映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ゲット・アウト」「ブレードランナー 2049」「先生」etc.

ハル・ベリー

チェイサー



シングルマザーのカーラは、いつも訪れている公園で一瞬だけ目を離したすきに、4歳の息子フランキーを何者かに連れ去られてしまう。車で必死で追いかけるが、犯人は誰かわからず、まともに取り合ってくれない警察は当てにならなかった。息子を絶対に取り返すと誓ったカーラは、たった一人でフランキーを探し出し、取り戻そうと決意する…。

アメリカで社会問題になっている児童誘拐を題材にしたアクション・スリラー「チェイサー」。子どもを誘拐された親がどんな犠牲を払っても我が子を取り戻すというストーリーは「96時間」に似ているが、本作の母親カーラは、元凄腕スパイや元CIA特殊工作員などではない、平凡なウェイトレスなのだ。だが我が子を愛する気持ちと絶対に取り戻すという強い決意は「96時間」の最強の父親に勝るとも劣らない。息子を乗せた犯人の車を自分の車でひたすら追いかけるだけという展開は、一見メリハリがないように思えるが、次から次へとトラブルが巻き起こり、一瞬も目が離せなくなる。このテの追跡劇では必須の小道具のスマホを使わせない設定が、なかなか新鮮で、まさに身一つでの戦いだ。

オスカー女優でボンドガールも務め、ゴールデンラズベリー賞も受賞するという変幻自在(?)の美女ハル・ベリーも50歳を超えてさすがに老けたが、それでもほぼノーメイク、鬼の形相でも、やっぱり美しく、狭い車内での一人芝居に近い演技も迫力たっぷりだ。犯人はいったい何のためにカーラの息子を奪ったのか。その理由は、終盤に明かされる。アメリカでは18歳未満の児童誘拐事件は、年間約80万人、1日当たり2000人超ともいわれているそう。ヒロインの受難は、誰にでも起こりうる身近な出来事なのだということを知れば、アメリカの闇ともいえるその恐怖はリアルなものになる。カーラが地元の警察で、沢山の行方不明になった子どもの顔写真を見て絶望の表情を浮かべた後に、愛する息子を守るためには自分が動くしかないと決意する一瞬に、母の強さを見た。
【65点】
(原題「KIDNAP」)
(アメリカ/ルイス・プリエト監督/ハル・ベリー、リュー・テンプル、セイジ・コレア、他)
(母は強し!度:★★★★★)
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ザ・コール 緊急通報指令室

ザ・コール 緊急通報指令室 [Blu-ray]
緊急電話番号911の女性オペレーターが誘拐事件解決に奮闘する異色のサスペンス「ザ・コール 緊急通報指令室」。ラストには疑問が残るが緊迫した展開は見事。

L.A.の“911緊急通報指令室”に務めるベテラン・オペレーターのジョーダンは、ある少女からの不法侵入者の通報の対応で判断ミスをし、少女の命が失われた悲劇から、自信を失ってしまう。今では極度の緊張を強いられるオペレーター業務から退き研修生を教える教官として働くジョーダンだが、シリアル・キラーに拉致され、車のトランクに監禁された少女ケイシーが911にかけてきた電話を偶然にも受けてしまう。非常事態を察知したジョーダンは携帯電話だけを頼りに、ケイシーに指示を与え、何とか事件を解決しようと奮闘するが、犯人の声から、あの時の少女を殺害した殺人鬼と同一犯だと気付く…。

