映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

ニコール・キッドマン

ラビット・ホール

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「ラビット・ホール」は、子供を失くした悲しみに向き合う夫婦の痛ましい物語だが、ファンタジーやユーモアをにじませる演出が絶妙。希望は思いがけないところに隠れている。

NY郊外の静かな住宅街に暮らすベッカとハーウィーの夫婦は、幼い息子ダニーを交通事故で亡くした悲しみから立ち直れずにいた。深い喪失感は夫婦の間にも溝を作ってしまう。ある日ベッカは、偶然、ダニーの命を奪った車を運転していた高校生ジェイソンを見かけ、後をつける。やがてベッカはジェイソンと言葉を交わすようになり、不思議な安堵感を感じ始めるのだった…。

愛する者を失くした悲しみは共通のはずなのに、それを消化する方法は同じではない。自分とは違うやり方で悲劇をとらえる人間に、どうしようもない嫌悪感を抱いて苛立ってしまう。ヒロインのベッカは、まさしくそんな袋小路に陥った女性だ。ダニーの身の回りの物を処分し忘れようとするベッカに対し、夫のハーウィーは息子の映像を見ては一人思い出に浸っている。さらにベッカには麻薬中毒で死んだ兄がいて、母親が「自分も子供を失った悲しみは分かる」と言えば、薬物で死んだ兄とダニーを一緒にするなとばかり反発する。グループセラピーにいたっては、ベッカには神経を逆なでする場でしかない。妻が加害者の少年と交流し、夫が別の女性に惹かれる様子を見ていると、この夫婦が壊れてしまうのは時間の問題に思えた。だがそこに登場する“ラビット・ホール(うさぎの穴)”の存在が、思いがけない突破口になる。それは事故を起こしたばかりに一生罪の意識を背負うことになったジェイソンが描くファンタジー・コミックの題名だ。パラレル・ワールドがテーマのこのコミックが、ベッカに安らぎをもたらすのは、悲しむばかりではない、もうひとつの人生があることを教える道標となるからだろう。ベッカの母が言う「悲しみは消えないけれど、重さが変わる。時間が経てば、のしかかっていた重い大きな石が、ポケットの小石に変わるのよ」というセリフが深い滋味を醸し出す。絶望の中から自分なりの方法で立ち上がり、もう一度前を向くヒロインを演じるニコール・キッドマンの切実な演技が素晴らしい。異色のロックミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」のジョン・キャメロン・ミッチェル監督の、繊細な演出にも感服した。
【70点】
(原題「RABBIT HOLE」)
(アメリカ/ジョン・キャメロン・ミッチェル監督/ニコール・キッドマン、アーロン・エッカート、ダイアン・ウィースト、他)
(再生度:★★★★☆)
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ラビット・ホール@ぴあ映画生活

オーストラリア

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オーストラリア出身の監督・俳優・主要スタッフが、国の威信をかけて作った大河ロマンだ。第二次大戦前夜のオーストラリアにやってきた英国貴族サラと野性的なカウボーイ・ドローヴァーの恋を軸に、悪徳牧場主との対決、1500頭の牛を連れての大陸横断、夫殺しの謎、日本軍の襲撃による戦争スペクタクルと、てんこ盛り。大味で詰め込みすぎの内容はまとまりに欠けると感じつつ、何だか得した気分にもなる。白いタキシード姿のヒューとチャイナドレスのニコールのラブシーンは、まるでハーレクイン・ロマンスのようで苦笑したが、美男美女なので許そう。特筆は、先住民アボリジニの旅立ちの儀式“ウォークアバウト”の神秘性。アボリジニの精神風土とも言える気高い心と美しく壮大な豪州の自然こそが最大の魅力だ。大自然のパワーが人の生き方を変えていく。オーストラリアは、その舞台に最もふさわしい場所だということなのだろう。
【55点】
(原題「AUSTRALIA」)
(オーストラリア/バズ・ラーマン監督/ニコール・キッドマン、ヒュー・ジャックマン、デヴィッド・ウェンハム、他)
(盛り沢山度:★★★★★)

