映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ジャスティス・リーグ」「火花」「ギフテッド」「光」etc.

トム・フォード

ノクターナル・アニマルズ

Nocturnal Animals (Blu-ray + DVD + Digital HD)
LAの現代アート界で成功したアートギャラリーのオーナー、スーザンは、経済的には恵まれていても心が満たされない日々を送っている。そんな彼女の元に、20年前に離婚した夫エドワードから、彼が書いた小説「夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)」が送られてくる。暴力的で衝撃的な内容のその小説はスーザンに捧げられていた。小説を読み進めながら過去を回想するスーザンは、かつて才能がなく精神的に弱いと軽蔑していたエドワードの、非凡な才能を見出し、やがて彼との再会を望むようになるが…。

監督デビュー作「シングルマン」が高い評価を得たファッション・デザイナーのトム・フォードの長編第2作となるミステリアスなドラマ「ノクターナル・アニマルズ」。原作はオースティン・ライトの小説で、現代と過去、現実と小説を交錯させながら描く物語は、常に不穏な空気に包まれている。別れた夫エドワードが送ってきた小説を読むスーザンは、エドワードを残酷な仕打ちの果てに捨てた自分の罪を思い出すことに。スーザンの心の葛藤と彼女を待つ運命を、緻密な心理描写とスタイリッシュな映像で綴り、現代のLA、過去のNY、小説のテキサスが、ひとつに溶け合っていく構造は、重層的で巧みなものだ。虚実が曖昧で濃厚な世界は、どこかデヴィッド・リンチのテイストと共通している。

ミステリアスで巧妙な語り口で描かれるサスペンスだが、物語そのものはメロドロマ。だがトム・フォードというとびきりの美意識のフィルターを通すことで、繊細で大胆な芸術作品のような映像が抽出されてくる。冒頭の、超肥満女性のパフォーマンスから、スーザンが身に着ける衣装や随所に登場する現代アート作品、果ては残酷な死までもが、美しく刺激的だ。スーザンが購入したことさえ忘れていた作品には、大きく太い文字で「REVENGE」とある。これは、愛をないがしろにした者への復讐の物語なのだ。エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール、マイケル・シャノンら、実力派俳優たちの深みのある演技も見応えがある。トム・フォードの一部のスキもない演出の“着こなし”に、この異業種監督の映画の才能が本物であると確信した。
【75点】
(原題「NOCTURNAL ANIMALS」)
(アメリカ/トム・フォード監督/エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール、マイケル・シャノン、他)
(スタイリッシュ度:★★★★★)
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マドモアゼルC ファッションに愛されたミューズ

マドモアゼルC ファッションに愛されたミューズ [Blu-ray]
有名ファッション・エディター、カリーヌ・ロワトフェルドに密着取材したドキュメンタリー「マドモアゼルC ファッションに愛されたミューズ」。カリーヌ信者にはうれしい内容だが映画としては平坦な印象。

世界的ファッションデザイナーのトム・フォードらが“ミューズ”と呼ぶファッション界のカリスマ、カリーヌ・ロワトフェルド。18歳でモデルになり、その圧倒的な美意識で編集者・スタイリストとして活躍、フランス版「VOGUE」の編集長に就任する。約10年務めた「VOGUE」退任後、59歳で自らのイニシャルからなる新雑誌「CR Fashion Book」を創刊。映画は新雑誌の制作過程から完成までを追いながら、カリーヌの幅広い交友関係やプライベートにまで迫っていく。

ファッション界に多大な影響を与えるファッショニスタ、カリーヌ・ロワトフェルド。現在も第一線で活躍する彼女は、誰もが認めるファッション・リーダーらしい。“らしい”と記したのは、実は私は、この人物のことを本作で初めて知ったからだ。勉強不足で申し訳ないが、カリーヌという人物の華麗なるハードワークを次々に見せられ、彼女のバイタリティはしっかり理解できた。ファッション・エディターを描いた映画は、例えばアメリカ版「VOGUE」の名物編集長、アナ・ウィンターに密着したドキュメンタリー「ファッションが教えてくれること」や、伝説的なファッション・エディターを描いた「ダイアナ・ヴリーランド 伝説のファッショニスタ」がある。だがそれらに比べて本作はなんだかとても平坦なつくりだ。おそらくそれは長年カリーヌに密着取材した監督ファビアン・コンスタンの“カリーヌ愛”があまりに強いからだろう。セレブな暮らしぶり、トム・フォードやカール・ラガーフェルドら超有名デザイナーのカリーヌへの賛辞、家庭を大切にする生き方。すべてが肯定形だ。新雑誌の制作の過程は興味深いが、トラブルになったコンデナスト社とのいきさつもサラッと語るのみ。それでも、私生活と仕事の両方で妥協を許さず生きる強い女性カリーヌの生き方は、確かに美しい。あくまでもカリーヌ・ロワトフェルドに憧れる人向きの“美しい作品”だ。
【50点】
(原題「MADEMOISELLE C」)
(フランス/ファビアン・コンスタン監督/カリーヌ・ロワトフェルド、ステファン・ガン、カール・ラガーフェルド、他)
(ファッショナブル度:★★★★☆)
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マドモアゼルC 〜ファッションに愛されたミューズ〜@ぴあ映画生活

