映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


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◎ 今週の気になる映画 ◎
「アトミック・ブロンド」「バリー・シール」「あゝ、荒野 後篇」「我は神なり」etc.

ブリランテ・メンドーサ

ローサは密告された



フィリピン、マニラのスラム街。家族経営の小さなコンビニを夫婦で営みながら、4人の子供を育てるローサは、貧しい生活を支えるため、少量の麻薬を売って生計を立てていた。だがある日、突然警察の男たちがやってきて夫婦は逮捕されてしまう。何者かがローサを警察に売ったのだ。警察署では巡査や巡査部長らが「20万で手を打ってやる。金がないなら、麻薬の売人を売れ」と迫る。ローサは売人のジョマールの名前を挙げ彼は逮捕されるが、警察はジョマールにも金を要求。彼が払えない分の5万をローサ夫婦に支払えと迫った。ローサの子どもたちは、腐敗した警察から両親を取り戻すため、金策に走り回るが…。

フィリピンを蝕む麻薬と堕落した警察の実態、その中で懸命に生きる家族の絆を描く人間ドラマ「ローサは密告された」。国際的に評価が高いフィリピンの実力派ブリランテ・メンドーサ監督による本作は、まるでドキュメンタリーのようにリアルで生々しい。マニラのスラム街で生きるローサは、働き者でご近所でも人気者の肝っ玉母さんのような女性だ。小さなコンビニでは、雑貨や食料品と同じ感覚で麻薬が売られている。あまりにも生活に浸透した麻薬汚染問題は、フィリピンが抱える深刻な病巣だが、スラムで生きる貧しい人々はこの商売で生きているのだ。問題はかなり根深い。

根深いのは、警察の腐敗ぶりも同じだ。さまざまな国の警察組織の汚職や腐敗は繰り返し映画で描かれてきたが、本作の堕落ぶり、モラルのなさは群を抜く。誰かに密告させて逮捕した人間に、法外な口止め料(見逃し金)を払わせ、別の誰かの名前を聞き出し、また逮捕、金を要求。ローサもまた密告されたわけだが、それは繰り返される“おなじみの出来事”に過ぎないのだ。自分や家族を守るためには、誰かを密告するしかない。この負のスパイラルの元凶が警察組織なのだから、もはやため息さえ出ない。降り続く雨の中、両親のために金策に走る子どもたちが金をかき集めるシークエンスでは、マニラの貧困層の、麻薬とはまた別の素顔が浮かび上がる。本作が優れているのは、社会派のテーマを内包しながらも、家族の絆を描くドラマが秀逸で胸を打つからだ。何が何でも家族を守ると決めたローサの生命力と家族愛は、堕落しきった警察の姿と対をなして、鮮烈に記憶に残る。ローサを演じたジャクリン・ホセは存在感が圧倒的で、本作でカンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞。ラスト、瞳にうっすらと涙をにじませるローサだが、それでもやっぱりお腹はすくし、明日もまた生きていかねばならないのだ。厳しい現実の中でもタフなローサに、一筋の希望の光が見えるようだった。
【80点】
(原題「MA'ROSA/Palit Ulo」)
(フィリピン/ブリランテ・メンドーサ監督/ジャクリン・ホセ、フリオ・ディアス、マリア・イサベル・ロペス、他)
(リアリティ度:★★★★★)
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キナタイ マニラ・アンダーグラウンド

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「三大映画祭週間」で紹介されたフィリピン映画の問題作。警察官志望の青年が足を踏み入れた闇の世界を不穏な映像で描いていく。

ペッピング(ペピン)は、警察学校に通う学生。すでに恋人との間に子供も生まれ、正式な結婚を控えて幸せな毎日を送っている。だが貧しい暮らしのため、サイドビジネスとして麻薬の売買に関わり、小銭を稼ぎながら生計を立てていた。ある日、汚職に手を染める友人から金になる仕事があると誘われ、軽い気持ちで受けてしまう。しかし、それは裏社会のどす黒い闇の世界への入口で、ペピンは汚職警官や殺し屋と共に、悪夢のような一夜を過ごすことになる…。

フィリピン出身のブリランテ・メンドーサ監督は、夜のマニラの街に潜む悪徳をすさまじい筆致で描いて、世界中を驚かせた。主人公のペピンは元来、明朗な好青年だが、貧しさゆえに汚れた仕事もせざるを得ないと考えている警察学校生。友人の誘いで受けた使い走りの仕事とは、悪徳警官が自分たちが受け取るべき裏金をごまかした娼婦に制裁を加える場に立ち会うことだ。

誘拐、暴力、レイプ、惨殺と、情け容赦ない場面が続くが、それらの映像が、すべて人里離れた隠れ家で周囲を見張るペピンたちの視点で描かれるため、おぞましい場面を覗き見しているような、異様な空気がある。だが、それらのバイオレンスシーン以上に恐ろしいのは、基本的に善人の青年が、軽い気持ちから足を踏み入れた闇の世界で、簡単に流され、悪を目撃しても黙って服従してしまう実態だ。「警官の給料だけでは暮らしていけない」というセリフがリアルだが、凶悪犯罪が多発するマニラの粗悪な環境が、悪に慣れ染まっていく人間の弱さを助長し、モラルを麻痺させるのか。ペピンが着ている警察学校の制服であるポロシャツの背中に“絶えず健全さを保持せよ”とのスローガンがプリントされているのが、強烈な皮肉となっている。

タイトルの「キナタイ」とは、英語と共にフィリピンの公用語であるタガログ語で「屠殺」の意味。ハード・ボイルドやフィルム・ノワールなどといった小奇麗なカテゴリーには分類できない、フィリピンの闇社会の実態を、冷徹なまなざしで描いた秀作だ。2009年カンヌ国際映画祭監督賞受賞作。

(出演:ココ・マルティン、フリオ・ディアス、マリア・イサベル・ロペス、他)
(2009年/仏・フィリピン/ブリランテ・メンドーサ監督/原題「KINATAY」)

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キナタイ−マニラ・アンダーグラウンド@ぴあ映画生活
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
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新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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