映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

ヒラリー・スワンク

アメリア 永遠の翼

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実在した女性飛行家アメリア・イヤハートの半生を描く伝記映画だが、物語が表層的で魅力に欠ける。アメリア自身の人生には興味深い素材が多いのに、この映画ではそれに踏み込む勇気が見受けられない。1928年、空が大好きなアメリア・イヤハートは、大西洋を横断した初の女性となった。彼女は数々の飛行記録に挑戦し、新記録を打ち立て、不況にあえぐアメリカ国民、とりわけ女性にとっての希望の象徴となっていく。そんな彼女を支えたのはプロモーターの夫ジョージだ。1937年、アメリアは、世界一周飛行という難関にチャレンジすることになるのだが…。

20世紀初頭、飛行機は夢の乗り物だった。リンドバーグによる大西洋横断は成功していたが、女性として初の横断は、アメリアにとって単なる“乗客”でしかなく、彼女は自分の力で空を飛ぶことを切望した。そこにはまだまだ女性差別の空気もあったはずだし、その後、アメリアが女性パイロットの育成に尽力を尽くすなど、フェミニズムという観点から大きな足跡を残しているにも係わらず、映画はそれらを表面的にしか描かない。アメリア自身は女性運動より次回の飛行の資金稼ぎのため、講演や執筆、CMなどの慣れない仕事に割く時間が多かった。そのあたりのジレンマも深く掘り下げられてない。さらに彼女は、当時としては進歩的な女性で、ジョージとの結婚も条件付きのものだったし、結婚という制度に囚われまいとしていたのに、後の米国の航空産業を支える人物ジーン・ヴィダルとの恋愛でも、結局は彼女の恋愛観がよく分からない。つまりは、焦点がぼやけてしまった印象の作品なのだ。それならばせめて、未だに謎に包まれている、彼女が行方を絶った最後のフライトについて、もっと自由な描き方をしても良かったのではないだろうか。ラストにアメリア・イアハート本人の記録映像が登場し、それが映画の中で最も興味をそそる部分だったということを考えれば、優等生的なこの伝記映画に魅力が欠けていたと言わざるを得ない。ミーラー・ナーイルは好きな監督だが、素材が彼女に合わなかったのだろうか。この作品の平凡な出来には首をかしげる。ただひとつ、アメリアが飛行機の窓からスカーフを飛ばすシーンが美しく印象に残る。空を愛し、空と同化するほど自由でいたいと願ったヒロインを象徴する場面だった。
【50点】
(原題「AMELIA」)
(アメリカ/ミーラー・ナーイル監督/ヒラリー・スワンク、リチャード・ギア、ユアン・マクレガー、他)
(表層的度:★★★★☆)

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P.S.アイラヴユー

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感涙系のラブ・ストーリーだが、どうにもミス・キャスト。最愛の夫ジェリーを亡くし悲嘆にくれるホリーの元に亡き夫から次々に消印のない手紙が。その指示に従い、彼の故郷のアイルランドを訪れた後、次第に自分自身と希望を取り戻す物語だ。スワンクとバトラーは演技は達者だが、繊細な恋愛というより筋肉のぶつかり合いのようで、妙な男気さえ感じてしまう。第一、深く愛し合ったとはいえ、死んでまでもあれこれ指示されるのはマイる…と思うのは私だけ?それでも母親役のキャシー・ベイツの存在感はさすがだし、アイルランドの美しい自然は秋の恋愛映画にピッタリの詩情がある。
【60点】
(原題「P.S.I Love You」)
(アメリカ/リチャード・ラグラヴェネーズ監督/ヒラリー・スワンク、ジェラルド・バトラー、キャシー・ベイツ、他)
(計画性度:★★★★★)

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フリーダム・ライターズ

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この映画の良さは、意外にも説教くさくないところだ。落ちこぼれ生徒を導き希望を与えた女性教師は実在の人。彼女は、自腹を切って教材を買い、家庭崩壊の憂き目にもあうが、熱意が決して暑苦しくない。ヒラリー・スワンクのクールな雰囲気が功を奏した。教育の感動はこんな風に自然でありたい。
【75点】
(原題「FREEDOM WRITERS」)
(アメリカ/リチャード・ラグラベネーズ 監督/ヒラリー・スワンク、イメルダ・スタウントン、パトリック・デンプシー、他)
(教育の尊さ度:★★★★☆)

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リーピング

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信仰を捨てた元宣教師の女性が、科学では解明できない現象を体験し信仰を取り戻す…、と言えば聞こえはいいが、宗教的荘厳さは皆無。もともと彼女が信仰深かった部分が描かれないので説得力に欠ける。そもそもホラーなのに全く怖くないのはいかがなものか。
【40点】
(原題「The Reaping」)
(アメリカ/スティーブン・ホプキンス監督/ヒラリー・スワンク、デイビッド・モリッシー、アイドリス・エルバ、他)
(B級度:★★★★☆)

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ミリオンダラー・ベイビー

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◆プチレビュー◆
イーストウッドの作風は、レオーネ監督と組んだ影響が大きい。「ローハイド」などの“アメリカ的”な俳優が、複雑な魅力の映画を作るところがおもしろい。

LAでさびれたボクシング・ジムを経営するフランキーは、腕はいいが頑固な老トレーナー。ジムには、雑用係で片目の元ボクサーのスクラップもいる。ある日、フランキーの元に31歳のマギーがボクシングのトレーニングを受けたいと訪ねてくる。女は教えないと冷たくはねのけたフランキーだったがマギーはあきらめなかった…。

