映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「フィフティ・シェイズ・ダーカー」「ハクソー・リッジ」「結婚」「ありがとう、トニ・エルドマン」etc.

ノオミ・ラパス

ラプチャー 破裂

蜘蛛(クモ)が何よりも嫌いなシングルマザーのレネーは、ある日突然、見知らぬ男たちに拉致される。目覚めるとそこは、不気味な隔離施設。監禁されたレネーは、その人物が最も嫌う物を与え続けるという、異様すぎる人体実験の被験者にされてしまう。拘束され動けないレネーは、執拗なまでの“蜘蛛攻め”を受け続けるが、その果てに、彼女の身体は驚くべき変化を見せ始める…。

最も嫌いなものを与え続けるという謎の人体実験にさらされる女性の運命を描く異色ホラー「ラプチャー 破裂」。ラプチャーとは、副題にある“破裂”を意味するが、本作の場合、人間の中にあるものが、極限状態に達した時、何かを破って外に出てくるという、内部からの圧力による破裂である。大嫌いなものとは、例えば、ヘビだったり、幼少期のトラウマである親の叱咤だったり…とさまざまだが、本作のヒロインの場合は、蜘蛛(クモ)。これは、変質者による嫌がらせレベルなどではなく、目的は極限の恐怖と嫌悪感を引き出すことなのだ。こんな実験で、いったい何をしようとしているのか?という謎が物語を引っ張る。レネーや、他の被験者には共通の特徴があるが、レネーの場合、スカイダイビングをして従来の自分を変えたいという変身願望がある。この変身が、すなわち破裂(ラプチャー)だと考えれば、彼女に“素質”があることは納得できるのだ。拉致、監禁、蜘蛛攻め…。こう聞くと、バカバカしくもB級臭たっぷりの話に思えるが、終盤、物語が、ホラーからSF的要素を帯び始めると、これが宇宙空間ではなく見慣れた地球の日常で起こることに戦慄を覚える。秘めた強さを感じさせるノオミ・ラパスが、不思議なほど適役。それにしてもこの終わり方、あるのか、続編?ともあれ、「セクレタリー」で注目されたスティーヴン・シャインバーグ監督のカルトな感覚には、引き続き注目しておきたい。
【60点】
(原題「RUPTURE」)
(アメリカ/スティーヴン・シャインバーグ監督/ノオミ・ラパス、ピーター・ストーメア、マイケル・チクリス、他)
(不快度:★★★☆☆)
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ラプチャー 破裂|映画情報のぴあ映画生活

デッドマン・ダウン

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復讐心を胸に秘め、惹かれあう男女の異色サスペンス・アクション「デッドマン・ダウン」。地味な小品なのだがキャストが国際的で豪華。ちょっと拾い物の気分だ。

孤独に生きるヴィクターは、犯罪組織に所属する凄腕のヒットマン。ある日、向かいのアパートに住む、顔に痛々しい傷跡があるベアトリスと知り合い、彼女のことが気になり始める。二人は初めてデートするが、実はベアトリスはヴィクターの殺しの現場を目撃しており、警察に通報しない代わりに、自分の顔の傷を作った男を殺してほしいと依頼する。とまどうヴィクターだったが、自らも、かつて妻子を殺した男への復讐を胸に秘め、名前や経歴を変えて慎重に復讐計画を進めてきたこともあり、ベアトリスの依頼を引き受けることにする…。

