映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
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(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「カフェ・ソサエティ」「ノーエスケイプ」「追憶」「赤毛のアン」etc.

トム・ティクヴァ

王様のためのホログラム

王様のためのホログラム
大手企業を解雇され、車も家も妻さえもなくしたアランは、何とか再就職したIT企業で、業務を言い渡される。それは、アメリカから遠く離れた国サウジアラビアで、国王に最先端の映像装置・3Dホログラムを売りつけるというもの。さっそく砂漠に到着するが、オフィスはただのボロテント、エアコンは壊れ、Wi-Fiはつながらず、ランチを食べる店さえない。抗議しようにも、担当者は不在で、国王がいつ現れるかもわからない。上司からのプレッシャーと慣れない土地でのストレスで、アランはついに体調を壊してしまう。そんなアランを助けたのは、予想もしない人物だった…。

異文化の中で奮闘する中年男の危機と再生を描くドラマ「王様のためのホログラム」。中東で欧米人が孤軍奮闘するといえば「砂漠でサーモン・フィッシング」が思い浮かぶが、本作の原作はデイヴ・エガーズ。むしろ、現実と幻想が溶け合う「かいじゅうたちのいるところ」や、エリートの都会人が農民相手に悪戦苦闘する「プロミストランド」との共通点が透けて見える。主人公アランがやってきたのは砂漠のド真ん中。それまでの常識や既成概念はいっさい通用しないイスラム文化とのカルチャー・ギャップに、身も心もヘトヘトだ。うまくいかない仕事のストレスを、一杯のアルコールで癒そうにも、ここはアルコール禁止のイスラム圏(実は、隠れて飲んだりしている)。ついに背中にできたしこりが悪化してしまい…という展開から、それまでビジネスライクだった物語が、一気に恋愛へと傾くのはご愛敬だろうか。最新鋭のテレビ会議システムである“3Dホログラム”を売るという興味深いビジネスの行方をもっと突き詰めてほしかった気もするが、すったもんだの末に主人公がみつけるのは人生の輝きだ。目が覚めるように青い海がスクリーンに広がって、幸福感を感じてしまう。通常のサクセス・ストーリーとは一味違う物語で主人公に希望を与えるのは、ウォシャウスキー監督との共作「クラウド・アトラス」でもハンクスと組んだトム・ティクヴァ監督だ。あくまでも小品だが、芸達者なハンクスの軽妙な演技を楽しめるほか、異文化や相互理解といった、タイムリーな素材をコメディ・タッチでサラリと描いた佳作である。
【60点】
(原題「A HOLOGRAM FOR THE KING」)
(アメリカ/トム・ティクヴァ監督/トム・ハンクス、アレクサンダー・ブラック、ベン・ウィショー、他)
(再出発度:★★★★☆)
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映画レビュー「ザ・バンク−堕ちた巨像−」

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◆プチレビュー◆
金融界のモラルの逸脱をリアルに描く社会派サスペンス。美術館での銃撃戦は手に汗を握る。 【70点】

 インターポール捜査官のサリンジャーは、国際メガバンクIBBC銀行の違法行為を暴こうとするが、新たな情報を得るたびに証言者や仲間が殺される。自身も危険にさらされながら、NY検事局のエレノアと共に捜査を続けるが…。

 悪役は時代を写す鏡だ。かつて、共産主義を敵とし、南米の麻薬組織を追い、中東のテロリストと戦ってきた映画の主役たち。歴史上には、暴君ネロや独裁者ヒトラーのように分かりやすい悪人もいた。だが、今や悪の正体は巨大多国籍企業。内戦や紛争につけ込んで巨額の利益を得る彼らには、法の手は容易に及ばない。得体のしれないこの悪は、かつてないほど手強いのだ。

 そもそも世界中の有力者や政治指導者、富裕層と結託する国際銀行を、誰が成敗するというのか。そこで、さっそうと登場するのが、インターポール(国際刑事警察機構)だ。世界的スケールで活躍する捜査官は、正義の象徴のように見える。だが、ルパン三世を永遠に捕まえられない銭形警部も所属するこの組織には、なんと逮捕権がない。これだけでも勝負は見えている。

