映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

ヘレン・ミレン

テンペスト

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文豪シェイクスピアの最後の戯曲を、主人公を女性に変えて大胆に演出したファンタジー活劇。アヴァンギャルドな衣装が見所だ。

ナポリ王アロンゾー、ミラノ大公アントーニオらを乗せた船は突然の大嵐に遭い難破、一行は命からがら絶海の孤島に漂着するが、息子ファーディナンド王子を見失ったアロンゾーは絶望する。その嵐は、島に住むプロスペラが魔術を使って起こしたものだった。彼女は、かつてミラノ大公妃だったが、弟アントーニオによって国を追われ、娘のミランダと島で暮らしていたのだ。彼女は手なずけた妖精エアリアルを使い、自分を裏切った者たちへの絶好の復讐を企てる…。

監督のジュリー・テイモアはオリジナリティとけれん味あふれる演出が持ち味。同じシェークスピアものとしては「タイタス」でも独自の美意識に基づいた演出で冴えを見せた。本作では、魔法という特異な世界を幻想的なCGを多用して描き、新風を吹き込んでいる。何より主人公の性別を女性に変更したのが新しい。名女優ヘレン・ミレンが威厳たっぷりにプロスペラは、娘ミランダへの母性愛にあふれているかと思えば、一方で、妖精エアリアルや奴隷キャリバンを冷酷にこき使うなど、善悪がせめぎあう複雑な人物だ。物語のテーマは、復讐と赦し。だが、原作に忠実にとの思いからだろうか、セリフがあまりに舞台風で情報過多。せっかく新しい解釈と先進的な映像で描く21世紀のシェークスピアなのに、どうにもテンポが悪いのが惜しい。ただ、原作は約400年前に書かれたことを思うと、シェークスピア作品は、いつの時代も、どんな演出も可能にする、豊かな芸術なのだと改めて感心させられる。
【60点】
(原題「THE TEMPEST」)
(アメリカ/ジュリー・テイモア監督/ヘレン・ミレン、トム・コンティ、デヴィッド・ストラザーン、他)
(幻想的度:★★★★☆)



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テンペスト@ぴあ映画生活

RED/レッド

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オヤジパワー炸裂の過激なアクション娯楽作は、その非常識さが笑いを誘う。荒唐無稽な話に濃すぎる豪華キャストで気合十分だ。元CIAの腕利きスパイのフランクは、今は引退し、年金課の担当者サラと電話で会話するのが唯一の楽しみという静かな生活を送っていた。そんな彼がある日何者かに襲撃される。見事に敵を倒したフランクだったが、どうやら、過去に、ある秘密の任務にかかわった者たちがCIAから狙われているらしいという事実を突き止める。自分がかつて所属し人生を捧げてきた組織から狙われたことがフランクの闘争心に火をつけた。彼はかつて苦楽を共にした仲間たちを招集。元MI6の美人スパイや旧ソ連のスパイも加わって、事態はトンデモない方向へ。平凡な日常に退屈し、刺激のある日々を夢見ていたサラをも巻き込んだ彼らは、巨大な陰謀に立ち向かおうとしていた…。

最近、とかくオヤジ映画が元気だが、とにかくこの作品のオヤジ(一人おばさんもいるが)たちは腕利きな上に個性的なので魅力たっぷりだ。RED(RETIRED EXTREMELY DANGEROUS)とは国家がリストアップしている“引退した超危険人物”を意味するコードネーム。アメリカ中をあっという間に移動するスピーディな展開もすごいが、何しろキャラが立ちまくっている。モーガン・フリーマンが老人ホームで暮らす末期ガンのエロじじい役なら、ジョン・マルコビッチは隠れ家に住むパラノイア、優雅なヘレン・ミレンは実は一流の銃の使い手で、マシンガンやバズーカ砲をぶっ放す過激さだ。特にピンクのぶたのぬいぐるみを抱えたマルコビッチがハマリすぎでコワいほど。この名優は、目つきが独特で、焦点があってないのにそのくせ鋭い眼が、ただならぬ雰囲気なのだ。突然の現役復帰で燃え上がるオヤジたち。ハイテク武器はないけれど、彼らには長年培った特殊工作の華麗なノウハウと処世術がある。しかもそこには、スパイならではの意外なロマンスも。過激なアクションの中には、しっかりと笑いの要素や仕事への誇りも盛り込まれていて、娯楽作としてそつがない作りだ。もっとも、CIAの陰謀の中身はありがちなもので“殺しても死なない”彼らの活躍はかなりムチャクチャ。それでも、原作がDCコミックのグラフィックノベルだと聞くと納得してしまう。「若いモンには負けないゾ!」のオヤジ・パワー炸裂の快作だが、このテのジャンルの映画には無縁に思える英国女優ヘレン・ミレンをキャスティングしたことが功を奏して、洗練された雰囲気に仕上がった。過激でひねりの効いたこのスパイ映画、できれば次々に新メンバーを加えながらシリーズ化してほしいものである。
【65点】
(原題「RED」)
(アメリカ/ロベルト・シュヴェンケ監督/ブルース・ウィリス、モーガン・フリーマン、ジョン・マルコヴィッチ、他)
(荒唐無稽度:★★★★☆)