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ライラの冒険 黄金の羅針盤

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このファンタジーの特徴は、主人公が女の子で、しかも生意気で嘘つきということ。パラレルワールドに住む少女ライラが、世界を救うために冒険の旅に出る。視覚効果が素晴らしく、自然と人工物を調和させたセンスがいい。常に寄り添う守護精霊のダイモンも効果的だ。白くまたちの集団はまさに圧巻。物語は3部作になる予定で、今回は少しあわただしいが、次への期待は高まった。それにしてもニコール、美しすぎる!人間離れしてないか?
【70点】
(原題「HIS DARK MATERIALS: THE GOLDEN COMPASS」)
(アメリカ/クリス・ワイツ監督/ダコタ・ブルー・リチャーズ、ニコール・キッドマン、ダニエル・クレイグ、他)
(不敵なヒロイン度:★★★★☆)


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ライラの冒険 黄金の羅針盤@ぴあ映画生活

インベージョン

インベージョン 特別版 [DVD]インベージョン 特別版 [DVD]
何度もリメイクされた手垢のついた作品を、なぜ今、作るのか?との疑問がわく凡作SF。ハリウッドのネタ不足はかなり深刻だが、この作品はあまりに創意工夫がない。睡眠中に感染する謎の病原体の恐怖を描くが、21世紀の今、映像化するというのに、ラストのあっけなさは唖然。人格をのっとられた人々は無表情になる設定だが、感染したフリをしたニコールの美しい人形のような顔付きが印象的だ。
【40点】
(原題「THE INVASION」)
(アメリカ/オリバー・ヒルシュビーゲル監督/ニコール・キッドマン、ダニエル・クレイグ、他)
(母は強し度:★★★★☆)

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毛皮のエロス ダイアン・アーバス 幻想のポートレート

毛皮のエロス~ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト~ [DVD]毛皮のエロス~ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト~ [DVD]
オスカーを受賞してますます挑戦的なニコールの作品選びに注目。実在の女性写真家が、異形に惹かれ才能を発揮していく様を、幻想的に描く。映画としては少々メリハリに欠けるが、恐怖と好奇心の果てに美を追求する姿勢にアーティストの魂を感じる。NYの優雅な上流社会の描写も見所。
【60点】
(原題「FUR:AN IMAGINARY PORTRAIT OF DIANE ARBUS」)
(アメリカ/スティーヴン・シャインバーグ監督/ニコール・キッドマン、ロバート・ダウニーJr.、他)
(官能度:★★☆☆☆)

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映画レビュー「ハッピーフィート」

ハッピー フィート [DVD]ハッピー フィート [DVD]
◆プチレビュー◆
歌い、踊るペンギンたちが住む極寒の南極で繰り広げられる熱いパフォーマンス。可愛い、楽しい、最高!だが、終盤の展開が雑すぎる。 【40点】

皇帝ペンギンにとって一番大切なのは、生涯の伴侶を見つけるための“心の歌”。だが、子ペンギンのマンブルは美声の両親と違い、ひどいオンチで歌うことができない。彼は得意のタップダンスで勝負するが、パタパタ足(ハッピーフィート)はペンギンの恥さらしと、コロニーを追放されてしまう…。

映像パフォーマンスの見事さは、文句ナシ。ずん胴型のペンギンはメリハリが付けにくいにも係わらず、細かい動きまで豊かに作り込まれていて、思わず見惚れる。水中や体毛の映像処理は、最高レベルのCG技術だろう。喜怒哀楽の表現に加えて、ちょっと懐かしめの選曲に乗った、エネルギッシュなダンスシーンに大興奮。歌い踊る時の腰の振り具合は涙もので、芸達者なペンギンたちに大笑いだ。特に数万匹で熱狂的に踊る様子は、インド映画の群舞を彷彿とさせ、南極の地に極楽浄土が舞い降りたかのよう。スクリーンを見ながら「次に生まれるときはペンギンになる!」と決心する自分がいた。

ビジュアルは申し分ないとして、問題はストーリーにある。超絶オンチのマンブルは、集団の和を乱すものとして仲間はずれにされた挙句、追放されるが、そこで新たな仲間と出逢うことに。さらに魚を激減させた環境破壊の原因を発見…とくるが、そのあとがビックリするほど雑なのだ。人間に捕らえられてからの展開は、ファンタジーから突如リアルへとイメージ・チェンジし、前半の笑いを一気にかき消してしまう。この後、いったいどうなるの?と不安になるが、一方で、この物語にどう決着を付ける気か?と期待もした。だが、お話はバタバタとご都合主義に終始し、結局、ワケの分からぬ大団円へと収束。マンブルや他のペンギンたちは、本当にこれで幸せなのか?!

