映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「あさひなぐ」「ナミヤ雑貨店の奇蹟」「プラネタリウム」「ユリゴコロ」etc.

ダグ・リーマン

ザ・ウォール



2017年、イラクの砂漠地帯。米軍のスナイパーのアイザックとマシューズは、壊滅した村に潜む敵を狙って5時間潜伏していたが、まったく動きがない。様子を見に行ったマシューズが瓦礫の壁に近づくと、想定外の方向から銃撃され、倒れる。援護に向かったアイザックもまた足を撃たれ、何とか壁の後ろに逃げ込んだ。壁に隠れて身動きが取れないアイザックは助けを呼ぶために無線を手にするが、そこから急に「仲間だ。すぐに助けに行くから、名前とID、正確な位置を言え」との声が。一瞬安堵するアイザックだったが、その声の英語のアクセントに違和感を覚え、それが仲間ではないことに気付く。声の主は米軍から“死神”と恐れられるイラク軍のスナイパー“ジューバ”の声だった…。

イラク戦争で大勢のアメリカ兵を葬った実在のスナイパーと米兵との攻防を描くシチュエーションスリラー「ザ・ウォール」。場所は、灼熱の砂漠にある廃墟の壁の周辺、登場人物は3人のみでそのうち一人は声しか聞こえない。この“開かれた密室”で、主人公アイザックは、負傷している上に、最恐のスナイパーであるジューバに狙われているという圧倒的に不利な状況だ。戦争を扱ってはいるが、その戦いは、激しい銃撃戦や大爆発などではなく、会話で相手を追い詰める心理戦、頭脳戦だ。全編、緊張感に満ちている。

米軍のスナイパーを描いた「アメリカン・スナイパー」は、狙う側の視点から描かれたが、同じ実在のスナイパーものでも、本作は狙われる側を体感でき、それが異様な怖さを醸し出している。実際、ワンシチュエーションものでは、回想シーンや別の場所で同時進行する場面などを組み込むことが多いのだが、本作ではそういう演出はまったくない。それでも知能犯のジューバの巧みな会話による誘導で、アイザックの過去や米軍の暴挙の実態が露わになっていく展開は、まったく飽きさせないものだ。会話は、身の上話のような内容から、この戦争の意義、米国の復興支援の欺瞞にまで及んでいく。ザ・ウォール(壁)とは、イラク戦争の双方の間に絶対的に存在する境界線だ。それでいてその壁は緩く脆く不確かで、正義の所在が見えないイラク戦争の象徴に思える。ほぼ一人芝居で熱演するアーロン・テイラー=ジョンソンの演技力も大きな見所だ。かつてない“手触り”で戦争を描いた異色作である。
【75点】
(原題「THE WALL」)
(アメリカ/ダグ・リーマン監督/アーロン・テイラー=ジョンソン、ジョン・シナ、他)
(会話劇度:★★★★☆)
チケットぴあ

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フェア・ゲーム

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イラク戦争の舞台裏とCIA諜報員の実情を分かりやすく描くポリティカル・スリラー「フェア・ゲーム」。政治ドラマであり、夫婦愛の物語でもある。

CIA秘密諜報員のヴァレリー・プレイムは、捜査の結果、イラクには核開発計画はないと政府に報告する。だが、ブッシュ政権は報告を無視し、2003年、ついにイラクに宣戦布告した。夫で元ニジェール大使のジョー・ウィルソンは真実を世間に公表するために、NYタイムズに記事を寄稿するが、夫妻はアメリカ政府の激しい報復に遭う。ヴァレリーは、CIAの秘密諜報員であることを公表され、スパイの二重生活を送っていた彼女は世間から非難を浴びて孤立無援に陥る…。

