映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
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◎ 今週末の公開映画から オススメの1本! ◎
チリ他合作映画「ナチュラルウーマン」

パオロ・ソレンティーノ

グランドフィナーレ

グランドフィナーレ [Blu-ray]
スイス・アルプスの高級リゾートホテル。80歳を迎え現役を引退した世界的な指揮者のフレッドは、ここで穏やかな隠居生活を送っている。ホテルには、フレッドの親友の映画監督ミックをはじめ、ハリウッドスターやセレブが滞在しているが、皆、それぞれに心に悩みを抱えていた。そんな中、フレッドのもとに、英国女王から出演依頼が舞い込むが、なぜかフレッドは頑なに断り続ける。その理由は、娘のレナにも隠している、妻とのある秘密にあった。だが、ホテルの滞在客との交流の中で、次第にフレッドの心に変化が訪れる…。

フェリーニの系譜に連なる映画作家で、21世紀の映像魔術師と呼ばれるパオロ・ソレンティーノ監督の新作「グランドフィナーレ」は、全てを手に入れ引退した天才指揮者の心の再生を描く人間ドラマだ。スイスの山間にある豪華で優雅なリゾートホテルでのセレブたちの日常は、それだけで浮世離れしていて幻想的である。滞在するセレブたちは、過去に栄光を極めたもばかり。同時にその栄光に苦しめられている。大ヒットした映画のイメージに縛られるハリウッドスター、カリスマ的サッカー選手、世界一の美女…。一方、フレッドは絶頂期の自分の作品「シンプル・ソング」を封印しているが、それには妻にかかわるある秘密が。これがあまりに切ない。名優マイケル・ケインをはじめ、登場する役者は皆、演技派ばかりだが、中でも出演時間は短いものの、本人と重なるかのような大女優を演じるジェーン・フォンダの演技は圧巻だ。中庭で催されるイベントの優美さや、全員が同じポーズをとる前衛的な構図など、完成度の高い映像の連打にしびれるが、とりわけアルプスの緑あふれる大自然の中で、フレッドが動物たちを前に指揮をする場面の美しさに思わず心を奪われた。老いをみつめながら、なおも人生を肯定する稀有な佳作である。
【70点】
(原題「YOUTH」)
(伊・仏・スイス・英/パオロ・ソレンティーノ監督/マイケル・ケイン、ハーヴェイ・カイテル、レイチェル・ワイズ、他)
(映像美度:★★★★★)
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きっと ここが帰る場所

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ショーン・ペンの怪演と意外性たっぷりのストーリーで綴るロードムービー「きっと ここが帰る場所」。パオロ・ソレンティーノ監督、ただものではない。

アイルランド・ダブリンの豪邸で、妻と共にひっそりと暮らす元ロック・スターのシャイアンは、30年以上音信不通の父の危篤の報を受けアメリカへ渡る。臨終には間に合わなかったが、ホロコーストを生き延びたユダヤ人の父が、元ナチス親衛隊員のランゲを探すことに、生涯をかけて執念を燃やしていたことを知る。シャイアンは、わずかな手掛かりを頼りに、ランゲを探してアメリカ横断の旅に出るのだが…。

「“これ”とは言えないけど、何かがヘンだ」が口癖のシャイアンは、引退したロック界の元スーパースターだ。長い間音楽からは遠ざかっているが、株で大儲けしながら豪邸で静かに過ごし、ごく限られた親しい人だけと接しながら、自分の世界で暮らす、初老の引きこもりである。彼の風体は、ゴス・ファッションに、ボサボサの逆毛、濃いアイラインに真っ赤な口紅という異様なもの。中身はいえば、どこか大人になりきれないアンバランスな人間なのだ。こんなつかみどころがない元ロック・スターが、広大なアメリカ大陸の原風景の中を、ゴロゴロとキャリーバッグを引きずりながら、ナチの残党狩りに赴くなどというストーリーを思いつくだけでも、天才的だと感心してしまう。監督のパオロ・ソレンティーノは、ショーン・ペンがカンヌ映画祭で審査委員長を務めた時に“発見した”逸材だが、なるほど、この浮遊感といい、オリジナリティといい、ただものではない。計算された構図の映像や音楽のセンスの良さ、オスカー俳優ショーン・ペンを見事に変身させただけでなく、実力派の名優たちを絶妙に使うキャスティングにも驚かされる。ミステリアスな人探しの旅と、とぼけたエピソードの数々を通して描くのは、父と子の時空を超えた和解。さらには、自分自身に向き合うことだ。シャイアンのハイセンスな復讐と、ラストにみせる素顔の穏やかさには、完全にヤラれてしまった。タイトルはトーキング・ヘッズの名曲から。デヴィッド・バーンのライブが挿入されるというあまりに贅沢な演出には、映画ファンと共に音楽ファンも驚くだろう。類まれな物語とキャラクターの個性に魅了されるオフビートな復讐劇。久しぶりに、新鮮な驚きを感じる映画だった。
【85点】
(原題「THIS MUST BE THE PLACE」)
(伊・仏・アイルランド/パオロ・ソレンティーノ監督/ショーン・ペン、フランシス・マクドーマンド、ジャド・ハーシュ、他)
(オフビート度:★★★★☆)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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