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終着駅 トルストイ最後の旅

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ロシアの文豪トルストイ夫妻の晩年の愛憎を、トルストイの秘書である青年ワレンチンの目を通して語る異色の伝記映画だ。さまざまな確執を経てもなお、強く結ばれるトルストイとソフィヤの深い愛情に感動を覚える。世界中から尊敬される文豪トルストイには長年連れ添った妻ソフィヤがいた。だがトルストイは晩年に、平和と平等、非暴力と道徳を説く“トルストイ主義”を提唱。教義に心酔する一番弟子のチェルトコフから、民衆のために著作権を放棄するように迫られる。激怒した妻ソフィヤは子供たちのために財産を守ろうとし、夫婦の間に大きな亀裂が入る。激しく言い争いながらも、深く愛し合う二人だったが、ついにトルストイはすべての解決を放棄するかのように家出してしまう…。

その一挙手一投足が話題になる大作家トルストイが、80歳を過ぎてから突如家出する。これだけでも十分にスキャンダラスだが、高齢な上に病気がちだった彼は名も無い駅で寝込んでしまい、そのまま多くの取り巻きや記者に囲まれながら息を引き取る。これはかなり異様な臨終だといえる。こうなるに至るトルストイ最晩年に焦点を当てて、世界中が注目していた夫婦喧嘩を“愛”というキーワードで読み解いてみせるのが本作だ。そもそもトルストイという人物は矛盾だらけである。トルストイ主義はなるほど立派だが、性欲を否定しながら彼の子供は13人、世界平和と民衆の幸福、農奴解放を目指しながら、貴族出身の彼は贅沢に暮らし、家庭の平和ひとつ実現できない。財産と著作権放棄の件も、妻と弟子の間で右往左往する。あげくの果てに何もかも放り投げて家出ときた。「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」を生み出したこの文豪、残した文学は偉大だが、決して仰ぎ見る偉人ではなく、煩悩と矛盾だらけ、ずるさも弱さも抱える一人の老人にすぎない。そんな彼にとってソフィヤは似合いの相手だ。なるほどソフィヤは時にヒステリックに騒ぎ夫を困らせるが、二人を結びつける絆は夫婦愛そのもの。それを他人が“裁く”こと事態が大きな間違いではないか。単純な理想主義だけでは人は幸せにはなれないものだ。まして夫婦の間には苦楽を共にした歴史があった。そのことを若いワレンチンが汲み取って人間的に成長するという設定が意義深い。

ヘレン・ミレンとクリストファー・ブラマーという名優二人がこの困った夫婦を格調高く、それでいて少しコミカルに、愛情深く演じていて、素晴らしい。ソフィヤは、音楽家モーツァルトの妻コンツタンツェや哲学者ソクラテスの妻クサンチッペと共に世界三大悪妻と呼ばれているが、3組とも実は「割れ鍋に綴じ蓋」。トルストイとソフィヤは案外似合いの夫婦だったのかもしれない。
【70点】
(原題「THE LAST STATION」)
(ドイツ・ロシア/マイケル・ホフマン監督/クリストファー・プラマー、ヘレン・ミレン、ジェームズ・マカヴォイ、他)
(夫婦愛度:★★★★★)

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映画レビュー「消されたヘッドライン」

消されたヘッドライン [DVD]消されたヘッドライン [DVD]
◆プチレビュー◆
巨大な権力にペンの力で挑むポリティカル・サスペンス。終盤、ひねりすぎるのが惜しい。 【70点】