 しかし、サリンジャーはどんな妨害にも屈せず、腐敗した銀行の摘発に燃える熱血漢だ。ターゲットが絞りにくい敵に対し、彼はこの企業を憎む相手と手を組むことで活路を見出す。また長い間の悪事で疲れ果てた男の心を動かすことにも成功。なかなかの知恵者だ。銀行の闇ビジネスという地味な素材を料理するのは俊英トム・ティクヴァだが、過去に、時間や芳香という形のないものを映像化してきた彼は、巨悪を描くためにすさまじいアクションを用意する。

 それが、最大の見せ場であるNY・グッゲンハイム美術館での銃撃戦だ。近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライトが設計した壮麗な美術館がメチャメチャになる様は、作り物だと分かっていても胸が痛む。しかも破壊の限りを尽くすその場面が困ったことに美しい。場所が美術館だけに、動くアートとでも呼ぼうか。螺旋状という非常にユニークな建築フォルムは、終わりのない負のスパイラルのメタファーのようだ。白亜のモダンな空間で、主人公は立場の違う殺人者たちと遭遇する。殺し屋と相対しながら、やがて協力して逃げる奇妙な展開も、前衛的な美術館にふさわしい。だが彼らが追い追われもする悪は、芸術的なまでに非情だ。

 物語はあくまでもフィクション。だが、1991年に破綻した国際銀行BCCIというリアルな見本があるように、金融界の暴走は作り話ではない。利益のためには手段を選ばないという企業腐敗の本質は、実話と言ってもさしつかえないだろう。本作は、幸か不幸かアクション・シーンの出来がいいために、社会派映画の印象は薄くなった。だがヘタに深刻になるよりも、その方がいいのかもしれない。映画は、極めて古典的な方法で悪人が倒され終焉となるが、結局のところ、資金洗浄や武器取引などの闇の物語は、現実を舞台に今も“続編”が製作されている。正義の居場所が少ない時代、この映画の余韻は苦い。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)社会派エンタメ度:★★★★☆

□2008年 アメリカ映画 原題「THE INTERNATIONAL」
□監督:トム・ティクヴァ
□出演:クライヴ・オーウェン、ナオミ・ワッツ、アーミン・ミューラー=スタール、他

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映画レビュー「パフューム ある人殺しの物語」

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◆プチレビュー◆
天才調香師が作った究極の香水に唖然。目には見えない“香り”をすばらしい技術で映像化する。物語は奇想天外で、一種のファンタジーだ。 【65点】

18世紀のフランス。天才的な嗅覚を持ち、加えて自らには体臭がない孤独な青年グルヌイユは、街で見かけた少女の香りに魅了される。人間から匂いを抽出する方法で同じ香りを作ろうと、彼は次々に若い女性の命を殺めるが…。

究極の香りを作るために起こす殺人。観客には、犯人とその動機は分かっている。残る興味は、この物語にどう決着をつけるのか。そのプロセスで最も重要なのは、殺人事件の発端である「香り」を映像化する方法だ。

目に見えない香りを表現するのに使ったのは、映像美と潜在意識と音。まず映像のデフォルメがすごい。渋く強調した色彩と明暗で描き、細部まで作り込んだ高密度の映像が観客の脳内に叩き込まれる。魚市場の悪臭、赤毛の少女の芳香、紫に染まるラベンダー畑。これらに、ベルリン・フィル・ハーモニー管弦楽団の最高の演奏がかぶれば、香りはスクリーンから文字通り立ち昇る。潜在意識に香りが注入されたら、物語の虜になるのは時間の問題だ。

驚異的なビジュアルは、時には笑いさえ誘いながら終盤に向けてエスカレート、殺人罪で捕まったグルヌイユの処刑場で頂点へ。大群集による異様な大乱交シーンは、綿密に計算された振付けによるものだ。ありえない!なぜこうなるの?でもスゴイ!金縛り状態で、目が離せない。

一見、天才調香師の成功物語のように始まり、予想もしない軌道を描くこの作品には、常識の枠を越えた独創性がてんこもりだ。主人公は矛盾した救世主で、人々を愛で酔わせ、自らも愛に収束したと考えれば、納得がいく。映画「ツィゴイネルワイゼン」の中で“桃は腐りかけが一番美味しい”と言うセリフがあるが、この物語はまさにそれ。境界線ギリギリの位置に立つ映画だ。踏み外せばキワモノだが、すんでのところでアートになっている。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ユニーク度:★★★★☆

□2006年 ドイツ映画 原題「Perfume - The story of a murderer -」
□監督:トム・ティクヴァ
□出演:ベン・ウィショー、ダスティン・ホフマン、アラン・リックマン、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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