映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」「ユダヤ人を救った動物園」etc.

ペネロペ・クルス

アイム・ソー・エキサイテッド!

アイム・ソー・エキサイテッド! Blu-ray
着陸不能の飛行機の中で繰り広げられる艶笑コメディ「アイム・ソー・エキサイテッド!」。アルモドバルが描くとコメディもきわめて濃厚。

マドリードからメキシコシティへと向けて飛び立った飛行機は、機体トラブルのため着陸不能になり、旋回し続けていた。ビジネスクラスを担当するオネエ系三人組の客室乗務員は、騒ぎ始めた乗客をなだめるために、歌や踊りを披露し、さらには怪しげなオリジナルカクテルをふるまったりと、サービスに余念がない。一方、不吉な予言を口走るアラフォー女性や、国家権力者を顧客に持つSM女王、横領し亡命を狙う銀行頭取に、女性関係で悩む元俳優、謎の警備員に泥酔状態の新婚カップルと、乗客もまたクセモノばかり。彼らは死の恐怖から酩酊し、それぞれの秘密を暴露し始める…。

ペドロ・アルモドバルは、「オール・アバウト・マイ・マザー」や「トーク・トゥ・ハー」など、複雑で深い人間ドラマを描いて世界中の映画祭を席巻するスペインの巨匠だ。だが、彼の初期作品は、実は「バチ当り修道院の最期」のようなドタバタ劇が多い。本作はそんな初期作品を彷彿とさせる破天荒なエロティック・コメディだ。死が目前の状態だというのに、ゲイの客室乗務員やバイセクシャルのパイロットをはじめ、乗客たちは極限状態で性の欲求を爆発させるのだから、ラテン系の人種はやっぱり濃い。偶然と必然がからみあい、混乱を極めていく機内だが、ハチャメチャな中にもそれぞれの意外なつながりが暴露されていく。アルモドバルが作ればスクリューボール・コメディといえども綿密な物語になるのは必至なのだ。行く当てもなく旋回する飛行機や、地に足がつかない空の上のドタバタに、経済危機にあえぐスペインの現状を投影させていると見るのは深読みしずぎだろうか。不正や汚職にまみれた上流階級は、恋愛やドラッグで現実逃避し、まともな職さえない若者たちのことなど二の次、三の次。アルモドバルの毒々しい笑いが、だんだん強烈な風刺劇に思えてくる。…まあ、難しいことは脇に置いて、とりあえず色鮮やかな大騒ぎの顛末を楽しんでほしい。スペインが誇る世界的人気俳優のペネロベ・クルスとアントニオ・バンデラスが映画冒頭に贅沢にカメオ出演。彼らの凡ミスがすべてのトラブルのスタートの合図になっているのが、憎い演出だった。
【65点】
(原題「Los amantes pasajeros/I'M SO EXCITED!」)
(スペイン/ペドロ・アルモドバル監督/カルロス・アレセス、ハヴィエル・カマラ、セシリア・ロス、他)
(エロティック度:★★★★☆)
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アイム・ソー・エキサイテッド!@ぴあ映画生活

ある愛へと続く旅

ある愛へと続く旅 [DVD]
ボスニア・ヘルツェゴビナの民族紛争を背景にした壮大な愛の旅路を描く「ある愛へと続く旅」。終盤に明かされる衝撃の事実に胸が締め付けられる。

ローマで暮らすジェンマは、サラエボに住む旧友ゴイコからの電話で青春時代をすごしたボスニアの地を、16歳になる息子ピエトロを連れて訪れる。ジェンマの胸に、1980年代にサラエボに留学中に運命的に出会った米国人のカメラマンで、最愛の人ディエゴとの思い出がよぎる。ディエゴとジェンマは結婚するが、子供に恵まれず、代理母を探すが、同時期に内戦が勃発。ジェンマは生まれたばかりの息子を連れてサラエボを脱出するがディエゴはパスポートがなく残って命を落としたのだ。当時の記憶をたどるジェンマは、ゴイコに連れられて訪れた島で、衝撃の事実を知ることになる…。

