映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ジャスティス・リーグ」「火花」「ギフテッド」「光」etc.

マット・デイモン

グレートウォール

Great Wall
世界中を旅する傭兵ウィリアムは、仲間と共に火薬を求めてシルクロードへと赴く。砂漠地帯で馬賊の襲撃をかわして身を潜めていた彼らは、謎の獣に襲われる。多くの仲間を失いながら馬で駆け抜けた彼らの前に巨大な城壁“万里の長城”が現れた。長城防衛の命を受ける禁軍に降伏したウィリアムと相棒のトバールは、戦略を司る軍師ワン、女性司令官リン隊長らから、ウィリアムを襲った獣の正体は2000年前から60年に一度現れ、幾度となく中国を襲ってきた伝説の怪物、饕餮(とうてつ)であり、万里の長城はその獣を防ぐために築かれたことを知らされる…。

遠い昔の中国を舞台に万里の長城に秘められた伝説に迫るファンタジー・アクション「グレートウォール」。人類史上、最大の建造物・万里の長城には数々の謎や伝説がある。本作はその伝説のひとつを壮大なスケールで映像化した中国と米・ハリウッドの合作映画である。超大作の割には、アメリカでの興収はさんざんで、先のアカデミー賞でも司会者が友人のマット・デイモンをこの映画のことでいじり倒していたのが記憶に新しい。それはさておき、荒唐無稽なファンタジーだと割り切ってみると、意外にも楽しめる。金や名声のために働いてきたウィリアムが、自己犠牲の精神で命がけで戦う禁軍の戦士たちの影響で正義に目覚める…というストーリーはありがちで、ドラマとしての深みはほとんど感じられない。だがそれを補うのは、ビジュアルの美しさと迫力だ。長城を守る精鋭部隊は、役割毎に、色分けされ、石弓、空中戦などアクロバティックな戦いを繰り広げる。中でもバンジージャンプのような動きで獣と闘う美女軍団のアクションには目を見張った。そしてそこには西欧社会が渇望する最先端の武器である火薬もあって、圧倒的な破壊力を見せつけるという派手な見せ場も用意されている。知将の軍師ワン、女司令官リンら、際立つ登場人物もいるが、全体的には、個は埋没し、獣も人間も集団としてのイメージしか残らない。すべての人民が犠牲的精神で国家につくすという中国らしい考え方の是非は別問題として、伝説という名前の自由奔放なイマジネーションが爆発するスペクタクル巨編に仕上がった。名匠チャン・イーモウのハリウッド進出作だが、今後、彼はこの路線なのだろうか?? 道を踏み外してほしくない…と心配しつつ見守りたい。
【60点】
(原題「THE GREAT WALL」)
(中国・米/チャン・イーモウ監督/マット・デイモン、ペドロ・パスカル、ウィレム・デフォー、他)
(荒唐無稽度:★★★★★)
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ジェイソン・ボーン

ジェイソン・ボーン ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]
世間から姿を消して暮らしていたジェイソン・ボーンの前に、CIAの元同僚ニッキーが現れ、CIAが世界中の情報を監視・操作する事を目的とした極秘プログラムが始動したこと、さらにボーンの過去にまつわる衝撃的な真実を告げる。再び姿を現したボーンを追うため、CIAはボーンの追跡を開始。追跡をまかされた若手エージェント、リーは、ボーンを再び組織に取り込もうと接触を図るのだが…。