 ワシントングローブ紙の敏腕記者カルは、黒人少年の射殺事件と、国会議員コリンズの部下で愛人の女性が突然死した事件に、奇妙な共通点を嗅ぎ取り調べ始める。やがてそこに軍事企業ポイント・コープ社の影が見え始めるが…。

 もともとは英国BBCのTVシリーズで、リメイクとして設定を練り直し、俊英脚本家たちが一本の映画にまとめたのがこの「消されたヘッドライン」である。ジャーナリズムと国家権力の攻防というと、名作「大統領の陰謀」を思い浮かべるが、本作の内容はメディアの危うさと、戦争という“産業”の実態を浮き彫りにする、別種の緊張感に満ちたものだ。

 物語は、カルとコリンズの関係性を軸に描かれる。二人は浅からぬ仲で親友同士だが、カルは、時には違法スレスレの取材も辞さない男だ。奇麗事だけではヘッドライン(新聞の大見出し)を飾る記事を書くジャーナリストにはなれない。コリンズに友人として接する反面、情報源として利用もする。そんなブンヤ魂の権化のような男を、でっぷりと太ったラッセル・クロウが熱っぽく演じて上手い。新米だが優秀なWEB版記者デラや豪腕女性編集長キャメロンなど、それぞれの熱意が物語を牽引し、二転三転しながら真実に近づいていく。

 この“二転三転”が本作の急所なのだ。議員のスキャンダルを発端に、警察との駆引き、政治圧力、謎の殺し屋と、物語は危険なミステリーへと転がっていく。やがて事件は、軍事をアウトソーシングするビジネス提携、つまり戦争をめぐる企業と政界の癒着へとたどり着く。国内の安全保障まで商売道具にする謀略を糾弾するコリンズは、一見正義の側だが、コトはそう単純ではない。物語は、終盤に次々に新事実を用意し国家から個人へと話が収縮してしまった。

 だが、ケヴィン・マクドナルド監督は、イディ・アミンもクラウス・バルビーも、人となりを掘り下げることで彼らを偶像化した社会そのものを炙り出してきた。それゆえ本作でも視点を国家権力へと向けず、一個人の苦悩として描いたのだろう。巨大な陰謀の激震の渦中で真実を探る武器もまた、カルのような古参の記者の誇りとひらめきという個の力でしかない。ジャーナリズムの面目は幸いにも保てたが非常にきわどい勝負だったのだ。次に勝てる保証はない。だからこそ、カルとデラの絆が、安易な恋愛関係ではなく師弟関係になったことは建設的に思える。近年の新聞ばなれにメディアも旧態では生き残れない。真実の報道のためには内外の圧力と戦わねばならない時代なのだ。

 報道の正義を正面から描くことができた70年代とは違う混迷が、現代の米国には漂っている。サスペンスとしてひねりすぎて、社会派映画の比重が低くなったのが惜しいが、それでもこの映画のメッセージ性は損なわれていない。時代の変化が政治の腐敗を生んだなら、ジャーナリズムとて危うい存在であることに変わりはない。発行部数増加のために報道が魂を売る日が来ないと誰が言いきれよう。エンドロールに映る輪転機は本物のワシントン・ポストの機械だという。この映画の裏側のテーマはジャーナリズムの衰退への警鐘だということに気付かねばならない。朝刊の一面に刷られるのが真実である今のうちに。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)スリリング度:★★★★☆

□2009年 アメリカ映画 原題「STATE OF PLAY」
□監督:ケヴィン・マクドナルド
□出演:ラッセル・クロウ、ベン・アフレック、ヘレン・ミレン、他

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映画レビュー「クィーン」

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◆プチレビュー◆
ダイアナ元皇太子妃の事故死がもたらす英国王室の混乱ぶりを、現役女王を軸に描く異色作。見る人によって全く違う見方が可能な秀作だ。 【80点】

1997年8月、パリでダイアナ元皇太子妃が事故死した。すでに離婚していたこともあり、英王室はいっさいのコメントを避けたが、今も国民に大人気のプリンセスに対し、冷たい王室との非難を受ける。国民と女王を和解させようと奮闘する若きブレア新首相。女王はこの事態をどう受け止め、対処するのか…。

