映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ゲット・アウト」「ブレードランナー 2049」「先生」etc.

マイケル・マン

映画レビュー「パブリック・エネミーズ」

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◆プチレビュー◆
伝説の銀行強盗の生き様が熱い。物語はシンプルだが、その分、ジョニー・デップの魅力が際立った。 【70点】

 スリリングな逃亡劇と美男美女が織り成すラブ・ストーリー。本作には、観客がスクリーンで最も見たいと望む要素が詰まっている。1930年代の米国。大恐慌で苦しむ庶民が英雄視したのは、鮮やかな手口で銀行から大金を奪い、不可能に見える脱走を繰り返す、ジョン・デリンジャーその人だ。大胆不敵な彼は、毎日を熱く生きることが本望のような男だが、運命的に出会った美女ビリーを愛したことで、何があっても彼女を守り抜くと誓う。だが、そんなデリンジャーをFBIは“社会の敵”と称して執拗に追い続ける…。

 不況で苦しむ大衆が犯罪者デリンジャーを義賊としてもてはやしたのは、理由がある。まず弱者からは何も奪わず、利益を独り占めする銀行から大金を奪ったこと。仲間を決して見捨てないなど、独自のルールを貫いたこと。ハンサムでおしゃれ、物腰が柔らかく紳士的だったというルックスの良さ。マスコミを巧みに利用するしゃれっ気もあった。デリンジャーという人物は、映画の主人公そのものではないか。だが、ノミ行為で大金をせしめる犯罪組織が台頭するなか、あえて危険な銀行強盗にこだわる彼は、大衆に人気はあっても時代に取り残されていく運命だった。そんな彼の最期は簡単に予想できるが、短い生涯の最後に燃えた一途な恋愛を中心に据えたことで、映画は、主人公の男気を際立たせている。当代一の人気俳優ジョニー・デップに「俺の好きなもの。野球、映画、高級服、速い車。そして君だ」と言われては、女性なら誰でもシビレてしまう。コートを華麗になびかせて、銀行のカウンターをひらりと飛び越える様は、今では滅多に見られないダンディな銀幕のスターそのものだ。美男美女の熱い恋に、1930年代のモダン・クラシックな衣装が華を添える。

 FBIに指名手配され命懸けの逃亡の中で、愛するビリーとの未来を夢見るロマンチシズムが切ない。デリンジャーという男は、殺人も辞さない犯罪者であることは間違いない。だが、映画は彼を運命的な恋に燃え尽きた男として描ききる。本作にはFBI捜査官のメルヴィンとの対決の構図もあるが、男臭くクールな映画を得意とするマイケル・マンは、意外にもラブ・ストーリーの方に比重を置いた。実在の銀行強盗ジョン・デリンジャーを、スタイリッシュでエレガントなアウトローとして描いたマン監督。彼も、どこかで太く短い人生に憧れるロマンチストなのかもしれない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)エレガント度:★★★★☆

□2009年 アメリカ映画 原題「PUBLIC ENEMIES」
□監督:マイケル・マン
□出演:ジョニー・デップ、クリスチャン・ベイル、マリオン・コティヤール、他

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映画レビュー「キングダム/見えざる敵」

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◆プチレビュー◆
政治的な内容を、ハリウッドらしい演出で描いた社会派娯楽映画。テロの真犯人に迫る終盤の展開は手に汗を握る。70点】

 サウジアラビアの外国人居住区で大規模な自爆テロ事件が発生。同僚を亡くしたFBI捜査官フルーリーら4人は、現地での調査を主張し、半ば強引にサウジに渡る。状況のすさまじさに愕然としつつ、僅か5日という期限付きの調査を開始するが…。

 キングダム(王国)とは、石油による莫大な富によって王一族が支配する絶対君主制の国サウジアラビアを指す。国王の命令イコール法律、憲法すなわちコーラン、外国メディアの取材は許されず、メッカ巡礼以外の観光は不許可という特殊な世界だ。映画の最初に、サウジと米国との関係を、概略で説明してくれるのがありがたい。サウジが近隣諸国のテロ組織に密かに資金を提供し、それを米国が黙認している事実や、米国の敵イラン・イラクへの微妙な思惑、米国の軍事力や科学技術に依存する半面、介入を嫌がるサウジの空気などを頭に入れておくと、この映画がより楽しめるだろう。特に、民意を無視した国家間のあやふやなかけひきが、結局はイスラム圏をテロの温床にする点は、見逃せない。映画の冒頭、むごたらしい自爆テロの場面に驚かされるが、平和な日常のすぐ隣にテロの恐怖があるのが、ジハード(聖戦)という考え方が浸透する中東の実態なのだ。監督はピーター・バーグだが、製作はマイケル・マン。硬派な作風で、闘う男の美学を追求する。