ハリウッドやヨーロッで活躍するコリン・ファレルは、佳作「ヒットマン・レクイエム」でも殺し屋を演じて高い評価を受けた。今回演じるのもまた、ひとくせあるヒットマンだが、復讐という共通項で結ばれた孤独な女性の出現で、思いがけない運命に巻き込まれる。主人公ヴィクターが犯罪組織に所属するのは、そこのボスと彼の手下に妻子を殺されたから。復讐するには、敵の懐に入り油断したところで仕留めようという計画だったのだが、そこにベアトリスの依頼が飛び込み、二重の復讐計画を手がけることになる。さらに組織の中での相棒ダーシーと友情関係にあったり、ベアトリスとの恋愛関係にとまどったり、物語は意外なほど人間描写が細やかだ。アクションは、正体を隠して少しずつ標的を追いつめるなど、前半部分の復讐劇の展開はスリリングで秀逸である。ベアトリスの出現で計画が大きく狂いながらも、運命の歯車が回って、ついに終盤、ヴィクターが復讐を遂げる瞬間がやってくる。ここは前半とは対照的に驚くほどド派手な銃撃戦になり、少々大味なのが惜しい。いきなりドンパチなのはいかにもハリウッド流だが、この物語、誰が死んで誰が生き残るのか、そしてどう決着するのか、最後まで先読みできず、思いがけずハラハラした。監督は、スウェーデン映画「ミレニアム」で注目されたニールス・アルデン・オプレヴ。地味な佳作だが、出演俳優は、仏の名女優イザベル・ユペールや、テレンス・ハワード、ドミニク・クーパーなど、シブい俳優たちが揃っているので、映画ファンは要チェックだ。
【65点】
(原題「Dead Man Down」)
(アメリカ/ニールス・アルデン・オプレヴ監督/コリン・ファレル、ノオミ・ラパス、テレンス・ハワード、他)
(哀愁度:★★★★☆)
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デッドマン・ダウン@ぴあ映画生活

パッション

パッション Blu-ray
女たちの間に火花散る殺意と官能を描くサスペンス・スリラー「パッション」。完全犯罪にはほど遠いが女の権力闘争ものとして楽しめる。

大手広告代理店の重役クリスティーンは、冷酷で狡猾な女性だ。野心的な彼女に憧れる部下のイザベルは、画期的な企画を提案するが、クリスティーンからその手柄を横取りされる。さらに恋人ダークにも裏切られ、同僚の前でクリスティーンから屈辱的な扱いを受けたイザベルは、精神的に不安定になって薬物に依存するように。ある晩、クリスティーンが無残に殺害される事件が発生し、彼女に恨みを抱いていたイザベルが容疑者として逮捕されるが、事件当日のアリバイが証明され、やがて容疑は会社の金を横領していたダークに移っていった。だが、真犯人とそれを知る人物によって、事件は思わぬ方向へ進んでいく…。

本作は仏映画「ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて」のリメイクになるが、セクシーな女性キャラを偏愛し、凝った映像で知られる監督ブライアン・デ・パルマが、けれん味たっぷりに作り直した。もっとも官能サスペンスとのキャッチとは裏腹に、エロティック度数は低いし、サスペンスの内容も、女同士の愛欲がらみで嫉妬やねたみ、出世欲など、まるで昼メロのような安い展開である。ただ、映像に凝るブライアン・デ・パルマらしく、細かいカット割りでキャラクターの心情を表現したり、スマホやディスプレイの映像を活かしたり、犯行とバレエの舞台を分割画面で見せたりと、なかなか楽しいビジュアルを用意してくれているので飽きることはない。主人公の女性キャラ2人を、金髪と黒髪という、見た目ではっきり区別したのも“らしい”ところだ。そこに赤毛の“第3の女”が参戦してからは、女の欲望に拍車がかかる。サスペンスとしては、女同士のバトルだけが目につき、犯行や目撃者など犯罪の細部がいいかげんすぎると感じることも。だが「殺しのドレス」を彷彿とさせる毒々しい描写や、熱烈なヒッチコック・ファンを自認する監督が、セルフ・パロディーまで使ってサービスしてくれているのを見ると、久々に見る“デ・パルマ節”も悪くないと感じてしまう。レイチェル・マクアダムスとノオミ・ラパスといった旬の女優たちが華やかで魅力的だ。
【50点】
(原題「PASSION」)
(仏・独/ブライアン・デ・パルマ監督/レイチェル・マクアダムス、ノオミ・ラパス、カロリーネ・ヘルフルト、他)
(女のバトル度:★★★★★)
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パッション@ぴあ映画生活

映画レビュー「プロメテウス」

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◆プチレビュー◆
人類の起源という根源的な謎に挑んだSF超大作「プロメテウス」。壮大で幻想的なビジュアルに圧倒される。 【65点】

 2093年、考古学者エリザベスら17名のクルーは、宇宙における人類の起源を解明するため、宇宙船プロメテウス号に乗って地球を出発する。だが、2年後にたどり着いた惑星で、彼らは、地球上の常識では計り知れない、驚愕の真実を目の当たりにする…。