映画の中のスパイは、国家に尽くし感謝されているが、実際の諜報活動員とは、こんなにも無慈悲に国家から裏切られるものなのか。ヴァレリー・プライスは、実在の優秀な諜報員で、イラク戦争を最後まで阻止しようと奮闘した正義感の強い人物だ。だがブッシュ政権は、イラクと開戦するためには、ねつ造してでも理由が必要だった。今では、大量破壊兵器はなかったというのは周知の事実だが、この映画で描くのは、真実を述べたがために国家から報復され、事実上抹殺されかかった諜報員の苦難の日々だ。巨大な権力と歴史のうねりに翻弄されるヒロインの物語は、政治ドラマとして単純化されているが、「ボーン」シリーズのダグ・リーマン監督の演出は、スリリングでテンポがよく、分かりやすい。政府の思惑やスパイたちの立場を描く一方で、幼い双子の母親であり妻でもある女性が、巨大な権力に対して、懸命に闘う姿を描く。一度は意見が対立した夫との絆を取り戻すシーンは、無駄に“泣きが入る”演出は避け、静かだが強い夫婦愛が伝わってきて感動的だ。理不尽極まりない実話だが、夫婦の絆が正義への戦いの原動力だったという位置づけが救いである。国家からスケープゴートにされながら、家族のために果敢に闘うヒロインを、ナオミ・ワッツが熱演。エンドロールに登場するヴァレリー本人に、敬意を表したい。
【65点】
(原題「FAIR GAME」)
(アメリカ/ダグ・リーマン監督/ナオミ・ワッツ、ショーン・ペン、サム・シェパード、他)
(スリリング度:★★★★☆)



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フェア・ゲーム@ぴあ映画生活

ジャンパー

ジャンパー (特別編)
瞬間移動をスタイリッシュに映像化するコンセプトのみで中身は空っぽ。あまりに観客をナメているのだが、ワン・アイデアだけで突破してくる強引さが、潤沢な資金を持つハリウッドの力だ。テレポート能力を持つジャンパーと彼らを抹殺しようとするパラディンとの攻防を描く。物語は何一つ解決せず、宙ぶらりんのままシレッと終了。これほど成長しない主人公も珍しい。見所は、世界各地のゴージャスなロケ。さして来る必要のない東京にもやって来る。
【20点】
(原題「JUMPER」)
(アメリカ/ダグ・リーマン監督/ヘイデン・クリステンセン、サミュエル・L・ジャクソン、ジェイミー・ベル、他)
(続編はやめて度:★★★★★)

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Mr.&Mrs.スミス

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◆プチレビュー◆
ブラピとアンジーの公私混同演技もまた楽し。こんなに激しい銃撃戦なのに、ご近所は平気なのか?!…と、こういうヤボなことを言うヤツには、お気楽娯楽映画を見る資格はない。

ジョンとジェーンは運命的な出会いを経て電撃結婚。幸せな夫婦生活だが、最近ちょっぴり倦怠期。二人は表面は普通の生活をしているが、実はお互いに裏の顔を隠していて、二人とも凄腕の殺し屋なのだ。だが、そんなスゴい秘密を隠しとおせるわけはない…。

スターがスターらしい役柄を演じ、観客はそれを思う存分楽しむ。ハリウッドに昔から存在する映画のスタイルで本作はまさにそれ。いちいち派手に格好をつけながら、お約束のハッピーエンドへと強引になだれ込む。小難しい映画評論家からは鼻で笑われても大衆はこんな作品が大好きだ。そして映画は大衆のためにある。

小さなヒネリはあるものの、ストーリーはいたって単純明快だ。最初と最後をカウンセリング場面にしたのが上手い。観客は主演二人から秘密を打ち明けられているように感じて、ワクワクするだろう。お互いの正体を知った殺し屋は相手を消さねばならないが、この闘いを夫婦喧嘩の拡大版と解釈しているところがおもしろい。

殴り合い、銃撃、爆発、カーチェイスと何でもありだが、基本は強気のジェーンとひょうひょうとしたジョンのかけあいのおもしろさ。表面はアクション映画だが、中身はロマンチック・ラブコメディなのだ。それをブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーという美男美女が演じるのだから、おもしろくないわけがない。

