映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

ブラッド・ピット

マネーボール

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野球界の異端児ビリー・ビーンの画期的な球団経営を描く異色の野球映画「マネーボール」。自然体のブラピの演技に好感が持てる。

元大リーガーのビリー・ビーンは、弱小球団オークランド・アスレチックスのゼネラル・マネージャー(GM)に就任する。だがチームには選手補強の財力がなく、成績は長く低迷していた。そんな時、ビリーは、野球にはうといがデータ分析に長けた秀才ピーター・ブランドと出会い、彼をチームのスタッフとして向かえることに。ビリーとピーターは周囲の反対を押し切り、出塁率を重視して低予算で強いチームを作り上げる“マネーボール理論”を実践していく…。

アメリカ映画は成功物語が大好きだ。しかもそれが挫折を乗り越えてつかむ栄光ならなおのこと。ビリー・ビーンは、今では球団経営の手法の一つとして定着している“マネーボール理論”を実践し、貧乏球団を常勝集団に変え、公式戦20連勝という記録的偉業を成し遂げた実在の人物だ。彼の経歴で見逃せないのは、選手として挫折を経験しているということ。スカウトの甘言にのり自分の将来を決めてしまったことは、彼の中で、抜けないトゲのように、鈍い痛みとして残っている。このことが、球界の新機軸のマネーボール理論を実践するモチベーションとなっている。古いスカウトマンや監督から反発を買い、ファンやマスコミからバカにされながらも、決して自分の信念を曲げないのは、過去の後悔を繰り返したくないとの思いからだ。

ビリーは、結果的には、他球団から見捨てられた選手の隠れた才能を引き出して、輝かしい実績を残すが、彼自身は華やかなヒーローではない。短気で頑固者だが常にチャレンジャーであり続けたいと願う、欠点だらけの人間だ。そこに魅力がある。特に善人でもなく、かといって強烈な悪人でもない、むろんルックスの良さなど売り物にもしない、普通の中年男を演じるブラッド・ピットが新鮮で好感が持てる。離れて暮らす娘とのエピソードは、残念ながら物語に効果的に溶け込んでいるとは言い難い。それでも主人公が見せる、優しい父親の笑顔は、野球と家庭を愛する良きアメリカ人そのもの。そのことが、作品に温かさを加えている。
【65点】
(原題「MONEYBALL」)
(アメリカ/ベネット・ミラー監督/ブラッド・ピット、ディミトリ・マーティン、フィリップ・シーモア・ホフマン、他)
(サクセス・ストーリー度:★★★★☆)
チケットぴあ


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映画レビュー「ツリー・オブ・ライフ」

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◆プチレビュー◆
伝説の監督テレンス・マリックの世界観が炸裂する映像詩。家族とその存在意義を地球の起源まで遡って問いかける。 【70点】

 1950年代のテキサス。オブライエン家の両親と3人の兄弟は、慎ましくも幸せに暮らしていた。だが、長男ジャックは、力こそすべてと考え世俗的な成功を求める厳格な父と、自然を愛し子供たちに精一杯の愛情を注ぐ優しい母の狭間で葛藤し、次第に父への反感を募らせていく。やがて大人になり“成功”したジャックは、深い喪失感の中で、少年時代に思いを巡らせるのだが…。

 人間を大自然の中の一部としてとらえるのは、寡作の映像作家テレンス・マリックの一貫したヴィジョンだ。本作では、家族や信仰、あるいは生と死の意味を、地球や生命の誕生という宇宙的な空間にまで遡って、検証しようと試みる。この実験的なスタイルに唐突感は否めないものの、圧倒的な映像美に包まれれば、いつしかマリックの心象風景に同化していく自分がいた。

 物語の軸となるのは、父と息子の葛藤という、アメリカ映画が繰り返し取り上げてきた深いテーマだ。そこに、ジャックが抱える、父親の音楽の才能と母親の優しい感受性を受け継いだ弟への複雑な感情が混じる。その弟の早すぎた死は、ジャックに生涯消えない絶望感をもたらすのだが、中年期になった彼の記憶の海では、父も母も弟たちも穏やかに存在していた。その場所こそ、過去から未来へと命の絆を受け継ぐ“約束の地”なのだ。

 悩み、迷いながら生きていくしかない人間を見つめるカメラワークは、まさに神の視点。ブラッド・ピットとショーン・ペンという2大スターを得た本作は、決して分かりやすい物語ではない。キューブリックの「2001年宇宙の旅」にも似て、哲学的な物語とめくるめく映像美の間に、生きるとは何かという問いが封じ込められている。混迷する現代に生きる観客それぞれの心の中に浮かび上がってくるのは、その問いの答えではなく、より良い人間でありたいという祈りなのかもしれない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)映像美度:★★★★☆

