映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

ヒュー・ジャックマン

映画レビュー「リアル・スティール」

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◆プチレビュー◆
近未来のボクシング界を舞台に父と子の絆を描く娯楽アクション「リアル・スティール」。古典的なストーリーに安心感とまっすぐな感動がある。 【70点】

 西暦2020年。リングの上でボクシングを繰り広げるのは、生身の人間ではなく、高性能の格闘技ロボットたちだった。かつては才能あふれるボクサーだったチャーリーは、闘う場所を失い、今やロボット格闘技のしがないプロモーターとしてようやく生計を立てる失意の日々を送っている。そんな彼の前に、離婚して別々に暮らしていた11歳の息子マックスが現れる。最愛の母を亡くしたマックスは父に心を開かず、ぎくしゃくした関係のまま2人は暮らし始めた。そんなある日、2人はゴミ捨て場でスクラップ同然に捨てられた旧式ロボット“ATOM”を発見する…。

 最新技術で描くロボットもの。あるいは怒涛のボクシングもの。いや、この作品はむしろ、ハリウッドが昔から得意とする父子愛ものだ。近未来を舞台とするが、そこはロボットが格闘技を繰り広げる以外は、ほとんど現代と変わらない。勝ち組と負け組による格差や、他者との関係をうまく築けずに悩む姿は、現代社会をリアルに投影している。

 11歳の少年らしくゲーム好きのマックスは、ロボット操作にコ慣れていて、“命を助けた”旧式ロボット・ATOMには特別な絆を感じている。一方、チャーリーにはロボットは、自分の生きる場所を奪った存在でありながらも、収入の糧でもある。苦く複雑な思いを抱えるチャーリーと、ロボットへの、ひいてはATOMへのピュアな愛があるマックス。2つの思いが歩み寄って共鳴したとき、誰かの動きを真似て学習する“シャドー機能”を備えたATOMは、チャーリーの愛弟子になるというわけだ。

 欲を言えば、特別なロボット・ATOMの出自と、ATOMとマックスの強い絆をもう少し深く描いてほしかったところだが、それでもチャーリーとマックス親子が二人三脚で闘ううちに強い絆で結ばれていくプロセスは、父子愛の感動ドラマとして申し分がない。逞しく肉体改造したヒュー・ジャックマンと、素直な演技が光る子役ダコタ・ゴヨの二人が好演だ。

 失意の主人公の奮闘と再起、連戦連勝の痛快さ、強敵への無謀な挑戦、父と子の絆。「チャンプ」を例に出すまでもなく、すべては過去に何度も描かれてきた手垢のついた素材なのに、やっぱり感動してしまう。ウェイルメイドなエンタテインメントの隠し味がオンボロ・ロボットだというのが、案外効いているのかもしれない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)父子愛度:★★★★☆

□2011年 アメリカ映画 原題「REAL STEE」
□監督:ショーン・レヴィ
□出演:ヒュー・ジャックマン、エヴァンジェリン・リリー、ダコタ・ゴヨ、他
チケットぴあ


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リアル・スティール@ぴあ映画生活

映画レビュー「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」

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◆プチレビュー◆
「X-MEN」のスピンオフ作品はウルヴァリン誕生秘話。厭世的な彼の性格が納得できる。 【65点】

 幼い頃に兄ビクターと共に特殊能力に覚醒して以来、人としての幸せを捨てて生きてきたローガン。やっと愛する女性に巡り会ったが凶暴化したビクターによって彼女は殺される。復讐を誓うローガンは謎の巨大組織と取引するが…。

 アメコミの映画化の中でも「X-MEN」シリーズは特別に人気がある。その理由は、チームで戦う個性と、ミュータントたちの多彩な能力の面白さ、さらに登場人物の悩みとせめぎあいが、ドラマとして奥深さを醸し出すためだろう。「X-MEN」には魅力的なキャラが多いが、とびきり危険で興味深いのがウルヴァリンだ。彼の最大の謎は、過去の記憶をすべて失っていることである。

