映画通信シネマッシモ


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

ポール・ハギス

サード・パーソン

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パリ、ローマ、NYの3都市を舞台にした群像劇「サード・パーソン」。ラストに大きな仕掛けが用意されている。

パリ。ホテルで執筆中の作家マイケルは、妻とは別居中で若い愛人アンナと不倫中。だがアンナにも秘密の恋人がいて、マイケルの心は休まらない。ローマ。ファッションブランドからデザインを盗む汚れ仕事をするアメリカ人ビジネスマンのスコットは、場末のバーで出会ったロマ族の女性モニカに一瞬で心を奪われる。彼は、闇の組織に娘を奪われたモニカを何とか助けようと奔走する。ニューヨーク。元女優のジュリアは、離婚した夫リックと息子の親権を争い、莫大な裁判費用のために高級ホテルでメイドとして働き始めるが、ストレスと孤独から精神的に追いつめられる…。

一見、何の関係もない3都市、3組の男女のメロドラマが、並行して描かれる構成は、いわゆる群像劇なのだが、「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本家で「クラッシュ」の監督であるポール・ハギスは、パズルのピースのようにバラバラな物語を組み合わせて大きな絵を作った。登場人物の多くが嘘をついているが、同時に愛する人を信じたいという気持ちもある。緻密なのに、どこか違和感を感じるストーリーには、最後の最後に、驚きの仕掛けが用意されていた。あぁ、そういうことか、と合点がいくが、この仕掛けはちょっと凝りすぎな気も。ポール・ハギスは脚本家出身で、頭の中であれこれとパーツを組み合わせ、ミステリーのように人間関係をからませては、解きほぐしていくストーリーを得意とする。「クラッシュ」で頂点を極めたかのようなこのスタイル、本作では回りくどいだけな気がするのだが、そこはハリウッドならではの豪華キャストと、歴史あるローマの街でロケされた映像で魅力をが補っている。リーアム・ニーソン演じる作家マイケルは、デビュー作でピュリツァー賞を受賞するも、その後はスランプで本当に書きたいものがみつからないという設定。これ、もしかしてハギス自身のことか? 名脚本家も、仕事や人生に悩んでいるのかもしれない。
【65点】
(原題「THIRD PERSON」)
(英・米・独・ベルギー/ポール・ハギス監督/リーアム・ニーソン、ミラ・クニス、エイドリアン・ブロディ、他)
(緻密度:★★★★☆)
チケットぴあ

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サード・パーソン@ぴあ映画生活

スリーデイズ

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平凡な小市民が練り上げた脱獄計画は、生活のすべてを犠牲にする覚悟があってこそ。切実で孤独な戦いが胸に迫るが、主演のラッセル・クロウはミスキャスト。

大学教授のジョンは、愛する妻子と共に幸せに暮らしていた。だがある朝、突然警察が自宅に突入。妻のララが身に覚えのない殺人容疑で逮捕されてしまう。それから3年。妻の無実を証明するために奔走したジョンの努力も虚しく、裁判では妻に不利な証拠が提出され、殺人罪が確定する。絶望したララが獄中で自殺未遂を起こしたことから、ジョンは、自らの手で妻を取り戻すことを決意。生活のすべてを犠牲にして脱獄計画を立て始める…。

仏映画の秀作「すべて彼女のために」を、才人ポール・ハギスの手でリメークしたのが本作。オリジナル同様、犯罪の真意や真犯人の立証には焦点を当てず、愛する妻と家族の幸せを取り戻すため、脱獄計画を実行にうつす男の悲壮な決意と息詰まる逃走劇を描いていく。特殊能力や権力など何も持たない平凡な男が、法を破ることを決意するには、警察や法制度への絶望的な不信感と、妻への、決して揺るがない深い愛情があるからだ。脱獄計画を決意してからのジョンには長い準備期間があり、覚悟は出来ているのだが、突然知らされた妻ララには心の準備が出来ていない。車のドアから身を投げ出すのは彼女なりの抗議なのだろうが、その後の無言の語らいによって腹を決める場面など、妻の側の心理も絶妙に描きこんでいるのが目を引いた。ただ、ラッセル・クロウというキャスティングはどうなのか? オリジナルの仏映画で、バンサン・ランドンが醸し出した、平凡で弱い小市民という風情は、クロウにはない。演技は上手いが、明らかにミスキャストだろう。とはいえ、クライマックスの、警察からの逃亡劇はすさまじい緊張感で目が離せない。爽快感さえ漂うラストのその後に付け加えた、事件の真相の小さなエピソードとその顛末が、ほろ苦い余韻を残していた。
【65点】
(原題「THE NEXT THREE DAYS」)
(アメリカ/ポール・ハギス監督/ラッセル・クロウ、エリザベス・バンクス、リーアム・ニーソン、他)
(夫婦愛度:★★★★★)



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スリーデイズ@ぴあ映画生活

映画レビュー「告発のとき」

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◆プチレビュー◆
イラクから帰還した息子の死の真相はまさに狂気。重い人間ドラマだが見応えがある。 【75点】

