映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ジャッキー」「ムーンライト」「はじまりへの旅」etc.

マイケル・ファスベンダー

アサシン クリード

Ost: Assassin's Creed
謎めいた施設に連れてこられた、記憶をなくした死刑囚カラム・リンチは、遺伝子操作装置のアニムスにより、DNAに眠る祖先の記憶を追体験させられる。カラムの祖先は、ルネサンス期のスペインでテンプル騎士団に立ち向かった伝説のアサシン(暗殺者)教団の一員で、禁じられた秘宝“エデンの果実”のありかを知る、歴史上最後の人物だった。カラムは、遺伝子を研究し暴力を廃絶しようとする博士のソフィアらが開発したアニムスを使って、現在と過去を行き来し歴史に隠された謎に取り組むうちに、アサシンとして覚醒していく…。

世界的なヒットを記録した大人気アクション・ゲームを映画化した「アサシン クリード」。物語は、現代と1491年のスペインを行き来しながら、進んでいく。ざっくりとした世界観は、人間の自由意志を守ろうとするアサシン教団VS自由を制限することで人類を支配しようとするテンプル騎士団という構図のようだ。勝負の行方を握るのが、禁じられた秘宝“エデンの果実”とそれに秘められた真実というわけである。中世ヨーロッパの入り組んだ街を、アクロバティックな動きで駆け巡る疾走感と、高い尖塔から飛び降りる垂直落下の感覚が、今までにないアクションのテイストで見ていて面白い。アクションはパルクールを取り入れた躍動的なもので、スタントの頑張りには目を見張る。アルハンブラ宮殿や古い建物が残るマルタ島でロケされた映像も見所だ。だが、砂埃の広場や、薄暗い路地を縦横無尽にかけめぐるアサシンたちはフードを被っている上に、闇の中で戦うという設定上、人物の表情が読みにくいのが難点。加えて、アクション・ゲームの映画化に、マイケル・ファスベンダー、マリオン・コティヤールの「マクベス」夫妻コンビというキャスティングにも首をかしげる。物語は、まったく自覚がなかったカラムが突如としてアサシンとして覚醒するなど謎が多いのだが、この穴だらけ、かつ不親切なストーリーは、どうやら三部作の第一章ということが原因らしい。ともあれ、ラストも含めて、もやもやとした印象だけが残ってしまった。
【55点】
(原題「ASSASSIN'S CREED」)
(アメリカ/ジャスティン・カーゼル監督/マイケル・ファスベンダー、マリオン・コティヤール、ジェレミー・アイアンズ、他)
(不完全燃焼度:★★★★☆)
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X-MEN:アポカリプス

X-MEN:アポカリプス 2枚組ブルーレイ&DVD(初回生産限定) [Blu-ray]
紀元前3600年、文明が誕生する前から神として君臨していた、ミュータントの始祖でもあるアポカリプスは、裏切りにあい、古代エジプトのピラミッドの中に封印される。しかし1983年、アポカリプスは長い眠りから目覚めた。人間と文明が堕落したと判断したアポカリプスは、新しい秩序をもたらそうと、マグニートーら4人のミュータントを“黙示録の四騎士”として従えて世界の破壊に乗り出す。プロフェッサーXやミスティークの率いる若きX-MENは、その流れを危険視しアポカリプスの計画を阻止しようと立ち向かうが、強大な力を持つアポカリプスに、プロフェッサーXが連れされられてしまう…。