人と違う我が子に対する親の思いや、集団を重んじる長老の責任感、異なる価値観を持つアデリーペンギンなど、ペンギン界でのストーリーに限ればなかなか深い内容だ。人間が登場したとたんに台無しになるこの映画、結局、南極大陸という神聖な場所に、人間みたいな生き物は不要ということだろう。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)エンタメ度:★★★★☆

□2006年 アメリカ映画 原題「HAPPYFEET」
□監督:ジョージ・ミラー
□出演:(声)イライジャ・ウッド、ニコール・キッドマン、ヒュー・ジャックマン、他

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奥さまは魔女

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◆プチレビュー◆
元祖サマンサはエリザベス・モンゴメリー。当時の映像との合成でもいいから、ニコールと共演してほしかった。フェレルは米国では大人気コメディアンで、コメディではニコールより格上。

イザベルはTVドラマ「奥さまは魔女」のサマンサ役に大抜擢。ダーリン役のジャックは自分が引き立つために、この役を新人にやらせようとの企みだったが、実はイザベルは普通の恋にあこがれて人間界にやってきた本物の魔女だったのだ…。

フランスでバネッサ・パラディを主演に数年前にリメイクされたのが、往年の人気TVドラマ「奥さまは魔女」。何とも中途半場な駄作に終わった仏版とは違って、今回は、TVドラマとしてリメイクする様子を映画にするという変化球だ。なかなか上手い設定である。

映画の魅力の大半を占めるのは、久しぶりにかわいい役を演じるニコール・キッドマン。鼻をピクピクするお馴染みの仕草と、ポップな色彩の衣装が楽しい。魔女と普通の人間の恋物語だが、ハッピーエンドはもとから読める。ただし、主役二人の恋愛成就以外は、相当にいいかげんな終わり方だ。とりあえずニコールの魅力にひたろう。

旬の女優の肩肘張らない演技を安心して楽しめるが、脇役も実は豪華。特に魔法界のプレイボーイで、イザベルの父を演じるマイケル・ケインが最高だ。スーパーの食料品のパッケージにことごとく姿を変えて現れ、あれこれと会話する場面は一番のお気に入りだ。監督は「ユー・ガット・メール」の女性監督ノーラ・エフロン。いい意味で、頭を使わずに気楽に楽しめる娯楽作と言えるだろう。

□2005年 アメリカ映画 原題「Bewitched」
□監督:ノーラ・エフロン
□出演:ニコール・キッドマン、ウィル・フェレル、マイケル・ケイン、他

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奥さまは魔女@ぴあ映画生活

コールドマウンテン

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◆プチレビュー◆
話はメロドラマだが真面目な力作。脱走兵士狩りに執念を燃やす男たちの心情がやや説得力に欠けるのが気になるし、エイダへの執着もあっさりとしたものだが、文芸ものを得意とするミンゲラ監督の品格ある演出で、うまくまとまった。

南北戦争末期の19世紀半ば。南軍の脱走兵士インマンは、ただひたすら故郷のコールド・マウンテンを目指して旅を続けていた。脳裏に浮かぶのは、彼を待つ愛しい人エイダの面影。ただ一度の口づけを交わした彼女への愛だけを信じて、過酷な道のりを歩むインマン。一方残されたエイダもまた、生活苦や様々な試練と戦わねばならなかった…。

「イングリッシュ・ペイシェント」でもそうだったが、ミンゲラ監督は自然描写がとても巧みだ。連なる山々は青く霞み、尾根沿いに恋人たちの想いが伝わるよう。辺境の地も四季のうつろいで美しく印象的なものとなり、映画のもうひとつの主役となっていく。懐かしい風景はそこに愛する人がいるということと共に、主人公を帰路へと向かわせる説得力に溢れていた。自分が生まれ育った場所。それは何よりも強い磁場となる。