 映画は秘密を紐解くためウルヴァリンの過去を描くが、19世紀末に生まれた彼は最初はローガンという名前だ。何しろ父殺害によってミュータントとしての能力が覚醒するのだからスタート地点から悲劇である。不老不死で異形の自分を追い込むかのように、南北戦争からベトナム戦争まで数々の戦いに加担するのも、自分自身の居場所がないためだ。心の平和を求める気持ちと闘争本能の狭間で苦悩するローガンとは裏腹に、同じくミュータントの兄ビクターは次第に凶暴性を増していき、ついにローガンの最愛の女性ケイラを殺してしまう。ローガンは兄ビクターへの復讐を誓うのだが、父親殺しに兄への憎悪と、彼の過去はまるでギリシャ悲劇のよう。かくして、壮大な兄弟ゲンカの幕が開く。

 ただしそれは単なる復讐ではなかった。ローガンが選んだ道は、謎の組織と取引し、自分自身を最強の武器に作り変えること。地上最硬の超金属アダマンチウムを全身の骨に移植する改造手術を受けて生まれたのが人間兵器“ウルヴァリン”なのだ。拳から飛び出していた脆い骨は、すべてを切り裂く超金属の爪に変わった。驚異的な治癒能力と、戦場で培った戦闘能力に磨きがかかったのもこの時だ。ウルヴァリンを象徴する要素はすべて復讐のために作られたという事実が悲しい。さらに、鋭利な爪が切り裂く運命は、巨大な陰謀と衝撃的な事実へと導いていく。それは、彼の記憶すべてを奪うほどの絶望的な宿命だ。

 悲劇的な過去だけでなく、超絶アクションも見逃せない。軍用ヘリと大型バイクのチェイスや、最終決戦の場となる廃墟の原子力工場の上での激しいバトルはまさに破壊の美学。螺旋状に切り裂かれていく建物はまるでアートだ。そこは実はミュータントを閉じ込める秘密の実験施設で、ウルヴァリンにはある再会が待っている。「ファイナル・デシジョン」では愛する女性を敵に回す苦悩を味わったが、ウルヴァリンの爪は大切な人との絆を断ち切ってしまうのか。

 意外なのは、監督が南アの過酷な現状を少年の目から描いた秀作「ツォツィ」のギャヴィン・フッドだということだ。ハリウッド製アクション映画を撮る監督とは思わなかったが、善悪の葛藤を軸に物語を構成し、なかなかの健闘を見せている。ともあれ、ウルヴァリン誕生を語るこの「ZERO」は、未来へと続く気配を濃厚に漂わせた。ウルヴァリンとは先住民の言葉で、小型だが獰猛な哺乳類クズリを意味する。愛した女性との思い出であるこの名前の由来さえ、覚えていない悲しき戦士。それがウルヴァリンなのだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)破壊度:★★★★☆

□2009年 アメリカ映画 原題「X-Men Origins:Wolverine」
□監督:ギャヴィン・フッド
□出演:ヒュー・ジャックマン、リーヴ・シュレイバー、ダニー・ヒューストン、他


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ウルヴァリン:X−MEN ZERO@ぴあ映画生活

オーストラリア

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オーストラリア出身の監督・俳優・主要スタッフが、国の威信をかけて作った大河ロマンだ。第二次大戦前夜のオーストラリアにやってきた英国貴族サラと野性的なカウボーイ・ドローヴァーの恋を軸に、悪徳牧場主との対決、1500頭の牛を連れての大陸横断、夫殺しの謎、日本軍の襲撃による戦争スペクタクルと、てんこ盛り。大味で詰め込みすぎの内容はまとまりに欠けると感じつつ、何だか得した気分にもなる。白いタキシード姿のヒューとチャイナドレスのニコールのラブシーンは、まるでハーレクイン・ロマンスのようで苦笑したが、美男美女なので許そう。特筆は、先住民アボリジニの旅立ちの儀式“ウォークアバウト”の神秘性。アボリジニの精神風土とも言える気高い心と美しく壮大な豪州の自然こそが最大の魅力だ。大自然のパワーが人の生き方を変えていく。オーストラリアは、その舞台に最もふさわしい場所だということなのだろう。
【55点】
(原題「AUSTRALIA」)
(オーストラリア/バズ・ラーマン監督/ニコール・キッドマン、ヒュー・ジャックマン、デヴィッド・ウェンハム、他)
(盛り沢山度:★★★★★)