CIAの暗殺者養成極秘プログラム・トレッドストーン計画によって生み出された最強の暗殺者ジェイソン・ボーンの孤独な戦いを描く大人気アクション・シリーズの新章「ジェイソン・ボーン」。旧3部作は記憶を失ったボーンが全ての記憶を取り戻すまでを描いたが、新シリーズのスタートとなる本作では、ボーンがトレッドストーン計画に志願した理由と、ボーンの父の死の新たな真相に迫る物語になっている。やはりボーン・シリーズは、マット・デイモンとポール・グリーングラス監督でなくては!と思うファンの一人としては、この新シリーズのスタートは心から喜ばしい。リアルを追求してきた過去作同様、世界中を監視するプログラムという、生々しすぎる設定や、ギリシャの抗議デモに紛れ込むボーンの姿は、現実に起こっている出来事としっかりとリンクして、臨場感たっぷりである。さらに、ラスベガスでのカーチェイスのド迫力には、驚かされた。約10年、待たされただけあって、期待感がハンパないので、何を見ても興奮してしまいがちだが、落ち着いて考えると、マット・デイモンはさすがにちょっと老けたと感じる。アクションの創意工夫も物足りない。やはりもう少し早くこの新章をスタートさせるべきだったのではなかろうか。それでもボーン・シリーズのストーリーのリアリティーは秀逸だ。自分で自分の首をしめるかのようなCIAの作戦とその後始末、ハッキングに対するそれぞれの思惑、殺人と憎しみが新たな因縁となるボーンと暗殺者の関係は、まるで現代アメリカの病んだ姿そのものではないか。上昇志向の強い切れ者エージェントのリーの、ストイックな仕事ぶりと暗躍がとびきりクールで、オスカー女優のアリシア・ヴィキャンデル演じるリーのニコリともしない冷徹な表情が、彼女が敵か味方が最後までわからないというサスペンスの緊張感を増加させてくれた。
【70点】
(原題「JASON BOURNE」)。
(アメリカ/ポール・グリーングラス監督/マット・デイモン、トミー・リー・ジョーンズ、ヴァンサン・カッセル、他)
(リアリティー度:★★★★☆)
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オデッセイ

オデッセイ 2枚組ブルーレイ&DVD(初回生産限定) [Blu-ray]
宇宙飛行士で植物学者のマーク・ワトニーは、火星での有人探査中に強烈な嵐に巻き込まれてしまう。仲間の乗組員はワトニーが死亡したと思い、火星を去ってしまうが、彼は生きていた。水も空気も通信手段もなく、基地に残された食料はわずかという危機的状況の中、ワトニーは何とか生き延びようとする。一方、地球では旧式の通信手段からの交信で、ワトニーの生存に気付いたNASAが、ワトニーを救出すべく大胆な計画に挑もうとしていた…。

火星に取り残された宇宙飛行士の決死のサバイバルを描くSF大作「オデッセイ」。水も空気も通信手段もない宇宙でサバイバル…と聞いて悲壮なストーリーを連想するだろうが、この物語の主人公ワトニーは、あきれるほど前向きだ。演じるマット・デイモンの素朴で誠実なキャラが重なって、誰もが主人公を応援したくなるはず。ワトニーが絶対に希望を捨てずに生き抜くと決め、知恵と勇気で難題をひとつひとつクリアしていく姿は、時にコミカルで時にシニカル。彼の生存が公表され、今や地球のすべての人がかたずをのんで見守るワトニー救出作戦を繰り広げる地球側のドラマもまた、見応えがある。確信犯的に時代遅れでダサいディスコ・ミュージックがこれでもか!とばかりに流れる中、絶望的な状況さえジョークにしてしまう人間の楽天性に魅せられた。なるほど、本作がゴールデン・グローブ賞で「コメディ・ミュージカル部門」にノミネートされたのも納得である。ジェシカ・チャステインやジェフ・ダニエルズ、キウェテル・イジョフォーら演技派と、クリステン・ウィグ、マイケル・ペーニャらコメディ系のキャストとのアンサンブルも絶妙だ。リドリー・スコット監督らしい美しく精緻な映像も健在。近年のSF「プロメテウス」などの悲壮感とは対極にあるスーパー・ポジティブSFエンタテインメントで、見ているこちらも元気がもらえる秀作だ。
【85点】
(原題「THE MARTIAN」)
(アメリカ/リドリー・スコット監督/マット・デイモン、ジェシカ・チャステイン、クリステン・ウィグ、他)
(ポジティブ度:★★★★★)
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オデッセイ@ぴあ映画生活

公開が延期になる映画のこと:米映画「ミケランジェロ・プロジェクト」

ひとりごと昨日のひとりごとが「たまにはこういうのもいいかも」と好評のメールをもらったので、今日も調子にのって同じ感じで。同じく点数はなしです(笑)。

公開が延期 or 中止になる映画といえば、興収が見込めない駄作を除いては、内容に問題がある映画ということになります。例えば、予期せぬ天災や悲劇的な事件・事故などで多くの被害者が出た場合、その方たちの心情に配慮するというケース。東日本大震災の後は、地震や津波などを連想する水の惨事を扱う映画の多くは、自粛という形で公開が延期になりました。中国で起こった大地震を扱った「唐山大地震」は、その内容からとても3.11の直後には直視できないものでしたが、その後、なんとか公開にこぎつけています。