 「ブレードランナー」、「エイリアン」など、映画史に残るSF作品を手がけた巨匠リドリー・スコットは、どうやら、人間を“第一の原人”とは考えていないようだ。人間が最初に生まれたという発想そのものが、傲慢だとさえ言い切る。人類の起源を、科学や宗教を超えた解釈で描くこの作品は、スコット監督が導き出した、ミステリアスな可能性の物語だ。

 冒頭、荒々しい岩肌の大地と巨大な瀑布の岸に立つ知的生命体“エンジニア”が、自分の肉体を分解してばらまいているのはDNAなのだろうか。宗教や進化論をものともせず、一気に人類誕生の新説を提示するから、潔い。その突拍子も無い提言を、思わず信じてしまいたくなる、異様な惑星の光景や、宇宙船内部のガジェットなど、イマジネーションあふれる幻想的なビジュアルは、映像派のリドリー・スコットだけが持つ説得力と言えよう。

 地球上の複数の遺跡に共通したサインを、宇宙からの招待状と解釈したエリザベスたちは、たどり着いた惑星で、洞窟の奥のビッグフェイスの彫像、並べられた無数の壷、光を放つ奇妙な施設などを目にする。それは“神の領域”というより、恐怖が充満した地獄のような暗黒の空間。宇宙に対する安直なシンパシーを叩き潰し、失望を煽る暗い展開は、まさに先読み不能だ。

 巨大企業が出資したプロメテウス号内部には、ある秘密が隠されているのだが、その鍵を握るのが、精巧なアンドロイドのデヴィッドである。端正で無表情なデヴィッドを演じるマイケル・ファスベンダーが適役で、国際的なスターが集うこの超大作の中でも、とりわけ存在感がある。

 想像を絶するクライマックスの果てに、科学者でありながら、信仰を拠り所にするエリザベスと、人間の感情は理解できるが自分自身は感情を持たないアンドロイドのデヴィッドが行動を共にするのを見ると、世界の大いなる“矛盾”を受け入れざるを得ない。だが多くの謎を内包した物語は、未来の世界で遠い宇宙の果てまで来た人類が、太古へと回帰するという、アイロニカルなもの。人類に火という知性を与えた神プロメテウスの名は、第二のプロメテウスと呼ばれる原子力にも使われている。失意が充満するこの世界で、パンドラの箱の底に残った希望を見出すには、人類には、まだ長い航海が必要なのだろうか。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)壮大度:★★★★★

□2012年 アメリカ映画 □原題「PROMETHEUS」
□監督:リドリー・スコット
□出演:ノオミ・ラパス、マイケル・ファスベンダー、シャーリーズ・セロン、他

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プロメテウス@ぴあ映画生活

ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士

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スウェーデン発ミステリー「ミレニアム」三部作の完結編。権力側の陰謀に決して負けないヒロインの反骨精神に尊敬の念を覚える。自分に罪をきせ命を狙った敵と対決し、瀕死の重傷を負ったリスベット。病院から退院後、収監されてしまう彼女はほとんど身動きがとれない“眠れる女”だ。だが彼女の無実を信じるジャーナリストのミカエルは、ひそかに連絡をとる術を見つけ出す。一方、ミカエルの妹で弁護士のアニカや、リスベットのハッカー仲間らも、独自の方法で調査を進める。なぜリスベットは12歳で精神病院に入れられ「無能力者」として後見人制度の下に置かれたのか。ついに始まった裁判で、リスベットは自分に起こった忌わしい出来事を話し始める…。