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彼が二度愛したS

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好漢ヒュー・ジャックマンが悪役を演じるのは新鮮だが、内容は平凡な官能サスペンス。孤独な会計士ジョナサンは偶然知り合ったハンサムな弁護士ワイアットに導かれハイソな秘密クラブにのめり込むことになる。だが謎めいた美女Sを愛したことから運命が狂いはじめる。中盤から主人公がハメられたのが分かる展開だが、あまりに先が読めてサスペンスとしての魅力が薄い。だが、官能シーンはエロティックというよりスタイリッシュに描かれているので上品さがある。謎解きやどんでん返しの驚きは少ないが、意外にもセンスある邦題と、都会の孤独をすくい取ったムードは良かった。
【55点】
(原題「DECEPTION」)
(アメリカ/マーセル・ランジェネッガー監督/ヒュー・ジャックマン、ユアン・マクレガー、ミシェル・ウィリアムズ、他)
(エロティック度:★★★☆☆)

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タロットカード殺人事件

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アレンお気に入りのヨハンソンがコケテッシュな楽しいミステリー。「マンハッタン殺人ミステリー」を思わせる、積極的なにわか探偵ヨハンソンと、気の弱い手品師アレンのコンビは漫才コンビのノリだ。とは言え、過去のアレン作品のように二人が恋愛関係になるには年齢的にキビシいので、この部分は美形青年貴族を演じるヒュー・ジャックマンが担当。死神の目を盗んで現世に戻る設定が楽しい。
【70点】
(原題「SCOOP」)
(イギリス/ウディ・アレン監督/スカーレット・ヨハンソン、ヒュー・ジャックマン、ウディ・アレン、他)
(コメディ度:★★★★☆)

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ファウンテン 永遠に続く愛

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純愛路線の宣伝に惑わされるが、実は哲学的な死生観を語るファンタジーだ。愛する人のために永遠の命を捜し求める、3つの異なる時代のストーリーが平行する。アロノフスキーらしい渋さではなく、派手できらびやかな映像に違和感を覚えるが、命の木に触れた瞬間に起こる現象は驚愕だ。
【65点】
(原題「THE FOUNTAIN」)
(アメリカ/ダーレン・アロノフスキー監督/ヒュー・ジャックマン、レイチェル・ワイズ、エレン・バースティン、他)
(ファンタジー度:★★★☆☆)

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プレステージ

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単なるトリック映画に留まらない、深みのあるエンターテインメントである。19世紀末のロンドンを舞台に敵同士のマジシャンの意地の張り合いと、驚愕の種明かしを豪華キャストで描く。小悪魔女優ヨハンソンは単なる脇役、ジャックマンとベールの男の色気を味わうのが正しい鑑賞法。D.ボウイの出演も見所。
【80点】
(原題「THE PRESTIGE」
(アメリカ/クリストファー・ノーラン 監督/ヒュー・ジャックマン、クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、他)
(ベンヤミン度:★★★☆☆)

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映画レビュー「ハッピーフィート」

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◆プチレビュー◆
歌い、踊るペンギンたちが住む極寒の南極で繰り広げられる熱いパフォーマンス。可愛い、楽しい、最高!だが、終盤の展開が雑すぎる。 【40点】

皇帝ペンギンにとって一番大切なのは、生涯の伴侶を見つけるための“心の歌”。だが、子ペンギンのマンブルは美声の両親と違い、ひどいオンチで歌うことができない。彼は得意のタップダンスで勝負するが、パタパタ足(ハッピーフィート)はペンギンの恥さらしと、コロニーを追放されてしまう…。