□2011年 アメリカ映画 原題「THE TREE OF LIFE」
□監督:テレンス・マリック
□出演:ブラッド・ピット、ショーン・ペン、ジェシカ・チャスティン、他


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ツリー・オブ・ライフ@ぴあ映画生活

映画レビュー「イングロリアス・バスターズ」

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◆プチレビュー◆
タランティーノがハチャメチャな描写で歴史とナチスを遊び倒す。映画愛に基づく復讐が痛快な怪作。 【75点】

 ナチスやヒトラーと、その打倒を描いた映画は多いが、この作品はスタンスといい、切り口といい、まったくもって奇想天外だ。歴史的な事実を背景にしてはいるが、史実通りに描く気など、タランティーノには微塵もない。1941年、ナチス占領下のフランスで、家族を虐殺されたユダヤ人少女ショーシャナは、間一髪で逃げ延びる。成長した彼女は映画館を経営しながらナチスへの復讐を誓っていた。一方、イングロリアス・バスターズと呼ばれる連合軍のならずもので構成された極秘部隊は、レイン中尉をリーダーに次々にナチスを血祭りにあげて独軍をふるえあがらせる。独人美人女優で二重スパイであるブリジットの情報をもとに、ある極秘ミッションが計画されていたが、それはショーシャナにも復讐のチャンスとなる。

 何しろバスターズのやることときたらナチスに負けず劣らず残虐だ。頭の皮をはいだり、傷口に指を突っ込むなどの残酷な描写が平気で登場する。タランティーノの十八番であるペチャクチャと続く無駄なおしゃべりはもちろん健在だが、今回は、主要人物が、次から次へと死んでいく先読みできない展開がすごい。ここには映画的な善人は一人も存在せず、誰かに単純に感情移入することは許されない。

 ナチスと彼らがやった行為はだれもが憎んでいるのは事実。そして劇中でも描かれるように、ナチスが映画をプロパガンダとして最も重視していたことも。この二つをブレンドし、タランティーノは、現実ではできなかったヒトラーへの復讐をものの見事にやってのけた。しかも映画という最強の武器を使って。こう考えると、この戦争アクションは、痛快ファンタジーと呼ぶ方がふさわしい。タランティーノの偏愛するマカロニ・ウェスタンや数々の往年の名作へのオマージュもてんこもりだ。はたして最後に笑うのは誰? ナチスをとことん映画で遊び倒したタランティーノか。いや、勝者は映画そのものだと考えてこそタランティーノの映画愛に応えることになると信じる。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)死亡率度:★★★★☆

□2009年 アメリカ映画 原題「INGLOURIOUS BASTERDS」
□監督:クエンティン・タランティーノ
□出演:ブラッド・ピット、メラニー・ロラン、クリストフ・ヴァルツ、他

(ショート・バージョンの映画レビューでお届けしています)

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ジョー・ブラックをよろしく

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死神と人間の女性が紡ぎ出すファンタスティックなラヴストーリー。ブラッド・ピットが人間の女性に恋してしまう死神を演じている。

大富豪パリッシュのもとにやってきたジョー・ブラックと名乗る謎めいた青年。実は彼はパリッシュを“お迎え”にきた死神だった。ジョーはパリッシュに少しの猶予を与え、人間の世界を見たいと告げる。パリッシュの愛娘のスーザンと出会ったジョーは恋に落ちるが、人間の恋愛を知った彼はスーザンをあの世に連れていきたいと悩むようになる…。

死神ジョー・ブラックが、パリッシュの家のキッチンで、ピーナッツ・バターを初めて食べて大いに気に入る場面が面白い。死神さえも夢中にさせるピーナッツ・バターは、アメリカではどんな家庭にも必ず常備してある人気食品。ただ映画に登場したのは、日本でもおなじみの「スキッピー」ではなく、「ローラ・スカダーズ」という食品メーカーのピーナッツ・バター。劇中のセリフでも「スキッピーと並ぶおいしさ」とあるところをみると、米国ではかなりの人気なのだろう。無邪気な笑顔でピーナッツ・バターをなめるブラッド・ピットの表情が忘れ難い。

1934年の「明日なき抱擁」のリメイクだが、死神と令嬢の切ない恋を、人気スターのブラッド・ピットと、名優のアンソニー・ホプキンスという組合せで情感豊かに蘇らせた。死神の恋には上手いオチがつくのだが、劇中にある「逃れられないもの。それは死と税金」というセリフが効いていた。

