の緊張感はただごとではない。イデオロギーの違いはあるが、それぞれが共にいられない家族を思う気持ちを抱える2人は、北と南との境界を越えて、分かり合う“同志”に思えた。ただ、自由な南にあっさりとなじむ工作員という設定には疑問も。工作員のレベルでは情報戦は案外活発なのだろうか。クライマックス、男たちのやるせない思いが激しいアクションと共に描かれて切なくなる。ラストはご都合主義に走る部分もあるが、こうあってほしいという作り手の思いが描きこまれているのだろう。現在進行形の南北問題を、意外性のあるユーモアを交えて描く本作の後味は悪くない。
【65点】
(原題「THE SECRET REUNION」)
(韓国/チャン・フン監督/ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、他)
(緊張感度:★★★★☆)

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渇き

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鬼才パク・チャヌクのバンパイア映画は、常識をヒョイと乗り越える設定と、エロティシズムやブラック・ユーモアが混在した独特の作品だ。サンヒョン神父はアフリカでの伝染病の人体実験で奇跡的に助かるが、やがて身体に異変が起こる。異常なまでに聴覚や嗅覚が研ぎ澄まされ、人の血を求めてしまうサンヒョン。彼は輸血の影響でバンパイアになってしまったのだ。韓国に戻ると幼なじみのガンウの家に招かれるが、そこで不思議な色気を持つ人妻テジュと出会う。急速に惹かれあい、愛欲に溺れる2人は、共謀してガンウ殺害を企てるが…。

ストイックであるべき神父が、悪魔同然のおぞましいバンパイアになるだけでも十分に背徳的なのだが、人間の血を渇望した上に、人妻との情事に溺れ、あげくの果てに、彼女の夫を殺害するというから、物語はタブーの三重構造である。特に人妻との不倫は、人間同士ならドロドロの修羅場だが、バンパイアという突飛な設定のせいで、妙にコミカルな味わいがあり、不道徳の度合いを増しているのが面白い。サンヒョンが聖職者である自分の立場とバンパイアになった運命の摩擦に多少なりとも悩むのに対し、夫を裏切った上に自分もバンパイアになったテジュは、あっさりと運命を受け入れ、急激に美しくなるのが対照的だ。映画全体に漂うグロテスクなユーモアは、一線を越えた人間の居直りにも似たおかし味なのだろう。後戻りできない道に踏み込んだサンヒョンとテジュには、壮絶な最期が待っている。

従来のバンパイア映画は、ホラー映画か耽美系ファンタジー。だが、本作はそのどちらでもない。あえて言えば、人の道を踏み外したものの滑稽さと、その中での究極の愛といったところか。渇きというタイトルは、人の血を求める渇きと、禁断の愛を求める渇きの両方の意味を兼ねる。チャヌク映画に特有の痛みを感じる描写は今回は控えめだが、バンパイアものだけに流血場面はてんこもりだ。コミカルな役が多い演技派ソン・ガンホが、10kgも減量しスリムな姿と憂い顔を披露するのが新鮮だ。この世ならぬものへの畏怖とあこがれに呑み込まれていく主人公たちには、不思議な情緒が漂っていた。パク・チャヌクのタブーへの欲望もまた、決して満たされることのない渇きに似たものなのだろう。
【60点】
(原題「BAK-JWI/Thirst」)
(韓国・米/パク・チャヌク監督/ソン・ガンホ、キム・オクビン、シン・ハギュン、他)
(ブラック度:★★★★☆)

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映画レビュー「グッド・バッド・ウィアード」

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◆プチレビュー◆
満州が舞台の韓国製ウェスタンは勢いが勝負。レオーネファンとしては苦言を呈したくなる。 【60点】

 日本軍占領下の1930年代の満州。賞金ハンターのパク・ドウォン(グッド)、冷酷なギャングのパク・チャンイ(バッド)、間抜けなコソ泥のユン・テグ(ウィアード)の3人は、謎の宝の地図を巡って争奪戦を繰り広げることになる…。

 「愛してる」だの「死んでも君を守る」だのと言いながら、男女共に涙を流し、四六時中“泣き”が入るのが韓国映画。メロドラマのイメージが強く、敬遠している映画ファンも多いと思うが、そんな先入観を拭い去ってくれるのがこの韓国製ウェスタンだ。キムチ・ウェスタンとでも呼びたい本作は、名匠セルジオ・レオーネのマカロニ・ウェスタン「続・夕陽のガンマン」(1966)にインスパイアされたという。タイプの違う3人の男の宝探しという点はもちろん、随所の描写が酷似しているが、ムチャクチャ感は本作の方がずっと上だ。

 事の発端は日本軍が極秘にしたという宝の地図。その宝の正体は謎のまま、人種のるつぼで混沌極める満州を舞台に、ギャングとコソ泥、日本軍と抗日組織、馬賊までもが地図を奪い合う。そこにクールな賞金ハンターがからみ、ド派手な列車強盗や銃撃戦が繰り広げられるという寸法だ。果たして宝にたどり着けるのか。そしてその宝とは。日本軍や満州の描写はかなりいいかげんだが、そこは無国籍アクション。固いことを言うまい。映画は、活劇に徹し、美人揃いの韓国有名女優さえ物語から締め出すほど、男たちが暴れまくる。