映像パフォーマンスの見事さは、文句ナシ。ずん胴型のペンギンはメリハリが付けにくいにも係わらず、細かい動きまで豊かに作り込まれていて、思わず見惚れる。水中や体毛の映像処理は、最高レベルのCG技術だろう。喜怒哀楽の表現に加えて、ちょっと懐かしめの選曲に乗った、エネルギッシュなダンスシーンに大興奮。歌い踊る時の腰の振り具合は涙もので、芸達者なペンギンたちに大笑いだ。特に数万匹で熱狂的に踊る様子は、インド映画の群舞を彷彿とさせ、南極の地に極楽浄土が舞い降りたかのよう。スクリーンを見ながら「次に生まれるときはペンギンになる!」と決心する自分がいた。

ビジュアルは申し分ないとして、問題はストーリーにある。超絶オンチのマンブルは、集団の和を乱すものとして仲間はずれにされた挙句、追放されるが、そこで新たな仲間と出逢うことに。さらに魚を激減させた環境破壊の原因を発見…とくるが、そのあとがビックリするほど雑なのだ。人間に捕らえられてからの展開は、ファンタジーから突如リアルへとイメージ・チェンジし、前半の笑いを一気にかき消してしまう。この後、いったいどうなるの?と不安になるが、一方で、この物語にどう決着を付ける気か?と期待もした。だが、お話はバタバタとご都合主義に終始し、結局、ワケの分からぬ大団円へと収束。マンブルや他のペンギンたちは、本当にこれで幸せなのか?!

人と違う我が子に対する親の思いや、集団を重んじる長老の責任感、異なる価値観を持つアデリーペンギンなど、ペンギン界でのストーリーに限ればなかなか深い内容だ。人間が登場したとたんに台無しになるこの映画、結局、南極大陸という神聖な場所に、人間みたいな生き物は不要ということだろう。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)エンタメ度:★★★★☆

□2006年 アメリカ映画 原題「HAPPYFEET」
□監督:ジョージ・ミラー
□出演:(声)イライジャ・ウッド、ニコール・キッドマン、ヒュー・ジャックマン、他

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ヴァン・ヘルシング

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◆プチレビュー◆
地味ながら演技力のある英国美人女優ベッキンセール。だが、この人のハリウッドでの映画選びは大いに疑問。3人のドラキュラの花嫁のセクシー度は、歴代ドラキュラ映画では随一だ。

19世紀。ローマ法王庁の秘密組織に属するモンスター・ハンターのヴァン・ヘルシングは、ドラキュラ退治のためトランシルバニアへ。そこで、おぞましい怪物たちと戦い続ける一族のアナ王女と出会う。ヘルシングは彼女とともに熾烈な闘いに挑んでいくのだが…。

ユニヴァーサル映画の歴史を華麗に彩る有名モンスターたちが勢揃いする様は、さながら歌舞伎の顔見世興行を思わせる。吸血鬼、フランケンシュタイン、狼男。これに前菜感覚でジキルとハイドも加わってくる。モンスターたちを蘇らせ、さらにそれぞれに微妙なつながりを持たせたところが本作の新しさだ。もちろん最新のVFX技術をたっぷり駆使し、アクションシーンは盛り沢山である。

主人公の凄腕モンスター・ハンターであるヴァン・ヘルシングは、従来の老教授ではなく、若くセクシーな人物に設定。扱う武器も19世紀にもかかわらず、殆ど現代と同様の派手で破壊的なものだ。マカロニ・ウェスタン風のファッションに身を包んで大いに暴れまくる。演じるヒュー・ジャックマンは好演で、過去の記憶がなく自らの出自に秘密を持つ悩めるキャラは「Xメン」のウルヴァンリン役でも得意としたところだ。

