映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ドリーム」「亜人」「僕のワンダフルライフ」etc.

ニコール・キッドマン

LION/ライオン 25年目のただいま

「LION/ライオン~25年目のただいま~」オリジナル・サウンドトラック
サルーは、5歳の時、インドで迷子になり、孤児と認定されて、オーストラリア、タスマニアに暮らす夫婦に養子として引き取られる。利発な彼は、すぐに夫妻と新しい土地になじむ。だが、成人して本土の大学に進学したサルーは、インドにいて今も自分を探しているであろう本当の母や兄への思いが日に日に募っていた。家族を見つけることを決意したサルーは、わずかな記憶を手掛かりに、Google Earth を駆使して捜索を始める…。

5歳の時インドで迷子になりオーストラリアで養子として育ったインド人青年が25年の時を経て本当の家族を探し当てるまでを描く驚きの実話「LION/ライオン 25年目のただいま」。迷子になったのは1986年。その25年後に主人公サルーが家族を探す手助けをしてくれるのはGoogle Earthだ。IT技術が進んだとはいえ、あまりに遠い距離の“ホームカミング”がそんなに簡単に成功するものなのか?!と首をかしげたくなるが、これが実話だというから驚いてしまう。サルーはオーストラリアで幸福に暮らしているのだが、心にぽっかりと空いた穴を埋められない。愛してくれる養父母がいるのに、本当の家族を探すのは、一見身勝手にも思える。しかしそれはDNAレベルでの喪失感に基づく行為なのだ。実話なので彼が本当の家族と巡り合うことは分かっているのだが、それまでのプロセスが非常に面白い。サルーのおぼろげな記憶にあるのは、大好きだった揚げ菓子と、駅のそばの給水塔だけ。列車の中で眠り込んだ時間から距離を割り出す。給水塔のある場所から範囲を絞り込む。数字やデータを使っての検索は徐々に真実への道を照らし出していく。同時にサルーや養母の心情も丁寧に描かれる。インドで迷子になった時期は、よくまあ無事で…と思うほど波乱万丈なのだが、危険な場所や悪い大人を敏感に察知しながらたくましく生き延びる様には、サルーの中に原初的に備わる生命力を感じるし、本当の家族を探すことには自分とはいったい何者なのかを模索する、普遍的な命題が見て取れる。もっとも、養母が語る、サルーを養子にした理由が「神の啓示を受けたから」というのは、無宗教の自分には理解不能なのだが…。それでもこの驚きの実話には素直に感動を覚えた。それはデヴ・パテルやニコール・キッドマンの説得力のある名演技と、子ども時代のサルーを演じるサニー・パワールの圧倒的な存在感があるから。ラストに登場する本物のサルーの映像には思わず涙ぐんだ。そして初めてこの映画のタイトルがなぜ「ライオン」なのかが分かる。壮大な“探し物”には、沢山の奇跡と愛がつまっていた。
【70点】
(原題「LION」)
(オーストラリア/ガース・デイヴィス監督/デヴ・パテル、ルーニー・マーラ、ニコール・キッドマン、他)
(驚きの実話度:★★★★★)
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アラビアの女王 愛と宿命の日々

アラビアの女王 愛と宿命の日々 [DVD]
19世紀後半。イギリスの裕福な家庭に生まれ、オックスフォード大学を優秀な成績で卒業した貴族令嬢ガートルード・ベルは、イギリス上流社会の生活に息苦しさを感じ、テヘラン駐在大使である叔父がいるペルシャへと旅立つ。ガートルードはアラビアの砂漠に魅了され、探検家として、考古学者として、時に諜報活動も行うようになる。彼女は、2度の悲恋を経験しながらも、アラビアの和平を目指し活動を続ける。20世紀を迎え、時代の大きなうねりの中で、イラン建国を影で支えた彼女は、いつしか“砂漠の女王”と呼ばれるようになっていた…。