11月6日(金)から公開されている「ミケランジェロ・プロジェクト」も、そんな中止・延期の果てに公開された、いわくつきの作品。ジョージ・クルーニーが監督・製作・脚本・主演をこなす同作品は、ナチスによって奪われた美術品を、アートに携わる人々が芸術戦士となって戦って取り戻すというエンタテインメント。出演している俳優も、マット・デイモン、ケイト・ブランシェット、ビル・マーレイ、ジョン・グッドマンら超豪華キャストです。ヒットが見込めるこんな映画がなぜに延期に? 当初は編集の遅れやCG処理へのこだわり、はたまた公開時期をズラしてオスカー狙い…なんて意見もありましたっけ。

しかし、どうやらこの映画、内容そのものに問題があったみたい。「ミケランジェロ・プロジェクト」の公開中止・延期は、日本だけでなく、本国アメリカも含む海外でも同じでしたしね。美術品の返還というテーマでは、最近ではヘレン・ミレン主演の「黄金のアデーレ」がありましたが、戦争中での出来事とはいえ、現在の持ち主である国との利害関係もからむ、簡単ではない問題。ヘタすると、国際問題にも発展しかねないデリケートな素材ということ。「これはもともと自分のもの!」は、戦争の原因にもなれば、戦後のゴタゴタにもなるセリフです。すったもんだがあったおかげで、映画そのものを単純明快に楽しめなかったのは、ちょっと残念でした。エンタメ作品なのに〜(泣)。

原作者のロバート・M・エドゼル氏は、映画「ミケランジェロ・プロジェクト」の原作になった「ナチ略奪美術品を救え 特殊部隊『モニュメンツ・メン』の戦争」の著者。ハリウッドで映画化となると「ミケランジェロ・プロジェクト」が注目をあび、本当はそっとしておきたい問題にマスコミが群がる…なんてことも懸念されたんでしょうね。日本だって、戦時中に略奪して返してない美術品があるだろうし、それはおそらく過去の戦争に参加したどんな国も同じ事情なはず。この映画の場合、一種の政治的圧力だったのかもしれませんが、とにもかくにも(小規模ながら…)公開にこぎつけたのは、映画ファンとしては喜ばしいことと言えるでしょう。

(出演:ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、ケイト・ブランシェット、他)
(2013年/アメリカ/監督・製作・脚本: ジョージ・クルーニー/原題「THE MONUMENTS MEN」)

ミケランジェロ・プロジェクト [Blu-ray]
ジョージ・クルーニー
松竹
2016-04-06


ナチ略奪美術品を救え─特殊部隊「モニュメンツ・メン」の戦争
ロバート M エドゼル
白水社
2010-12-21

この原作者、TV「世界一受けたい授業」に出てたそうです。
歴史のお勉強になる本!

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ミケランジェロ・プロジェクト@ぴあ映画生活

プロミスト・ランド

プロミスト・ランド [Blu-ray]
シェールガス革命を背景に信念に目覚める主人公を描く「プロミスト・ランド」。米国農業地帯の自然描写が静謐で美しい。

大手エネルギー会社のエリート社員であるスティーヴは、仕事のパートナーのスーと共にさびれた田舎町マッキンリーにやってくる。農業以外何もなく、経済的に困窮するこの町には、実は良質のシェールガスが眠っていて、スティーヴらの目的は、相場より安く農場主から採掘権を買い占めることだった。簡単な仕事だと思ったその交渉は、化学教師で町の名士のフランクや環境活動家のダスティンの出現によって、思いがけず難航。さまざまな方法でシェールガスをアピールするスティーヴだったが、やがて思いもよらない事実が発覚する…。