□2005年 アメリカ映画 原題「Mr.& Mrs. Smith」
□監督:ダグ・リーマン
□出演:ブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリー、ビンス・ボーン、他

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ボーン・アイデンティティー

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◆プチレビュー◆
繊細で知的な青年役が多かったマット・デイモンの新境地。アクションも立派にこなしてフェロモン全開だ。女性ファンも急増だろう。

嵐の海で救助された男の背中には銃弾のあとが。その男は記憶が全くなく、皮膚の下に埋め込まれたマイクロチップに、スイスの銀行口座が記されていた。そこで彼は、ジェイソン・ボーンという自分の名を知り、数種のパスポート、多額の現金を発見。驚く間もなく、何者かに命を狙われる。マリーという女性を道連れに逃避行を続けながら自分の過去を探ることになるが…。

「バイオハザード」「ロング・キス・グッドナイト」。これらは皆、特殊な能力を持った人物が記憶を無くすという設定の物語。他の作品が“主人公は何者か?”を一番の謎とするのに対し、本作では、主人公のボーンが実はCIAエージェントだということを観客は最初から知っている。なぜ追われているのか、執拗に命を狙われる理由さえも物語途中で察しがついてしまうのだが、記憶はなくしても、身体が覚えている語学力や戦闘能力を駆使して活躍する様が痛快だ。

今まで繊細で知的な役柄が多かったマット・デイモンが逞しく生まれ変わり、非常に魅力的だ。無駄のない動きで相手を倒し、切れ味のいいアクションを披露する。とはいえ、知性派の名に恥じず、ただ銃をぶっ放すだけではなく、様々な小道具を使って追っ手を振り切るのだ。無線を奪って情報を収集し、ビルの内部の地図を見ながら逃走経路を練り、電話のリダイヤルで敵の正体を探る。銃を使うのを本能的に避けるこの作戦は、単に頭脳戦というだけでなく、主人公の性格付けにも通じている。

記憶をなくした上、命を狙われる。その不安は想像して余りあるが、M.デイモンのどこか頼りなげなルックスがこの役柄にぴったりマッチする。あの幼い顔で、バッタバッタと敵を投げ倒し、激しいカーチェイスやビルの絶壁からのダイブまでも披露してくれるからサービス満点だ。パリの街の複雑な路地や石畳で繰り広げられるカーチェイスの主役は、小回りが効く真っ赤なミニ・クーバー。実際のスピードを考えると逃げ切れるかは甚だ疑問なのだが、この車は劇中のマスコットのような存在だ。

ヒロインを演じるのは「ラン・ローラ・ラン」で鮮烈な印象を残したドイツ人女優フランカ・ポテンテ。彼女が演じるマリーもまた、欧州を放浪しながら自分自身を探している。ポテンテは中性的な雰囲気でとても好演なのだが、マリー自身の役の設定にもうひとひねり欲しかった。いくらなんでもしろうと過ぎるので、足手まといの感は否めない。だから、最後まで行動を共にできず、途中でボーンと離れなければならないのだ。しかし、逃避行の合い間に見せる2人の短いラブシーンはとても秀逸で、ボーンが変装のために、バスルームでマリーの髪を切る場面は印象深い。

主人公は次第に自分が恐ろしい陰謀に加担していたことを知る。かつては非情な任務をこなし優秀なエージェントだった彼が追われることになる原因は、その根本に潜む性格にある。自分自身を認識し、その可能性を知るのは人間の普遍的な願い。主人公ボーンは、記憶を失ったことで、半ば強引に自分探しの旅をするはめになるが、その中で彼が持つ本来の人間らしさが、ボーンを生まれ変わらせようとする。かつての自分を知ってなお、変わろうするひたむきさ。ここに、この映画が従来のアクション映画と一線を画す魅力がある。

□2002年 アメリカ映画 原題「The Bourne Identity」
□監督:ダグ・リーマン
□出演:マット・デイモン、フランカ・ポテンテ、クリス・クーパー、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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