イラク建国の立役者となった英国人女性ガートルード・ベルの半生を描いた「アラビアの女王 愛と宿命の日々」。アラブの民を支援した英国人といえば“アラビアのロレンス”ことT.E.ロレンスが有名だが、彼よりも少し年上で、アラビアの地に情熱を注いだのが、英国人の貴族令嬢ガートルード・ベルだ。ロレンスに比べて知名度が低いこの女性は、自由な旅行者、探検家、冒険家、登山家、考古学者、詩人、作家、そしてアラビア語を解し部族や民族問題にも精通したアラビア通として諜報活動も行ったという、多面的な女性だ。劇中には若きロレンスも登場するが、本作はガートルードの政治的な側面は重視せず、砂漠に魅せられた女性の2度の悲恋が中心になっている。イラク建国の母と言われながらも、現在までも続く中東紛争の原点という解釈もある人物を描くに当たって、メロドラマのような描き方でいいのか?!という意見もあるだろう。だが、ヴェルナー・ヘルツォーク監督が見据えたのは、政治や恋愛ではなく、人間の力を超えた、砂漠という大自然そのものの魅力だったに違いない。思えばヘルツォーク監督は、南米の秘境や険しい山岳、オーストラリアの大自然など、決して人間に“飼いならされない”圧倒的な自然を背景に多くの映画を作ってきた人だ。ヴィクトリア朝時代、上流社会から飛び出した貴族の令嬢ガートルード・ベルの生き様は破天荒そのもので、まさに砂漠に魅入られた人生だった。ヘルツォーク監督の作品で初となる女性主人公を演じるニコール・キッドマンのたたずまいが気高く美しい。そして彼女の美貌を上回るほど官能的な美しさを見せる砂漠の映像が、何よりも心に残る。
【60点】
(原題「QUEEN OF THE DESERT」)
(アメリカ、モロッコ/ヴェルナー・ヘルツォーク監督/ニコール・キッドマン、ジェームズ・フランコ、ロバート・パティンソン、他)
(歴史秘話度:★★★★☆)
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パディントン

パディントン [Blu-ray]
ロンドンのパディントン駅に、真っ赤な帽子をかぶった小さなクマが降り立つ。家を探しに南米ペルーのジャングルの奥地からやって来たそのクマは、紳士的な態度と丁寧な言葉使いで通行人に話しかけるが、彼がクマだからか、誰からも相手にされない。やがて新切なブラウン一家と出会った彼は“パディントン”と名付けられ、一家の屋根裏に住みながら家を探すことに。初めての都会暮らしにとまどいながらも、純粋なパディントンは、次第に街の人気者になっていく。だが、謎の美女ミリセントが、パディントンを誘拐しようと狙っていた…。

世界中で愛されているマイケル・ボンドの児童文学「くまのパディントン」を実写映画化した「パディントン」。ポスターやチラシを見るかぎりでは、なんだかあまり可愛くない。というよりリアルすぎてキモい。原作の挿絵のパディントンの愛らしさを返せ〜!と、ひそかに憤っていたのだが、いざ映画を見てみると、意外なほど可愛いのだ。動いてナンボだったのか、パディントン!紳士的で丁寧な言葉使い、性格はかなりドジだけど、誠実でピュアなクマ。なるほど人徳、いや熊徳がある。ストーリーは、パディントンと、ちょっぴり変わり者のブラウン一家との心温まる日々から、ある理由からパディントンをつけ狙う美女ミリセントとの攻防という冒険物語へ。悪役を演じるニコール・キッドマンがノリノリで、まるでMIPのトム・クルーズばりのアクションまで披露して笑わせる。何よりも驚いたのは、パディントンの声を演じるベン・ウィショーの演技力だ。声のトーンだけで、あれほどパディントンの野性と知性、健気さまで表現できるとは!一見子どもむけのファンタジー映画だが、根底に流れるテーマは、他者との違いを喜び合う社会を目指すこと。人種や宗教の差異による争いが絶えない現代社会には、最も必要なメッセージかもしれない。
【65点】
(原題「PADDINGTON」)
(イギリス/ポール・キング監督/ベン・ウィショー(声)、ヒュー・ボネヴィル、サリー・ホーキンス、他)
(ほのぼの度:★★★★☆)
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パディントン@ぴあ映画生活

