映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「フィフティ・シェイズ・ダーカー」「ハクソー・リッジ」「結婚」「ありがとう、トニ・エルドマン」etc.

ブラッド・ピット

マリアンヌ

マリアンヌ ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]
1942年、カサブランカ。極秘諜報員のマックスとフランス軍のレジスタンスのマリアンヌは、ドイツ大使を殺害する重大な任務につく。敵の目を欺くために夫婦を装った二人は、危険な任務を通して親密になり、その後、ロンドンで再会。強く惹かれ合った二人は結婚し、子どもも生まれて穏やかな家庭を築く。だが、マリアンヌは愛するマックスにも打ち明けられない大きな秘密を抱えていた…。

戦時下で運命的に出会った男女の過酷な運命を描くラブ・ストーリー「マリアンヌ」。美男美女が演じる情熱的な愛から、後半は一転、愛する妻への疑惑をはらすために苦悩する心理サスペンスへと転じる。ブラッド・ピットといえば、最近では、映画そのものより私生活のスキャンダルが大きすぎた感があるが、本作では、戦争が恋を生み、同じ戦争が愛を奪おうとする物語をダンディーかつセクシーに演じて存在感を示している。デビュー時には外見の良さばかりが注目され、その後はあえて“汚れ役”を選んで出演していた時期もあったブラピだが、50歳を過ぎて、こんな美男美女でなければ成立しない映画に堂々と出演するところをみると、いろいろな意味で一皮むけたのかもしれない。無論、国際的に活躍するオスカー女優のコティヤールの知的な美しさもまた絶品で、特に、40年代のクラシックな衣装に身を包んだ様は、「カサブランカ」のイングリッド・バーグマンを彷彿とさせる。妻マリアンヌに向けられた二重スパイの疑惑は、やがて、自分への愛さえも偽りだったのか?という疑いへと転じてしまう。その結末は、涙を誘うものだ。サスペンス・タッチではあるが、本作は王道のメロドラマ。だがその根底にある反戦のメッセージを見逃してほしくない。
【65点】
(原題「ALLIED」)
(アメリカ/ロバート・ゼメキス監督/ブラッド・ピット、マリオン・コティヤール、リジー・キャプラン、他)
(メロドラマ度:★★★★☆)
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白い帽子の女

白い帽子の女 ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]
1970年代、アメリカ人小説家ローランドと妻ヴァネッサは、バカンスで南仏の海辺のリゾートホテルを訪れる。夫は毎日カフェに通いつめ、妻はほとんどホテルの部屋から出ることはない。ある不幸な出来事から夫婦の間には大きな溝が出来ていて互いに心の傷を抱えていたのだ。そんな時、ハネムーンで若いフランス人カップルが彼らの隣室に滞在する。妻のヴァネッサは自分たちとは何もかも対照的な幸せなカップルを嫉妬のまなざしでみつめるが…。

過去の不幸な出来事から心が離れてしまった夫婦の愛と葛藤、再生までをみつめるドラマ「白い帽子の女」。本作の日本公開を前にして、アンジーとブラピのビッグ・カップルの電撃離婚という大ニュースが飛び込んできて、もっぱら話題はそちらにいってしまった感がある。しかし、彼らのリアルな破局のニュースを知ってこの作品を見ると、ブランジェリーナ最後の夫婦共演、問題を抱えた夫婦がそれぞれの心の傷に向き合う物語、美しいがどこか寂しく世間から忘れられたような海辺の風景と、深読み要素たっぷりの内容に思えるのだ。1970年代の南仏という設定だが、映画そのものも、まるで70年代の仏映画のように、良くも悪くもノスタルジックである。携帯が存在しない時代の海辺のホテルは、世界から隔離された密室のようなもので、どこにも逃げ場がない。ホテル、カフェ、小さな入り江しか登場しないこの映画は舞台の会話劇にも似た濃度があるが、そこに開放感と人生の意味を示すのが、ヴァネッサがホテルの部屋から眺める漁師の存在だ。朝、広い海に毎日小舟で漕ぎ出しては、ほとんど収穫もなく、夕方に戻ってくる。漁師の顔は見えないので普遍的な人間の象徴だろう。人生とは、沖に出てまた戻る行為の繰り返し。しかしそこには、小さな喜びや確かな満足を感じる日がきっとある。同時に、悲しみや痛みに折り合いをつける術も学んでいくのだ。戻る場所があるという幸福をかみしめながら。アンジーの監督作は過去2作とも、戦争(内戦)の悲劇を描いた社会派ドラマだったが、本作は夫婦の危機という非常にパーソナルな内容でまったくテイストが異なる。本作からアンジェリーナ・ジョリー・ピットとクレジットされていること、心がすれ違う夫婦の再生のドラマを描きながら現実では破局へと至ったことなどを考えると、アイロニックなムードが色濃く漂う。映画はいつでも、現実を取り込みながら物語を語るメディアなのだということを痛感してしまった。 
【65点】
(原題「BY THE SEA」)
(アメリカ/アンジェリーナ・ジョリー・ピット監督/ブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリー・ピット、メラニー・ロラン、他)
(すれ違い度:★★★★☆)
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マネー・ショート 華麗なる大逆転