イタリア映画界を代表する俳優セルジオ・カステリットの3作目の監督作で、前作「赤いアモーレ」同様、監督の妻であるマルガレート・マッツァンティーニの小説が原作だ。同じく前作でタッグを組んだペネロペ・クルスを主演に迎えている。本作は、内戦による悲劇と暴力の悲しい歴史を語るが、それ以上に壮大なラブ・ストーリーとして胸に迫る物語だ。劇中には多くの対比が存在する。ジェンマとディエゴは深く愛し合うが、子供に恵まれない。彼らが渇望するひとつの命と、内戦勃発によって奪われる数えきれない命。サラエボの町もまた、美しく希望にあふれた姿と、無残な砲撃にさらされ血で血を洗うリアルな戦闘の場としての姿を見せる。ディエゴは陽気で情熱的な青年だが、内戦勃発後、代理母アスカと出会ってから人間性が激変してしまう。すべての対比が鮮烈で、深い意味を持っているのだ。ストーリーは、青春の日々をたどる現在のジェンマが、ディエゴが激変しピエトロが誕生した事実に隠された“真実”を知るというミステリー仕立てである。最後の最後にある人物から語られるその過去とバラの花のタトゥーの意味は、胸がえぐられるような衝撃を覚えた。思わず目をそむけたくなるシーンもあるが、暴力の痕跡を消すのは愛の力しかないとの強いメッセージを感じる。大学生時代から老けメイクを施した母親まで演じきったペネロペ・クルスの熱演が見事。国際的なスターも出演するが、日本では無名に近いボスニア人俳優ハスコビッチやトルコ人女優アクソイもまた素晴らしい。
【70点】
(原題「VENUTO AL MONDO/TWICE BORN」)
(イタリア・スペイン/セルジオ・カステリット監督/ペネロペ・クルス、エミール・ハーシュ、アドナン・ハスコヴィッチ、他)
(衝撃度:★★★★☆)
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ある愛へと続く旅@ぴあ映画生活

ローマでアモーレ

ローマでアモーレ [Blu-ray]
4つのエピソードで綴るアレン流艶笑コメディ「ローマでアモーレ」。イタリア映画へのオマージュとラテンのノリにあふれた軽妙な1本だ。

娘が突然旅先で結婚を決めたため、アメリカからローマにやってきた元オペラ演出家は、葬儀屋の美声にほれ込んで、さっそくオペラを演出する。ある日突然パパラッチに追われるハメになった平凡なサラリーマンがいる一方で、田舎から出てきた新婚カップルは、成り行きでそれぞれ別の相手と恋に落ちる。恋人の親友で小悪魔的女優に惹かれる建築家の卵には、脇でベテラン建築家がツッコミを入れる。陽光きらめく古都ローマを舞台に、4つのエピソードが同時進行していく。

1935年生まれのウディ・アレンは、毎年1本の新作を発表する律儀な巨匠だ。近年はヨーロッパの“首都物語”がお気に入りのようで、今回は観光名所とオペラに彩られたイタリア・ローマが舞台である。互いに関連性のない4つのエピソードが同時進行するスタイルは、ローマの街を気ままにスケッチするかのよう。だがそのユーモラスな4つの物語、単純なハッピーエンドとは限らない。かといって暗い結末でもないところが、皮肉屋で才人のアレンらしいところだ。物語は、筋金入りの映画狂であるアレンらしく、随所にイタリア映画へのオマージュを感じさせる。パパラッチの描写は「甘い生活」を彷彿とさせるし、新婚カップルの恋愛騒動はピエトロ・ジェルミのコメディを思わせる。幻のような建築家が脇から意見を述べたり、舞台でシャワーを浴びながらオペラを歌ったり。珍妙な演出も登場し、笑いを誘う。実際この4つのエピソードは、どれもクセがあって、話がどう転ぶか先読みできない面白さがあるのだ。例によってオールスターで賑やかな作品に仕上げているが、中でもセクシーでノリがいい美人のコールガールを演じるペネロペ・クルスが絶品。たとえそれが不道徳であっても、本能に従って生きることが人生を豊かにし人間を成長させるという、楽天主義の象徴が彼女なのだ。演出は確信犯的にユルく、良くも悪くもワンパターン。それでも複雑で味わい深い人間模様を軽妙に描くタッチと、人の生活が息づく街を魅力的にみせる技は、冴えている。型が決まった「寅さん映画」にも似た、愛すべきアレン流マンネリズムと言えようか。
【65点】
(原題「TO ROME WITH LOVE」)
(米・伊・スペイン/ウディ・アレン監督/ウディ・アレン ロベルト・ベニーニ ペネロペ・クルス、他)
(軽妙度:★★★★☆)
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ローマでアモーレ@ぴあ映画生活