映画レビュー「シングルマン」

シングルマン コレクターズ・エディション [DVD]シングルマン コレクターズ・エディション [DVD]
◆プチレビュー◆
死を覚悟して初めて知る生の輝き。デザイナーのトム・フォードの手腕は初監督とは思えないほど見事だ。 【75点】

 「愛する者を失った人生に意味などあるのか」。1962年11月30日。8ヶ月前に16年間共に暮らしたパートナーのジムを事故で失ったジョージは、自殺を決意し準備を着々と整えていく。だが彼は、死を前に日常のすべてが違ったものに感じて戸惑いを覚えた。そんな時、親友の女性チャーリーから電話が入る…。

 2人の男がゆっくりと水に沈むポエティックなシーンと、痛々しい交通事故の俯瞰の映像、自殺の決意とその準備の淡々とした連写。映画の序盤に、この一連の流れを無駄のないフォルムで描き、同時に主人公ジョージの人となりが簡潔に浮かび上がる手際の良さは、非常にスマートだ。何度も現れる幸福な日々のフラッシュバックで、今の彼の絶望がいかに深いかを物語る。劇中に登場するさまざまなコントラストが、ストーリーを丁寧に形作っていく。

 英国人の大学教授ジョージは、繊細なキャラクターだ。自殺を前に「発つ鳥跡を濁さず」とばかりにすべてを整理整頓する隙のない人物でもある。銀行の貸し金庫の中身を処分し、家政婦にメモを残し、自分の葬式用のスーツを整え、ネクタイの結び方まで指示する。几帳面な生き方と端正な装いという鎧で脆さを隠しながら生きてきたジョージだったが、50歳を過ぎていても“終わり”が“始まり”になっていく人生の不思議をまだ知らない。観客もまた、死と生が対比する彼の特別な1日につきあうことで、そのことを教えられる。

 ジョージはゲイだという設定なのだが、そのことはこの物語ではポイントではない。むしろ立ち上がってくるのは、ミドルエイジ・クライシス(中高年男性の不安)と、米国で暮らす英国人の孤立感だ。さらに60年代初めという古き良き時代の夕映えにも似た最後の輝きが、ジョージの悲しみに寄り添っている。世界を大きな不安が包む季節の直前に、人生を終えようとしていたジョージが気付いたのは、ささやかな日常にこそ宿る幸福感だった。

 いつもと変わらないはずの英文学の講義、煩わしいはずの隣家の少女、敏感に変化を感じ取る教え子や、駐車場でふと言葉をかわした青年。死を決意したことで日常を別のアングルでとらえ直し、新しいまなざしで世界を受け止めていくジョージを演じるコリン・ファースが卓越して素晴らしい。繊細で抑性が効いた彼の演技が、この映画を比類ないものにしている。さらにジョージとは正反対でありながら、同じ孤独を内包するチャーリーを演じるジュリアン・ムーアとの共鳴が効いている。心から笑いあえる友がまだそばにいる幸福を呼び起こし、ジョージが生へと心を解放したその時、思いがけない運命が訪れる。

 監督のトム・フォードは、グッチやイヴ・サンローランなどで活躍し大きな成功を手にしたカリスマ・ファッションデザイナー。近年では「007」の衣装を担当し存在感を示していた。そんな彼がかねてより関心があった映画作りに挑戦、脚本まで自ら手掛け、とても初監督とは思えない高い完成度の作品を作り、世界を驚かせた。思えば映画界では、異業種の才能は珍しいことではない。たとえば、勅使河原宏は華道家、ジャン・コクトーは詩人、北野武は自分の本業はコメディアンと公言する。そんな中、トム・フォードの“武器”は、他の追随を許さない並はずれた美意識だ。繊細で哀歓漂うこの作品、キャスティングの妙も含めて、まるで仕立ての良いスーツのように美しい。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)端正度:★★★★★

□2009年 アメリカ映画 原題「A SINGLE MAN」
□監督:トム・フォード
□出演:コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、ニコラス・ホルト、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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