ダイアナの死。この素材なら普通は“悲劇のプリンセス・ダイアナ”の路線でいくところだ。だが、この監督は生存者たち、とりわけ現役の英国女王の視点で描いた。物語はあくまでフィクション。しかし観客はまるで実話のように感じるだろう。映画を見る前は、現役の女王を非難するに等しい作品をよく作れたものだと感心したが、実際に見てみると、女王の苦悩や、時には欠点にも映る高貴さが、愛すべき描写に換算されている。最終的には誰もが英国女王その人に感情移入してしまうという、非常に巧妙な作りの映画なのだと分かった。

開かれた王室のイメージを体現し積極的に活動した若きダイアナは、王室にとってムチャばかりする困った嫁でもあった。露骨にダイアナを嫌う皇太后やフィリップ殿下のセリフが、英国らしい皮肉とユーモアにあふれ、笑わせてくれる。自分のためにセッティングした葬儀のセレモニーをダイアナ用に先に使われ、ふくれる皇太后が傑作だが、この人ももはや故人だという皮肉。仮に、日本で皇室を舞台に映画を作ったとして、こんな鋭い笑いのセンスがあるだろうか?!やっぱり日本では絶対に制作不可能な作品だ。「よくぞ作った!」とほめたい気持ちになる。

劇中、最も印象深いのは、狩りに出て一人で迎えを待つ女王が、大鹿に遭遇する場面。「なんて美しい」と思わずつぶやき、鹿が逃げのびることを望む愛に満ちたまなざしが心に残る。野生の鹿に、自分にはない自由を謳歌したダイアナを重ねて見ているが、慈しみと同時に、しょせん動物程度にしか思っていなかったようにも取れる秀逸なシーンだ。ラストに女王が首相に言うセリフも上手い。この映画を作ったフリアーズ監督、さぞ制作時にさまざまな圧力で苦労したと思うが、映画のところどころに観客に自由な選択を与える描写を織り交ぜ、実に抜け目がない。この映画は、客観的に見ると、ダイアナ擁護でも女王賛美でもないのだ。誰も知らない、でも本当は知りたい王室の本音を知るという野次馬的な興味を、格調高いベールで包みつつ、英国そのものに観客の視線を集めることに成功した賢い映画なのである。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)よくぞ作りました!度:★★★★☆

□2006年 英・仏・伊合作映画 原題「The Queen」
□監督:スティーヴン・フリアーズ
□出演:ヘレン・ミレン、マイケル・シーン、ジェイムズ・クロムウェル、他

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カレンダー・ガールズ

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◆プチレビュー◆
「フル・モンティ」といい、“脱ぐ”ことを上手い物語にする英国映画。名女優ヘレン・ミレンは、実は脱ぎっぷりのいいお人で、「コックと泥棒、その妻と愛人」の時もすごいのだ。

英国のヨークシャーに住むクリスとアニーは婦人会に参加する大親友。平和だが退屈な毎日に二人ともうんざりしていた。そんな時、アニーの最愛の夫が白血病で帰らぬ人に。亡き夫のため病院への寄付を発案、資金集めのために思いついたのが婦人会のヌード・カレンダーを作ることだった。周囲の反対と家族のとまどいの中、メンバーたちが企画に参加しはじめる…。

ピッチピチの若い女の子ならいざ知らず、50〜60代のおば様たちが集団で脱ぐ?!これってある意味ホラーかもしれない…などと思っていたが、どっこい、フタを開けてみるとなんともチャーミングで楽しい映画だ。しかも実話だと言うではないか。世間体を誰よりも気にする厳格で保守的なイメージの英国婦人。そんな彼女たちが挑戦した“婦人会ヌード・カレンダー”は、全世界で実に30万部も売れたそうだ。

ジャム作り、ガーデニング、ピアノ演奏など、日常の何気なく当たり前の風景が、服を脱ぐ行為によって特別な瞬間となって記録されていく。最初はおずおずとしていた彼女たちがみるみる輝いていく様子は、可笑しいやら頼もしいやら。ヌードといっても小道具や構図を工夫して微妙な部分は上手く隠されている。おくゆかしくて、なかなかセクシーかも。教会のオルガン奏者コーラの言う一言が最高。「私はもう55歳。今脱がなくちゃいつ脱ぐの?!」。拍手してしまいそうだった。