映画と恋とウディ・アレン

映画と恋とウディ・アレン 完全版 [DVD]映画と恋とウディ・アレン 完全版 [DVD] [DVD]
映画監督ウディ・アレンの人生と創作過程を追ったドキュメンタリー「映画と恋とウディ・アレン」。インタビューに登場するスターたちが何とも豪華。

映画監督、俳優、脚本家、短編作家、コメディアン、ミュージシャンとして活躍するウディ・アレン。ほぼ1年の1本の驚異的なペースで映画を作り続ける彼の、生い立ち、幼少期、青年時代、そして監督デビューを果たしてからの軌跡を、数々の名作映像や撮影エピソードでたどっていく。インタビューに答えるのは、ナオミ・ワッツやダイアン・ウィースト、マーティン・スコセッシら豪華な面々だ。アレン自身の言葉も交えて、才人ウディ・アレンの素顔に迫っていく。

“生ける伝説”ウディ・アレンが公認したドキュメンタリーだ。マスコミ嫌い、秘密主義の彼が、素顔をさらし、私的な場所やグッズを公開するというから、それだけでも興味深い。本作の監督であるロバート・B・ウィードは、アレンの撮影現場やプライベートに1年半もの間密着したという。“ファンなら無条件にバイブルに、ファン歴が浅いビギナーなら興味あふれる履歴書に”とのキャッチの通り、NY・ブルックリンのユダヤ系家庭で生まれ育ったウディ・アレンの映画人生を、彼の映画や、実母のコメント、スタンダップ・コメディアンとして活躍していた貴重な映像などをふんだんに使って、分かりやすく解説している。アレンには、彼の作品なら無条件で見るというほどの熱狂的なファンが多い。一方で、マシンガントークのように膨大なセリフへの拒否反応や、彼自身が演じてきた泥沼のスキャンダルなど、マイナス要素もまた多いのだ。それでも彼の作品には、彼にしか成しえない個性と作家性があってどうしても惹きつけられる。膨大な量の映画を見ているシネフィルとしての自負や、映画のアイデアをマメにメモするなど、たゆまぬ努力を惜しまない彼らしい頑固さで、1本筋が通っていることが見てとれる。スカーレット・ヨハンソン、ペネロペ・クルスなど、アレン作品に出演したことで輝いたスターたちは彼への賛辞を惜しまないが、興味深いのは、アレンと長い間公私ともにパートナー関係だったダイアン・キートンの言葉だ。「ひと目で彼を大好きになった」と、当時の熱い恋心を隠そうともしない。女性を魅力的に撮ることで定評があるアレンだが、このドキュメンタリーを見ていると、アレンの作品が愛されるのは、彼自身が女性に深く愛されてきたからなのだと納得する。
【60点】
(原題「WOODY ALLEN: A DOCUMENTARY」)
(アメリカ/ロバート・B・ウィード監督/ウディ・アレン、ペネロペ・クルス、スカーレット・ヨハンソン、他)
(映像資料度:★★★★☆)
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映画と恋とウディ・アレン@ぴあ映画生活

パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉

パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉 ブルーレイ(3枚組/デジタルコピー & e-move付き) [Blu-ray]パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉 ブルーレイ(3枚組/デジタルコピー & e-move付き) [Blu-ray]
4年ぶりのパイレーツの新作に素直に心が躍る。ペネロペ・クルスというゴージャスな美女も参入。だが海賊らしさはほとんど感じられない。

自由をこよなく愛する海賊ジャック・スパロウは、元カノの女海賊アンジェリカと再会する。しかし彼女は、永遠の命を得るという伝説の泉の場所を知るためにジャックに近づいたのだ。そこに、史上最強の海賊“黒ひげ”や、英国海軍に寝返ったバルボッサがからみ、泉をめぐる激しい争奪戦が展開する…。

監督が「シカゴ」のロブ・マーシャルに交代したのは、イベント的要素が強いこのシリーズに、大人の雰囲気と音楽的要素を加えようという試みだろうが、マーシャル監督、荒唐無稽のアクションはあまり得意じゃなさそうだ。物語は永遠の命を巡る、ジャック、アンジェリカ、黒ひげ、バルボッサ、スペイン軍の五つ巴の戦い。それぞれの思惑が異なるところは、誰が敵で誰が味方か区別がつかず面白い。聖杯や人魚の涙をキーアイテムにして泉を探すが、求めているのは決して不死だけではないのだ。だが、このアトラクション・ムービーの醍醐味は、海の上で暴れまわる海賊の活躍にあるというのに、今回は、その大半が陸上での“泉探し”。移動ばかりでアクションシーンも中途半端だ。おかげで3Dの効果もさっぱりという有様である。人魚が登場するシークエンスはさすがに魅せたが、これでは、インディ・ジョーンズやナショナル・トレジャーと変わらない。海賊らしさがほとんどないのは、何とも寂しい。

そんな中、嬉しいのは、ある目的を持って英国将校になったバルボッサとジャックとの息のあったコンビぶりだ。2人のとぼけたかけあいに、シリーズを見守ってきたファンは、海と自由を愛してやまない海賊魂を見るだろう。例によって、長いエンドロールの後にちょっとしたワンシーンがある。物語は完結しているが、もしや続きがあるかも…と期待してしまいそうだ。
【65点】
(原題「PIRATES OF THE CARIBBEAN:ON STRANGER TIDES」)
(アメリカ/ロブ・マーシャル監督/ジョニー・デップ、ジェフリー・ラッシュ、ペネロペ・クルス、他)
(アクション度:★★★☆☆)
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パイレーツ・オブ・カリビアン/生命(いのち)の泉@ぴあ映画生活

映画レビュー「抱擁のかけら」

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◆プチレビュー◆
視力を失くした男がたどる愛の誕生、崩壊、再生の道。アルモドバルの物語はいつも原色で濃厚だ。 【70点】

 盲目の脚本家ハリー・ケインは、実業家エルネストが死亡したことを知る。直後にエルネストの息子がハリーを訪れ、ある脚本を依頼。それをきっかけに彼は、封印していた、深く愛した女性レナの思い出と向き合うことになるが…。

 ハリー・ケインは、運命の女性レナを亡くしてから人生を失ってしまった男だ。かつて本名のマテオ・ブランコを名乗り新進気鋭の映画監督だった彼は、女優志願のレナと深く愛し合うが、レナには、権力のあるパトロンのエルネストがいた。貧しさゆえにエルネストのものになったレナはマテオとの本当の愛にめざめてしまう。レナという女性は、パトロンの富を得て、女優の夢を追い、真実の愛を渇望する、欲望に忠実な激しい女性なのだ。だが、二人の仲はエルネストに知れ、恋人たちは逃避行の果てに激しい事故に遭う。それは二人の周囲でうごめいた裏切りと復讐が生んだ悲劇だった。バラバラにされた大量の写真が、恋人たちの叫びのように脳裏に焼きつく。