リピーテッド

リピーテッド [Blu-ray]
記憶に障害を持つ女性が思いもよらない事態へと巻き込まれるサスペンス「リピーテッド」。記憶は常に書き換えられる可能性があるのだ。

事故の後遺症により、目覚めるたびに前日の記憶を失うという特殊な記憶障害を持つ女性クリスティーンは、献身的な夫ベンの支えで毎日を送っていた。ある日ベンの留守中に、ナッシュという医師から電話がかかり、少し前からベンに内緒でクリスティーンの治療を行っていること、ここ数週間のクリスティーンの毎日を記録した映像日記があることを知らされる。その映像を再生すると、思いもよらない真実が記録されていた…。

原作は、SJ・ワトソンのベストセラーミステリー「わたしが眠りにつく前に」。主人公クリスティーンは、記憶障害は事故のせいではなく、何者かに襲われて瀕死の重傷を負ったためだと知り、その謎を探っていく。そのためのツールが“昨日の自分からのビデオメッセージ”というところが面白い。原作では映像日記ではなく文字でつづる日記。映像にすることで、クリスティーンの不安や動揺がよりリアルに伝わってくる。壁に貼られたたくさんの幸福そうな写真、再会した親友や医師の言動、優しく献身的な夫ベンのどこか思いつめたような表情。これらすべてが複雑にからみあっている。サスペンスなので謎解きは語れないが、真相はすべて“愛”ゆえということなのだろう。ベンの真実の姿はやや唐突に感じられるが、どれほどつらい事実であっても正面から向き合えば、その先に傷だらけの幸福が待っているのだ。ニコール・キッドマンとコリン・ファースのオスカー俳優同士の共演は2度目で、どちらもワケ有の夫婦という設定。美しいがどこか寒々しい室内装飾と、キッドマンの見開いた瞳がミステリアスだった。
【60点】
(原題「BEFORE I GO TO SLEEP」)
(英・仏・スウェーデン/ローワン・ジョフィ監督/ニコール・キッドマン、コリン・ファース、マーク・ストロング、他)
(不安度:★★★★☆)
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リピーテッド@ぴあ映画生活

グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札

グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札 [Blu-ray]
モナコ公妃となったグレース・ケリーの知られざる葛藤を描く「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」。ニコール・キッドマンが美しく優雅。

モナコ大公レーニエ3世と結婚したハリウッド女優のグレース・ケリー。子供にも恵まれたが彼女は王室で孤立していた。同じ頃、旧友のヒッチコックからハリウッド復帰の誘いがかかり、心が揺れる。だがそんな折り、フランスのシャルル・ド・ゴール大統領がモナコに税金を要求、武力衝突も辞さない非常事態となる。フランスとモナコの関係が悪化する中、グレースは自分にしかできない一世一代の難役を演じることを決意する…。

伝説的なハリウッド女優で、おとぎ話そのままにモナコ公妃となったグレース・ケリーの伝記映画は、何度も主役候補が変わった末に、ニコール・キッドマンで落ち着いた。見開いた青い瞳に吸い込まれそうなキッドマンのクローズアップの多用が示すように、ニコールありきの作品である。モナコに嫁いだグレース・ケリーの逸話では、生涯、彼女を公妃と認めなかった父王との確執や、今も謎に包まれた自動車事故の最期などがすぐに思い浮かぶが、本作はそれらにはまったく触れない。アメリカ式に女性が議論に参加しようとしても疎んじられ、堅苦しい王室のしきたりになじめないグレースは王室で孤立して孤独の中にいるが、そこにフランスとの関係悪化、宮廷内にいるフランスのスパイの存在など、外交的サスペンスがからみ、グレースが自分の役割を自覚するまでを、華麗な映像で描く人間ドラマになっている。どうしたら本物の公妃になれるのか。考えた末に、外交儀礼の専門家であるデリエール伯爵に教えを乞い、モナコの歴史、王室の仕組み、完璧なフランス語、公妃の作法、正しいスピーチなどを習得していくプロセスは、いわゆる成長物語だ。モナコを救うために開いた大舞踏会という“舞台”で練り上げたスピーチを披露する場面は、公妃という難役を演じる女優グレース・ケリーの一世一代の晴れ舞台。公妃をつらい立場ではなく、演じがいのある大役と割り切ってからの生き生きとした表情が、魅力的だ。全編を彩る優雅な衣装にも注目したい。
【60点】
(原題「GRACE OF MONACO」)
(フランス/オリヴィエ・ダアン監督/ニコール・キッドマン、ティム・ロス、フランク・ランジェラ、他)
(優雅度:★★★★☆)
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レイルウェイ 運命の旅路