たった一度のキスでお互いを思い続けるという設定には、J.ロウとN.キッドマンは少し年齢が高すぎるのではないかと思うが、何しろ演技力には定評のある美男美女なので、多少の無理は押し通してしまう勢いがあった。世間知らずの深窓の令嬢が逞しく成長する姿は、多くの観客に好感を与えるだろうが、これは、やや強引に登場してくる女性ルビーの存在によるところが大きい。レニー・ゼルウィガー演じる野生児のようなルビーは、エイダの頼もしい協力者。美しさでニコールに張り合うなどという愚かしいことはせず、思い切り野太く“ドスコイ”なキャラとして演じたことで、レニーはルビーに生命力を吹き込んだ。思ったより賢い女優のようである。

旅の途中で出会う様々な登場人物も、皆サイド・ストーリーが作れそうなほど緻密な設定だ。不良牧師のフィリップ・シーモア・ホフマンと若い戦争未亡人のナタリー・ポートマンが特に印象深い。戦争はいつの時代にもさまざまな悲劇を生むのだ。緑豊かな風景に響く、カントリーミュージックの歌声が恋人たちを運命の再会へと導く。未来が見えるという伝説を持つ井戸で目にしたものは、美しくも哀しかった。

主人公インマンは脱走兵だが、映画は軍隊から逃げて故郷を目指す彼を、終始肯定的に描いていく。映画前半の激しい戦闘場面は迫力十分だが、そこに個々の人格描写はなく、匿名の命が奪われる地獄絵があるのみだ。一組の男女のラブ・ストーリーと故郷を目指すロード・ムービーのスタイルではあるが、作り手のスタンスは明らかに反戦にある。

□2003年 イギリス・イタリア・ルーマニア合作映画  原題「COLD MOUNTAIN」
□監督:アンソニー・ミンゲラ
□出演:ジュード・ロウ、ニコール・キッドマン、レニー・ゼルウィガー、他

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ドッグヴィル

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◆プチレビュー◆
ヒロインを徹底的に追い詰めるのがこの監督の趣味。ひょっとしてSなのか?!好き嫌いは大きく分かれると思うが、ただ者ではないことは確かなので、次回作が最も気になる監督の一人と言える。

大恐慌時代のアメリカ。山間の小さく貧しい村ドッグヴィルに、謎の美女グレースが逃げ込んでくる。ギャングに追われている様子の彼女を、村人は協議の末にかくまう事に。助けてもらう代わりに村の仕事の手伝いをするグレースを、人々は最初は平和に迎えていたが、ある出来事をきっかけに豹変。善意的に見えた彼らは、グレースに対してエゴをむきだしにし、彼女を奴隷のように扱いはじめる…。

相当数の映画を見てきたつもりだが、こんなとんでもない作品にお目にかかったのは初めてだ。床に白い線が引かれただけのセットの上で、俳優たちは見えないドアをノックし、そこにいない犬の頭を撫でる。前衛的の一言では片付けられない異様な雰囲気の中に、大スターがひしめくアンバランスさにも驚かされた。物語は、エピローグと9つの章に分かれていて、終始、不思議な穏やかさで進行する。しかし、語られるのは、この上なく邪悪な人間の姿なのだ。

最近のN.キッドマンの輝きは並みではないが、この映画でも、彼女は根性が座ったところを見せている。何しろ、オスカー女優がこんな挑戦的な実験映画に出演するだけでもすごいのに、その役柄ときたら、とことんいたぶられる役なのだ。裏切られ、こきつかわれ、レイプされ、首に重りのついた鎖を付けられるすさまじさ。ニコールがなぶりものにされる姿は、必見と表現するには気の毒すぎるが、何しろこの映画の見せ場には違いない。

自分より明らかに裕福で美しい人物を支配下に置くことで生まれる人間の支配欲が、容赦なく描かれる。だが、グレースの正体が明らかになるラストには思いもよらぬ展開が待っていて、一種のカタルシスが味わえる仕組みだ。小さなコミュニティで保たれていたバランスが、外部からの侵入者によって崩壊する物語は約3時間の長編。それほどの時間をかけて描く話だろうかとも思ったが、そう感じるのは、見終わって随分たってからだ。見ている間は全く飽きることはなく、物語にグイグイ引込まれる。奇抜な手法にもかかわらず、違和感がほどなく消えるのもこの作品にそれだけ牽引力がある証拠だ。

本作はトリアーが提唱したドグマの作品ではないが、その精神は生きていると思う。これは、民主主義が内包する暴力を、斬新なスタイルで見せてくれる映画だ。トリアー監督が、アメリカそのものを批判しているのは明らかだが、ここに描かれるドラマは時代や国境を越えた普遍性を持っている。映画の“新しい可能性”を感じさせてくれる作品と言えるだろう。