 映画は、ハリーが視力を失った理由と、レナとの愛の裏側にあった真実をミステリー仕立てで語っていく。ハリー(2008年の現在)と、マテオ(1994年の過去)の2つの物語が交錯する複雑な語り口だ。さらに、1994年の過去には、劇中劇として撮影されている映画があり、レナとマテオを監視するためのビデオカメラも回っている。真実と虚構、愛と憎しみは、磁石のプラスとマイナスのように双極性の強い磁場を発生させている。本作の個性は、映画という虚構の中にさらに真偽を仕込む複眼の視点。加えて言えば、同性愛を公言するアルモドバル特有の、同性と異性の二つの愛のバランスも。多重多層的な構成は、観客を困惑させると同時に、めくるめく陶酔へと誘う。

 二重性が最大限に発揮されるのは、劇中劇のコメディ映画「謎の鞄と女たち」の顛末である。エルネストの復讐心によって、映画はNG場面だけをつないだ無残なものになった。映画へのこの暴力が悲劇の引き金になるが、14年後に図らずもレナとの愛に対峙したハリーは、この映画のフィルムを再編集しベストショットだけで蘇らせる。レナの命が戻ることはないが、この作品が完成すれば、劇中のレナは永遠に微笑み続けるというわけだ。ひとつのフィルムで二つの作品を生みだす不思議と共に、映画という架空の世界で、幸福を再構築するというプロットは、映画愛の極みではないか。

 赤を基調とした濃厚な色彩の中、アルモドバルのミューズのペネロペ・クルスがひときわ輝いてみえる本作。アルモドバルの作品には、人はどんな悲しみからも立ち直るとのメッセージが込められていることが多いのだが、同時にこの人はその力を映画が与えてくれると信じているのではなかろうか。その証拠に、本作には映画への目配せが散りばめられている。ハリー・ケインという名前は、不遇の天才オーソン・ウェルズに由来するものだ。ハリーは「第三の男」でウェルズが演じたハリー・ライムから、ケインはウェルズが監督・主演した「市民ケーン」から取ったのだろう。溢れる才能を持ちながら呪われた映画人生を歩んだオーソン・ウェルズに重ねられたマテオの人生は、レナとの愛の思い出のかけらをつなぎあわせることで、新しい生を得た。この映画のラストは、融和とも皮肉ともとれる、これまた二重性を持つ意味深なもの。だが、私には、痛手を負っても必ず希望はあると言っているように思えるのだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)濃密度:★★★★★

□2009年 スペイン映画 原題「LOS ABRAZOS ROTOS/Broken Embraces」
□監督:ペドロ・アルモドバル
□出演:ペネロペ・クルス、ルイス・オマール、ブランカ・ポルティージョ、他

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映画レビュー「それでも恋するバルセロナ」

それでも恋するバルセロナ [DVD]それでも恋するバルセロナ [DVD]
◆プチレビュー◆
人生は貪欲に楽しむべし。バルセロナの街の魅力を堪能できるアレン流のラブ・コメディーだ。 【65点】

 夏のバカンスでバルセロナを訪れた親友同士のヴィッキーとクリスティーナは、セクシーな画家フアン・アントニオと知り合う。積極的なクリスティーナと慎重派のヴィッキーは共に彼に惹かれていくが…。

 いきなりサッカーの話で恐縮だが、08−09シーズンの欧州チャンピオンズ・リーグは、FCバルセロナが制した。勝利至上主義のサッカー界で、このチームが頂点に立ったのは、誰もが魅惑的なフットボールを渇望した帰結ではなかろうか。バルサのファンはたとえ勝ってもつまらない試合は許さない。美しく楽しいサッカー。それがバルセロナの魂だ。前置きが長くなったが、1−0で勝つのがお行儀のよい恋愛だとすると、アレンが描くこの艶笑話は、4−4で引き分けたが、観客も選手も最高に楽しんだ試合によく似ている。

