映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
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(点数は100点が、★は5つが満点)
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◎ 今週の気になる映画 ◎
「アトミック・ブロンド」「バリー・シール」「あゝ、荒野 後篇」「我は神なり」etc.

ペ・ドゥナ

トンネル 闇に鎖された男



自動車ディーラーのジョンスは、大きな契約を無事に済ませ、妻セヒョンと娘が待つ家へ帰るために、車を走らせていた。山中のトンネルに差し掛かった時、突如トンネルが崩落し、ジョンスは車ごと生き埋めになってしまう。目覚めると、周囲はコンクリートの瓦礫の山。車中には水のペットボトルと娘への誕生日ケーキ、そしてバッテリー残量78パーセントの携帯電話だけ。やがてトンネル崩落のニュースが国内を駆け巡り、救助隊のキムらが現場にかけつける。だが惨状は予想をはるかに超えるもので、次々に問題が発生する…。

崩落したトンネルに生き埋めになった男を描く異色のサバイバル劇「トンネル 闇に鎖(とざ)された男」。トンネルや坑道に閉じ込められる映画は過去にもあるが、本作は、主人公がヒロイックな英雄ではなく、マスコミや政府も救助活動に対して微妙な立ち位置であることだ。主人公ジョンスは孤独な闘いを強いられるが、実はトンネルの中では予想外の展開が待っている。彼の実質的な味方は、救助隊の隊長キムだけだ。何とか生還しようと必死のジョンスと、彼を助けようとベストを尽くすキムだったが、マスコミはいたずらに騒ぎ、政府の対応も後手な上に弱腰だ。手抜き工事の実態や、責任感のない女性政治家などの言動には苦笑してしまうが、あまりに韓国の現実に似ていて、笑えないほどリアルなのである。恐ろしいのは、たった一人を救うために税金を無駄使いするな!と救助活動そのものを非難をする大衆のヒステリックな声に政府をはじめ周囲が迎合してしまうことである。これは単なるパニック映画やサバイバル劇ではなく、非常事態に際しての人間の本質を問うドラマなのだ。「お嬢さん」で詐欺師を演じたハ・ジョンウが弱さを併せ持つ普通の男性を誠実に演じ、相変わらずコミカルとシリアスのブレンド具合が絶妙な名脇役の演技派オ・ダルスもいい。ちょっと残念なのは、妻役のペ・ドゥナの印象が薄いことか。トンネルに閉じ込められたジョンスと救助隊のキムの、互いに相手の声だけで育む友情物語としても見応えがある。トンネル崩壊の恐怖、トンネル内外での予想外の展開と、先読み不能のサスペンスの行方に意外なほどハラハラする。経済優先、大衆への迎合、人命軽視、そして生命力。なかなか見応えがある佳作だった。
【70点】
(原題「TUNNEL」)
(韓国/キム・ソンフン監督/ハ・ジョンウ、ペ・ドゥナ、オ・ダルス、他)
(サバイバル度:★★★★★)
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映画レビュー「空気人形」

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◆プチレビュー◆
心を持った人形の異色ラブ・ファンタジー。ペ・ドゥナの素晴らしさはただごとではない。 【90点】

 東京の下町の古いアパートで持ち主の秀雄と暮らす空気人形は、ある朝、持ってはいけない“心”を持ってしまう。秀雄が外出した後に人形は動き出し、一人で街へ。様々な境遇の人々に出会う中、純一という青年に恋をする…。

 孤独感とエロティシズムとファンタジーがこれほど見事に融合した作品が、かつてあっただろうか。空気人形とは、要するに、性欲を満たすためのダッチ・ドールのこと。リアルな高級品ではなく、空気を入れて膨らますビニール製、型遅れの安物である。キーワードは“からっぽ”という言葉だ。偶然に心を持ってしまった空気人形は、世界の美しさに感動し、街中をさまよい歩くうちに、人間たちも皆、何らかの“からっぽ”を抱えて生きていることを知る。これは、空虚感を不思議なシンパシーで受け止める空気人形の、切ない冒険物語だ。

 人形が出会う人々は、代用教員だった老人、交番通いが趣味の未亡人、過食症の若いOL、うっ屈した浪人生など。皆、寂しくて悲しげだ。持ち主であるファミレス店員の秀雄も孤独な中年男で、彼女とのセックスに飽きたら次の人形を買い求める。そんな中、空気人形が惹かれていくのは恋人を亡くしたらしいビデオ店の青年・純一。彼の心の中に自分と同じテイストの“からっぽ”感を感じ取ったことが、やがて残酷な運命を引き寄せることになる。

 やるせなさが漂う物語の中、慈愛に満ちているのが、オダギリジョー演じる人形製作者と空気人形の会話だ。初めて恋をした彼女は、一度きりの人生を生きると決意したものの、持ち主の秀雄の「もとの人形に戻ってくれ」との言葉に傷つき、生みの親である人形師に会いに行く。すると彼は「おかえり」と優しく語りかけた。何も聞かずに受け入れる人形師は神のような存在に思えるが、空気人形が言う「生んでくれてありがとう」の言葉を聞いた時の哀しげなまなざしを見ると、彼もまた虚ろな心を抱えた人間のひとりだと気付かされる。

 他人とつながることへの切望。それゆえの孤独。物語は深淵で稀有なものだが、この独特の世界観を支えているのが人形という難役を演じる韓国人女優ペ・ドゥナだ。たどたどしい日本語が、初めて世界を知る人形の心情に見事にフィットする。何よりも透明感溢れるエロティシズムを醸し出す彼女の演技は、大胆かつ繊細で、素晴らしいとしか言いようがない。特に、誤って皮膚を傷つけ空気が抜けてしまい、純一に、おなかの空気穴から息を吹き込まれるときの恍惚の表情は、神がかり的に絶品だ。心と身体の関係性を、これほどリリカルに表現する女優を、私は今まで見たことがない。その感情の揺れを艶やかなカメラワークでとらえる国際派カメラマン・リー・ピンビンの映像もまた秀逸だ。
 
 心を宿し恋をした“風変わりなピノキオ”空気人形は、現代の空虚な人間の姿を照射しているのだろうか。「心を持つことは切ないことでした」とのセリフが深く胸にしみる。代用品ではなく自分を必要とする人に愛されたい。誰もが感じる切実な思いだ。都市生活者の孤独をスケッチし、切ない恋の顛末を描くが、その先に広がるのは新しい形の希望に他ならない。その証拠に、空気人形の名前は「のぞみ」だ。才人・是枝裕和監督の新境地と呼びたい傑作である。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)切なさ度:★★★★★

□2009年 日本映画
□監督:是枝裕和
□出演:ペ・ドゥナ、ARATA、板尾創路、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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