レイルウェイ 運命の旅路 [Blu-ray]
第二次世界大戦を背景に英国人将校の壮絶な体験と献身的な妻の愛をつづるヒューマン・ドラマ「レイルウェイ 運命の旅路」。後日談を映像化せず淡々と語ったのはクレバーな演出だった。

第2次世界大戦で日本軍の捕虜となった、鉄道好きの青年将校エリックは、タイとビルマ間を走る“死の鉄道”タイメン鉄道の建設に従事し、過酷な労働を強いられ、非道な拷問を受ける。30年後、エリックは妻パトリシアと静かに暮らしながらも、戦争中の壮絶なトラウマに苦しんでいた。そんな時、自分を拷問した日本人通訳・永瀬が現在も生きていることを知る…。

原作は「エスクァイア」誌ノンフィクション大賞に輝いたエリック・ローマクスの自叙伝。戦争中に日本人が捕虜に対して行った強制労働や拷問の実態は、日本人にはつらい内容なのだが、学校の教科書には決して載らないこういう真実を教えてくれるのが映画の魅力であり役割のひとつでもある。鉄道マニアの青年将校だったエリックは、戦況を知るためにラジオを作るが、それが日本軍にバレて激しく拷問される。エリックの拷問現場に立ちあい通訳をしていた永瀬が、戦後、タイで戦争体験を伝える活動をしていると知ったエリックは、激しく動揺するが、悩んだ末に永瀬に会うことを決意する。終盤に描かれるこの2人が相対する“決闘”シーンは、緊張感がみなぎる迫真の場面だ。エリックは永瀬の非道と嘘を問い詰めるが、彼が最終的に下した決断は、キリスト教的な愛に基づく崇高な行為だった。戦争は単純な勝ち負けでは語れない。本作のテーマは赦しと贖罪。戦後、長く友情を育んだというエリックと永瀬のことを美談にして映像化せず、淡々と描いた演出が功を奏した。心に傷を負った人物を演じるコリン・ファースと真田広之の、共に抑えた熱演が素晴らしい。
【65点】
(原題「The Railway Man」)
(豪・英/ジョナサン・テプリツキー監督/コリン・ファース、ニコール・キッドマン、真田広之、他)
(歴史秘話度:★★★★☆)
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ペーパーボーイ 真夏の引力

ペーパーボーイ 真夏の引力 [Blu-ray]
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殺人事件を調査する兄弟が奇妙な人間関係にからめとられていく「ペーパーボーイ 真夏の引力」。ニコール・キッドマンのビッチぶりがすごい。

1960年代のフロリダ。大学を辞めたジャックは父親が経営する小さな新聞社で新聞配達を手伝う退屈な日々を送っていた。ある時、新聞記者をしている兄ウォードが、4年前に起きた殺人事件の再調査をすることになり、ジャックはそれを手伝うことに。依頼主は事件の犯人で死刑囚のヒラリーと文通だけで愛し合い、婚約までしている風変わりな美女シャーロットだった。ジャックはシャーロットに強く惹かれるが、シャーロットの目的やヒラリーの真偽は謎のまま。事件を追い真相を探るウォードとジャックの兄弟は、やがて悪夢のような事件に巻き込まれていく…。