シェールガスは米国のエネルギー政策の救世主と言われているが、本作ではその知られざる負の側面を描いているので、明らかに社会派映画のイメージだ。だがこの映画の軸足は、環境問題や企業の不正告発ではなく、あくまでも一人の男が信念に目覚める心の成長に置かれている。主人公のスティーヴは農業地帯出身だけあって農家の心情には詳しい。不況にあえぐ農場経営も身をもって体験しているし、どうすれば彼らの懐に飛び込めるかも承知している。彼が幹部候補になるほどの成績を上げたのは、そんな農民の心の弱みを知っているからなのだ。大企業の倫理欠如も仕事と割り切っていた男が、あるきっかけで人間性に目覚めるという展開だけなら、よくある話だが、「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」でアカデミー脚本賞を受賞した知性派のマット・デイモンが脚本に参加した本作の終盤には、意外な驚きが隠されている。環境保護活動家ダスティンと敵対し、ついに彼の弱みを握ったスティーヴが知ることになるその事実は、想像もしなかったことで、それは彼が持つ仕事や会社に対する情熱や信頼を、根底から覆すものだ。さらに農家を単純に素朴な善人として描かないところもリアルで、デイモンの脚本家としての腕に感心させられる。シェールガス採掘の悪しき側面の描き方が中途半端に終わっているのがちょっと気になるが、緑豊かな農業地帯と、農民の生活を淡々と描写し、そこに米国の良心を映し出したかのような静かな映像には心惹かれる。劇中に登場するレモネード売りの少女の存在に、米国民が根底に持つ善意を託しているかのような良作だった。
【65点】
(原題「PROMISED LAND」)
(アメリカ/ガス・ヴァン・サント監督/マット・デイモン、ジョン・クラシンスキー、フランシス・マクドーマンド、他)
(社会派度:★★★☆☆)
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恋するリベラーチェ

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実在のピアノ・パフォーマーの過激な私生活を描く「恋するリベラーチェ」。この邦題はあまりにヒドい。

1977年、アメリカ。派手な衣装と巧みなトーク、華麗なピアノ演奏で観客を魅了する天才ピアニスト、リベラーチェは、圧倒的な人気を誇るエンターテイナーだった。ある時、平凡な青年スコットと出会い、互いに惹かれあった二人はすぐに恋愛関係となる。今まで知らなかったきらびやかな世界を知り、贅沢な生活におぼれるスコット。一方、リベラーチェは歳が離れたスコットにダイエット薬を与え、自分に似せて整形までさせるのだった。だが幸福な生活は長くは続かず、マンネリや薬物依存などが原因で二人の関係に亀裂が入る…。

日本ではあまり知られていないが、リベラーチェと言えば50〜70年代後半まで人気・実力共にトップのピアノ・パフォーマー。世界で一番稼ぐエンターテイナー、世界が恋したピアニストという言葉も、決して誇張ではない。ド派手な衣装とステージ・パフォーマンス、クラシックをポップスやジャズ風にアレンジする独自の演奏スタイルで大人気となり、後のエルヴィス・プレスリーやエルトン・ジョンにも多大な影響を与えたという。そんな華麗な表の顔とは対照的に、彼の私生活は、生涯、同性愛者であることをひた隠すというやるせないものだ。同性愛が、罪、あるいは病気とみなされた時代ということもあるが、アメリカの保守的なショービズ界においては、隠さざるをえなかったのだろう。本作は、そんなリベラーチェの最愛の恋人スコット・ソーソンとの愛憎を描いているが、恋人を自分好みに作り変えるその嗜好は、いびつなナルシスト。だがスコットもまた未体験のゴージャスな暮らしと、親代わりのようなリベラーチェに“同化する”ことを望んでいるようにも見える。ステージや私生活を過剰なまでに飾り立てたリベラーチェが、母親が死んだ時「これでやっと自由になれる」とつぶやいたのが印象的だった。この一瞬だけがリベラーチェの素顔だったように思える。何だか軽いラブコメのような邦題がついているが、原題の意味はリベラーチェのトレードマークである燭台にちなんだ「枝付き燭台の影で」。異色の名ピアニストの光と影を描いた本作は、米TV界の権威ある賞・エミー賞でも多くの賞を受賞した。異様なメイクと衣装で怪演するマイケル・ダグラスとマット・デイモンの熱演もさることながら、顔の肉を頭の後ろまで強引に引っぱるという苦行に耐えて演じる整形外科医のロブ・ロウの役者魂には、頭が下がる。
【65点】
(原題「BEHIND THE CANDELABRA」)
(アメリカ/スティーヴン・ソダーバーグ監督/マイケル・ダグラス、マット・デイモン、ダン・エクロイド、他)
(虚飾度:★★★★☆)
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エリジウム

エリジウム [Blu-ray]
宇宙規模の格差社会で人類を救うために命がけで戦うことになる主人公を描く異色SF「エリジウム」。スキンヘッドとサイボーグ姿のマット・デイモンに悲壮感が漂う。