マネー・ショート 華麗なる大逆転 ブルーレイ+DVD セット [Blu-ray]
2005年のアメリカ。変わり者の金融トレーダーのマイケルは、サブプライム・ローンが数年以内に債務不履行に陥る可能性がある事に気付くが、ウォール街では一笑を買ってしまう。そこで「クレジット・デフォルト・スワップ」という金融取引に目をつけ、新たな戦略で出し抜いてやろうと考える。同じ頃、マイケルの動きを察知した、銀行家ジャレットはヘッジファンドマネージャーのマークに連絡を取り、伝説の銀行家ベンらもまた、経済破綻の到来を予測し、ウォール街を出し抜こうと図っていた…。

世界金融危機の到来を予期した金融界の4人のアウトサイダーたちの物語を描く「マネー・ショート 華麗なる大逆転」。リーマン・ショックの裏側を描くこの映画、経済破綻という結果が分かっているのに、めっぽう面白い。専門的な経済用語が飛び交うが、そこは「俺たち」シリーズを手掛けたコメディー畑のアダム・マッケイ監督、テンポよく、飽きさせない演出で、難しいコトをやさしく紐解いてくれるので、安心してほしい。金融危機を予想した数少ない投資家やトレーダーたちが、どう動いたか。金融界のモラルのなさやそのハチャメチャぶりがいかにひどいか。我々庶民にとっては、飛び交う金額の桁が大きすぎて、実感できないのが難点だが、アメリカの狂乱が世界中に与える大打撃は理解できる。この映画の副題は“華麗なる大逆転”だが、物語に痛快さはなく、むしろ漂うのは悲哀と憂鬱だ。劇中で、ブラピ演じる伝説の銀行家ベンが、経済破綻に賭けて勝利を確実にした若者たちに言う。「単純に喜ぶな。これでアメリカの無数の庶民が家と職を失い、破産するんだぞ」。自国の悲劇と崩壊を予測し、それに賭けて勝利しても、そのマネーゲームの後味はすこぶる苦いのだ。クリスチャン・ベールをはじめ、俳優陣は揃って好演。中でも、コメディアンだが最近ではめっきり演技派になったスティーブ・カレルが演じる神経症のトレーダーの人間性を深く掘り下げているのは、金融界のアンモラルを何とか正そうとしているかのようだ。アカデミー賞では脚色賞を見事に受賞。物語の随所で、ドラマと関係のないスターたち(実名でカメオ出演)が難解な経済用語や仕組みを観客に向かって比喩で説明するというエンタテインメント風の演出が、ユニークかつ効果的だった。
【85点】
(原題「THE BIG SHORT」)
(アメリカ/アダム・マッケイ監督/クリスチャン・ベール、ブラッド・ピット、ライアン・ゴズリング、他)
(ビター度:★★★★☆)
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フューリー

FURY / フューリー [Blu-ray]
1台の戦車で300人ものドイツ兵に立ち向かった5人の男たちを描く戦争アクション「フューリー」。本物の戦車を使用して撮影するなど、リアル重視の映像が迫力たっぷり。

第二次世界大戦末期のドイツ。歴戦の勇士であるベテラン兵士ウォーダディーのチームに、戦闘経験のない新兵のノーマンが配属される。“フューリー”と名付けられた戦車シャーマンM4に乗り込んだノーマンは、想像をはるかに超える戦場の凄惨な現実を目の当たりにする。繰り返される激しい戦闘の中、次第に仲間とも絆を育んでいくが、ドイツ軍との激しい戦闘で他部隊は全滅。ウォーダディーの部隊だけはなんとか生き残るが、300人ものドイツ軍部隊から包囲されてしまう…。

