映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ジャスティス・リーグ」「火花」「ギフテッド」「光」etc.

ビル・ナイ

人生はシネマティック!

Their Finest
第2次世界大戦中のロンドン。コピーライター部の秘書だったカトリンは、情報省映画局特別顧問のバックリーから、映画の脚本家としてスカウトされる。仕事は、戦意高揚を目的としたプロパガンダ映画の制作で、フランスのダンケルクから撤退時に、兵士を救出した双子の姉妹の感動秘話を映画化することだった。早速、脚本執筆にとりかかるが、政府や軍部からの横やり、わがままなベテラン俳優や演技力ゼロの新人などに振り回され、脚本は二転三転し、さまざまなトラブルに見舞われる。それでもカトリンは、戦争で足を負傷した夫に代わって家計を支えるため、創意工夫で頑張り続ける。やがて撮影は最終段階を迎えるが、同時に戦況も激しさを増していった…。

執筆経験ゼロの女性が映画の脚本家として奮闘する姿を描くヒューマン・ドラマ「人生はシネマティック!」。ノーラン監督の「ダンケルク」が先に公開されているので、裏ダンケルクのようなイメージで見られているが、本作ではダンケルク撤退作戦の話はあくまでも脇役。働く女性が自立していく成長物語であり、映画製作の内幕を描く映画愛に満ちた爽快な物語なのである。ちょっともどかしいが、ロマンスだってちゃんとあるのだ。戦時下という設定上、むごく悲しい出来事も起こるが、喜怒哀楽のどれもが、とても奥ゆかしいのがいかにも英国風だ。

カトリンが、女性ならではの柔らかい感性で、さまざまなトラブルを解決しながら脚本を書き進め、映画を完成に導くプロセスが何よりも痛快だ。まずは乱雑な部屋をすっきりと片付けて作業の効率化を図る。わがままな老俳優をうまく“ノセて”その気にさせ、米国の参戦を促すためにアメリカ人を出して活躍させろと言われれば、これまた鮮やかなアイデアで実現する。脚本の才能を開花させるカトリンの存在感は映画作りの現場でも増す一方で、平行して、劇中劇の女性がどんどん活躍するようになるのも嬉しかった。コメディタッチの描写で笑わせると同時に、常に戦争の恐怖にさらされていた一般の人々の暮らしにもきちんと寄り添っている。劇中劇がそうであるように、この映画の主人公は、一人の突出したヒーローではなく、市井の、とりわけ普通の女性たちの勇気なのだ。数多くのトラブルや悲劇を乗り越えて出来上がった映画には、どんな状況であろうとも良い作品を作りたいという映画人たちの情熱が感じられて目頭が熱くなった。ヒロインを演じるジェマ・アータートンが好演で、ベテランのビル・ナイもいい味を出している。虚構である映画をなぜ人々は愛し、求めるのか。その答えは本作の中にある。映画を愛し、人生を愛することを教えてくれるこの作品が、たまらなく好きになった。
【75点】
(原題「THEIR FINEST」)
(イギリス/ロネ・シェルフィグ監督/ジェマ・アータートン、サム・クラフリン、ビル・ナイ、他)
(映画愛度:★★★★★)
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アイ・フランケンシュタイン

アイ・フランケンシュタイン [Blu-ray]
フランケンシュタインが天使と悪魔の戦争に巻き込まれて戦うSFアクション「アイ・フランケンシュタイン」。フランケンシュタインの使い道とは?!

フランケンシュタイン博士によって生を受けた怪物アダムは、命は与えられたが魂は与えられないまま200年の時を生きのび、現代まで生き続けていた。そんな中、世界支配を目論む悪魔と、それを阻止する天使の全面戦争に巻き込まれてしまう。悪魔は、アダムの特殊な細胞を使って人類を滅ぼし、世界を支配するつもりなのだ。アダムは一人で闘おうとするが、科学者のテラだけが自分を理解してくれていることを知る…。

19世紀にメアリー・シェリーによって書かれた小説「フランケンシュタイン」。本作は生みの親であるフランケンシュタイン博士が死んだ後も、生き延びていた怪物のその後を描くものだ。アダムと名付けられたその怪物は、天使でも悪魔でも、まして人間でもない。天使の手下であるガーゴイルたちが、人知れず悪魔たちと戦っていると聞いても「それがどうした」というのが本音だろう。実際、アダムの細胞を使って死人を甦らせようと企む悪魔もヒドいが、天使の部下であるガーゴイルたちもアダムを助けはするが味方とは認めていない身勝手さ。天使も悪魔も利己的な中、孤立無援のアダムを理解するのが、人間の女性サイエンティストのテラという設定は、なかなか皮肉が効いている。悪魔が軍団を作るために人造人間を研究しているという設定はあまりにもいいかげんで苦笑ものだが、怪物にこんな使い道があったとは考えたものだ。アダムが戦う理由は「自分とは何ぞや?」というアイデンティティーの確立。ダークなSFアクションでありながら、根っこの部分は青春映画のようである。しかもこの怪物が徐々に悩み多き“ヒーロー”に見えてくる。タイトルは「私はフランケンシュタイン」。つまり自分の“父”の名を名乗ることで、魂を得るということなのだ。怪物が何だかこざっぱりしていることや、ゴシック調のファッションの天使に対して、モダンなスーツ姿の悪魔たちと、ビジュアル重視で楽しませてくれる。
【60点】
(原題「I,FRANKENSTEIN」)
(アメリカ/スチュアート・ビーティー監督/アーロン・エッカート、ミランダ・オットー、ビル・ナイ、他)
(バトル度:★★★★☆)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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