2154年。社会は、極端に二極化され、永遠の命が約束されたスペース・コロニー“エリジウム”には富裕層が、荒廃した地球には貧困層が暮らしている。エリジウムの政府高官ローズは、地球からの不法入国者を非情に排除していた。地球に住む工場労働者のマックスは、事故で照射線を浴び余命5日を宣告される。生きることに執着するマックスは、闇商人との取引で、あるデータを盗みだすことを条件に、エリジウムに不法入国することになるが…。

監督のニール・ブロンカンプは異色SF「第9地区」で注目を集めた俊英。独創的な世界観と弱者の側に立った風刺性が彼の個性だ。未来に誕生している格差社会は見慣れた設定だが、余命5日の男が、自らをコンピューター化した身体で、図らずもレジスタンスに身を投じるという切迫した展開はなかなかスリリングである。主人公のマックスは、使い捨てのような貧困層の労働者。だがそんな彼が、施設で育った幼い頃にシスターから「あなたは特別な存在」と言われたのはまるで予言のように当たる。肉体改造によってサイボークと化したマックスはアニメチックなルックスになるが、彼に特殊能力はない。さらに最初は自分の延命のためだけにエリジウム行きを切望する。この凡人ぶりが何とも新鮮なのだ。だからこそマックスが、やがて自らも気付かないうちに世界を変えるヒーローになっていく過程に面白みが増すし、マックスを待つ残酷な運命の選択に彼の精一杯の男気を感じて感動してしまう。終盤には、機械が敵にも味方にもなる皮肉な描写も。単純な、強者と弱者の逆転劇ではないストーリーには現実社会にも通じる社会派のメッセージが感じられる。スラム化した地球の荒廃ぶりのリアリティもさることながら、日本のアニメファンを自認するブロンカンプ監督らしい、日本刀やロボットのガジェットの楽しさ、そして見終わった後にじんわりと湧き上がる社会的テーマと、娯楽アクションとしても合格点。ハリウッドに乗り込み、スター俳優を使いこなしたニール・ブロンカンプのイマジネーションを楽しめるSF作品だ。
【75点】
(原題「ELYSIUM」)
(アメリカ/ニール・ブロンカンプ監督/マット・デイモン、ジョディ・フォスター、シャールト・コプリー、他)
(悲壮感度:★★★★☆)
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幸せへのキセキ

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家を買ったら動物園のおまけ付き!の驚きと感動の実話「幸せへのキセキ」。淡々とした演出が好感度大だ。

半年前に最愛の妻を病気で亡くしたベンジャミン。悲しみから立ち直れず、反抗期の息子とは心が通じない。新聞コラムニストの仕事も頭打ちの彼は、上手くいかない人生を刷新しようと、郊外の丘の上に立つ理想の邸宅を購入する。だがその物件には、閉鎖中の動物園を維持するという条件が付いていた。ベンジャミンは経験も知識もない中、ある思いを胸に動物園の再オープンを決心するが、資金難や農務省の検査など、数々の難題が降りかかる…。

「私たち、動物園を買いました」。そのものズバリの原題に驚くが、これは英国のコラムニスト、ベンジャミン・ミーの自伝を元にしたトゥルー・ストーリーだというからさらに驚く。映画では、経営難の動物園を立て直すパートは、少々上手く行きすぎなのだが、本作が軸足を置いているのは、人生すべてに後ろ向きになってしまった家族が、もう一度、絆を取り戻すドラマを描くことだ。同時に、勝気な美女が背中を押すことで、内向的な男性が奮起する、ウェルメイドなストーリーでもある。主人公のベンジャミンは、反抗期の息子とは母の死について正面から語ることを避けてきた。だが、年老いたベンガルトラの安楽死を考えることで、父子は初めて互いの悲しみを共有する。物語は、愛する誰かを失っても、悲しみだけを得るのではなく、その人が新しい大切な“何か”をもたらすこともあるのだと教えてくれるのだ。真面目で誠実な父親を演じるマット・デイモンは適役だが、他の俳優はいつもと違うイメージなのが面白い。セクシーなスカーレット・ヨハンソンは極めて健康的だし、クセ者俳優のトーマス・ヘイデン・チャーチも何だかとても“イイ人”だ。監督のキャメロン・クロウは、この風変わりでいてハートウォーミングな実話を、ベタなお涙頂戴物語にはせず、さわやかな風のように淡々と演出してくれた。個人的にはもう少しユーモアがほしかったところだが、それでもこの優等生のように品行方正なる映画を最後まで好感を持って見ることができるのは、動物園のスタッフのリリーを演じるエル・ファニングの、素朴で控えめな笑顔にも似た、演出の奥ゆかしさがあるからだ。ラストのエピソードには、ステキなサプライズが待っていて、この家族が大好きになることだろう。
【65点】
(原題「WE BOUGHT A ZOO」)
(アメリカ/キャメロン・クロウ監督/マット・デイモン、スカーレット・ヨハンソン、トーマス・ヘイデン・チャーチ、他)
(チャレンジ精神度:★★★★☆)
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コンテイジョン