監督のデヴィッド・エアーは、実際に米海軍に従軍経験があるそうだ。製作総指揮と主演を兼ねるブラッド・ピットと共に、リアルな戦闘シーンに徹底的にこだわって作ったのがこの力作戦争アクションである。タイトルのフューリーとは、主人公たちが乗る戦車の愛称で、激しい怒りを意味する。新兵ノーマンの目は、そのまま観客の視点となるのだが、戦争とは、戦場とは、決してヒロイックなものでもなく、ひたすらつらくおぞましいものだということを思い知らされる。兵士たちの胸には、敵だけではなく、命がけで戦っている自分たち自身に対してもフューリー(怒り)の感情が常に渦巻いているのがその証拠だ。カリスマ性のあるリーダーだが、過去の戦闘でのトラウマを抱え複雑な思いを秘めた指揮官のウォーダディーがその象徴である。彼は、新兵のノーマンに儀式のように処刑を命じるかと思えば、ノーマンの淡い恋心を助ける場面も。だがすべては、戦争という歴史のうねりの中では、一瞬で吹き飛ばされる塵にも似た些細な出来事にすぎない。第二次世界大戦の戦いのスタイルは、現代から見ると少しノスタルジックに思える。だがミリタリー好きの言葉を借りるなら、史上最も重要な戦車である、ドイツ軍が駆るティーガー戦車が実際に動いている図は、垂涎ものに違いない。多大な犠牲を強いる激しい戦闘が過ぎ去った後の虚しさが、余韻として残る作品だった。
【70点】
(原題「FURY」)
(アメリカ/デヴィッド・エアー監督/ブラッド・ピット、シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン、他)
(リアル度:★★★★☆)
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フューリー@ぴあ映画生活

悪の法則

悪の法則 21分拡大版本編ディスク付豪華2枚組 (初回生産限定) [Blu-ray]
危険な裏ビジネスに手を染めたことから壮絶な運命をたどる人々を描く心理サスペンス「悪の法則」。主役級スターが勢ぞろいし、不条理劇を豪華に彩る。

テキサス、メキシコ国境付近の町で弁護士をしている若くハンサムな“カウンセラー”は、美しい恋人ローラとの結婚を控え、何不自由なく暮らしているが、ふとした出来心で、友人の実業家ライナーや、裏社会に精通するブローカーのウェストリーと組んで、メキシコの麻薬カルテルを相手に、危険な裏ビジネスに手を染める。だが正体不明の黒幕が仕掛けた罠によりカウンセラーと彼の周囲のセレブリティたちは、命さえ脅かす危険で巨大なトラブルに巻き込まれていく…。

金も社会的地位も、美しい容姿さえも、何不自由ない“カウンセラー”が出来心で裏ビジネスに手を出したその理由は、恋人をより満足させ、自分もより豊かな暮らしがしたいという「ちょっとした欲」だった。だが“素人”のカウンセラーの欲など、この物語の黒幕のそれにくらべるとひよっこ並み。裏ビジネスに安易に手を出したのはなるほど悪いことだが、実はカウンセラーには一連の危機に値するような落ち度はない。つまり身に覚えのない出来事によって、カウンセラーは周囲の人々を地獄への道連れにして悲劇へとひた走るのだ。その不条理ぶりときたら、壮絶という言葉以外、思いつかない。全員が主役クラスのスターたちが従来のイメージを覆す役に挑戦しているが、人間の闇をあぶりだす名手の作家コーマック・マッカシーによる脚本は、それぞれに衝撃的な運命を用意して、情け容赦ない。とりわけライナーの愛人マルキナを演じるキャメロン・ディアスの得体の知れない妖艶な演技には、ド肝を抜かれた。ブラピ演じるブローカーは何度も「手を引け」と忠告するが、それでもカウンセラーは道を誤る。悪とはこんなにも甘美な誘惑の香りがするものなのだろうか。真の主役はさておき、とりあえず物語の軸はカウンセラー。マイケル・ファスベンダー演じる彼だけが名前がないのが象徴的だ。つまり誰もが同じ落とし穴に落ちる可能性があるということである。全体を通して会話劇で成り立っている作品なのに、こんなにも緊張を強いられるとは。人間性の極北をドライに描いた恐ろしい傑作である。
【75点】
(原題「THE COUNSELOR」)
(米・英/リドリー・スコット監督/マイケル・ファスベンダー、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス、他)
(不条理度:★★★★☆)
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悪の法則@ぴあ映画生活