 さて本題の映画だが、舞台は官能の香り漂う夏のバルセロナ。異邦人には、情熱的で少し危険な街だ。そんな場所で繰り広げられるのは、男一人に女二人の三角関係、いや、四角関係。いやいや、正確に言えば3.5角関係の大騒ぎである。男優冥利につきる役を演じるのは、ハビエル・バルデムだ。このデカくて濃い顔のモテ男を奪いあうのはいったいどんな女性たちだろう。

 婚約中のヴィッキーは堅実型。彼女を基準に物語を眺めると、恋愛観の振り幅がよく分かる。出会ったばかりのフアン・アントニオの「旅行に行こう。そして3人でワインを飲んでセックスしよう」の言葉に憤慨しながらも心が揺れる。平穏な人生こそ望みだが、ちょっぴり“罪深さ”に憧れるその気持ち、多くの女性が頷くはずだ。一方、クリスティーナは前述のフアン・アントニオの提案に大喜び。奔放より尻軽という言葉が思い浮かぶが、なぜだか憎めない。親友同士の危険な三角関係になりかけるが、自由なクリスティーナは彼とさっさと同棲してしまい、一応の決着を見たかに思えた。だがそこに、もう一人の女が登場し、別の三角形が出現する。話が俄然面白くなるのはここからだ。

 その女とはフアン・アントニオの元妻で、激情型の天才画家マリア・エレーナだ。美しくエロティックで、激しくて優しい。まるで竜巻のような彼女の参戦で、修羅場になるかと思いきや、なぜだか落ち着いてしまうから、まったく恋とは異なものだ。3人だとうまくいく。別れた夫婦が愛し合う。女同士でも惹かれあう。いったいこの恋、どうなるの?!それは見てのお楽しみだ。ペネロペ・クルスが、スペイン語でまくしたて、気性が荒い美女をコケティッシュに演じて抜群に魅力的。世界中の女優がアレン作品に出たがるのは、この自意識過剰でインテリの監督が、女優を輝かせる術を熟知しているからに違いない。

 物事の本質を見極めるためには、奇数でなくては。多数決だって偶数ではラチが明かない。このセオリーを恋愛に応用してしまうから洒脱だ。私生活でも不埒な恋愛騒動を演じてきたアレンには、愛する女を一人に決めるなんて所詮無理な相談だろう。だから彼の物語はいつも“地球は女で回ってる”。「僕らは生きている。ステキじゃないか」。「成就しない愛だけがロマンチック」。劇中には印象的なセリフが満載だ。NYからロンドン、そしてバルセロナへ。おしゃべりしながら歩きたくなる美しい街がある限り、アレン節は健在である。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)名セリフ度:★★★★★

□2008年 アメリカ映画 原題「Vicky Cristina Barcelona」
□監督:ウディ・アレン
□出演:スカーレット・ヨハンソン、ペネロペ・クルス、ハビエル・バルデム、他

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エレジー

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ペネロペ・クルスの圧倒的な美しさが物語を支え、全ての役者の深い演技が作品の次元を高みに引き上げる。女性に肉体的な愛しか求めない初老の大学教授デヴィッドが、30歳も年下の美貌の女性コンスエラとの恋に溺れていく。真摯な関係を求める女とそれを拒む男の関係は、別の形で遭遇する死によって大きく変わることに。最初は、デヴィッドの価値観に全く共感できないのだが、それが愛する女性を失う怖さゆえの不実だと理解できれば、次第に引き込まれていくだろう。作品のテーマは肉体そのもの。美しいそれを愛し、老いて魅力を失うそれをも慈しむ。コイシェ監督の感性はシビアで繊細。見る人によって違う未来を感じさせるラストの余韻が秀逸だ。
【70点】
(原題「Elegy」)
(アメリカ/イサベル・コイシェ監督/ペネロペ・クルス、ベン・キングズレー、パトリシア・クラークソン、他)
(実は純愛度:★★★★☆)