信じられないほど残酷で身勝手な、元公安警察「特別分析班」の男たちは、まるで旧時代の遺物のよう。スウェーデンの過去の歴史の暗部を覗き見るようでゾッとする。リスベットはそんな彼らの秘密を握る要注意人物として抹殺されようとしているのだが、事件は複雑で、リスベットの家族関係の悲劇までもがからむ壮大な展開に一瞬も目が離せない。誰も信用せず、外見も内面も攻撃的なリスベットのキャラクターに最初は感情移入は難しいが、本当に信頼している人間には、短い言葉で心からの感謝を捧げる彼女こそ、真に誠実な人間なのだと分かるだろう。裁判に望むとき、黒のパンクファッションでキメてみせる彼女のいでたちは、闇の権力と理不尽な暴力への毅然とした「NO!」の決意表明だ。最後の最後まで、巧妙な仕掛けで悪を制裁するリスベットの知性に、溜飲を下げる。それにしてもリスベットを何年もの間苦しめてきた精神科医のテレポリアンのなんと憎々しいことか。医師という立場を利用して彼が行う悪事には、怒り心頭だ。このトンデモない男の末路は映画を見て確かめてほしい。また、執拗にリスベットを狙う無痛症の大男のラストも必見。とても太刀打ちできそうにない巨悪を相手にするリスベットだが、彼女には、並はずれた知性と、味方になって彼女を守る“狂卓の騎士”たちがいる。3部作すべてでリスベットを演じきったノオミ・ラパスの、射るような瞳が忘れられない。そして時折見せるさびしげな横顔も。“女を憎む男たち”という原作の副題は1のものだが、3部作すべてに貫かれたテーマだ。だが小柄なヒロインは自分を虐げるおぞましい存在を決して許さない。悪に対する不屈の魂。それがこの秀作ミステリーの本当の主題だ。
【70点】
(原題「Millenium 3: The Girl Who Kicked the Hornet's Nest」)
(スウェーデン・デンマーク・ドイツ/ダニエル・アルフレッドソン監督/ノオミ・ラパス、ミカエル・ニクヴィスト、他)
(戦うヒロイン度:★★★★★)

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ミレニアム2 火と戯れる女

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世界的ベストセラーのミステリー小説を映画化した「ミレニアム」3部作の第2弾。天才ハッカーのリスベットとジャーナリストのミカエルがほとんど別行動なので前作に比べて少し物足りないが、リスベットの過去が現代の事件とつながる展開が面白い。孤独に生きてきたリスベットが、愛してしまったミカエルの前から姿を消して1年。社会派雑誌「ミレニアム」で少女売春組織の特集の準備を進めていたジャーナリストが殺害される。現場にはリスベットの指紋がついた銃が残されていた。その後、リスベットの後見人のビュルマンも殺害され、リスベットは容疑者として指名手配されてしまう。彼女の無実を信じるミカエルは、雑誌発売に関する脅迫を受けながらも、リスベットの嫌疑をはらそうとする…。

前作1は1話完結の形をとっていたが、本作2と次の3とは強く連動している。一気に見るのがお勧めだが、何しろ登場人物が多く展開がスピーディーなので、集中力が必要だ。本作では、身に覚えのない殺人事件の容疑者にされてしまったリスベットの衝撃的な過去が語られると共に、警察内部に存在した特殊機関の恐るべき陰謀が浮かび上がる。リスベットというヒロインは、小柄で華奢、全身をタトゥーとピアスで武装したかのような外見。中身は、誰にも媚びず、人を容易に寄せ付けない性格でバイセクシュアル、さらに天才的なハッカーという極めて特異なキャラクターだ。だが、本当に信じられる相手には心を開く。こんな人物像に至るのが納得できるほど、彼女が封印していた過去は忌まわしい。捜査の中で浮かび上がるザラという謎の男、無痛症という特異体質のザラの手下“金髪の巨人”が、リスベットにつながる秘密がとりわけショッキングだ。さらに、自らの罪を隠ぺいするためリスベットを亡き者にしようとする特殊機関の老人たちが、歴史の亡霊のようで不気味である。瀕死の重傷を負ったリスベットは、はたしてどうなるのか。事件の解決は3に持ちこされるが、次回への興味を最高の形でつなぐ巧みなストーリーテリングに、引きつけられる。「火と戯れる女」とは、リスベットが過去に起こした事件に由来する副題。北欧社会の裏側に潜む女性蔑視と暴力に戦慄を覚えた。と同時に、一人の女性の人生を破壊しようとする巨悪に立ち向かうヒロインの気概が胸を打つ。
【65点】
(原題「Millenium 2: The Girl Who Played with Fire」)
(スウェーデン・デンマーク・ドイツ/ダニエル・アルフレッドソン監督/ノオミ・ラパス、ミカエル・ニクヴィスト、他)
(サスペンス度:★★★★★)