ワールド・ウォーZ

ワールド・ウォーZ 3D&2DアルティメットZ・エディション 3Dブルーレイ&2Dブルーレイ(エクステンデッド・エディション)&2Dブルーレイ(劇場版)+Bonus DVD<4枚組> [Blu-ray]
世界規模のパンデミックを食い止めるため奔走する男の奮闘を壮大なスケールで描く「ワールド・ウォーZ」。このゾンビはとにかく動きが早い。

人類を凶暴化する謎のウイルスの脅威により、世界中の都市が次々に壊滅する。元国連捜査官のジェリーは、その技能と経験を買われ、ワクチン開発のために世界各地を回ってウイルスの感染原因を探るよう命じられる。夫として父親として、おびえる家族を守りたい気持ちを残し、奔走するジェリー。世界中で感染者を目撃し、ワクチン開発のあるヒントをつかむのだが…。

原作はマックス・ブルックスの同名小説で、ハリウッド中がその映画化権争奪戦を繰り広げたという。この小説に強く思い入れるブラピがその権利を手にし、自らの製作会社プランBで映画化したのが本作だ。Zとはアルファベットの最後の文字であることからも分かるように、終焉や究極を意味する。人間が相手の戦争なら打つ手や交渉のしようもあるが、前触れもなくやってきた未知の殺人ウイルスが相手では、なす術もない。つまり人類にとって何を悪としていいのかも分からない、史上最悪の事態なのだ。監督のマーク・フォースターは多才な名匠だが、パニック映画というのは初めて。だがCGを使いこなす腕はなかなかのものだ。感染した人間たちは凶暴になり群れる。そんなゾンビ化した無数の感染者がエルサレムの防護壁をよじ登り、巨大人柱となって超えようとするシーンには、思わず目を見張った。さらにトップスターのブラピを超人的なヒーローにしなかったことも上手い演出だ。ジェリーは、国際紛争や危機回避が専門で“非常事態”を最もよく知る人物。武術や武器で“Z(最期)”を解決するのではなく、ゾンビたちがある特定の人間を襲わないことに着目し、それをヒントに解決策へと導いていくのだから、すこぶる知的で冷静なキャラクターに見える。ゾンビのその性癖はここでは明かさないが、ワクチン開発のためにたどり着いた研究所で、ジェリーは最終的に命がけで人類を救う行動をとる。派手なアクションこそないが、最後にはブラピをヒーローにすることでちゃんと帳尻を合わせていた。ゾンビ映画にしては、流血シーンは少ないので、ホラー映画ファンには物足りないかもしれないが、実態がつかめない悪に対する戦いという点で戦慄度はきわめて高い。世界中がカオスに陥る圧倒的スケールのパニック・ムービーで、平和な日常と地獄が一瞬でくるりと入れ替わる空恐ろしいシミュレーションだった。
【65点】
(原題「WORLD WAR Z」)
(アメリカ/マーク・フォースター監督/ブラッド・ピット、ミレイユ・イーノス、ジェームズ・バッジ・デール、他)
(スリリング度:★★★★☆)
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ワールド・ウォーZ@ぴあ映画生活

ジャッキー・コーガン

ジャッキー・コーガン [Blu-ray]
ブラピがクールな殺し屋に扮したオフビート感覚のクライム・ムービー「ジャッキー・コーガン」。現代アメリカの不条理を裏テーマにしたひねりが効いている。

ルイジアナの闇の賭場が襲撃される。胴元の裏組織は真犯人と黒幕を捕えて落し前を付けるよう、裏社会に生きる一匹狼の殺し屋ジャッキー・コーガンを雇う。まず前科のあるマーキーが疑われるが、今回の犯人は別の悪党3人組と判明。同業者、ギャング、依頼者のエージェントと、それぞれの思惑や裏切りが複雑にからみあった時、ジャッキーは、事態の収拾を図るため、関係者全員を皆殺しにすると決意する…。

