映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

ティム・バートン

ダーク・シャドウ

ScoreScore
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バートン&デップのテッパンコンビによるダーク・ファンタジー「ダーク・シャドウ」。“浦島太郎”状態のヴァンパイアが笑いを誘う。

18世紀、アメリカ・メイン州の港町の有力者バーナバス・コリンズは、使用人のアンジェリークを失恋させてしまう。彼女は実は魔女で、フラれた腹いせに、バーナバスをヴァンパイアに変え生き埋めにした。200年後の1972年に偶然開放されたバーナバスは、さっそく懐かしい屋敷を訪ねるが、コリンズ家はすっかり落ちぶれ、変人だらけの末裔たちは、それぞれが暗い秘密を抱えて生きていた。当主のエリザベスにだけは真実を教え、他には自分の正体を隠しながら、バーナバスは亡き父の教え「本物の財産は家族だけ」を胸に、コリンズ家再興を目指すことに。だがそこに、憎き魔女アンジェリークが立ちふさがることになる…。

オリジナルは1966年代から5年に渡ってアメリカで放送され、カルト的人気を誇ったTVドラマ。白塗りのデップが時代錯誤のヴァンパイアを演じるというこの設定だけで笑いがこみあげるが、何しろ200年も棺桶の中にいたので、時代の流れについていけず、可笑しな言動が止まらない。何をやってもズレまくり、まるで戻ってきた浦島太郎のよう。それでもメゲないバーナバスだが、変わらないのは家族思いという点だ。コトの発端で、使用人の美女を弄んだということは都合よく脇に置いて、200年後の世界を牛耳っているアンジーこと魔女のアンジェリークと対決することになる。顔面蒼白のデップと、これまた白塗りに近い顔で暴れまくるエバ・グリーンの格闘技のごときラブシーンは、映画の最大の見せ場だ。だが物語はバーナバスvsアンジェリークの構図だけでなく、実はコリンズ家の面々がかかえるトンデモない秘密にも言及する。特にクロエ・グレース・モレッツ扮する思春期の娘キャロリンの秘密には絶句した。今一番勢いがある若手スターであるモレッツを使う以上、バートンがタダの可愛い娘で終わらせるはずはないのだ。終盤にはいかにもバートン好みの幻想的なゴシック・ホラー・コメディとなって、家族安泰の大団円へとなだれ込む。バートンとデップの組み合わせは、少々飽きつつあるのだが、それでもこの毒のある笑いは捨てがたい。のほほんとしたラブ&ピースの空気と、ベトナム戦争の泥沼が同居する矛盾だらけの70年代なら、サングラスと日傘のいでたちで太陽の下を歩くヴァンパイアの復活も悪くないという気になる。
【65点】
(原題「DARK SHADOWS」)
(アメリカ/ティム・バートン監督/ジョニー・デップ、エバ・グリーン、ミシェル・ファイファー、他)
(ダーク・コメディ度:★★★☆☆)
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ダーク・シャドウ@ぴあ映画生活

ピーウィーの大冒険

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大ヒット作「アリス・イン・ワンダーランド」を監督し、今年(2010年)5月に行なわれるカンヌ国際映画祭の審査委員長を務めるティム・バートン監督。彼の監督デビュー作は1982年に発表した約6分の短編アニメ映画「ヴィンセント」だが、初の長編実写映画と知られているのが、このコメディー「ピーウィーの大冒険」だ。ディスニーでアニメーターとして働いていたバートンらしく、アニメーション的な演出が随所に使われている。

郊外に住む変わり者の青年ピーウィー・ハーマン(ポール・ルーベンス)は、大好きなおもちゃや愉快な仕掛けがいっぱいの家で愛犬と一緒に楽しく暮らしていた。中でもお気に入りは、赤い自転車。だがこの自慢の自転車が何者かによって盗まれてしまう。とり乱しつつも調査を始めるが、インチキ占い師に「アラモ砦の地下」にあると告げられたピーウィーは、疑いもせずにテキサスへ。道中には、さまざまな騒動が巻き起こるのだが…。