世界最古にして最強のミュータントとの死闘を描く「X-MEN:アポカリプス」。この大人気アメコミシリーズは、過去に遡ったエピソードが多いのだが、第6作となる本作では、X-MEN誕生の瞬間を描いているので、シリーズを見続けてきたファンには非常に興味深い内容に仕上がっている。監督が第1作を手掛けたブライアン・シンガーなので、キャラクターへの深い愛情が感じられるのだ。特に、金属を操るマグニートーの悲痛な過去、ジーンの覚醒のプロセスは、原点を知る意味でも重要なエピソードだ。ついでに言うと、なぜプロフェッサーXがスキンヘッドなのかの理由も明かされる。オスカー・アイザックが演じるアポカリプスは、神と崇められた最強のミュータント。大仰な立ち居振る舞いとせりふで本作に重厚感を与えている。何よりも最先端のVFXを使ったド迫力のビジュアルは必見だ。近頃のCG満載のアクション映画の特撮を見慣れている目にも、「X-MEN」シリーズのそれは単なる破壊ではなく非常に洗練されていて、感心する。ミュータントたちの死闘と世界崩壊の造形はそれぞれの特殊能力を活かしたもので、一瞬も目が離せない。音速を超えるスピードで動くクイックシルバーがゆっくりと学園の危機を救う様はコミカルかつスタイリッシュで大きな見所だが、実は彼は、ある重要キャラクターの息子。本作ではそのことがほとんど活きてなかったが、今後どう展開するかが楽しみだ。
【75点】
(原題「X-MEN:APOCALYPSE」)
(アメリカ/ブライアン・シンガー監督/ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、他)
(原点回帰度:★★★★☆)
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マクベス

マクベス [Blu-ray]
中世のスコットランド。慈悲深いダンカン王に仕える将軍マクベスは、反乱軍との戦いに勝利した帰りに、荒野で3人の魔女に出会う。「お前は領主になり、王になるだろう」と予言され驚くが、その直後に、コーダーの領主が死亡し、マクベスが領主に任命される。マクベス夫人は夫を王にするべく、ダンカン王暗殺を執拗にけしかける。王位への欲望に負けたマクベスはダンカン王を殺害し、ついに王となるが、罪悪感と不安から、やがて狂気へと陥っていく…。

シェークスピアの四大悲劇の一つである戯曲を映画化した「マクベス」。物語は有名なので、王位に取りつかれた主人公マクベスが悲劇的な運命をたどることを多くの観客はすでに知っている。舞台、オペラはもとより、過去には、オーソン・ウェルズやロマン・ポランスキーが映画化し、日本ではあの黒澤明監督が「蜘蛛巣城」として映画化していることでも有名だ。一般的には悪女マクベス夫人にそそのかされて王位を奪ったマクベスの狂気と転落を描くのがオーソドックスな演出だが、本作の個性は、罪の意識と狂気に苛まされながらも、深く愛し合っているマクベス夫妻の絆を強調したことにある。我が子を亡くした悲しみから立ち直れないマクベス夫人は、ここでは単なる悪女ではない。マクベスもまた、子を亡くした悲しみをぶつけるように戦場で果敢に戦うが、戦場では泥まみれになって顔の識別さえ難しい姿で描かれる。そのことでマクベスは匿名性をおび、この映画のキャッチコピーでもある「あなたの心の中にもマクベスがいる」という言葉に説得力を持たせているのだ。映画の多くが野外で撮影されていて、映像は常に薄暗く不穏。それに対比するかのように、室内のろうそくの炎のゆらめきの中にいる、マリオン・コティヤール演じるマクベス夫人の美しさが際立った。やがてくる破滅の時を、マクベスは実は待っているのではないか。狂気と絶望で死にいたった夫人と再会するのを願うかのように。ラスト、真っ赤に燃え上がる荒野に、破滅へと向かうしかなかった男女の運命が重なっている。
【60点】
(原題「MACBETH」)
(英・米・仏/ジャスティン・カーゼル監督/マイケル・ファスベンダー、マリオン・コティヤール、パディ・コンシダイン、他)
(夫婦愛度:★★★★☆)
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スティーブ・ジョブズ