大騒ぎになりながらもカレンダー作りは大成功。だがこの話には続きがある。マスコミから注目された彼女たちには“成功の甘き香り”が待っていた。ここで初めて気付く友情や家族の大切さを映画は丁寧に描いている。後日談を語ることで、物語は味わい深いヒューマン・ドラマとなった。ささやかだけど地に足がついた生活は、冒険の後でこそしみじみとありがたいものなのだ。彼女たちはもう、毎日を退屈だなんて思わないだろう。だって“やる時はやる!”を実行してみせたんだから。

ヌードというキワドイ素材を、明るく、かつ品良くまとめたこの映画。誰でもいくつになっても、人生の主役になれるのだ。女性にとって確実にやってくる“老い”とは実にやっかいなもの。けれど、恐れる必要などない。自分をさらけだすことで自由になった彼女たちが本当に脱いだのは服ではなく、心の殻だったのだ。

□2003年 イギリス映画  原題「CALENDAR GIRLS」
□監督:ナイジェル・コール
□出演:ヘレン・ミレン、ジュリー・ウォルターズ、シアラン・ハインズ、他

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ゴスフォード・パーク

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◆プチレビュー◆
ジャン・ルノワールの名作「ゲームの規則」を彷彿とさせる内容。観る際は、登場人物の名前より、その性格を把握すると理解しやすい。豪華な家具調度品も必見。

1932年。ある富豪の貴族がゴスフォード・パークと呼ばれるカントリーハウスでパーティを催す。集まった親戚一族やゲスト、彼らに付き添う大勢の使用人。人々が入り乱れる中で、屋敷の主が殺される事件が発生。集まったものは皆、彼に良からぬ思いを抱いていたが、複雑な人間関係は思いもよらない事実を浮き彫りにしていく…。

さすがは群像劇の名手アルトマンだ。両手でも足りない登場人物にイギリス映画界の名優たちを惜しげもなく配し、見事にさばいていく。人間模様も、あれこれ説明などせず、何気ないひと言と、わずかな表情や仕草でサラリと描く。一人一人の人物の思惑を過不足なく描き、会話に真実を隠した脚本はオスカー受賞も納得だ。

英国貴族を描く作品は多いが、本作では貴族よりも使用人の目線で描写するのがユニークなところ。とりわけ様々な約束事のある彼らの生活や仕事ぶりが興味深い。新米のメイドと、英国に不慣れなアメリカ人を登場させて、主人や先輩メイドが彼らに物事を教える形で、観客にイギリス上流階級の暮らしを説明する展開が上手い。

貴族を階上に、使用人を階下に分け、彼らには接点はない…はずなのだが、実は2つの世界は巧妙に交わっている。ハリウッドのプロデューサー付の使用人役ライアン・フィリップが、英国人揃いの俳優の中で、面白い味を出す。彼が上と下を自由に行き来する役なのも巧みな演出のひとつだ。

物語の後半、女中頭のヘレン・ミレンが、良い使用人の資質を述べる場面がある。彼女はそれを洞察力と言い切った。主人が何を望んでいるかを推測し、これから起こる出来事を予測して事前に対処できる能力を持つ人間が優秀な使用人なのだと。誰が、いつ、どこで、何を洞察するか。登場人物の何気ない会話や小道具も見逃さないで。

英国の階級社会の人間のこっけいさや哀れさをシニカルに描き、彼らに押さえつけられた人々の不幸の実態も浮き彫りにする。殺人事件の犯人探しは物語のメインではない。一握りの人物と観客だけが、犯人とその動機を知り、招待客は皆、何事もなかったかのように屋敷をあとにするのがその証拠だ。

アルトマン監督はかなりの高齢にもかかわらずその力は衰えることを知らない。しばらくなりをひそめては、毒のある新作をもって登場。そのたびにアルトマンの復活と騒がれるが、いったい何度復活すれば気が済むのか、この人は。ハリウッド嫌いを公言していても、この才能には誰もが感服するに違いない。(ロバート・アルトマン監督、2006年11月に永眠。)

□2001年 アメリカ映画 原題「Gosford Park」
□監督:ロバート・アルトマン
□出演:マギー・スミス、エミリー・ワトソン、マイケル・ガンボン、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
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新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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