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映画レビュー「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」

ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 [DVD]ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女 [DVD]
◆プチレビュー◆
北欧発のミステリーは、型破りのヒロイン像が興味深い。話は面白いが映画の構成は少々疑問。 【65点】

 ジャーナリストのミカエルは、大企業ヴァンゲル・グループの前会長ヘンリックから、40年前に失踪した少女の調査を依頼される。実業家の不正を告発し、失業中のミカエルは、天才ハッカーのリスベットと共に調査を始めるが…。

 本好きの人ならこの映画の原作で大ベストセラー小説のことは、ご存知のことだろう。謎解きの面白さはもちろん、従来のミステリーと趣を異にする異形のヒロイン、リスベットの存在が際立っている。彼女は、セキュリティ会社の有能な調査員だが、無愛想かつ攻撃的、少年のように小柄で、鼻ピアスにタトゥー、全身黒い服で武装している人物である。しかし彼女の持つ本当の武器は、天才的なハッカーの腕と映像記憶能力。社会に対して牙を剥いているかのようなリスベットだが、調査したミカエルの無実と彼の反骨精神を知り、自分から事件に係わっていくところを見ると、正義感は強いようだ。

 そんなリスベットとミカエルの2人が掘り起こす、16歳の美少女ハリエットの失踪の謎は、富豪一族の闇を浮き彫りにしていく。登場人物が多いので、少し分かりにくいが、ナチへの傾倒、育児放棄、アル中、遺産への執着など、一族の暴挙はただごとではない。調査を依頼したヘンリックが、自分の血縁者の誰かが同じ一族であるハリエットを殺したと考えるのも無理はない。だが事件の裏に潜む忌まわしい事実は、想像を超えるどす黒さだった。2時間半を超える長さだが退屈とは無縁で、ミステリーの規模も壮大。大いに見応えがある。ただ、原作ファン以外も見る、映画の構成としては果たしてどうなのか。

 まず、コンビを組む2人が出会うまで、随分と時間がかかる。それでも、原作の長さからするとかなりの駆け足なのだ。それは主役の紹介と背景を説明するパートだが、ミカエルはさておき、リスベットの置かれた状況は人物紹介と呼ぶにはあまりにすさまじく、悲惨なものだ。しかも、彼女の壮絶な体験は捜査する事件との直接的なつながりはないのである。2つの交わらないストーリーが同時進行する奇妙なフォルムは、映画として落ち着きが悪い。

 事件の全貌を知れば、不当に虐げられる女性の代表のようなリスベットが、独自のルールで反撃する描写の必要性は感じられる。だが、映画で初めて「ミレニアム」に触れる観客には、リスベットの物語は、別の作品で描く方が親切だ。泣き寝入りなどしない彼女の行動は痛快だが、だからといって決して傷が癒えるわけではない。ドラゴンのタトゥーが刻まれた身体以上に心が傷ついたヒロインに、より感情移入するために、映画1本分の時間がほしい。

 スウェーデン語の原題は「女を憎む男たち」の意味。福祉大国のこの国は、実は女性など弱者に対する虐待の件数が多く、しかも表だって問題にするのを避ける傾向があるそうだ。孤島に封印された事件の謎は、この原題の意味を照射しながら解決を見る。原作者のスティーグ・ラーソンは、この「ミレニアム」シリーズの出版を前に、50歳の若さで急死。2部と3部はすでに映像化されているそうで、全篇、社会に潜む不正や暴力、差別を扱うというから、気骨がある。北欧に誕生した孤高のヒロイン、リスベットの痛々しい生き様は、見ていてヒリヒリするが、彼女の鮮やかな活躍は、もう少し見てみたい。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)社会派ミステリー度:★★★★☆

□2009年 スウェーデン映画 原題「THE GIRL WITH THE DRAGON TATTOO」
□監督:ニルス・アーゼン・オプレウ
□出演:ノオミ・ラバス、マイケル・ニクヴィスト、スヴェン・バーティル・トープ、他

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◆映画ライター、映画評論家
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新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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