アメリカのTV番組で人気の「ピーウィー・ハーマン」は、見るからにヘンな奇天烈キャラだ。赤い蝶ネクタイにピチピチの細身のスーツがトレードマーク。化粧した顔にペッタリとなでつけた髪。上ずった声でけたたましくしゃべりながらオーバーアクションを披露する様子は、Mr.ビーンを連想させる。物語はドタバタ・コメディーだが、明るくポップなのに毒気のある美術や小道具に、バートンらしさを感じるはずだ。自転車を探す旅の途中で出会う人たちが、これまたヘンテコな人物ばかり。終いには、この映画の配給会社・ワーナー・ブラザース映画のスタジオに乱入し、おっかけっこの大騒動を繰り広げた末、会社の重役から「ピーウィー、君の物語は映画になる。出演してくれないか」となり、大団円。開いた口がふさがらない。

このムチャクチャな話の中に、バートンは抜け目なく自分の個性や好みを描きこんでいるからスゴイ…というか、ちゃっかりしている。その代表が「ゴジラ」だ。バートンが大のゴジラファンであることは有名だが、本作で主人公が大暴れするワーナーのスタジオで、なぜか日本人風のスタッフが、なぜか「ゴジラ」を撮影している!しかもゴジラの相手はご丁寧にキングギドラだ。ミニチュアの戦車を踏みつぶし、チャチな着ぐるみ怪獣と戦い、建物をぶちこわして暴れるゴジラも、ピーウィーの暴走にはかなわない。バートンはワーナー側に直談判して、このゴジラのシーンを撮影したというから熱が入っている。

1980年代、アメリカの子供番組で人気だったコメディアンのポール・ルーベンスは、その後スキャンダルで失脚。今ではこのピーウィーという強烈なキャラクターを演じた俳優としてのみ記憶されている。映画オタクのバートンならではのこだわりと、アニメーション的演出、異形のキャラクターへの偏愛。やはりバートン映画の原点の作品と言えそうだ。

(出演:ピーウィー・ハーマン、エリザベス・デイリー、マーク・ホルトン、他)
(1985年/アメリカ/ティム・バートン監督/原題「Pee-wee's Big Adventure」)


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ピーウィーの大冒険@ぴあ映画生活

映画レビュー「アリス・イン・ワンダーランド」

アリス・イン・ワンダーランド [DVD]アリス・イン・ワンダーランド [DVD]
◆プチレビュー◆
鬼才ティム・バートンにしてはあまりに凡作。それでもこってりと濃厚な映像美は楽しめる。 【60点】

 19歳のアリスは退屈な園遊会を抜け出し白うさぎの後を追って穴に落ちる。そこは不思議なアンダーランドで、住民たちは皆アリスのことを知っていた。アリスこそ残忍な赤の女王の支配に終止符を打つ伝説の戦士だと言うのだが…。

 ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」と「鏡の国のアリス」が「マトリックス」をはじめ多くの映画にインスピレーションを与えたことは知られている。パラレルワールド、救世主としての覚醒、運命の選択などのプロットは、すべてアリスがベースだ。本作はそんなアリスのその後を描くオリジナルストーリー。消えるチェシャ猫や狂った帽子屋マッドハッター、三月うさぎに賢者の芋虫らが入り乱れる奇天烈な世界を、ティム・バートンが3Dで映像化する企画は、一見パーフェクトに思える。だが、蓋を開けてみれば、映像はにぎやかだが、物語にバートンらしさはほとんど感じられなかった。

 ティム・バートンらしさ。それは、弱者や異形のものへのいたわりの眼差しだ。ハサミ手の人造人間やハロウィン・タウンの住人、はたまた残虐な理髪師まで、マイノリティに対する優しさが、悲哀と感動を生んできた。それなのに本作ときたら、どこにでもある勧懲ストーリーではないか。冒険心を忘れたアリスは、アンダーランドを再訪し、自分とは何者かという壮大な問いに向き合いながら自らの意志で戦う大人へと成長する。目的は、邪悪な赤の女王を倒し、善良な白の女王が統治する平和な国を取り戻すことだが、ここでは初めから善と悪が決めつけられている。アンダー(地下)にワンダー(驚き)などない。見た目はシュールだが、そこは毒気の抜けた予定調和の世界なのだ。