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恋愛上手になるために

恋愛上手になるために [DVD]恋愛上手になるために [DVD]
美女二人の間で揺れる異色恋愛映画だが、中身は幼稚な男の妄想で失笑する。ゲリーは仕事や恋人ドーラとの関係に未来を見出せず、無気力状態。そんな彼は、夢の中に登場する美女アンナが忘れられず、常に夢を見る方法を習得しようとする。夢の女が現実に現われ理想と違うと露骨に失望するかと思えば、恋人が別の男と寄り添っていれば嫉妬する。大人になれない中年男のジタバタがリアルだが、倦怠期の男女のもがきと見ると共感できる部分も。味があるのは、夢と人生の指南役ダニー・デビート。理想の美女ペネロペと、生活臭たっぷりのグウィネスの対比が効いていた。
【45点】
(原題「THE GOOD NIGHT」)
(アメリカ/ジェイク・パルトロウ監督/マーティン・フリーマン、ペネロペ・クルス、グウィネス・パルトロウ、他)
(セラピー効果度:★★★☆☆)

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映画レビュー「ボルベール<帰郷>」

ボルベール<帰郷> コレクターズ・エディション
◆プチレビュー◆
殺人や幽霊などがさらりと登場するが、主題は女が生きるということ。笑いと涙、驚きの秘密とは?ペネロペが最も輝くのは、やはりスペイン映画だ。 【85点】

ライムンダは失業中の夫の代わりに働く気丈な女性。ある日、義理の娘パウラに乱暴しようとした夫を、誤って娘が殺してしまう。殺人を隠し娘をかばうライムンダ。そんな時、彼女は、ある理由から拒み続けた亡き母の噂を聞く。それは、遠い昔に焼死した母イレネの幽霊が現れるという奇妙なものだった…。

男性の影が極めて薄い、徹底した女性映画だ。女たち、とりわけ母の力強さが物語をグイグイ引っ張る。この映画には6人の主要女性キャラが登場するが、彼女たちは皆、たくましくてセクシーだ。中心はライムンダとその母イレネ。映画冒頭の、強風の中で墓を掃除する場面が、女たちの人生の過酷さを物語る。舞台は、ドンキホーテゆかりの場所で、迷信深いラ・マンチャ地方だ。ここでは、幽霊が現れるのはよくあることらしい。

アルモドバルの故郷であるラ・マンチャの精神風土は、生者と死者が共存するおおらかなものだ。幽霊が出てもなぜかみんながすんなり受け入れるようなおかし味は、アルモドバル映画の特徴でもある。悲しみの中に笑いが含まれ、上品さと下品さが仲良く同居。劇中で殺人も起こるが、悲壮感や罪深さは全くない。むしろ、冷凍庫に夫の死体を隠す手際の良さと、死体を隠したままレストランを買取りテキパキと営業してしまうライムンダの生活力の高さが目を引いた。ごちゃまぜのまま物事を受け入れて面倒を見てしまうこの感覚が、ラテンの懐の深さに思える。こんな国でなら、幽霊とだって仲直りできそうだ。

母、娘、孫。3世代の中心にいるライムンダは、母であると同時に娘である。だからこそ、ままならない人生も、たくましく生き抜き、喜びを見い出す術(すべ)を知っている。ライムンダの秘密と、もっと衝撃的な母の秘密は、極めて悲劇的なものだが、それすらも大きな生命力で収束してしまうのがアルモドバル流の人生賛歌だ。黒い瞳に気の強さをにじませながら、時折さびしげな表情を見せるペネロペ・クルスが絶品。ラ・マンチャ地方のたくましい女になるため、細身の彼女は“つけ尻”をして熱演している。劇中にライムンダが情感込めて歌う、タンゴの名曲「ボルベール」が、いつまでも心に残った。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)母は強し度:★★★★☆

□2006年 スペイン映画 スペイン語原題「VOLVER」
□監督:ペドロ・アルモドバル
□出演:ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ、ロラ・ドゥエニャス、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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