この異色の犯罪劇の舞台は、2008年のアメリカ。不景気、格差、犯罪多発と社会の機能が不健全な中、初めて大統領戦に立候補したオバマの演説がまるでBGMのように頻繁に流れるのが興味深い。オールバックに黒づくめの凄腕の殺し屋ジャッキーは、ターゲットを“優しく殺す”をモットーにするクールな完璧主義者だ。物語はタランティーノのガーリートークを思わせるような、無駄なグダグダ台詞が多いのだが、寡黙でクールな主人公ジャッキーがひとたび口を開けば、にじみ出るのは、柔和な語り口の中にある情け容赦ない凄味だ。襲撃事件の真犯人は別にいると分かっていながら、賭場を仕切っていたマーキーを殺し、同業者を刑務所送りにするジャッキーは、そのワケをサラリーマン然とした依頼主にとうとうと語る。これが屁理屈にしか聞こえない理由なのに、妙に説得力があって笑ってしまった。キレ者で悪(ワル)なのに、どこかとぼけた味わいは、実はブラピの得意とする役どころである。命乞いは聞きたくないし、拷問で苦しめるのも主義に反すると、相手が死を意識するヒマもないタイミングで命を奪う仕事ぶりは、ほれぼれするほど。物語には金にからむ台詞や描写が多数あるが、これは経済危機にあえぐ米国への風刺なのだろう。「平等なんてジェファーソンのウソっぱち」「アメリカは国家じゃない。ビジネスだ」と吐き捨てるジャッキーが体現するのは、アメリカに生まれれば頼れるのは自分しかいないというハードボイルドな覚悟なのだ。ドライな犯罪劇の裏側で痛快な社会批判をやってのけるとは、なかなかスミに置けない映画である。
【70点】
(原題「KILLING THEM SOFTLY」)
(アメリカ/アンドリュー・ドミニク監督/ブラッド・ピット、リチャード・ジェンキンス、ジェームズ・ガンドルフィーニ、他)
(ハードボイルド度:★★★★☆)
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ジャッキー・コーガン@ぴあ映画生活

マネーボール

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野球界の異端児ビリー・ビーンの画期的な球団経営を描く異色の野球映画「マネーボール」。自然体のブラピの演技に好感が持てる。

元大リーガーのビリー・ビーンは、弱小球団オークランド・アスレチックスのゼネラル・マネージャー(GM)に就任する。だがチームには選手補強の財力がなく、成績は長く低迷していた。そんな時、ビリーは、野球にはうといがデータ分析に長けた秀才ピーター・ブランドと出会い、彼をチームのスタッフとして向かえることに。ビリーとピーターは周囲の反対を押し切り、出塁率を重視して低予算で強いチームを作り上げる“マネーボール理論”を実践していく…。

アメリカ映画は成功物語が大好きだ。しかもそれが挫折を乗り越えてつかむ栄光ならなおのこと。ビリー・ビーンは、今では球団経営の手法の一つとして定着している“マネーボール理論”を実践し、貧乏球団を常勝集団に変え、公式戦20連勝という記録的偉業を成し遂げた実在の人物だ。彼の経歴で見逃せないのは、選手として挫折を経験しているということ。スカウトの甘言にのり自分の将来を決めてしまったことは、彼の中で、抜けないトゲのように、鈍い痛みとして残っている。このことが、球界の新機軸のマネーボール理論を実践するモチベーションとなっている。古いスカウトマンや監督から反発を買い、ファンやマスコミからバカにされながらも、決して自分の信念を曲げないのは、過去の後悔を繰り返したくないとの思いからだ。

ビリーは、結果的には、他球団から見捨てられた選手の隠れた才能を引き出して、輝かしい実績を残すが、彼自身は華やかなヒーローではない。短気で頑固者だが常にチャレンジャーであり続けたいと願う、欠点だらけの人間だ。そこに魅力がある。特に善人でもなく、かといって強烈な悪人でもない、むろんルックスの良さなど売り物にもしない、普通の中年男を演じるブラッド・ピットが新鮮で好感が持てる。離れて暮らす娘とのエピソードは、残念ながら物語に効果的に溶け込んでいるとは言い難い。それでも主人公が見せる、優しい父親の笑顔は、野球と家庭を愛する良きアメリカ人そのもの。そのことが、作品に温かさを加えている。
【65点】
(原題「MONEYBALL」)
(アメリカ/ベネット・ミラー監督/ブラッド・ピット、ディミトリ・マーティン、フィリップ・シーモア・ホフマン、他)
(サクセス・ストーリー度:★★★★☆)
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マネーボール@ぴあ映画生活

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映画レビュー「ツリー・オブ・ライフ」

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◆プチレビュー◆
伝説の監督テレンス・マリックの世界観が炸裂する映像詩。家族とその存在意義を地球の起源まで遡って問いかける。 【70点】

 1950年代のテキサス。オブライエン家の両親と3人の兄弟は、慎ましくも幸せに暮らしていた。だが、長男ジャックは、力こそすべてと考え世俗的な成功を求める厳格な父と、自然を愛し子供たちに精一杯の愛情を注ぐ優しい母の狭間で葛藤し、次第に父への反感を募らせていく。やがて大人になり“成功”したジャックは、深い喪失感の中で、少年時代に思いを巡らせるのだが…。