 もちろん見所はある。人気・実力共にトップスターのジョニー・デップが、グロテスクな風貌で奔放に活躍する様はまさに非日常。エンタテインメントとしては平均以上だ。ビジュアルのこだわりもハンパではない。お茶会の様子は、食器やケーキなど細部まで執拗なほどに作り込まれていて、もっとじっくり見せて!と言いたくなるほどだ。地上と地下、縮小化と巨大化、赤の恐怖と白の慈愛。万人に理解できる対立の構図もメリハリが効いて見事である。だがここが急所だ。3D映画では情報量が膨大なため、物語はシンプルなものが求められる。だとすれば、3Dという最新ツールが、バートンの才能の飛翔を妨げてしまったのではないか。結果、器は豪華だが盛られた料理は冷凍食品のような有様になった。そもそも世界は善悪で単純に二分化などできない。それなのに、アリスは地下世界で何の疑いもなく勧善懲悪をキメて地上に戻っていく。

 アリスが倒すジャバウォッキーは「鏡の国のアリス」のナンセンス詩に登場する異形のモンスターだ。前衛的な作風で知られるチェコの映像作家ヤン・シュヴァンクマイエルも、かつて短編映画「ジャバウォッキー」で描いている。作り手自身が個性を見失ったこの作品、ティム・バートンに思い入れのない人にとっては、少女が成長し自立する冒険ファンタジーとして、十分な出来栄えだろう。だが、バートンのディープなファンはきっと嘆くに違いない。本来の彼ならばジャバウォッキーへの愛を忘れたりしないはずなのに…と。大人になるということは、現実を受け入れて折り合いをつけていくことでもある。バートンはこの3D大作で、映像の自由を得た代償に、ありきたりな物語に甘んじた。そう思って、この映画にパラドックスを見るしかない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)奇想天外度:★★★☆☆

□2010年 アメリカ映画 原題「ALICE IN WONDERLAND」
□監督:ティム・バートン
□出演:ミア・ワシコウスカ、ジョニー・デップ、アン・ハサウェイ、他


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アリス・イン・ワンダーランド@ぴあ映画生活

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ティム・バートンのナイトメアー・ビフォア・クリスマス ディズニー デジタル 3-D

ナイトメアー・ビフォア・クリスマス [DVD]ナイトメアー・ビフォア・クリスマス [DVD]
ストップモーション・アニメの金字塔が3D映像で再登場した。ハロウィン・タウンのジャックは、ある日クリスマス・タウンに迷い込み、すっかり夢中に。彼は、つぎはぎ人形のサリーの心配をよそに、自らサンタになってクリスマスを演出しようとする。立体化はされているが、驚くような効果はなく、むしろさりげない感じの演出だ。ただ、霧や雪などの自然現象は非常に美しく思わず見惚れた。また、シースルーの幽霊犬ゼロは、3Dによって動きの魅力が倍増しているのがうれしい。映画界は3Dの動きが加速しているが、過去作品に関しては3Dにふさわしい作品を選ぶ選択眼が必要となろう。
【65点】
(驚き度:★☆☆☆☆)
(原題「THE NIGHTMARE BEFORE CHRISTMAS DISNEY DIGITAL 3-D」)
(アメリカ/ヘンリー・セリック監督/(声)市村正親、土居裕子、三ツ矢雄二、他)

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映画レビュー「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」

スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 特別版 (2枚組)スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師 特別版 (2枚組)
◆プチレビュー◆
バートン印のグラン・ギニョール劇は哀しい復讐の物語。ミュージカル初挑戦のデップの歌声が見事だ。 【75点】