原作はピート・デクスターの同名小説。物語の骨格そのものは、青年のひと夏の初恋スタイルをとっているのに、映画全編を南部特有のねっとりした高温多湿の空気が覆い、異様な嗜好の男女が入り乱れて、血と汗と臭気が漂うスキャンダラスな問題作に仕上がっている。主人公のジャックは人間としても男としても半人前の新聞配達(ペーパーボーイ)で、どこかあきらめたような、それでいて何かを渇望するような不安定な青年だ。得意の歌や踊りを封印したザック・エフロンが好演しているが、この決して大作とはいえない本作の豪華キャストの演技合戦の前に貫禄負けは否めない。秘密を抱えた兄役のマシュー・マコノヒーや犯罪者ヒラリーを怪演するジョン・キューザック、さらに出番は少ないが兄弟の父親役のスコット・グレンなど、クセ者が勢ぞろいした。だがなんと言ってもバービー人形のように美しく、それでいて淫らで下品な謎の女シャーロットを演じるニコール・キッドマンの迫力が群を抜く。「誘う女」や「イノセント・ガーデン」でも妖艶な美女を演じているが、本作の品位のなさは演技とはいえあっけにとられるほどで、この美人オスカー女優の演技者としての底力と肝っ玉を再確認した。刑務所の面会室でのヒラリーとの“やりとり”や、クラゲにさされたジャックの身体に放尿して救う場面など、あっぱれなビッチぶりである。もはやヒラリーの事件や彼が無実かどうかなどの謎は脇に置いて、歪んだ闇を抱え持つ男女の行く末を、沼地の奥の奥まで行って見守りたくなる。主人公の大人への通過儀礼はあまりに痛切。見終わったらグッタリと疲れるが、「プレシャス」で注目されたリー・ダニエルズ監督は、残酷な大人たちが本性をむき出しする世界をスキャンダラスなドラマで描いてみせた。やはり才人である。
【65点】
(原題「THE PAPERBOY」)
(アメリカ/リー・ダニエルズ監督/ザック・エフロン、ニコール・キッドマン、マシュー・マコノヒー、他)
(いかがわしさ度:★★★★☆)
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ブレイクアウト

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ニコラス・ケイジとニコール・キッドマンの2大スターが初共演した「ブレイクアウト」。シチュエーション・サスペンスなのに、緊張感に欠けてどうする。

カイルは、美しい妻サラと、反抗期だが愛らしい娘のエイヴリーと3人で豪邸に住むダイヤモンド・ディーラー。鉄壁のセキュリティを誇るはずのこの邸に、突然、覆面武装した4人組の強盗団が侵入する。強盗は、金庫を開けて中にあるダイヤを出せと迫るが、カイルにはその宝石をどうしても渡せない理由があった。一方、妻サラにもカイルに打ち明けられない秘密があって…。

原題「Trespass」は不法侵入の意味。まったく違う邦題になってしまったが、「ブレイクアウト」って確かチャールズ・ブロンソンの同名映画があったっけ。そして「アウトブレイク」という間違えやすいタイトルの映画も。混乱必至のこの題名からして何かB級臭が漂うが、フタを明けてみると、思ったとおりのユルいサスペンスだった。物語は、密室状態で、犯人と人質が心理戦を繰り広げるというシチュエーション・サスペンス。監督のジョエル・シューマッカーは、かつて「フォーン・ブース」でこのジャンルで冴えをみせたが、今回はなんとも締りがない。それはひとえに妻サラのポジショニングの曖昧さが原因だ。もしや強盗団と仲間なのか?という疑問を夫が持つのだが、その真相はあっけないもの。夫カイルの秘密にいたっては、最初からバレバレに読めてしまう。この物語、むしろ、犯人側の方のドラマを描く方がよほど面白かったのでは…と思うが、そちらの描写も、中途半端に終わっている。密室ものとしても、途中であっさり外に出てしまうなど、粗が目立つ作りだ。2大オスカー俳優の夢の初共演も、これでは残念な結果というしかない。サスペンスとしては弱すぎるこの作品を楽しむためには、問題を抱えた家族が、非常事態によって、もう一度絆を取り戻す家族ドラマとしてみるべきだろう。
【45点】
(原題「Trespass」)
(アメリカ/ジョエル・シューマッカー監督/ニコラス・ケイジ、ニコール・キッドマン、リアナ・リベラト、他)
(密室度:★★☆☆☆)
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ラビット・ホール