スティーブ・ジョブズ ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]
1984年、スティーブ・ジョブズは、Macintosh発表会の40分前、「ハロー」と挨拶をするはずのマシンが黙ったままなので、激怒していた。マーケティング担当のジョアンナらがカットしようと説得するが、ジョブズは絶対に折れない。そこへ元恋人・クリスアンが、ジョブズが認知を拒む娘リサを連れて現れる。混乱の中、胸ポケット付きの白いシャツを用意しろと命じるなど、不可解で強硬な要求を繰り出すジョブズに周囲は困惑するが、すべては明確な理由があった…。

パーソナルコンピュータやスマートフォンを世に送り出し、人々の仕事と生活を大きく変えたIT界の天才スティーブ・ジョブズを描いた映画「スティーブ・ジョブズ」は、ジョブズ本人ほか多くの関係者に取材した唯一の公式伝記であるウォルター・アイザックソンのベストセラー評伝をベースにしている。ジョブズという人物は、類まれなイノベーターでありながら、人として、とりわけ父親としてあまりに未熟という、矛盾そのもののような存在だ。いかにも俊英ダニー・ボイル監督だとうなるのは、表層的な伝記映画(アシュトン・カッチャー版がまさにそれ!)にはせず、1984年のMacintosh、88年のNeXT Cube、98年のiMacという3回の製品発表会の開始直前の舞台裏に絞るという、シャープな語り口にしたことだ。伝説的なプレゼンの舞台裏の戦場さながらの様子は描くのに、本番のプレゼンの模様は大胆にも省略してしまうという潔さも面白い。そのユニークなスタイルは、本当に必要なもの以外を切り捨てたジョブズの信念とも共通するものだ。ボイル監督が目指したのは、すでに世界中が知っているジョブズの偉大な功績やコンピューター誕生秘話ではなく、転機となる3度の瞬間に肉薄することで、革新者として、人間として、父親としてのジョブズの横顔を浮き彫りにすることだった。めまいがするほど膨大な会話劇をやり遂げた、ファスベンダーやウィンスレットら実力派俳優たちの熱演も見事。終盤に、不器用な親子愛を通して父としての真の顔に迫ったことで、人間ドラマとしての深みも増している。見るものを一瞬も飽きさせないエンタテインメントに仕上がっている。
【75点】
(原題「Steve Jobs」)
(アメリカ/ダニー・ボイル監督/マイケル・ファスベンダー、ケイト・ウィンスレット、セス・ローゲン、他)
(会話劇度:★★★★★)
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X-MEN フューチャー&パスト

X-MEN:フューチャー&パスト 3枚組コレクターズ・エディション(初回生産限定) [Blu-ray]
未来と過去を舞台にX-MENたちの生存をかけた戦いを描くSFアクション「X-MEN フューチャー&パスト」。タイムトラベルもののタブーをこうまで堂々と破ってくるとは!

2023年。史上最強のバイオメカニカル・ロボット“センチネル”によって地球は破滅の危機を迎えていた。プロフェッサーXとマグニートは共闘し、1973年にウルヴァリンの“魂”を送り込むことで、未来に起こる危機の根源を絶とうする。タイムトラベルのダメージに耐え、50年前の自分の肉体に宿り、センチネル・プログラムの開発を阻止しようとするウルヴァリンだったが…。