911とは日本の110番に当たる番号。サスペンス映画ではよく登場するものの、この裏方の仕事が主役になる映画は珍しい。911緊急通報指令室の激務を説明する導入部が実に巧みで、熟練のオペレーターである主人公ジョーダンが心に傷を負う原因になった過去の事件や「決して通報者に約束はしないで。守れないから」というセリフが、見事な伏線になっている。「マシニスト」の鬼才ブラッド・アンダーソン監督は、電話というありふれた小道具で物語を活写するが、94分の上映時間がリアルな犯罪と追走し、一瞬も緊張感が途切れない。犯人に気付かれないように、ライトやペンキといったトランクにある道具を使ってケイシーに救出の手がかりになるような指示を与え、時には世間話も交えて少女をはげますジョーダン。彼女の知恵と誠意と正義感に、いつしか感情移入してしまうだろう。だが、シリアル・キラーの犯人が過去の事件と同一犯だと気付いた時点から、物語はサスペンスからサイコ・スリラーへと変化していく。結末は明かせないのだが、この終盤の展開には誰もが驚くはず。惜しいのは精一杯の勇気で卑劣な犯罪者に立ち向かってきたジョーダンとケイシーが、最後には物語の最強の小道具である電話から離れてしまうことだ。最後の最後には、もうひとひねりの驚きが用意されているが、息の根を止めないこの決着の付け方は是非というよりも詰めが甘い気がするのは私だけだろうか。いろいろと文句を付けてはいるが、この作品のユニークさ、テンポのよさ、無駄のない脚本には実に感心させられる。ハル・ベリーとアビゲイル・ブレスリンの“かけあい”共演も見ごたえたっぷり。拾いモノの1本だ。
【70点】
(原題「THE CALL」)
(アメリカ/ブラッド・アンダーソン監督/ハル・ベリー、アビゲイル・ブレスリン、モーリス・チェスナット、他)
(緊張感度:★★★★★)
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クラウド アトラス

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6つの物語がシンクロする壮大な物語「クラウド アトラス」。今まで見たことがないような構成にびっくり。ウォシャウスキーが兄弟ではなく“姉弟”になったことに驚いている場合じゃない!

1849年、太平洋上の船の上で、瀕死の青年弁護士が悪徳医師のえじきになろうとしていた。その後、1936年のスコットランドでの幻の名曲“クラウド アトラス”の誕生秘話にはじまり、6つの異なる時代、異なる場所での物語が綴られる。そして、地球が崩壊した未来で、一人の男が、壮絶な己の物語を子供たちに語っていた…。

ややこしくて難しくて長い。前評判はすべて正しいが、不思議な感動を覚える映像叙事詩だ。原作は、デヴィッド・ミッチェルの同名ベストセラー小説で、それをアンディとラナのウォシャウスキーとトム・ティクヴァの3人の監督が、豪華スターに一人6役を演じさせ、6つの物語を並行して語るという驚異的な脚本で映像化している。描かれるのは、波乱万丈の航海物語、幻の名曲の誕生秘話、原子力発電所の陰謀、人殺しの人気作家と編集者の関係、伝説となるクローン少女の自我の発露、そして崩壊後の地球の戦い。それぞれの物語の主人公たちを関連付けながら語るテーマは、輪廻転生だ。だが宗教臭さは微塵もない。何度も過ちを繰り返す人間を描きながら、死を終わりではなく、未来への希望ととらえている。それぞれに興味深いエピソードだが、ネオ・ソウルでのクローン少女が管理社会の中で、感情に目覚め、大きな変革をもたらす存在になるストーリーは、アクションありラブストーリーありで、最も印象に残る。演じるペ・ドゥナもまた素晴らしい。一人6役といっても言われなければ分からない特殊メイクのものも。エンドクレジットですべて明かされるので、それもまたお楽しみだ。時空を越えてつながり、性や種族を越えて生まれ変わるのは、愛するものに再び巡り合うためだろうか。その目印がほうき星の痣だとしたら、これはまた随分とロマンチックな物語である。こんな壮大なストーリーをイマジネーション豊かな映像で構成する本作、今まで見たどんな映画とも異なる質感だ。3時間という長尺にひるまず、ぜひ体感してほしい。
【70点】
(原題「CLOUD ATLAS」)
(アメリカ/ラナ・ウォシャウスキー、トム・ティクヴァ、アンディ・ウォシャウスキー監督/トム・ハンクス、ハル・ベリー、ジム・ブロードベント、他)
(壮大度:★★★★☆)
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クラウド アトラス@ぴあ映画生活