(出演:ブラッド・ピット、アンソニー・ホプキンス、クレア・フォラーニ、他)
(1998年/アメリカ/マーティン・ブレスト監督/原題「Meet Joe Black」)

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バーン・アフター・リーディング

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デタラメさの連鎖が楽しいクライム・コメディだ。CIAの機密情報が入ったCD-ROMを巡って諜報員や連邦保安官、その妻や不倫中の愛人らがそれぞれの思惑で入り乱れ、予測不能なドタバタ劇を繰り広げる。豪華キャストはどいつもこいつもムチャクチャな役なのだが、とりわけスポーツ・インストラクター役ブラピのバカっぷりは見ものだ。“多少の犠牲”はあるものの迅速に正確に処理するCIAの役人たち。素人相手に奮闘する彼らの悩みはつきないが、幼稚な犯罪計画が国家をも揺るがす展開に、世界平和の行く末が本気で心配になる。コーエン兄弟が、肩の力を抜きまくり、仲間たちと遊び倒したゴージャスなエンタメ映画。これもオスカー監督となった余裕だろう。
【65点】
(原題「Burn After Reading」)
(アメリカ/ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン監督/ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニー、ジョン・マルコヴィッチ、他)
(おバカ度:★★★★★)

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映画レビュー「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」

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◆プチレビュー◆
時を縦糸に愛を横糸にして人生の哀切を紡ぐ秀作。特殊メイクで七変化するブラピは必見だ。 【85点】

 ベンジャミン・バトンは、80歳で生まれ徐々に若返っていく不思議な運命の持ち主。恋人デイジーと何度もすれ違いながら、やがて愛し合うようになる。だが、他人と違う時を刻む彼はデイジーとの関係で悩むことに…。

 この映画が生まれた背景には、二人の作家の存在がある。大作家のマーク・トウェインは「もし80歳で生まれてゆっくりと18歳に近づいていけたら、どんなに幸せだろう」とつぶやいたらしい。F・スコット・フィッツジェラルドはその言葉にインスピレーションを得て、小さな物語を生み出した。映画の原作となったそれは、まるで一筆書きのような掌編。ひとときの夢のようなお話を、20世紀現代史と併走する物語に作り変えた点がデビッド・フィンチャー監督の非凡なところだ。若返っていくことが本当に幸せなのか。本作は、その答え以上のものを私たちに教えてくれる。2時間47分の長丁場だが、退屈とは無縁だ。観客は夢中になってベンジャミンの不思議な人生を見守るだろう。

 このリリカルな奇談の主人公は、幸いに、多くの人の愛に守られ人生を歩んでいく。老人の外見を厭わずに育ててくれた優しい義母。船乗りになって出会う豪放な船長。ミステリアスな人妻との恋。ベンジャミンは、特殊な運命ゆえに命に限りがあることを痛切に知っている。彼にとってすべての出会いはかけがえのない宝物だ。中でも幼馴染の美女デイジーは格別の存在である。人生の中間地点で2人の時はクロスし、激しく愛し合うことに。だが彼には、最愛のデイジーと共に老いていく幸せはなかった。誰とも違うベンジャミンの旅路の終着駅は、皆と同じ“死”なのだが、孤独なその道のりが、私たちの胸を打つ。

 80歳の老人から徐々に若返る主人公を特殊メイクで演じきるブラッド・ピットの存在感が素晴らしい。顔は彼の老けメイク、身体は子役が演じる老人の容姿は、映像の継ぎ目をまったく感じさせず、きわめて自然だ。そして長い年月を経て青年になった主人公が登場すれば、デビュー当時の麗しいブラピと再会できる喜びもある。今、映画の持っている技術を存分に活かして作られる、美しい映像は、ピットの渾身の演技で厚みを増した。そんな彼と渡り合うのは、繊細で高貴なたたずまいのケイト・ブランシェットだ。二人が演じるかつてない恋の行方を見届ければ、そこには深い感動が待っている。

 風変わりな運命の主人公が、波乱万丈の人生をおくり、やがて深い愛へと至る。どこか「フォレスト・ガンプ」を思わせるストーリーだが、時間を逆行させることで、よりファンタジックな空気を醸し出した。人間は時に抗うことはできない。冒頭に登場する時計職人のエピソードが象徴するように、人の喜びも悲しみも、時間と共にある。もし時に勝利したいのなら、その武器は愛しかないのだ。この“数奇な”物語は、後戻りできない人生の哀切を教えてくれる。だからこそ私たちは、一緒に歩む人がいることの至福を感じることができる。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)切なさ度:★★★★★