 本作は社会派作品だが、ハリウッドの常で、虚実混合はもちろんある。資料によると、サウジ国内で女性やユダヤ系の人間が、堂々と捜査に加わるというのは考えにくいらしい。法医学、爆弾処理、情報分析を専門とするFBI捜査官たちが特殊部隊並みに活躍するなど、無理な設定もある。だがそのことを気にするよりも、政治的で複雑な内容をエンターテインメントとして見せた力量を評価したい。報道管制により情勢を把握するのが難しいサウジを舞台に選んだチャレンジは、今後、米映画界がこの国を無視できないと認めている証拠だ。映画は、圧倒的に不利な捜査状況で成果をあげるために、現地サウジの国家警察のガージー大佐という強い味方を配している。はじめは反発しあうガージーとフルーリー捜査官の間に、次第に目的を同じにするプロフェッショナル同士の絆が芽生えるところがいい。たとえそれが悲劇の中のひとときの慰めであれ、殺伐としたこの物語の中で、唯一の人間らしいパートが、異文化の彼らの間に生まれる友情なのだ。

 手持ちカメラを駆使したドキュメンタリー・タッチの映像は、サスペンスフルな終盤へと観客を引きずり込む。怒り、不安、緊張。カメラはそのまま観客の目だ。クライマックス、テロ事件の首謀者と狙いを定めていた、サウジ基盤のアルカイダ幹部アブ・ハムザの懐に飛び込んでの死闘は、迫力満点で圧倒されてしまう。拉致された人質の描写など本物の映像のように恐ろしい。そんな中、激しい銃撃戦に怯える少女にお菓子を差し出した女性捜査官ジャネットが、少女の小さな手からお返しの品物をもらう。その途端にテロの真相が目の前にこぼれ落ちる瞬間は、背筋が凍ってしまった。そして、リーダーのフルーリーが、同僚の死に涙ぐむジャネットの耳元でささやく言葉と、アブ・ハムザが孫に伝える言葉が符号となることを知ったとき、きれいごとではない人間の本質を見た思いがする。暴力と憎しみの連鎖を突きつけられ、やるせない。だがそれは、この作品が世界の現状を冷静に描いているということなのだ。敵が見えないのと同じくらい、正義もまた見えない。怖い作品だ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)娯楽アクション度:★★★★☆

□2007年 アメリカ映画 原題「The Kingdom」
□監督:ピーター・バーグ
□出演:ジェイミー・フォックス、クリス・クーパー、ジェニファー・ガーナー、他

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コラテラル

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◆プチレビュー◆
J.フォックスが南の島の絵葉書を渡す場面が泣かせる。技術面ではデジタル・ハイビジョンでの撮影が夜の場面に効果を発揮している。

夜のロサンゼルス。タクシー運転手マックスが乗せた一人の客はヴィンセントと名乗り、大金でマックスを専用運転手として一晩雇う。ヴィンセントは実はプロの殺し屋で、その夜のうちに、5人の人物を殺す仕事を請け負っていた…。

いわゆる巻き込まれ型サスペンスだが、この物語は主人公と犯人の距離が異常に近いのが特徴だ。何しろ一晩一緒に車中で過ごすことになるのだから。タイトルのコラテラルとは巻きぞえの意味。本作での不運な犠牲者は、平凡なタクシー運転手だ。

そもそもこの物語、最初から設定に無理がある。ヴィンセントは完全主義でプロの殺し屋だ。プロの仕事には普通プロの、つまり裏社会のドライバーを雇うもの。いきあたりばったりなど、ありえない。さらに殺人現場をマックスに目撃されたなら、彼を殺して次のタクシーに乗れば話は早い。しかし殺し屋はそうしないのだ。これは二人の男が運命的に結ばれてしまった話と解釈できる。彼らは無意識にお互いを必要とした。単純な犯罪劇ではないのだ。

初の悪役であるトム・クルーズは確かに頑張っている。厳密に言うと「タップス」で不良を演じ、「インタビュー・ウィズ・バンパイア」で冷徹な吸血鬼を演じているので“初の”とは言えないのだが。しかし、本作でも彼のスターのオーラは凄かった。役になりきる俳優が演技派と呼ばれる今の時代に、いつでもどこでもトム・クルーズであることはむしろ素晴らしいことではないか。比較するのは気がとがめるが、かつてG.クーパーやC.グランドがそうだった。トムはどこを切ってもクルーズなのだ。まるで、金太郎飴のようなヤツ…。彼こそ最後の“ハリウッド・スター”である!