映画レビュー「悲しみが乾くまで」

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◆プチレビュー◆
デンマークの俊英女性監督がハリウッド進出。喪失感を抱えた男女の感情を描く静かな人間ドラマだ。 【70点】

 美しい主婦オードリーは平凡だが幸せに暮らしていた。だが突如、夫のブライアンが事件に巻き込まれ死亡する。どうしても彼の死を受け入れることができない彼女は、夫の親友で麻薬中毒に陥っているジェリーを思い出し連絡を取るのだが…。

 デンマークのスサンネ・ビア監督は、秀作「アフター・ウェディング」などで、その実力は証明済み。ハリウッド・デビューとなる本作でも、小手先の技術や派手なアクションに頼らず、商業路線の映画とは異なる質感を感じさせた。喪失感にからめとられた男女が懸命にもがく姿は「ある愛の風景」のテイストに極めて近い。

 その力強さと揺るぎない演出はどこから来るのか。何気ない日常からハードな展開になるのがビア監督の持ち味だが、この人は私たちの平凡な人生がとても脆い土壌の上に立っていることを知っているのだ。突然、愛する家族を失うことや、ふとした誘惑からドラッグに溺れ堕落していくことは、誰にでも起こり得る。そしてそれが、私たちの幸せを暴力的に奪うことを改めて突きつける。

 オードリーは、ずっとジェリーのことが好きになれなかったが、幸せをもぎ取られて初めて、人間の弱さや脆さを理解し始める。ジェリーもまた、必要とされる自分を見出し再生を決意した。心理描写はオードリーの側を重視していて、幼い息子に泳ぎを教えたり、行方不明になった娘が映画館にいたことを知るジェリーに嫉妬する形で描く。助けが必要なのは、麻薬中毒の彼ではなく、物質的に恵まれた暮らしをおくるオードリーの方なのだ。心の充足を渇望する平凡な人間。これが二人の共通項である。

 このように、繊細でごまかしの効かない演技を要求する監督の熱意に、ベリーとデル・トロというオスカー俳優が気合の名演で答える。特に、稀代の怪優デル・トロのリアルな麻薬中毒演技に圧倒されるが、鬼気迫るデル・トロに、ベリーは「あなたが死ぬべきだった」と、ナイフのような言葉を静かに吐いたりするのだ。相討ちになりかねない二人の奇妙な共同生活は、悲しみが沸点に達した時に新たな局面を迎える。

 物語をセリフより雄弁に語るのは、独特のインパクトのある映像だ。突如アップになる、顔、瞳、指先。ポッカリ空いた心の穴を、主人公たちがベッドに横たわる危うい演出で見せながら、耳をひっぱるという個性的な官能描写で描いたのには驚いた。完璧な美女ハル・ベリーをありきたりにカメラに収めず、耳たぶを大写しにしてみせるとは。セックスではなく、ただ体をからめて横たわる男女の姿は、彼らの心がいかに冷え切っていて安らぎを欲しているかを表して、非凡な演出である。

 この映画の個性は、繊細な人間性の中にふと混じる荒々しい感情だ。物語は安易な恋愛の方向へは向かわず、登場人物たちにある種の平安をプレゼントして静かに終わる。過去の作品に比べて、少々甘さを感じるラストなのだが、ビア監督がハリウッドとの妥協点を探ろうとしている姿が見えた。この才人の今後を見守りたい。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)喪失感度:★★★★☆

□2008年 アメリカ映画 原題「THINGS WE LOST IN THE FIRE」
□監督:スサンネ・ビア
□出演:ハル・ベリー、ベニチオ・デル・トロ、デヴィッド・ドゥカヴニー、他