 人間を大自然の中の一部としてとらえるのは、寡作の映像作家テレンス・マリックの一貫したヴィジョンだ。本作では、家族や信仰、あるいは生と死の意味を、地球や生命の誕生という宇宙的な空間にまで遡って、検証しようと試みる。この実験的なスタイルに唐突感は否めないものの、圧倒的な映像美に包まれれば、いつしかマリックの心象風景に同化していく自分がいた。

 物語の軸となるのは、父と息子の葛藤という、アメリカ映画が繰り返し取り上げてきた深いテーマだ。そこに、ジャックが抱える、父親の音楽の才能と母親の優しい感受性を受け継いだ弟への複雑な感情が混じる。その弟の早すぎた死は、ジャックに生涯消えない絶望感をもたらすのだが、中年期になった彼の記憶の海では、父も母も弟たちも穏やかに存在していた。その場所こそ、過去から未来へと命の絆を受け継ぐ“約束の地”なのだ。

 悩み、迷いながら生きていくしかない人間を見つめるカメラワークは、まさに神の視点。ブラッド・ピットとショーン・ペンという2大スターを得た本作は、決して分かりやすい物語ではない。キューブリックの「2001年宇宙の旅」にも似て、哲学的な物語とめくるめく映像美の間に、生きるとは何かという問いが封じ込められている。混迷する現代に生きる観客それぞれの心の中に浮かび上がってくるのは、その問いの答えではなく、より良い人間でありたいという祈りなのかもしれない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)映像美度:★★★★☆

□2011年 アメリカ映画 原題「THE TREE OF LIFE」
□監督:テレンス・マリック
□出演:ブラッド・ピット、ショーン・ペン、ジェシカ・チャスティン、他


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ツリー・オブ・ライフ@ぴあ映画生活

映画レビュー「イングロリアス・バスターズ」

イングロリアス・バスターズ [DVD]イングロリアス・バスターズ [DVD]
◆プチレビュー◆
タランティーノがハチャメチャな描写で歴史とナチスを遊び倒す。映画愛に基づく復讐が痛快な怪作。 【75点】

 ナチスやヒトラーと、その打倒を描いた映画は多いが、この作品はスタンスといい、切り口といい、まったくもって奇想天外だ。歴史的な事実を背景にしてはいるが、史実通りに描く気など、タランティーノには微塵もない。1941年、ナチス占領下のフランスで、家族を虐殺されたユダヤ人少女ショーシャナは、間一髪で逃げ延びる。成長した彼女は映画館を経営しながらナチスへの復讐を誓っていた。一方、イングロリアス・バスターズと呼ばれる連合軍のならずもので構成された極秘部隊は、レイン中尉をリーダーに次々にナチスを血祭りにあげて独軍をふるえあがらせる。独人美人女優で二重スパイであるブリジットの情報をもとに、ある極秘ミッションが計画されていたが、それはショーシャナにも復讐のチャンスとなる。

 何しろバスターズのやることときたらナチスに負けず劣らず残虐だ。頭の皮をはいだり、傷口に指を突っ込むなどの残酷な描写が平気で登場する。タランティーノの十八番であるペチャクチャと続く無駄なおしゃべりはもちろん健在だが、今回は、主要人物が、次から次へと死んでいく先読みできない展開がすごい。ここには映画的な善人は一人も存在せず、誰かに単純に感情移入することは許されない。

 ナチスと彼らがやった行為はだれもが憎んでいるのは事実。そして劇中でも描かれるように、ナチスが映画をプロパガンダとして最も重視していたことも。この二つをブレンドし、タランティーノは、現実ではできなかったヒトラーへの復讐をものの見事にやってのけた。しかも映画という最強の武器を使って。こう考えると、この戦争アクションは、痛快ファンタジーと呼ぶ方がふさわしい。タランティーノの偏愛するマカロニ・ウェスタンや数々の往年の名作へのオマージュもてんこもりだ。はたして最後に笑うのは誰? ナチスをとことん映画で遊び倒したタランティーノか。いや、勝者は映画そのものだと考えてこそタランティーノの映画愛に応えることになると信じる。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)死亡率度:★★★★☆

□2009年 アメリカ映画 原題「INGLOURIOUS BASTERDS」
□監督:クエンティン・タランティーノ
□出演:ブラッド・ピット、メラニー・ロラン、クリストフ・ヴァルツ、他

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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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