映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ワイルド・スピード ICEBREAKE」「無限の住人」「帝一の国」etc.

ヘレナ・ボナム=カーター

未来を花束にして

Suffragette [Blu-ray]
1912年、ロンドン。夫と幼い息子と3人で生活しているモードは、夫とともに洗濯工場で働いていた。低賃金、長時間労働、劣悪な職場環境に耐えながら黙々と仕事をこなすモードだったが、ある日、女性参政権を求める活動家の行動を目撃、さらに友人の代わりに公聴会に参加したことをきっかけに、自分の生き方に疑問を持つようになる。活動のリーダーの演説を聞き、デモにも参加するようになったモードは運動にのめり込んでいくが、彼女の活動を快く思わない夫から家を追い出され息子と引き離されることに。さらに仕事をクビになり、警察にも目をつけられてしまう。それでもモードは、これまでと違う生き方を目指して社会を変える闘いに身を投じていく…。

20世紀初頭の英国で女性参政権を求めて立ち上がった女性たちの生き様を実話をもとに描く「未来を花束にして」。主人公モードはごく平凡な主婦である。友人の代理で急きょ公聴会で話すことになるモードは、権利を声高に訴えるのではなく、7歳から過酷で劣悪な労働に従事してきたことを淡々と話した。自分自身の人生と置かれた環境を自分の言葉で話したことが、彼女の中で変化のきっかけとなるのが、非常にリアルで興味深い。「もっと別の生き方があるのではないのか」という素朴な疑問が、女性参政権獲得という大きなうねりを生む震源となったのだ。警察に目をつけられた彼女たち活動家は酷い拷問を受け、警察のスパイになれと脅される。もちろん挫折や犠牲もあるが、それでも彼女たちは、活動の象徴である薄紫の花を身に着けて戦った。その姿は、何とりりしく、美しいことか。21世紀の現在、女性の指導者が生まれる国もあれば、道半ばの国もある。参政権や職場の待遇など、今、私たちが当たり前のように享受している権利は“たくさんの名もなき花たち”が種をまいてくれたおかげなのだと改めて知った。原題の「サフラジェット」とは、女性の参政権を求める過激な活動家の蔑称として当時のイギリスのマスコミが作り上げた造語だそう。映画には実在の人物も登場するが、歴史上の偉人ではなく、特別な思想も教養も、財産もない、搾取される側の弱い女性を主人公にしたことで、共感する部分が大きくなった。今から100年以上前、女性たちが行動を起こした、階級を超えた結束と運動は、現代も続く、さまざまな差別への勇気ある挑戦なのだ。女性はもちろん男性にも見てほしい映画である。
【65点】
(原題「SUFFRAGETTE」)
(イギリス/サラ・ガヴロン監督/キャリー・マリガン、ヘレナ・ボナム=カーター、メリル・ストリープ、他)
(女性映画度:★★★★☆)
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未来を花束にして|映画情報のぴあ映画生活

天才スピヴェット

天才スピヴェット コレクターズ・エディション 【初回限定生産】アウタースリーブ付 [Blu-ray]
天才少年の家出の旅を通して家族の再生を描く「天才スピヴェット」。まるで飛び出す絵本のような3Dは至福の映像体験。

10歳の天才少年スピヴェットは、牧場を営むカウボーイの父、昆虫学者の母、アイドルを夢見る姉と共に、モンタナで暮らしている。だが、スピヴェットの双子の弟の死後、家族の心はバラバラになっていた。そんな時、スピヴェットのもとに、彼の発明が権威ある賞を受賞したとの知らせが届く。スピヴェットは授賞式に出席するために、たった一人で家を出て、ワシントンDCを目指し、大陸横断の旅に出る…。

ジャン=ピエール・ジュネ監督といえば、徹底的に作り込んだこだわりの映像と、どこか普通じゃない人々の心の痛みをあたたかいまなざしで描く物語が特徴だ。本作もまたしかり。ただ今までの作品と違うのは、ヨーロッパ的テイストから、あえてアメリカ的モチーフへとシフトした点だろう。描かれるのはモンタナの大自然、カウボーイ、大陸横断、ホーボーなど。くすんだ色彩も、大胆な原色へと変化している。それでもジュネ流美意識は変わらない。主人公のスピヴェットは天才少年だが、周囲から理解されないことで悩んでいる少年だ。だがこの物語は、天才少年の悩みがテーマではなく、弟を突然の事故で亡くした悲しみが家出の旅によって少しずつ癒されていく心の再生のドラマなのだ。家族の喪失をどう受け止めていいかわからない幼いスピヴェットが、素直に泣けるまでのプロセスはまさに心の旅である。主人公を演じるカイル・キャトレット君の少しおませな可愛らしさと、彼を支える名優たちのアンサンブルも絶妙。冒頭、飛び出す絵本の映像が登場し、そのあまりの美しさと楽しさに一気にこの映画の虜になった。異世界を覗くような3Dが少年の心の内面をこれほど見事に表現できるとは。技術に溺れることなく、ストーリーテリングのツールとして使いこなすところが、さすがはジュネ監督である。
【85点】
(原題「L'EXTRAVAGANT VOYAGE DU JEUNE ET PRODIGIEUX T.S. SPIVET」)
(仏・カナダ/ジャン=ピエール・ジュネ監督/カイル・キャトレット、ヘレナ・ボナム=カーター、ジュディ・ディヴィス、他)
(箱庭的飛び出す絵本度:★★★★☆)
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天才スピヴェット@ぴあ映画生活

映画レビュー「英国王のスピーチ」

英国王のスピーチ コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]英国王のスピーチ コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]
◆プチレビュー◆
英国王と型破りなスピーチ矯正専門家との友情を描く傑作「英国王のスピーチ」。威厳と繊細さを同時に表現したコリン・ファースが見事。 【90点】