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パーフェクト・ストレンジャー

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ハル・ベリーの演技力を無駄にした情けないサスペンスで脱力させられる。宣伝文句と良くできたCMにだまされるファンがきっと多いだろう。幼馴染の死を調べる元新聞記者の女性が大富豪に近づき、意外な秘密と真実へと導かれる。怪しげな風貌のジョバンニ・リビシは適役だが、ウィリスはただのエロ親父にしか見えないのが困ったもの。ベリーは相変わらず抜群に美しいので、目の保養にはいい。
【35点】
(原題「PERFECT STRANGER」)
(アメリカ/ジェームズ・フォーリー監督/ハル・ベリー、ブルース・ウィリス、ジョヴァンニ・リビシ、他)
(期待はずれ度:★★★★☆)

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チョコレート

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◆プチレビュー◆
辛口の恋愛映画の秀作。原題は死刑囚が最期にとる食事に由来する言葉だ。R指定だが、子供なんかにはもったいなくて見せられない。

人種偏見が根深いアメリカ南部で、夫を死刑で、一人息子を交通事故で相次いで失った黒人女性レティシアと、瀕死の息子を病院に運んでくれた白人の男ハンクが出会う。打ちのめされた彼女の前に現われたハンクは、人種差別主義者で、更には夫の死刑を担当した刑務所の看守だったのだが、ハンクもまた目前で息子に自殺されてしまうという悲しみを抱えていた。人種の壁を越えて惹かれあう二人だったが…。

映画「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」の中で、“男と女は元々ひとつ、引き裂かれた体の半分を探してさまよい続ける…”という内容の歌が出てくるが、この映画の二人は、自分の相棒がこの相手だったと知って、さぞ驚いただろう。それほど、彼らの間には険しい壁があるのだけれど、二人に共通する悲しみという感情がじわっと壁にしみこんで、いつしかひとつになってしまったのかもしれない。

ベリーのオスカー受賞は確かに感動的だったが、実はこれ、父と子の両方を演じるB.B.ソーントンこそが主人公のストーリーなのだ。もちろん演技ではどちらも引けをとらずに素晴らしいけれど、深すぎる喪失感を味わった男女が出会い、再び新たな希望を取り戻すのは、口数は少ないけれど、よく見ると大胆に行動しているハンクのおかげ。ソーントンはこの人物をほとんど完璧に演じている。

息子が目の前で命を絶つというあまりにもショッキングな事件がきっかけで、ハンクは、黒人と女性を蔑視する父親からの呪縛にとらわれていた自分に気付く。代償が大きかった分、彼の価値感は根底から変わるのだが、殆どセリフなしでこの心境の変化を演じきる無愛想なビリー・ボブが本当に上手い。

勿論、前評判に違わず、H.ベリーも秀逸だ。モトが美人だから汚いナリもさまになる。レティシアには、夫の死が解放をも意味し、その後の息子の事故死すら、レティシアを結果的に自由にする。それ故に、初めてハンクと結ばれる前に「私をもう一度、女に戻して!」と叫んでしまうのか。レティシアが冗談混じりに死んだ息子のことをハンクに語りながら、湧き上がる悲しみとやるせなさを爆発させる演技は、心から血を流して演じるH.ベリーの見せ場だ。

人生のどん底を観た男女が初めて体を求め合う場面は、迫真の演技で、カメラワークも実に凝っている。家具の隙間から覗き見るようなアングルや、鏡やガラスに映り込む映像で、二人の本性のぶつかり合いを描き出す。繰り返し映る鳥かごも印象的。一方で、後半に出てくるもう一つのベッドシーンの穏やかさ。この対比が、二人の心の変化を現わしている。チョコレートアイスクリームを買いに出たハンクが、実は夫の死刑を執行した人物だとレティシアが知るのはこの直後だった。

肥満の息子が食べるチョコレートバー、ハンクがいつも決まって注文するチョコアイス。登場人物たちは、手に入らぬ愛の代用品として苦いチョコレートを食べる。沈黙を続けた物語の最後に、ハンクがつぶやく言葉は「俺たち、きっとうまくいくよ」。映画では聞き慣れたはずのこの台詞がこんなに胸に響くとは…。静寂と緊張感の中で、心に深い傷をおった男女は痛ましい愛の旅立ちを決意する。このときのレティシアの表情が忘れ難く、いつまでも映画の余韻となる。