 19世紀のロンドン。天才理髪師スウィーニー・トッドはフリート街に店を構える。彼は、15年前に自分を無実の罪で投獄した上、妻子まで奪ったターピン判事への復讐の機会を狙っていた。パイ屋のラベット夫人はそんな彼にある提案を持ちかける…。

 人間というのは本来残酷なものが大好きな生き物なのではなかろうか。それを見抜き、見世物にした娯楽が19世紀末から20世紀半ばまでパリに存在した大衆芝居グラン・ギニョールだ。アブノーマルな登場人物が演じる、荒唐無稽で血生臭い物語。けれん味たっぷりの演目を、人々は大いに楽しんだ。「スウィーニー・トッド」はもともとは大人気のブロードウェイ・ミュージカルだが、鬼才バートンは自分の波長に合わせてグラン・ギニョール風に映画化してみせた。倒錯的でおぞましい物語に、独特の“間”を与えるのは、今までミュージカルとは無縁だった俳優たちの力強くて美しい歌声だ。人気と実力がパーフェクトに結びついた俳優ジョニー・デップが、異様なルックスで初めて歌を披露するが、これが実に魅力的なのである。映画は、残酷描写が満載なので万人向けではないが、完成度はかなり高い。

 物語の主人公は剃刀で喉をかき切る殺人鬼で、人間を殺した上にその肉を加工してパイに詰めて売りさばくというからすさまじい。だが、猟奇的な話を、どこかポップでコミカルにするのがバートンとデップのゴールデン・コンビの得意技だ。そして根底には愛を仕込む。映画の両輪は、妻子を奪われた男スウィーニーの狂気と、彼を秘かに愛するラベット夫人の妄想だ。殺人の共犯者でありながら全く心が通じ合わない関係性は、物語の重要なメタファーとなる。この二人のズレが小さな秘密を生み、大きな勘違いとなって、取り返しの付かない悲劇へとつながる仕組みだ。映像はすべて殺伐としたグレートーンで統一され、ただならぬ雰囲気を醸し出している。ただし、幸福な過去の回想シーンは美しい花園のような色調で、その対比が絶妙だ。美術はフェリーニ作品を多く手掛けたイタリアの名手ダンテ・フェレッティによるもので、主人公の心理を雄弁に物語るビジュアルは、作品のレベルを確実に上げている。

 実在したとも伝説とも伝えられるスウィーニー・トッドの物語から立ち上ってくるのは、肥え太った近代都市への強烈な嫌悪感だ。時代はまさしく産業革命の渦中。スウィーニーの愛用する特製の回転椅子よろしく、世の中の価値観は逆転した。人々は他人に無関心になり、物の生産はスピードと規格と効率のみを追求するようになる。理髪店の椅子で命を断たれ、ズルリと階下に落ちた死体はあっという間に処理され、パイの中身になって店頭へ。ロンドンで一番マズいラベット夫人のパイ店はたちまち大繁盛というわけだ。鮮血に染まったスウィーニーの陰惨な合理主義に、人間性など無用なだけである。しかし、復讐とはすこぶる人間的な行為ではないのか? これが主人公の運命のパズルの最後のピースだ。デップの優れて有機的な演技は、私たちにこの都市伝説の皮肉と哀しみとを語りかけてくる。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)流血度:★★★★☆

□2007年 アメリカ映画 
原題「SWEENEY TODD:THE DEMON BABER OF FLEET STREET」
□監督:ティム・バートン
□出演:ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーター、アラン・リックマン、他

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チャーリーとチョコレート工場

チャーリーとチョコレート工場 [DVD]チャーリーとチョコレート工場 [DVD]
◆プチレビュー◆
奇跡の調教を施したというクルミ割りのリスの場面が最高。デフォルメされた貧乏生活のチャーリーの家もまさにバートン印だ。バートンとデップのコラボは当分続きそうで、大いに楽しみ。

世界一のチョコレート工場の経営者にして謎の人物ウィリー・ウォンカ氏。彼がこの世に5枚しかないゴールデン・チケットを手に入れた子供5人を、自分の工場に招待するという。チャーリーは幸運にもこのチケットを入手し、夢のような工場見学に招かれるが、その工場は想像を超えた魔法のような場所だった…。