 第二次世界大戦前夜の英国。王家の次男ヨーク公ジョージは、幼い頃から吃音に悩んでいた。夫を心配した妻のエリザベスは、オーストラリア人のスピーチ矯正専門家ライオネルを訪問。ユニークで破天荒なレッスンが始まるが…。

 王室に生まれるプレッシャーなど、我々庶民には実感しようもないが、常に国民の目にさらされ、規範となるべき人間であれと命じられる苦労は想像できる。それだけでも大変なのに、この映画の主人公ジョージ6世の歩んだ人生は、あまりにドラマチックだ。左ききやX脚を無理やり矯正され、兄を贔屓する乳母から虐待されていた幼年期。成長してからも、厳格な父王や奔放な兄の間でどう振舞っていいのか分からない。そんな内気な彼が、兄が王冠を捨てて恋を選んだために、望んでもいない王位につくことになる。吃音で悩む王にとって、スピーチで始まりスピーチで終わる公務は苦痛でしかない。どんな治療でも改善しない夫を心配した妻エリザベスは、あるスピーチ矯正専門家の家を自ら訪れ、助けを求める。すると彼は静かにこう言った。「私なら治せます」。

 その男ライオネルは、大胆にも王をバーティと愛称で呼び、王の固定観念をどんどん打ち砕いていく。コミカルな治療シーンが物語をリズミカルなものにしているが、吃音の原因は心の問題によるものと診断したのが、何より達観だった。伝統や体裁を気にする上流社会にはない、ライオネルの実直さに触れて、王が自己の内面と向き合っていくプロセスは、この映画の大きな見所だ。王もまた、外国人で民間人、正式な言語聴覚士の資格さえないライオネルに全幅の信頼を置く勇気を示し、立場を越えて歩み寄った。自己解放と真の友情こそが、主人公を変えたのである。

 コンプレックスだらけのシャイな国王は、やがて国民に愛される、強く優しいリーダーへと変わることに。その記念すべき第一歩をしるすのが、クライマックスの感動的なラジオ演説だ。ナチスドイツとの開戦を告げるスピーチは、ひとつひとつの言葉の重みが心の奥にまで響いてくる名場面である。ライオネルが指揮者、王が類まれなる演奏者にも見えるそのスピーチは、まるで名匠が初めて世に出すシンフォニーのよう。不器用に、でも力強く、愛と威厳を持って国民に語りかける真摯な言葉は、ベートーベンの交響曲第7番第2楽章の荘厳なメロディーにのって、私たちを感動の頂点へと導いていく。

 俳優たちのアンサンブルが絶妙なのは言うまでもない。生真面目なコリン・ファースと、飄々としたジェフリー・ラッシュの演技合戦は、品格とユーモアが同居する秀逸なものだ。妻エリザベスを演じるヘレナ・ボナム=カーターも、いつものトンガッた雰囲気とは異なり、ぐっとエレガントで魅力的である。

 ジョージ6世は現英国女王エリザベス2世の父に当たる。有名なのは兄王の“王冠を賭けた恋”でも、国民に本当に愛されたのは、英国史上最も内気なジョージ6世その人だ。国王夫妻は、戦中・戦後を通し、疲弊した国民を励ます言葉を発信し続けたという。華麗な恋愛や派手なアクションなど何一つないこの映画こそ、人と人との信頼関係が、最高の形でスクリーンに結実した傑作だ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)感動度:★★★★★

□2010年 イギリス・オーストラリア合作映画 原題「The King's Speech」
□監督:トム・フーパー
□出演:コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーター、他

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英国王のスピーチ@ぴあ映画生活

眺めのいい部屋

眺めのいい部屋 HDニューマスター版 [DVD]眺めのいい部屋 HDニューマスター版 [DVD]
E・M・フォスターの原作を、「日の名残り」「ハワーズ・エンド」の名匠ジェームズ・アイヴォリーが映画化。イギリス人のイタリア、とりわけルネサンスの花開いた都市フィレンツェへのあこがれが強く感じられる作品。

20世紀初頭。イギリスの良家の令嬢ルーシーは、年上の従姉妹シャーロットと一緒にフィレンツェを訪れる。予約した部屋からの眺めにがっかりしていたら、同じ宿に宿泊していた労働者階級のエマソンと息子のジョージ父子がアルノ川が見える美しい眺めの部屋との交換を申し出てくれる。階級意識に影響されない彼らにとまどいながらも、その好意に甘える二人。やがてルーシーは、情熱的なジョージと恋に落ちるのだが…。

映画冒頭から印象的に流れるのは、ジャコモ・プッチーニのオペラ「ジャンニ・スキッキ」の最も有名なアリア「私のお父さん」。ジェームズ・アイヴォリー監督が得意とするノーブルで美しい映像にぴったりフィットする選曲で、映画を強く印象付ける。オペラそのものは、中年男ジャンニ・スキッキが、大富豪の遺産を巡る騒動と、若い男女の恋を見事に解決するさまをコミカルに描いた喜劇で、決して映画のストーリーにあっているわけではない。だが、物語が転がっていくきっかけとなる部屋の眺めに対し「アルノ川が見えないわ」と文句というセリフと、「彼を愛してはいけないというのなら、アルノ川に身を投げて死んでしまいます」と歌う歌詞の内容がリンクしているのが心憎い。

階級意識や封建的思想が残るイギリス上流社会を舞台に、大人の自我に目覚める女性を描いた格調高い恋愛映画の名作だ。

(出演:ヘレナ・ボナム=カーター、ジュリアン・サンズ、ダニエル・デイ・ルイス、マギー・スミス、他)
(1986年/イギリス/ジェームズ・アイヴォリー監督/原題「A ROOM WITH A VIEW」)

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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