 だが、しかし。設定がムチャクチャなのはいいとしても、こうまで物語の流れにメリハリを欠くのはいかがなものか。メロドラマにせよアクションにせよ、万事が過剰なのが韓国映画の特徴だが、本作も全編これクライマックスといわんばかりに騒がしい。この映画が「続・夕陽のガンマン」の“リメイクもどき”であることはこの際不問だ。レオーネ自身、「荒野の用心棒」で黒澤映画を盗作したと訴えられた経緯を踏まえると、パクリというのも狙ったようで面白い。だが、せっかく抜群の手本があるのだから、騒々しいだけでなく、ドラマに気を配ってほしかったと思うのは、大のセルジオ・レオーネファンの私だけではないはずだ。コソ泥のユン・テグの正体など、宝探しとは別の話。ラストの決闘の場面はそっくりでも、そこに至る道筋が説得力に欠けては何もならない。

 それでも、リアル嗜好のアクションが大迫力なので退屈とは無縁だ。全方向地平線の満州は、中国のゴビ砂漠での過酷なロケのたまもので、素晴らしい舞台装置となった。馬やバイクで縦横無尽に暴れる韓流スターの姿は、見ていてスカッとする。特にチョン・ウソンがいい。全力疾走で馬を駆りながら、ウィンチェスター銃をぶっ放す様は、イケメンのウソンならではの絵になる構図だ。

 「続・夕陽のガンマン」の伊語原題は「Il Buono, il brutto, il cattivo(いい奴、悪い奴、汚い奴)」。“汚い”とはいったいどんな行為なのかを考えさせるところに深みがあった。韓流ウェスタンの快作はその域には至らなかったが、まずは韓国映画のイメージを打ち破った、スケールの大きな痛快エンタメ活劇の誕生に拍手をおくるべきだろう。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)トンデモ度:★★★★☆

□2008年 韓国映画 原題「The good,The Bad,The Weird」
□監督:キム・ジウン
□出演:イ・ビョンホン、チョン・ウソン、ソン・ガンホ、他

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シークレット・サンシャイン

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しばらく政界に身を置いた名匠イ・チャンドンの新作の主人公は、シングルマザーと不器用な中年男だ。愛する息子を殺害された女性シネが魂の救済を求めてもがく姿を乾いたタッチで描く。見知らぬ土地で懸命に生きる女性の脆さ、理不尽な悲劇、宗教考察と、見所は多い。女が自ら髪を切るのは再生の証。その意味で、一度は心の均衡を失ったシネの最後の姿は、それでも生きていくという決心と希望だ。ドヨン、ガンホ共に名演で見事。
【70点】
(原題「SECRET SUNSHINE」)
(韓国/イ・チャンドン監督/チョン・ドヨン、ソン・ガンホ、ソン・ジョンヨプ、他)
(不条理度:★★★★☆)

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殺人の追憶

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◆プチレビュー◆
ステレオ・タイプのサスペンス映画とは全く違うスタイルが新鮮で、2003年の東京国際映画祭で大旋風を巻き起こしたのも納得。だが、謎解きを期待して見ると肩透かしをくらうから要注意。

1980年代の韓国。ソウル郊外の農村で連続殺人事件が起こる。勘を頼りに足で捜査する田舎のパク刑事と、資料から冷静に推理する都会から来たソ刑事は反発しあいながらも、事件の解明に力を尽くすが、犯人を挙げることはできない。二人は徐々に追い詰められ苦悩するが、ついに犯人と思われる男を捕らえる瞬間がくる…。

この映画の基となった華城殺人事件は、1980年代に実際に起きた猟奇的な連続殺人事件。計180万人の警察を動員し、3000人にも及ぶ容疑者を取り調べたという。今も未解決という事実から判るように、この物語は通常のサスペンス映画のような謎解きに主眼を置いていない。得体の知れない事件に翻弄され、神経を蝕まれていく二人の刑事の心理を描く、緊張感に溢れたドラマなのだ。脚本が緻密で、抜群に上手い。

前半のユーモアと後半の緊張感の対比は、二人の刑事を最終的に逆転させる。冷静なはずの刑事は逆上し、血気盛んな刑事は困惑で沈黙してしまうのだ。常軌を逸した事件は、それに関わる人間の人格を破壊してしまう。映像は比較的淡々とした描写で当時の事件現場や捜査の状況の再現は、ドキュメンタリーのようなタッチをも醸し出していた。

未解決の事件とは、誰もが容疑者に、そして被害者になる可能性を示唆している。事件は決まって雨の夜に起こるが、雨の他にも、赤い服、ラジオにリクエストされる同じ曲、柔らかい手などのキーアイテムを巧みに使いながら物語を引っ張っていく。ほんの一瞬だけ姿を見せる犯人の映像には背筋が凍った。クライマックスのトンネルの闇は、事件の行く先と、心に傷を負った二人の刑事の挫折感を表していて、見ている観客もたまらない。

事件の残忍さや猟奇性もさることながら、二人の刑事の執念と、手の中からすり抜けたかのような事件への悔恨が、いつまでも消えない染みとなって胸に残る。追憶とはやり場のない思いの別名なのだ。それは、今はもう事件から離れた刑事たちにつきまとい離れようとしない。韓国が戒厳令を解かれ、時代が平和になっても事件は終わっていない。このように決して終わらない事件はきっと世界中にあるのだというところまで観客の余韻を広げる、印象深いラストだった。

ベタなお涙頂戴もの、南北分断の悲劇、超絶技のワイヤー・アクション。これらが従来の韓国映画のイメージだが、韓国新世代の映画のパワーと質の高さには驚かされるばかりだ。当分の間、韓国映画の勢いは止まりそうにない。ジャンルを特定できないところが、本作の最大の魅力と言えよう。

□2003年 韓国映画  原題「MEMORIES OF MURDER」
□監督:ポン・ジュノ
□出演:ソン・ガンホ、キム・サンギョン、パク・ヘイル、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
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新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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