□2003年 デンマーク映画  原題「DOGVILLE」
□監督:ラース・フォン・トリアー
□出演:ニコール・キッドマン、ポール・ベタニー、ローレン・バコール、他

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めぐりあう時間たち

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◆プチレビュー◆
ニコールの熱演は凄いが、あそこまで顔つきを変えるのなら、彼女でなくても良かったのでは…?という気も。「ダロウェイ夫人」や「The Hours」の小説と共に、V.レッドグレイプ主演の映画「ダロウェイ夫人」もぜひ。

1923年に英国で小説「ダロウェイ夫人」を執筆中の作家ヴァージニア・ウルフ。1949年、LAの閑静な住宅街に住む妊娠中の平凡な主婦ローラの愛読書は「ダロウェイ夫人」。2001年NYではダロウェイ夫人と同じ名を持つ編集者クラリッサが賞を受賞した友人のために祝賀会を計画する。時代も場所も異なる3人が抱える共通の悩みは、生きることへの不安。彼女たちの1日はいつも通りに始まったが、やがてその日は忘れられない決断の日となる…。

この複雑な話を見事に映像化したスティーブン・ダルドリー監督の手腕にまずは拍手したい。前作の「リトル・ダンサー」は心温まる話だがあくまで小品。これほど格調高い映画が作れる監督だったとは正直言って驚いている。昨今よく言われていることだが、舞台出身の監督の力量が確かだというのは、どうやら本当のようだ。

“花は私が買いに行くわ”。この共通のセリフで始まる物語は、3人の女性の1日の出来事を詩情豊かに描くもの。彼女たちが共有するのは、生への懐疑と根底にある同性愛傾向。3人の人生がアンサンブルを奏で、緻密に構成されて意外な結末へと収束していくのだ。精神を病んだウルフは入水自殺を選び、得体の知れぬ不安に苛まされる主婦ローラは死の淵まで行くことに。そして死はエイズ患者の元恋人の看病をするクラリッサの目の前を走り抜けた。彼女たちのすぐ隣に死が潜み、手招きしている。

穏やかな毎日に心から満足することができれば、どんなに幸せだろう。本能のままに生きようとすれば社会的役割との亀裂が生じる。平穏な人生の価値を認めながら、それへの嫌悪感で張り裂けそうな女達。豪華女優競演で話題だが、メリルにとっては余裕の演技、ニコールも付け鼻で美貌を消してまでの熱演だが、実は3人の中で最も困難な役は、ジュリアン演じる平凡な主婦ローラなのだ。理由のない不安と焦燥感を、ほとんど説明もなく表情だけで表してみせる。母親を失うまいと側から離れない幼い息子の視線が痛い。彼女が生きたのは、まだ女性に制約が多く、自分らしく生きたいと願えば大きな犠牲と世間の非難を伴った時代。そしてローラが支払った代償はとても大きなものだったが、それでも彼女はうわべの幸福よりもその道を選んだ。

小さな役にも気配りが効いていて、トニ・コレットやジョン・C・ライリー等、実力派が脇を締める。しかし、突出しているのは、エイズで余命いくばくもない作家リチャードを演じたエド・ハリスだろう。彼は劇中の、ある重要な架け橋の役を担っているが、ウルフ同様、作家の死を代償として、作中の人物に永遠の生を与えている。また、終盤、本来顔を合わせるはずのない二人が出会う場面があり大きな感動を生む。この場面には、思わず鳥肌がたってしまった。

華やかな女優達。美しいポスター。典型的な女性映画だ。自殺願望とも取れる話は、小難しいところもあって、実はかなりネクラだが、散りばめられた巧みな伏線と、構成の妙もあって深みのある傑作に仕上がっている。生と死の意味を問い、最後に生きることを決断する勇気を讃える物語と解釈したいが、見終わって、感動と共になんとも言えぬ不安感に襲われてしまうのが気になるところだ。この作品、観客にとって非常に危険な映画かもしれない。

□2002年 アメリカ映画  原題「The Hours」
□監督:スティーブン・ダルドリー
□出演:ニコール・キッドマン、ジュリアン・ムーア、メリル・ストリープ、他

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◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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