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「ラビット・ホール」は、子供を失くした悲しみに向き合う夫婦の痛ましい物語だが、ファンタジーやユーモアをにじませる演出が絶妙。希望は思いがけないところに隠れている。

NY郊外の静かな住宅街に暮らすベッカとハーウィーの夫婦は、幼い息子ダニーを交通事故で亡くした悲しみから立ち直れずにいた。深い喪失感は夫婦の間にも溝を作ってしまう。ある日ベッカは、偶然、ダニーの命を奪った車を運転していた高校生ジェイソンを見かけ、後をつける。やがてベッカはジェイソンと言葉を交わすようになり、不思議な安堵感を感じ始めるのだった…。

愛する者を失くした悲しみは共通のはずなのに、それを消化する方法は同じではない。自分とは違うやり方で悲劇をとらえる人間に、どうしようもない嫌悪感を抱いて苛立ってしまう。ヒロインのベッカは、まさしくそんな袋小路に陥った女性だ。ダニーの身の回りの物を処分し忘れようとするベッカに対し、夫のハーウィーは息子の映像を見ては一人思い出に浸っている。さらにベッカには麻薬中毒で死んだ兄がいて、母親が「自分も子供を失った悲しみは分かる」と言えば、薬物で死んだ兄とダニーを一緒にするなとばかり反発する。グループセラピーにいたっては、ベッカには神経を逆なでする場でしかない。妻が加害者の少年と交流し、夫が別の女性に惹かれる様子を見ていると、この夫婦が壊れてしまうのは時間の問題に思えた。だがそこに登場する“ラビット・ホール(うさぎの穴)”の存在が、思いがけない突破口になる。それは事故を起こしたばかりに一生罪の意識を背負うことになったジェイソンが描くファンタジー・コミックの題名だ。パラレル・ワールドがテーマのこのコミックが、ベッカに安らぎをもたらすのは、悲しむばかりではない、もうひとつの人生があることを教える道標となるからだろう。ベッカの母が言う「悲しみは消えないけれど、重さが変わる。時間が経てば、のしかかっていた重い大きな石が、ポケットの小石に変わるのよ」というセリフが深い滋味を醸し出す。絶望の中から自分なりの方法で立ち上がり、もう一度前を向くヒロインを演じるニコール・キッドマンの切実な演技が素晴らしい。異色のロックミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」のジョン・キャメロン・ミッチェル監督の、繊細な演出にも感服した。
【70点】
(原題「RABBIT HOLE」)
(アメリカ/ジョン・キャメロン・ミッチェル監督/ニコール・キッドマン、アーロン・エッカート、ダイアン・ウィースト、他)
(再生度:★★★★☆)
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オーストラリア

オーストラリア (ニコール・キッドマン 主演) [DVD]オーストラリア (ニコール・キッドマン 主演) [DVD]
オーストラリア出身の監督・俳優・主要スタッフが、国の威信をかけて作った大河ロマンだ。第二次大戦前夜のオーストラリアにやってきた英国貴族サラと野性的なカウボーイ・ドローヴァーの恋を軸に、悪徳牧場主との対決、1500頭の牛を連れての大陸横断、夫殺しの謎、日本軍の襲撃による戦争スペクタクルと、てんこ盛り。大味で詰め込みすぎの内容はまとまりに欠けると感じつつ、何だか得した気分にもなる。白いタキシード姿のヒューとチャイナドレスのニコールのラブシーンは、まるでハーレクイン・ロマンスのようで苦笑したが、美男美女なので許そう。特筆は、先住民アボリジニの旅立ちの儀式“ウォークアバウト”の神秘性。アボリジニの精神風土とも言える気高い心と美しく壮大な豪州の自然こそが最大の魅力だ。大自然のパワーが人の生き方を変えていく。オーストラリアは、その舞台に最もふさわしい場所だということなのだろう。
【55点】
(原題「AUSTRALIA」)
(オーストラリア/バズ・ラーマン監督/ニコール・キッドマン、ヒュー・ジャックマン、デヴィッド・ウェンハム、他)
(盛り沢山度:★★★★★)

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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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