ストーリー自体はいたって大味で、古き良き冒険活劇ものの痛快さに満ちている。肩肘はらずに楽しむ作品なのだ。残念なのは、アナ王女を演じるケイト・ベッキンセールにアクションのセンスが全く感じられないこと。圧倒的な身体能力で史上最強の美女であるはずが、ヘマばかりやっている。迫力があるのは異様に濃いアイメークだけでは、なんとも寂しい。明らかにミス・キャストだ。アナの兄役でバレエ界の貴公子のウィル・ケンプにも、さしたる見せ場が用意されてないのも惜しい。

しかし、全体を覆うダークなテイストを始め、美術の美しさは必見だ。特にドラキュラ伯爵が開く舞踏会のシーンは、シルク・ド・ソレイユの幻想的なパフォーマンスに思わず見惚れるはず。モンスター同士の微妙な繋がり、ヴァン・ヘルシングの秘密、さらなる大冒険…。描き残しは山ほどあれど、謎解きは次回作でのお楽しみというわけか。

□2004年 アメリカ映画 原題「VAN HELSING」
□監督:スティーブン・ソマーズ
□出演:ヒュー・ジャックマン、ケイト・ベッキンセール、デヴィッド・ウェンハム、他

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ソードフィッシュ

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◆プチレビュー◆
悪のカリスマ、トラボルタ。しかし、あの髪型、どうにかならんのか?!

銀行に眠る政府の闇資金をネット回線から奪おうと企てるガブリエル。図らずも彼に協力することになった天才ハッカーのスタンリーは、謎の美女ジンジャーらと銀行のシステム侵入を成功させるが、なぜかガブリエルは人質をとり銀行襲撃を強行する。彼の真の狙いはいったい…。

観客を錯覚させるミスディレクションがうたい文句のこの映画、その割にはなんとなく先が読める展開。それなのに楽しめるのは、冒頭シーンの完成度とミュージックビデオ出身というこの監督のテンポの良さのせいだろうか。ジョン・トラボルタ扮するガブリエルが、アル・パチーノ主演の「狼たちの午後」を痛烈に批判するところから映画は始まる。会話から銀行強盗事件の幕開けのシーンへと突入。さらにはこの映画最大の見せ場ともいえる迫力の爆発シーンへと続く冒頭は、上手いの一言。鋭い映像やノリのいい音楽が一体となって、ゴージャスな爆破シーンに釘付けだ。

注目は、一点を中心にカメラの視点がスローモーションで周囲を移動していくという、独特の表現法“ブレッドタイム”。「マトリックス」で初めて使われた手法だ。時間にすると1.5秒ほどに過ぎない爆破シーンを、約30秒間のスロー映像として表現。銀行を中心に、周囲のカフェの店内やパトカーの車の中を、ゆっくり、そして複雑に通り抜け、弧を描きながら移動するカメラ。空に吹き飛ぶ人間や割れて飛び散るガラスの破片の映像を織り交ぜながら描かれる臨場感あふれる爆破シーンは、まるで自分が爆発の中心にいるかのような錯覚を起こさせる。

映像的にすばらしい分だけ、人物の描き方には穴が目立つ。スタンリーだけは詳しく描かれるが、黒幕と思われる政治家もあっさりおダブツ。せっかくサム・シェパードが演じているのだから、もうちょっと説明してくれても良さそうなのに。悪の権化ガブリエルの背景もほとんど語られない。マジシャンの業界用語で人間の“思い込み”を利用した高等技術ミスディレクション。これも、とりたてて言うほど大した効果はなく、ラストも予想通りなのだ。

冒頭の銀行襲撃シーンから時間がさかのぼる展開がスリリング。短時間に二転三転するストーリーを追っているうちに、観客は細かい欠点はいっさい気にしない思考回路が出来上がっている。劇中に登場するハリウッド映画のリアリティのなさを批判するセリフも、この監督特有のパラドックスに違いない。

□2001年 アメリカ映画 原題「Swordfish」
□監督:ドミニク・セナ
□主演:ジョン・トラボルタ、ヒュー・ジャックマン、ハル・ベリー、他

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◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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