マーベル・コミックの人気シリーズの最新作は、久し振りにブライアン・シンガーが監督を務める。ド派手なCGとアクションに目を奪われるこのシリーズのキモは、実はマイノリティの孤独と虐げられた者たちの怒り、そして自らの存在意義という実に悶々とした人間(ミュータントだが…)ドラマなのだ。本作では宿敵であるプロフェッサーXとマグニートが手を組むほどの危機が起こり、それを阻止するためにはミスティークことレイヴンのある行動を食い止める必要があるというサスペンスフルな設定である。ここで、治癒能力があるウルヴァリンが危険なタイムトラベルに挑むことになるが、過去にいる仲間たちとのやりとりは中々楽しい。なんといってもクイックシルバーの活躍が嬉しくなるが、過去と未来のプロフェッサーX(チャールズ)とマグニート(エリック)2人の複雑な関係性も興味深い。時は70年代でJFK暗殺やベトナム戦争の話題がチラリと出てくるが、せっかく過去に来たというのに、それらは深く語られず、時空を旅したウルヴァリンも実はさして活躍しないという、ある意味、意外な展開が待つ。何しろ、過去と未来のX-MENたちがオールスターよろしく総出演するので、どうしても駆け足になってしまうのだ。そもそもタイムトラベルもののお約束では「過去は変えてはいけない!」とあるのに、それを堂々と破ってくるのは、特殊能力を持つX-MENだからこそだろうか。こうなってくると、次回作の方向性が気になる。これが許されるのなら何でもアリなのだから。ともあれX-MENファンには見逃せない最新作であることは間違いない。
【65点】
(原題「X-MEN:DAYS OF FUTURE PAST」)
(アメリカ/ブライアン・シンガー監督/ヒュー・ジャックマン、ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、他)
(サスペンス度:★★★★☆)
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X-MEN:フューチャー&パスト@ぴあ映画生活

それでも夜は明ける

それでも夜は明ける コレクターズ・エディション(初回限定生産)アウターケース付き [Blu-ray]
自由の身でありながら奴隷として12年間も暮らした男の衝撃的な実話「それでも夜は明ける」。人種差別問題という社会派ドラマと実話の強みで見事にオスカー獲得した秀作。

1841年、奴隷制廃止以前のアメリカ。NYで暮らす自由黒人で音楽家のソロモンは、ある日突然拉致されて人種差別がはびこる南部の農園に奴隷として売られてしまう。狂信的な選民主義者・エップスら白人たちによる激しい暴力や屈辱的な差別に耐えながらも、いつか家族と再会できる日を信じて、決して人間としての尊厳を失わないことを誓う。12年の歳月が流れたある日、奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者・バスとの出会いが、ソロモンの運命を大きく変えていく…。

奴隷制度はアメリカ史の暗部で、映画では繰り返し描かれるテーマだ。本作の一番の個性は、主人公ソロモンが自由黒人でありながら奴隷になるという点にある。白人からは奴隷として虐待され、同じ黒人奴隷からは、異種として無視される。ソロモンという人物は、どこまでも孤独で彼には居場所がないのだ。そんな境遇で12年もの間耐え忍び、ついには生きて戻る男の人生とは? と大きな興味をそそられるだろう。だが本作は生やさしい感動物語ではない。何しろ全編を通して、目を覆いたくなるような残酷シーンの連打なので、まずは覚悟が必要だ。黒人奴隷を財産、あるいは慰み者としか考えない発想は、人間をどこまで残酷にするのだろうか。サイモンは自分は自由黒人だと訴えるが、聞きいれてもらえないばかりか、サイモンという名前さえ奪われ、プラットと呼ばれることに。ムチで打たれ、暴力を振るわれ、信じていた白人からは裏切られる。サディスティックな農園主のエップスは飛び抜けた異常者だが、程度の差こそあれ、南部の白人は黒人に対し、徹頭徹尾、理不尽で非人間的だ。ソロモンは抵抗することをあきらめ、いつの日にか訪れるチャンスのために生き延びることだけを決意する。そのシンプルにして最強の意志に強く打たれるが、彼の対極にいるのがエップスから性的虐待を受ける女奴隷パッツィーだ。ソロモンを信頼したパッツィーが「お願いだから私を殺して」と頼む場面は、その底なしの絶望感に言葉を失ってしまった。物語は実話で、ソロモンが最後には救われることを知っていてもなお、この映画の圧倒的な衝撃は、観客を金縛りにしてしまう。いかにもアカデミー好みの社会派の良作だが、見る側に体力と気力を要求する作品であることは間違いない。
【75点】
(原題「12 YEARS A SLAVE」)
(米・英/スティーブ・マックイーン監督/キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、他)
(理不尽度:★★★★★)
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それでも夜は明ける@ぴあ映画生活