人種差別や家族の崩壊という社会問題を内包しながらも、あくまで軸は男女の結びつき。この作品がR指定なのは、観れば納得。理由は激しい性描写などではない。起こっている物事や人物の感情全てを言葉で説明しないと判らないお子ちゃまには、まだ、この映画は無理だ。黙して語らず、間合いを味わうビターな恋愛物語なのだから。表情や行間から愛と葛藤が読み取れる大人だけが、鑑賞を許される。ラストの場面で見せるH.ベリーの、悲しくて嬉しくて困ったような表情は値千金。無言のこの演技でオスカーをその手にぐっと引き寄せたと確信した。

□2001年 アメリカ映画 原題「Monster's Ball」
□監督:マーク・フォスター
□出演:ハル・ベリー、ビリー・ボブ・ソーントン、ヒース・レンジャー、他

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ソードフィッシュ

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◆プチレビュー◆
悪のカリスマ、トラボルタ。しかし、あの髪型、どうにかならんのか?!

銀行に眠る政府の闇資金をネット回線から奪おうと企てるガブリエル。図らずも彼に協力することになった天才ハッカーのスタンリーは、謎の美女ジンジャーらと銀行のシステム侵入を成功させるが、なぜかガブリエルは人質をとり銀行襲撃を強行する。彼の真の狙いはいったい…。

観客を錯覚させるミスディレクションがうたい文句のこの映画、その割にはなんとなく先が読める展開。それなのに楽しめるのは、冒頭シーンの完成度とミュージックビデオ出身というこの監督のテンポの良さのせいだろうか。ジョン・トラボルタ扮するガブリエルが、アル・パチーノ主演の「狼たちの午後」を痛烈に批判するところから映画は始まる。会話から銀行強盗事件の幕開けのシーンへと突入。さらにはこの映画最大の見せ場ともいえる迫力の爆発シーンへと続く冒頭は、上手いの一言。鋭い映像やノリのいい音楽が一体となって、ゴージャスな爆破シーンに釘付けだ。

注目は、一点を中心にカメラの視点がスローモーションで周囲を移動していくという、独特の表現法“ブレッドタイム”。「マトリックス」で初めて使われた手法だ。時間にすると1.5秒ほどに過ぎない爆破シーンを、約30秒間のスロー映像として表現。銀行を中心に、周囲のカフェの店内やパトカーの車の中を、ゆっくり、そして複雑に通り抜け、弧を描きながら移動するカメラ。空に吹き飛ぶ人間や割れて飛び散るガラスの破片の映像を織り交ぜながら描かれる臨場感あふれる爆破シーンは、まるで自分が爆発の中心にいるかのような錯覚を起こさせる。

映像的にすばらしい分だけ、人物の描き方には穴が目立つ。スタンリーだけは詳しく描かれるが、黒幕と思われる政治家もあっさりおダブツ。せっかくサム・シェパードが演じているのだから、もうちょっと説明してくれても良さそうなのに。悪の権化ガブリエルの背景もほとんど語られない。マジシャンの業界用語で人間の“思い込み”を利用した高等技術ミスディレクション。これも、とりたてて言うほど大した効果はなく、ラストも予想通りなのだ。

冒頭の銀行襲撃シーンから時間がさかのぼる展開がスリリング。短時間に二転三転するストーリーを追っているうちに、観客は細かい欠点はいっさい気にしない思考回路が出来上がっている。劇中に登場するハリウッド映画のリアリティのなさを批判するセリフも、この監督特有のパラドックスに違いない。

□2001年 アメリカ映画 原題「Swordfish」
□監督:ドミニク・セナ
□主演:ジョン・トラボルタ、ヒュー・ジャックマン、ハル・ベリー、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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