□2008年 アメリカ映画 原題「The Curious Case of Benjamin Button」
□監督:デビッド・フィンチャー
□出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、ティルダ・スウィントン、他

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映画レビュー「ジェシー・ジェームズの暗殺」

ジェシー・ジェームズの暗殺 特別版(2枚組)
◆プチレビュー◆
西部開拓時代の伝説の無法者と彼を殺した男の心理劇。ゆったりとした時間の中で叙情的な映像が流れてゆく。 【65点】

 南北戦争終結後の米国。強盗ジェシー・ジェームズは、犯罪者ながら、世間からは義賊と崇められていた。カリスマ性を漂わせるジェシーに憧れる手下のロバートは、ジェシーの活躍をつづった大衆誌を宝物にするほど彼を崇拝していたのだが…。

 米国史上、最も有名な無法者ジェシー・ジェームズは、日本での知名度は低いが、ハリウッドでは何度か映画化されている。徹底的にジェシーを美化した「地獄への道」(39)、凡作西部劇「アメリカン・アウトロー」(01)などの作品がそれだ。なんとか鑑賞に堪えられるのは、刹那的な生の煌きを描いたウォルター・ヒル監督の「ロング・ライダーズ」(80)だろう。それでは本作はどうか。義賊とも英雄とも、単なる犯罪者とも異なる、複雑なジェシー・ジェームズ像がそこにある。さらに、今までジェシーを背中から撃ち殺した裏切者としか認識されなかったロバート・フォードの人間性に光を当て、ジェシーとロバートという二人の男の心理ドラマとして構成している。

 「卑怯者ロバート・フォードによるジェシー・ジェームズの暗殺」という長い原題だけで、結末やキャラクターの性格付けまで説明可能だ。なのに上映時間は2時間40分。長い。だが、霧のような煙の中からジェシーが現われる冒頭の部分から、この作品の時間経過は、現実とは全く違う速度で進むのだと分かった。ざわめく風、虫の声、草に触れる指先のその感覚まで、細かいサウンド・デザインが施され、テレンス・マリック作品を思わせる詩的で荒涼とした映像が、ジェシーを歴史の彼方からゆっくりとスクリーンに呼び戻す。この有名な暗殺劇のポイントは、彼らが生きた19世紀末が、鉄道や電話、新聞が普及しはじめたインフラ整備の時代だったことだ。安価な三文小説ダイム・ノベルが大流行し、ジェシーはメディア操作の格好の素材となる。南軍所属の哀切を背負う甘いマスクのジェシーが夜間に列車を襲うたびに、鉄道会社の非道に苦しむ大衆は、彼にロビン・フッドを重ねて伝説を創った。ジェシーの本当の姿など誰も求めていない。映画はそんな主人公を逆光でシルエット化し、彼が虚像であると教えてくれる。虚ろな影に手を伸ばしても決して届かない。このことがロバートの純な憧れをくすぶる憎悪に変えた。背後からジェシーをみつめる彼の瞳が痛切である。

 猜疑心が強く静かな狂気を秘めるジェシーをブラッド・ピットが怪演に近い名演。特に他者への無関心が浮かぶ表情は、屈指の演技と言える。冷めた兄フランクを演じるサム・シェパードもさすがの貫禄だ。だが、ロバートを演じたケーシー・アフレックはその上をいった。彼に対して“ベン・アフレックの弟”という形容は今後は必要ないだろう。臆病者だがうぬぼれが強く計算高い、歴史の敗北者。こんな難役をこなせる役者はそう多くはいない。何者になりたいのかさえ分からなかった若者ロバートは、自分もジェシーと同じ形の死を心の中で願っていたのではないか。この映画に漂うのは、西部劇の痛快ではなく、アメリカン・ニュー・シネマの哀愁なのだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)壮快感度:★☆☆☆☆

□2007年 アメリカ映画 
原題「THE ASSASSINATION OF JESSE JAMES BY THE COWARD ROBERT FORD」
□監督:アンドリュー・ドミニク
□出演:ブラッド・ピット、ケイシー・アフレック、サム・シェパード、他

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映画コラム、書きました「ENGLISH JOURNAL 11月号」

ひとりごと10月6日発売の雑誌「ENGLISH JOURNAL」2007年11月号(出版:株式会社アルク)に、俳優ブラッド・ピットについての映画コラムを書きました。