この映画は、ボクシングを題材としているが、決してスポ根や勝利を追及する物語ではない。極限状態での本当の愛情の意味を観客に問う映画なのだ。世の中の物事や人間を、白黒をつける如く、善と悪にくっきりと分けることはできないことをイーストウッドはよく知っている。

物語のテーマは、老境の孤独な男と、同じくひとりぼっちの女性ボクサーとの深い信頼関係。繊細な愛情がにじみ出る演出で、見事のひと言につきるが、それは、父娘のようなフランキーとマギーを陰で見守るM.フリーマンの存在が胸を打つからだ。カトリックの価値観、アイリッシュの誇り、不人情な家族。劇中には色々な要素が詰まっている。

試合で連勝するマギーに想像を絶する試練が降りかかり、映画はラスト30分でまったく別の物語に変化する。主人公が出した答えには賛否が分かれるだろうが、深い感動は観客が皆、共有するものだ。本当に愛する者の願いのために自ら十字架を背負った人間を、冒頭から控えめに流れるピアノの旋律が優しく包む。慈愛に満ちた傑作だ。

□2004年 アメリカ映画  原題「Million Dollar Baby」
□監督:クリント・イーストウッド
□出演:クリント・イーストウッド、ヒラリー・スワンク、モーガン・フリーマン、他

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インソムニア

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◆プチレビュー◆
オリジナルのノルウェー映画もおすすめだ。原題は不眠症を意味する医学用語。アル・パチーノの不眠症演技は迫真だ。

アラスカで起こった猟奇殺人事件の捜査のため、LAから相棒と共にやってきた敏腕刑事ウィル・ドーマー。彼は持ち前の観察力で容疑者を追い詰めていくが、犯人追跡中に、深い霧の中で視界を遮られ、誤って、同僚ハップを撃ち殺してしまう。とっさに事実をもみ消すが、犯人に一部始終を見られていた…。

豪華スター共演。この宣伝文句に何度泣かされてきたことだろう。ビッグスターを組み合わせれば、その作品が必ずしも名作になるとは限らない。しかし「インソムニア」は狙い通りの1本で、実におもしろく仕上がっている。もっとも内容的には予想がはずれた。この映画、サスペンスかと思ったら、本当はそうじゃない。事件をきっかけに、一人の人間の内面の葛藤を描く心理劇だ。早い段階で犯人が明かされるので、一種の倒叙ミステリーとも言えるが、犯人を追う過程よりも、主となるのは、追う側と追われる側の逆転や動機、善悪の判断もからめて、のっぴきならぬ状況に追いこまれる主人公の内面。緻密な展開でじっくり掘り下げる。

97年の同名ノルウェー映画のリメイクである本作の舞台は、荒涼としたアラスカの町。誤って同僚を射殺してしまったことをドーマーが隠すのは、かつての捜査で一度だけ、倫理の一線を越えてしまったことがあるから。その事実をただ一人知る同僚の死は、警察内部の査察でドーマーの失脚を狙う者たちの格好の材料となる。このような事情をも把握した犯人は、ドーマーにある取引を提案してくる。断れば同僚射殺の件が明るみに出るし、引き受ければ、無実の人間が逮捕される。正義と保身、そして白夜がドーマーを悩ませ、彼の肉体と精神はゆっくりと壊れていく。

アル・パチーノの不眠症演技が凄い。血走った目、目の下のクマ、不健康そうなパチーノが自分自身と戦う格闘の演技は、見る者にまでドーマーの心的風景を疑似体験させる。過去の秘密と相棒殺しの自責の念から判断力や人間性を失う彼に、巧みにつけいる犯人。善と悪との曖昧ゾーンで苦しむパチーノの熱演がさすがで、圧倒される。気力と体力の限界で自分の意思さえ判らなくなってしまう彼は、いったいどうなるのか。映画始めのゆとりのある人物から、一睡もできずボロボロになっていくパチーノが渋い。

一方、ウィリアムズ演じる犯人は、一見もの静かな知識人だが、狡猾な脅迫といい、通俗推理小説家という凡庸さと、死体に儀式的行為を施す異常さが同居する気色悪い男。悪役に徹するウィリアムズとパチーノの心理的駆引きは、名演技が炸裂する見所だ。実は、ウィリアムズが悪役を演じるのは、初めてではなく、地味な二重スパイ映画「シークレット・エージェント」で、爆弾魔のアナーキストを怪演している。

この不健康中年vs異常中年の対決のレフェリー役が、敏腕刑事ドーマーに憧れを持っている若い女性刑事エリーを演じるH.スワンク。パチーノと共に迷路に迷う私たちを彼女の客観的な視点が導いてくれる。

冒頭から繰り返し登場するシミが広がる繊維のアップの映像の意味は、後半パチーノの口から明かされる。これが、この映画を象徴していると言ってもいいだろう。氷や霧など元は同じ水というアイテムを違う形で見せて、ひとつの出来事がそれぞれにとって異なる意味を持つ物語の伏線の役割を果たし、こだわりが感じられる。

ベテラン刑事の失態をきっかけに、善と悪が同居する人間性を掘り下げる。アイデア勝負の傑作「メメント」はすごい映画だったけれど、今回はいわば正攻法。ノーラン監督は、時間軸をずらさずとも、見事な演出が出来る監督だと証明されたような作品だ。パチーノを始めとする名俳優陣のおかげとはいえ、単なるサスペンスに終わらず、見応えのあるドラマに仕上げた腕はたいしたものだ。

□2002年 アメリカ映画 原題「Insomnia」
□監督:クリストファー・ノーラン
□出演:アル・パチーノ、ロビン・ウィリアムズ、ヒラリー・スワンク、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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