危険なメソッド

危険なメソッド [DVD]危険なメソッド [DVD] [DVD]
二人の偉大な心理学者と美しい患者との関係をスリリングに描く「危険なメソッド」。患者兼愛人をキーラ・ナイトレイが異様な表情で怪演する。

1904年、スイス。若き精神科医のユングは、尊敬する精神分析学の大家フロイトが提唱する談話療法を、美しい女性患者ザビーナに試みる。その療法は効果を発揮し、ザビーナのトラウマの原因を突き止めることに成功した。だがユングとザビーナはやがて医者と患者の一線を越え、親密な関係に陥る。それまで親子にも似た師弟関係で結ばれていたユングとフロイトだが、ザビーナをめぐるユングの葛藤により、彼らの友情にも亀裂が生じることになる…。

共に精神心理学の礎を築いた偉大な心理学者ジークムント・フロイトとカール・グスタフ・ユングの二人は、主義主張の違いから袂を分かったとされてきた。本作は、その決別の影に歴史上に実在したロシア系ユダヤ人女性ザビーナ・シュピールラインの存在があったというスタンスでストーリーを紡いでいく。劇中には、深層心理をあぶり出す“言語連想テスト”やフロイトが提唱した“夢分析”など、知的なエピソードが登場するが、それらを安易に映像化せず、あくまでも会話中心で進めていく演出は、オリジナルの舞台劇を意識しているのだろう。一方で、性的トラウマを持つ美しい女性ザビーナに関しては、倒錯的なラブシーンも含めて、あくまで挑発的に描く。このあたり、精神的、肉体的な歪みを嗜好するデヴィッド・クローネンバーグ監督らしい。なるほどユングとザビーナは、愛人関係から破局に至り、ザビーナはフロイトに助けを求める。しかし、ユングとフロイトの関係性は複雑で、人種的な背景や経済力の違いなどもからみ、ひと言では語れない。そもそも、何でもかんでも性的なものに結びつけるユダヤ人フロイトと、リッチな妻のおかげで優雅に暮らしながら愛人に溺れるユングは、学問的なこと以外でも相容れない。だが、欠点があり、エゴ丸出しの二人の天才心理学者の思想に大きな影響を与えたのは、不安定だが魅力的な一人の美女だったという設定はどこかロマンチックで、スリリングな心理劇として楽しめるものだ。ユングが理性を捨ててザビーナを愛するきっかけを作る快楽主義者を演じるのは、ヴァンサン・カッセル。ごく短い出演時間だが、強烈な印象を残している。加えて、歪んだ顔で激高する姿や、Mな性癖に陶酔するなど、怪演に近い熱演を見せるキーラ・ナイトレイの演技は、異様な迫力で圧倒される。
【60点】
(原題「A DANGEROUS METHOD」)
(英・独・カナダ・スイス/デイヴィッド・クローネンバーグ監督/マイケル・ファスベンダー、ヴィゴ・モーテンセン、キーラ・ナイトレイ、他)
(スキャンダラス度:★★★★☆)
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映画レビュー「プロメテウス」

プロメテウス 2枚組ブルーレイ&DVD&デジタルコピー (初回生産限定) [Blu-ray]プロメテウス 2枚組ブルーレイ&DVD&デジタルコピー (初回生産限定) [Blu-ray]
◆プチレビュー◆
人類の起源という根源的な謎に挑んだSF超大作「プロメテウス」。壮大で幻想的なビジュアルに圧倒される。 【65点】

 2093年、考古学者エリザベスら17名のクルーは、宇宙における人類の起源を解明するため、宇宙船プロメテウス号に乗って地球を出発する。だが、2年後にたどり着いた惑星で、彼らは、地球上の常識では計り知れない、驚愕の真実を目の当たりにする…。

