映画通信シネマッシモ


映画通信シネマッシモは、2018年4月をもって、終了しました。

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チョン・ユミ

新感染 ファイナル・エクスプレス

新感染 ファイナル・エクスプレス ブルーレイ・プレミアム・エディション(2枚組)【3000セット限定生産】 [Blu-ray]
ファンドマネージャーのソグは、別居中の妻のもとへ幼い娘スアンを送り届けるため、ソウル駅からプサン行きの特急列車KTX101号に乗り込む。だが発車直前に未知のウィルスに感染し凶暴化した女性が乗り込み、ゾンビ化した彼女に噛まれた乗務員や乗客らを発端に、車内は瞬く間にパニック状態に陥る。異変に気付いたソグは娘を守りながら車内を移動するが、感染者が次々に襲い掛かり、生き残った者たちも醜い本性を露わにしていった。終着駅まで2時間。ソグはひた走る列車の中で、決死のサバイバルを続けることになるが…。

高速で走る鉄道を舞台にした新感覚のゾンビ映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」。韓国発のこのゾンビ映画は、ゾンビ・パンデミックものと、鉄道車内の密室サスペンス・アクション、さらにはソウルからプサンまで移動しながらサバイバルするロード・ムービーというさまざまな側面を持った秀作だ。アニメーション出身のヨン・サンホ監督は、今回はコン・ユというスターを起用し、親子愛や人間ドラマをしっかり組み込んでエンタメ映画として仕上げている。ゾンビ映画という手垢がついたジャンルだが、家庭を顧みず、時に汚い手段での金儲けに余念がない仕事人間だったソグが、極限状態に置かれることで、幼い娘を守る父親として、弱者を助ける人間として変化していくヒューマン・ドラマでもあるのだ。他人を犠牲にして自分だけ助かろうとするエゴイストや、保身に走って正義を見失う大衆など、社会風刺もしっかり描きこまれている。

乗客たちは、ソグ父娘以外に、身重の妻を守る男性や、学生のカップル、年老いた姉妹など、バラエティに富み、それぞれのドラマが丁寧なのがいい。韓国映画らしい、涙を誘うエピソードももちろん健在だ。その一方で、ビジュアルもなかなか強烈である。ゾンビものなので、スプラッタ描写は容赦ないが、大挙して凶暴化したゾンビが、列車の後方で、磁石に吸い付く鉄砂のような形で連なるなど、今までのゾンビものにない新鮮なビジュアルを楽しめる。いったい誰が生き残り、終着駅にはどんな結末が待っているのか。息をもつかせぬ展開はまったく先読みできない。この移動型密室ゾンビ・サバイバル・ホラー、世界中の映画祭で評判というのが納得の、見事な出来栄えだ。群れになって襲い掛かるゾンビと、醜いエゴまるだしの生存者たち。どっちが怖い? ぜひ映画を見て確かめてほしい。
【80点】
(原題「TRAIN TO BUSAN」)
(韓国/ヨン・サンホ監督/コン・ユ、チョン・ユミ、マ・ドンソク、他)
(家族ドラマ度:★★★★☆)

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映画レビュー「トガニ 幼き瞳の告発」

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◆プチレビュー◆
実話に基づく児童虐待事件を描く衝撃作「トガニ 幼き瞳の告発」。韓国では法改正まで行われ、映画の力を示す作品となった。 【70点】

 地方都市の聴覚障害者学校に赴任した美術教師イノは、その学校で、校長をはじめ、複数の教職員によって、児童への暴行や性的虐待が日常的に行われていることを知り愕然とする。憤ったイノは、人権センターの女性ユジンと共に、加害者の校長らを告発するが…。

 タイトルの“トガニ”とは、直訳すると“坩堝(るつぼ)”の意味。虐待、性的暴行、隠蔽、無関心。実際に起こったこの異様な事件には、なるほど、さまざまな負の要素がからみあい、混じり合っている。

 しつけと称して行う執拗な体罰や、女子生徒、男子生徒を問わずに繰り返される性的虐待など、壮絶なシーンを真っ向から描く勇気には、作り手の並々ならぬ意欲が見て取れる。聴覚障害を持つ幼い児童へのおぞましい仕打ちもさることながら、事件が明るみに出てからの、学校側のあの手この手での隠蔽工作には、心の底から怒りがこみ上げた。無関心で無責任な行政、収賄と保身にまみれた警察、不条理な法制度もまた罪深い。だが、懸命な努力を積み重ね、決定的な証拠をつかんだイノと子供たちの命がけの戦いには、さらに残酷な運命が待っているのだ。

 この衝撃的な映画で光るのは、子供たちの圧倒的な存在感である。演技とはいえ、このような内容の役柄に、プレッシャーがかからないわけはない。だが、劇中で重要な役を演じる3人の子役たちは、手話を完璧にマスターし、セリフに頼らず感情を吐露するという難役を見事にこなしている。教師たちの卑劣さと対極をなす、いじらしく健気な子供たちの存在。物語の中核をなす法廷シーンでの、子供たちによる息詰まる告発サスペンスは、とりわけ注目だ。

 本作の原作は、コン・ジヨンの同名小説。惨すぎる内容に衝撃を受けた俳優コン・ユが、映画化を切望したそうだ。甘いルックスでラブ・ストーリーのイメージが強いコン・ユだが、本作では、事件への怒りと、それでも変わらない現実の理不尽に苦悩する教師を熱演して素晴らしい。この主人公が、特別な能力もなく、熱い正義漢でもない、弱さを持つごく普通の人間であることが、物語をリアルにした。同時に、もの言わぬ子供たちの心の叫びが際立つ要因にもなっている。

 児童虐待をテーマとしているだけに、目を覆いたくなる場面が多いが、小説も映画も、内容はその無惨な事件の半分も描いていないという。本作は韓国で公開後、大反響を巻き起こし、韓国国民の怒りの声が、事件の再調査、子供への性暴力犯罪の処罰に関する改正法案“トガニ法”の立案を促し、学校も廃校となった。映画は社会を映す鏡だが、映画によって社会に変革をもたらすこともある。私は、そんな映画の“正しい力”を信じたい。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)衝撃度:★★★★★

□2011年 韓国映画 □原題「DOGANI/Silenced」
□監督:ファン・ドンヒョク
□出演:コン・ユ、チョン・ユミ、他
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