 2004年、元軍人警官のハンクは息子のマイクがイラクから帰還後に失踪したとの知らせを受ける。女刑事エミリーの助けを借りてマイクを探すハンクだったが、予想外の真実と息子の心の闇を知ることになる…。

 PTSD(心的外傷ストレス障害)という言葉がある。衝撃的な出来事がトラウマになり、後に様々なストレス障害を引き起こす心の病だ。原因は、地震、火事のような災害、事故、戦争といった人災、テロ、虐待、レイプなど犯罪による被害と、多様で複雑だ。この物語が描くのはイラク戦争の帰還兵を蝕む深刻なPTSDで、実際に起こった殺人事件が基だという。

 映画は、いなくなったマイクを探すミステリーとしてスタートするが、彼の行く末は早々に観客に明かされる。マイクはむごい殺され方で遺体となって発見され、そこから物語は犯人探しへと移行。調査の過程で、マイクがイラクで何を見、何をしたのかが明かされるあたりから、ストーリーは凄みを増していく。携帯の動画、ペットの虐待、悲痛な電話の声。計算された緻密な脚本によって、ジワリジワリと近づく望まない真実は、ボディーブローのように効いてくる。父親として軍人として、ハンクが知ることになる息子の姿はショッキングだが、マイクを殺した犯人の淡々とした告白はそれ以上の衝撃だ。「本当に申し訳ありません」と丁寧に謝るその目は、とっくの昔に死んでしまっている者のそれなのだ。正常な人間が戦場で暴力に呑み込まれ、狂気と共に帰国する。なぜこんな事が起こるのかと問うことさえ苦しくて出来ない。

 思えばアメリカ映画界には、自己告発や自己批判の伝統がある。特に戦争が人間性を破壊するとの主張はアメリカン・ニュー・シネマ以降、顕著だ。ベトナム戦争に行く前の訓練から殺人マシーンになってしまう「フルメタル・ジャケット」、湾岸戦争を真正面から取り上げた「戦火の勇気」など、枚挙に暇がない。だが、愚かで悲惨な争いは繰り返される。秀作映画がどれほど作られても、抑止力などないのだと思うとやるせない。トミー・リー・ジョーンズがいぶし銀の名演で演じる実直な父親ハンク同様に、米国の現実を思い知らされる。

 ただ、かすかな光を感じるとしたら、シングルマザーの女刑事エミリーと彼女の幼い息子の存在だ。男社会の中で奮闘するエミリーと、暗闇の恐怖を自ら克服しようとしている少年。この母子に希望を見出すことを、作り手はきっと許してくれるだろう。

 この映画には、分かりやすい答や救いはない。だが劇中に2度登場する、アメリカ国旗を揚げる場面が作品のメッセージを象徴している。逆さまの星条旗は、国家の救難信号の意味だ。米国は今、逆旗をあげねばならない状況にある。名手ポール・ハギスは大上段に構えて反戦を訴えず、あくまで個人の悲痛な体験をとらえた。救いを求める息子からの信号に応えられなかった父親の、深い絶望の表情にあらゆる思いを託して。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)やるせなさ度:★★★★★

□2008年 アメリカ映画 原題「IN THE VALLEY OF ELAH」
□監督:ポール・ハギス
□出演:トミー・リー・ジョーンズ、シャーリーズ・セロン、スーザン・サランドン、他

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クラッシュ

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◆プチレビュー◆
前評判通りの秀作で大いに満足。サンドラ・ブロックにドン・チードル、ブレンダン・フレイザーと聞くとコメディ映画になりそうな気がするが、中身は超シリアスだ。最近売れっ子のテレンス・ハワードにも大注目。

深夜のロサンゼルスのハイウェイで、交通事故が発生。黒人刑事が担当することに。平凡に見えたその事故には様々な人間の運命がからまっていた。雑貨店を経営するペルシャ人、黒人の若いチンピラ、裕福な白人夫婦、人種差別主義者の警官とそれを嫌悪する相棒。それぞれの運命は少しずつつながり“衝突”が繰り返され、思わぬ方向へ。そして一発の銃声が鳴り響く…。

すばらしく良く練られた脚本の群像劇だ。テーマは人種差別と偏見。暗く重い主題だが、映画はただの悲劇にはなっていない。10人を軽く超える主要キャストは、それぞれが知らないうちに運命を共有していた。そのことを私たち観客がいち早く知ることで、物語に強く引き込まれる。

人種のるつぼであるLAでは偏見から生じる事件は後をたたないのだろうか。しかし映画の中の登場人物がそうであるように、善と悪を併せ持つのが人間の本来の姿ならどこかに解決の糸口が見えるはず。それをどう活かすかはその人次第だ。多くの印象的なエピソードが描かれるが、マット・ディロン演じる人種差別主義者の行動と、ペルシャ人男性が放つ銃弾の結末は、映画の希望の光となって心に残る。

監督は「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本家のP.ハギス。これが初監督作とは思えないほどの力だ。多彩な登場人物を一切無駄なくさばいて心に響く作品を生み出す才能に、アメリカ映画の底力を見た。

□2005年 アメリカ映画 原題「CRASH」
□監督:ポール・ハギス
□出演:ドン・チードル、サンドラ・ブロック、マット・ディロン、他

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