 「ブレードランナー」、「エイリアン」など、映画史に残るSF作品を手がけた巨匠リドリー・スコットは、どうやら、人間を“第一の原人”とは考えていないようだ。人間が最初に生まれたという発想そのものが、傲慢だとさえ言い切る。人類の起源を、科学や宗教を超えた解釈で描くこの作品は、スコット監督が導き出した、ミステリアスな可能性の物語だ。

 冒頭、荒々しい岩肌の大地と巨大な瀑布の岸に立つ知的生命体“エンジニア”が、自分の肉体を分解してばらまいているのはDNAなのだろうか。宗教や進化論をものともせず、一気に人類誕生の新説を提示するから、潔い。その突拍子も無い提言を、思わず信じてしまいたくなる、異様な惑星の光景や、宇宙船内部のガジェットなど、イマジネーションあふれる幻想的なビジュアルは、映像派のリドリー・スコットだけが持つ説得力と言えよう。

 地球上の複数の遺跡に共通したサインを、宇宙からの招待状と解釈したエリザベスたちは、たどり着いた惑星で、洞窟の奥のビッグフェイスの彫像、並べられた無数の壷、光を放つ奇妙な施設などを目にする。それは“神の領域”というより、恐怖が充満した地獄のような暗黒の空間。宇宙に対する安直なシンパシーを叩き潰し、失望を煽る暗い展開は、まさに先読み不能だ。

 巨大企業が出資したプロメテウス号内部には、ある秘密が隠されているのだが、その鍵を握るのが、精巧なアンドロイドのデヴィッドである。端正で無表情なデヴィッドを演じるマイケル・ファスベンダーが適役で、国際的なスターが集うこの超大作の中でも、とりわけ存在感がある。

 想像を絶するクライマックスの果てに、科学者でありながら、信仰を拠り所にするエリザベスと、人間の感情は理解できるが自分自身は感情を持たないアンドロイドのデヴィッドが行動を共にするのを見ると、世界の大いなる“矛盾”を受け入れざるを得ない。だが多くの謎を内包した物語は、未来の世界で遠い宇宙の果てまで来た人類が、太古へと回帰するという、アイロニカルなもの。人類に火という知性を与えた神プロメテウスの名は、第二のプロメテウスと呼ばれる原子力にも使われている。失意が充満するこの世界で、パンドラの箱の底に残った希望を見出すには、人類には、まだ長い航海が必要なのだろうか。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)壮大度:★★★★★

□2012年 アメリカ映画 □原題「PROMETHEUS」
□監督:リドリー・スコット
□出演:ノオミ・ラパス、マイケル・ファスベンダー、シャーリーズ・セロン、他

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ジェーン・エア

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封建的な時代に自分を貫き愛を勝ち取った女性の生き方を描く「ジェーン・エア」。何度も映画化された古典だが、今回はヒロインが魅力的だ。

幼い頃に両親を失くし孤児としてつらい日々を送ったジェーン・エア。成長し教師の資格を取って、ソーンフィールド邸に住み込みで働く家庭教師の職を得る。主不在の屋敷で働きながら静かな日々を送るジェーンは、ある時、主のロチェスター氏と出会う。暗く冷たい雰囲気を持つロチェスターだが、他人に媚びないジェーンに興味をいだき、ジェーンもまた彼の内面の優しさを知って、惹かれていく。互いに愛し合い、結婚を誓うが、ロチェスターは、人には言えない恐ろしい秘密を抱えていた…。