永遠に少年の心を持つティム・バートン監督が、ミラクル・ワールドをスクリーンに映し出した。チョコレートの川、チョコとクリームを混ぜる滝、お菓子で出来た草花などに子供のみならず大人も目を奪われる。さらにそこで歌い踊るウンパ・ルンパ族のキモい楽しさは、バートン監督でなくては作れない世界だ。

わがままな子どもとごう慢な親たちが次々にトンデモない目にあうのは、もちろん世界一の変わり者のウォンカ氏の策略だ。演じるジョニー・デップは誰がみても美形なのに、ひきこもりの変人などという役が最高に似合う。幼い頃の父親との確執と和解という展開はやや平凡だが、これは今のハリウッド映画の流れ。いたしかたない。

チョコレート工場を出たウォンカ氏とチャーリーには、どんな贈り物が待っているのだろうか。子どもには甘く楽しい、大人にはブラックで怪しいティム・バートンの世界。もう、ここまで来れば名人芸だ。

□2005年 アメリカ映画 原題「Charlie and the Chocolate Factory」
□監督:ティム・バートン
□出演:ジョニー・デップ、フレディー・ハイモア、ディビッド・ケリー、他

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ビッグ・フィッシュ

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◆プチレビュー◆
バートン監督得意の毒気は薄いが、作品の質が落ちたわけではないので、バートン映画初心者にもおすすめ。

自分の人生をおとぎ話のように語る父親エドワード。子供の頃は楽しかったその話も大人になった息子ウィルには、真実を話そうとしない父親への反発の材料でしかなかった。そんな父が病に倒れ、ウィルは久しぶりに帰郷することになる。相変わらずのホラ話にうんざりするウィルだったが、やがてそのウソの中に真実が隠されていることに気付きはじめる…。

独特の世界観で多くのファンを持つティム・バートン監督。オモチャ箱のような映像の中に、しっかりと毒を含ませてダークな世界を作り上げる。特に原案・製作まで務めた「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」はアニメーター出身の彼の持ち味が十分に活かされていて、大人のファンが多い。

そんなバートンの新作は、従来ほどの毒気はなく、ファンタジーの美しさが前面に出た心あたたまる愛の物語だ。ホラ話で自分の人生を脚色する父親と、堅実な性格で父に反発する息子。映画は父エドワードが語る過去の冒険物語と、現在の物語の2本立てで進行する。おとぎ話の部分の壮大で美しい映像は絶品。厳しい現実との対比で、さらに絶妙に観客の感動を誘う仕掛けになっている。

結婚指輪で巨大な魚を釣った話、洞窟に住む巨人の話、恐ろしい魔女との出会い。どれもワクワクするような“お話”だが、その中にひそむ父の真実の姿を感じはじめるのは、若き日の母と出会ってから。何事にも屈せず前向きに生きていく父の姿は、それが例えホラ話でも胸を打つ。体育会系の容姿のユアン・マクレガーが、楽観的で若きエドワードを演じて魅力的だ。一面の水仙で画面が埋め尽くされるシーンは、特に忘れがたく、バートンならではのぬくもりのある映像で、まさに映画マジックだ。

父の話はウソばかりではないことを知ったとき、父がいかに皆から愛されているか、母との愛情がいかに深いかを観客は理解するだろう。アルバート・フィニーとジェシカ・ラングの名優二人がバスタブにつかって愛情を語るシーンは、この映画随一の名場面だ。そもそも映画というのは想像力が発端で生まれるようなもの。この作品は、人生には“物語”が必要なのだということを教えてくれる。生きてきた年数が違っていても、物語を共有することで気持ちを受け継ぐことができるのだ。

□2003年 アメリカ映画  原題「BIG FISH」
□監督:ティム・バートン
□出演:ユアン・マクレガー、アルバート・フィニー、ジェシカ・ラング、他

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◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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