この号の教材(別冊付録CD、ブラピの肉声です!)は、カンヌ映画祭を訪れたブラピとアンジーの英語によるインタビュー。マイケル・ウィンターボトム監督、アンジェリーナ・ジョリー主演の「マイティ・ハート 愛と絆」を特別招待作品として出品するに当たり、取材に応えたものです。ブラッド・ピットは製作として参加しており、パートナーのアンジーをサポートしています。

このインタビューの内容がより理解できるようにとの主旨で、近頃、プロデューサー業でも活躍しているブラッド・ピットについて、彼の俳優としての変化、映画「マイティ・ハート」(日本公開は11月23日)についてなど、映画コラムを書いています。

英語の語学雑誌は、映画を教材として使うことが多いので、映画ファンにとっては穴場的な情報の場じゃないでしょうか。この「ENGLISH JOURNAL」は、映画についての記事がとても充実しているので、映画好きにオススメの雑誌です。スターの噂のようなゴシップ的な内容ではなく、映画や作品そのものについて真面目に言及しながら英語学習へアプローチするという内容は、個人的にも好感を持ちました。

ブラピのファンの方もそうでない方も(笑)、興味があったら読んでみてください。
ENGLISH JOURNAL:スペースアルクのサイトから購入することもできます。

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オーシャンズ13

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スタイリッシュな映像とユルいギャク満載で安心して楽しめる娯楽作だ。今回、人気女優を切り捨ててまで取り入れたのは男気。仲間をハメた悪徳ホテル王に復讐するためオーシャンたちが奇想天外な作戦を遂行する。豪華キャスト競演のこのシリーズ、11、12、13…と永遠に続けるつもりか?!
【65点】
(原題「OCEAN'S THIRTEEN」)
(アメリカ/スティーブン・ソダーバーグ監督/ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピット、マット・デイモン、他)
(リベンジ度:★★★★☆)

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映画レビュー「バベル」

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◆プチレビュー◆
1発の銃声の波紋が4大陸を駆け巡る。コミュニケーション不能の世界での絶望と希望を描く秀作ドラマ。菊地凛子の熱演にも注目。 【90点】

夫婦の絆を確かめるためモロッコにやってきた米国人夫婦の妻が撃たれる。モロッコ人の少年が遊び半分に撃った一発の銃弾は、メキシコ、そして日本へと波紋を広げていく。言葉が通じないために起こる様々なトラブルの中で、登場人物たちは孤独を味わうが…。

風が吹けば桶屋が儲かる。この表現を例えに出すのは気が引けるのだが、本作の物語展開はまさにそんな感じなのだ。モロッコで家畜の世話をする少年が腕だめしにと撃ったライフルの銃弾が、米国人女性に当たってしまうのが発端だ。言葉が通じず、果ては外交問題に発展する。一方で夫妻が雇うメキシコ人家政婦は、甥っ子のラテンのノリのいいかげんさが災いし、国境でトラブルに。夫妻の子どもを連れていたため、逮捕、強制送還へと追い込まれる。そもそもこの銃は、モロッコに観光にきた日本人が、親切なガイドに“感謝の印として”プレゼントしたものなのだ。日本人が無責任に置いてきた銃が、アラブ世界の少年を犯罪者にし、ラテン系の中年女性の生活を奪う。そんな理不尽とは対局に、聴覚障害者の日本人の少女の悩みは、誰かに強く愛されたいというものだ。日本特有の中身のない風俗と好奇心の中で漂う思春期の少女は、耳が聞こえないことは別にしてめぐまれているように思えるが、実は彼女のこの孤独感こそ、世界共通の傷みなのだと映画は訴える。

世界中に星の数ほど存在する人間同士のほとんどは、一生知り合うこともなく終わる。だが、存在さえ知らない人とも、私たちはどこかでつながっていて、影響しあっているのだ。今、誰かを幸せにする出来事が、悲惨な不幸に続く道にもなる。幸福を味わっている人の笑顔の影で泣く人もいよう。私たちが普段意識せずに暮らしているそんなつながりを、この映画は思い起こさせてくれる。

異なった複数のエピソードがやがてひとつに収束していくスタイルは、イニャリトゥ監督の得意とするところ。監督一作目の「アモーレス・ペロス」から、世界中で認められたその才能は本物だ。本作はそんな彼のひとつの到達点だと思う。人と人が分かりあう難しさを実感すると同時に、ラストに娘をそっと抱きしめる父親の姿に、かすかな希望が見える。夜の東京の高層ビルこそ、現代のバベルの塔に見えた。感動が心にしみる。

 (シネマッシモ評価:★5つが満点)日本大注目度:★★★★☆

□2006年 アメリカ映画 原題「BABEL」
□監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
□出演:ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット、菊地凛子、他


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◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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