原作は英国の女流作家シャーロット・ブロンテの古典的名作。資料によると、劇場公開映画だけでも過去18回も映画化されているそう。そのため、物語は知り尽くされ、鮮度は低いのだが、フレッシュなのはキャストだ。ジェーンは、決して容姿には恵まれていないが意志が強く知的な女性。過酷な人生を凛として生きるヒロインを演じるミア・ワシコウスカが実にいい。小説の実年齢に近いせいか、違和感なくフィットしている。ずっと孤独に生きてきたジェーンは、初めての恋で、愛し、愛される喜びを知る。幸福を味わっただけに、ロチェスターの秘密を知った衝撃は彼女を打ちのめすが、ワシコウスカの真一文字に結んだ口元と眉間に寄せたシワ、さらに慎ましいが威厳のある外見が、ヒロインの芯の強さと優しさの両面を体現して、その後のジェーンの毅然とした行動に説得力を与えている。ロチェスター役のファスベンダーは、今最も注目の演技派だが、こちらも適役だ。ワシコウスカ&ファスベンダーのコンビの、硬質なみずみずしさが、ゴシック・ストーリーの要素が強い物語を、正統派ラブ・ストーリーの趣に変えたのだと思う。舞台となった英国ダービーシャー州の荒涼とした自然や、19世紀の衣装の優雅さ、重厚な家具調度品などの美術も大きな見所だ。
【65点】
(原題「JANE EYRE」)
(イギリス・アメリカ/キャリー・ジョージ・フクナガ監督/ミア・ワシコウスカ、マイケル・ファスベンダー、ジェイミー・ベル、他)
(みずみずしさ度:★★★★☆)
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ジェーン・エア@ぴあ映画生活

SHAME -シェイム-

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決して扇情的な作品ではなく、現代人の孤独を描く意欲作「SHAME シェイム」。青みを帯びたクールな映像がスタイリッシュだ。

NYに住むエリート・ビジネスマンのブランドンは、高級マンションに住み、ハンサムで仕事もできる、魅力的な独身男性だ。だが彼は、仕事以外のすべての時間をセックスに関することに費やすセックス依存症。行きずりの、あるいはプロの女性とセックスし、パソコンで大量のポルノ動画を収集し、職場のトイレや自宅のバスルームで自慰にふける。誰かと恋をしたり、新しい趣味に目覚めることもなく、ただ毎日をセックスにまつわることに没頭してやり過ごしている彼のもとに、ある日、突然、妹のシシーが転がり込んできた。人とのつながりを一切持たずに暮らす兄と、常に他人の愛情を欲して感情に流される妹。正反対の2人は、共に生活することで衝突し、互いの傷口を広げてしまい、事態は悪化。ついにブランドンとシシーは決定的に対立してしまう…。

超有名俳優と同じ名を持つ本作の監督は、新進気鋭のアート系映像作家。本作では、元アメリカ大統領までも患ったというセックス依存症を題材に選びながら、無機質でクールな映像感覚とセンスのあるキャスティングで、挑発的で完成度の高い物語の中から現代人の孤独を浮かび上がらせた。これが長編2作目となるスティーヴ・マックイーン監督、どこをとってもただものではない。セックス中毒の兄と、恋愛依存症にしてリストカット癖のある妹という、共に問題ありの兄妹は、どうやらアイルランドから米国に移住して来たようなのだが、そのわけありの過去は明確には語られない。ただ、シシーが自分の心情を歌うのを聴いて、感情を持たないかに見えたブランドンが一筋の涙を流すところを見ると、この兄と妹は、この世で唯一分かり合える“半身”なのだと判る。シシーが自分の同僚と寝たのを知ると、耐えられず夜の街に飛び出すブランドン。彼が愛せる女はおそらく妹だけなのだ。まるで死者のようにやつれた身体で静かに熱演するマイケル・ファスベンダーと、大胆なヌードも披露するキャリー・マリガン。2人の鬼気迫る演技から、愛憎半ばの兄妹の断ち切れない絆と、荒廃した心象風景が浮かび上がって、素晴らしい。R18+とレイティングは厳しいが、滅多にお目にかかれないスリリングな意欲作だ。
【75点】
(原題「SHAME」)
(イギリス/スティーヴ・マックイーン監督/マイケル・ファスベンダー、キャリー・マリガン、他)
(孤独感度:★★★★★)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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