ヒッチコック [Blu-ray]
◆プチレビュー◆
サスペンスの神様の知られざる素顔を描く「ヒッチコック」。名匠のコンプレックスと映画の裏話に興味津々。 【65点】

 映画監督として大成功を収めたアルフレッド・ヒッチコックは、自費を投じて扇情的なホラー映画「サイコ」の制作に着手する。だが、それまでの常識を覆す演出のため、映画はさまざまなトラブルに見舞われる。さらに妻アルマとの関係にもほころびが生じはじめ、ヒッチコックはついに倒れてしまう…。

 サスペンスの神様、アルフレッド・ヒッチコック、通称ヒッチの唯一のホラー作品で、最大のヒット作は言うまでもなく「サイコ」だ。数々の逸話を残すこの名作誕生の舞台裏を描く本作は、ヒッチコキアン(ヒッチコックの熱狂的なファン)には、よく知る逸話ばかりだろう。

 だが、本作はヒッチコックという天才監督の賛美ではない。「サイコ」のモデルで大量殺人者のエド・ゲインの幻影が、常にヒッチにつきまとうが、ゲインはヒッチの深層心理の象徴だ。描かれるのは、コンプレックスや嫉妬心、殺人や倒錯を嗜好する異常性。さらに、公私ともに強い絆で結ばれた夫婦の葛藤を浮き彫りにするアプローチが新鮮だ。

 「サイコ」は、下着姿やトイレを映したこと、ヌードが見える、見えないの論争などで、映倫との長い戦いが繰り広げられた作品として知られている。さまざまなテクニックで難局を乗り切るヒッチの戦略はまさに天才的で、彼の才能とチャレンジ精神は疑いようがない。だがその一方で、世間の評判を気にし、アカデミー賞を取れないことに傷つく弱い側面も。そんな複雑な夫のそばで、妻アルマもまた、編集者・脚本家として悩んでいたのだ。

 ヒッチ役の名優アンソニー・ホプキンスは、特殊メイクで巨匠を熱演するが、顔は似ていないのに、しぐさや人間描写の掘り下げでヒッチになりきっているからさすがである。対するヘレン・ミレンは、夫の浮気癖に耐えながらも、妻として編集者として夫を支える気丈なアルマを、これまた貫禄たっぷりに演じる。モノクロ映画の「サイコ」の名シーンの数々が、鮮やかな“カラー”で見られるのが何より嬉しい。

 第一回試写で酷評された「サイコ」を、鮮やかな編集手腕で名作に作り変えたアルマとヒッチは、互いに欠点を抱えながらも、二人揃うと最強になった。本作のタイトルは「ヒッチコック」だが、これはむしろ「ヒッチ&アルマ」とでも呼びたいバディ・ムービーなのだ。多くの名作を作りながらアカデミー監督賞を取れなかったことに生涯コンプレックスを抱えていたヒッチコック。彼とその妻の物語を、ホプキンスとミレンというオスカー俳優の二人が演じることを知ったら、ユーモアと皮肉が大好きだったヒッチは苦笑いするに違いない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)夫婦善哉度:★★★★★

□2012年 アメリカ映画 □原題「HITCHCOCK」
□監督:サーシャ・ガバシ
□出演:アンソニー・ホプキンス、ヘレン・ミレン、スカーレット・ヨハンソン、他
チケットぴあ

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