監督のM.マンは骨太な男のドラマが大のお得意だ。さらに凝った映像で知られ、本作でも随所にスタイリッシュな映像美が光っている。冒頭に登場する夜のLAを俯瞰で捕らえたショットは、素晴らしい。映画の中によく登場するLAの街だが、美しいと感じたのは初めてだった。

恋愛要素が皆無のこの映画の中で、車中での、検事のアニーとマックスとの会話はひとときのやすらぎの時。実はこの出会いは後に効いてくる。殺し屋のヴィンセントにとっても、タクシー・ドライバーのマックスにとっても、人生と自分自身を見つめる決定的な夜の幕が開く。その幕はどんな形で降りるのか。最近、続編やリメイクばかりで退屈していたが、なかなか骨のあるオリジナル脚本だ。ハード・ボイルドタッチのサスペンスだが、心理劇として楽しめる。

□2004年 アメリカ映画  原題「COLLATERAL」
□監督:マイケル・マン
□出演:トム・クルーズ、ジェイミー・フォックス、ジェイダ・ピンケット・スミス、他

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アリ

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◆プチレビュー◆
常に挑発的で、決して守りに入らないアリ。冒頭のブルースにシビレた。

1964年、22歳でボクシングヘビー級チャンピオンになったカシアス・クレイは、名前をモハメド・アリに改名。ボクサーとして通算61戦56勝37KO5敗という驚異的な数字とは裏腹に、彼の人生は、栄光と挫折そのものだった。イスラム教への改宗、ベトナム戦争への徴兵拒否、不当に剥奪されたボクサーの資格を取り戻すための裁判と、苦難の日々がアリを待ち受けるが、彼は常に闘い続ける…。

ボクシングというスポーツは映画になりやすいのか、昔から数多くのボクシング映画が作られてきた。この映画は過去最高と言ってもいい選手モハメド・アリが主人公。未だ存命の実在の人物、スポーツ界のカリスマを描くのは、さぞ難しいだろうと予想していたが、やはり、従来のボクシング映画とは一味違った伝記映画。極力ドラマ性を廃し、ドキュメンタリータッチに徹している。

映画が描くのは若干22歳で世界ヘビー級チャンピオンになった1964年から、王者ジョージ・フォアマンを破って復活を遂げる1974年の“キンシャサの奇跡”まで。この、時代的にもアリ個人的にも複雑な状況を、M.マン監督はクドクドと説明せずに、ごく簡単に描くからすごい。音楽はブルースが中心だが、このオープニングの上手さと音楽の良さで、ぐっと引き込まれる。

元来、ボクサーといえば寡黙な人物が多い中、アリは有言実行を遥かに越えて、大ボラ吹きと呼ばれるくらい口が達者。相手を挑発しながらボクサーとして不動の地位を築いていくが、ベトナム戦争徴兵拒否が、彼の運命を狂わせる。劇中でも「敵は政府だ。」とはっきり口にするが、宗教的な理由や正義感などではなく、一人の人間として「恨みのない人間を殺す理由はない。それに自分は自由に生きたいんだ。」というシンプルな思いからの言動に見えた。だからこそ、とことんこだわれたに違いない。独特のトークと恐れを知らない挑発的な言動は、いやでもリング内外での闘いを彼に強いた。

ウィル・スミスは身も心もアリになりきったと言うだけあって、見事な肉体改造。ヘビー級の選手にしては驚くほど身が軽いアリの軽やかなフットワークは“蝶のように舞い、蜂のように刺す”という言葉そのもので、音楽界出身で抜群のリズム感を持つ彼を起用したM.マン監督の眼力のすばらしさを実感。

ドキュメンタリータッチは観客におもねる部分がなく、サービス精神にも欠けるが、個人的には好きなスタイル。アリという人物を描くのにも適しているように思う。アリの人生と交差させて描かれる社会情勢は、マルコムXやキング牧師の暗殺、公民権運動の高まりや、人種差別問題、ベトナム戦争、ザイールの国家の思惑など様々。そのときアリは何を思っていたのか、観客自身に考えさせる。つきはなしたアプローチが逆に新鮮だ。

雨のなか行われたアフリカ、ザイール(旧ベルギー領コンゴ)のキンシャサの復活試合は、今なお語り継がれる名勝負で、単に王座奪回というだけでなく、決して信念を曲げなかった男の自分自身に対する闘いの決着の場だ。体力の衰えや不安と闘いながら望んだ勝負に答えが出たとき、空から慈雨が降り注ぐ。自分の信じる正義のために、時代や政府という巨大な敵と戦ってきたアリの生き方は、たとえ欠点はあっても、スポーツという枠を越えて人々に訴えかける何かがある。

伝説のボクサー、モハメド・アリが自らの信念を貫き通す姿を描く伝記映画。常に闘い続けた男アリ。モハメド・アリはイスラム語で“賞賛されるべき人”という意味だ。

□2001年 アメリカ映画 原題「ALI」
□監督:マイケル・マン
□出演:ウィル・スミス、ジョン・ボイド、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
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新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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