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新種のウィルスの恐怖を豪華キャストで描く群像ドラマ「コンテイジョン」。素っ気なく地味な演出が、逆に、ひたひたと迫り来る恐怖を感じさせる。

ミッチの妻のベスは、香港出張からアメリカに帰国した直後、原因不明の疾病で急死する。同じ頃、香港、ロンドン、東京でも人々が謎の死を遂げる。接触感染により、数日で命を落とすという非常に強い新種のウィルスが発生していたのだ。アメリカ疾病予防センター(CDC)と世界保健機構(WHO)はワクチンの開発を急ぐが、フリーランスのジャーナリスト・アランがブログ上で発信した不確かな情報により、人々はパニック状態に陥ってしまう…。

地球規模で広がるウィルス感染の恐怖は、現実にも、エボラ出血熱やサーズなどがあり、決して絵空事ではない。この映画で描かれるのは、そんなパンデミックが起こったときの、さまざまな立場の人間がみせる非常事態への接し方と、人間の脆さ、そしてわずかに残る誠意だ。マット・デイモンやマリオン・コティヤール、ケイト・ウィンスレットなど、国際的な豪華スターが競演するが、映画は華やかさとは無縁。むしろ、淡々と進む不気味な演出に、スターが出演していることを忘れてしまいそうになる。何しろ、映画冒頭で、オスカー女優のグウィネス・パルトロウがあっさりと死ぬ。しかも原因を探るため、病院で頭部を開いて脳を見せるというショッキングなシーンまであって、これから起こるただ事ではない事態を予感させる。とはいえ、グロテスクな感染の描写は少なく、むしろパンデミックにおびえる人々の心理を描くのに時間を割く。本物のウィルスも恐ろしいが、情報という名の“ウィルス”の感染力の激しさも同じくらい怖いのだ。最後に明かされるウィルス発信源の謎と、映画冒頭のベスのシークエンスがつながる時、冷ややかな戦慄が走る。派手さはないが、ドライな演出にリアリティを込めた、ソダーバーグらしいパニック・スリラーだ。
【60点】
(原題「CONTAGION」)
(アメリカ/スティーヴン・ソダーバーグ監督/マリオン・コティヤール、マット・デイモン、ローレンス・フィッシュバーン、他)
(リアリティ度:★★★★☆)
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インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実

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知れば知るほど腹が立つリーマン・ショックのからくり。教育の場まで悪に染まっていようとは驚きだ。アメリカの経済問題は世界中に影響するだけに無関心ではいられない

2008年のリーマン・ブラザーズ社破綻、いわゆるリーマン・ショックは、なぜ世界的経済危機を引き起こしたのか。1930年代より米国には金融業界に規制があったのだが、80年代のレーガン政権が規制緩和を行う。投資や利益の追求が加速した上に、企業の役員や顧問が政界入りし、法改正を行った。そんな中、ついに住宅バブルが崩壊、多くの人々が職と家を失うことに。映画はこの一連の流れを年代を追って説明し、国家規模の“ネズミ講”が生まれた背景を、金融業界関係者や政治家、ジャーナリストらへの取材を基に検証していく。

経済問題はもともと難解で、映画に山ほど登場する経済用語はとても難しい。桁違いのカネが動くさまは想像するのも困難だ。だが、米国の金融界、政界、経済学界がグルになって米国の政治を操り、一握りの富裕層だけがおいしい思いをした上に、何の罪にも問われていないことだけは分かる。規制緩和が発端になって、金融工学というワケが分からない“学問”のもと、多くの金融派生商品が開発され、詐欺まがいの取引が横行したのだ。犠牲になったのはコツコツと働いてきた庶民である。映画は、FRB議長、政府高官、著名エコノミストたちにインタビューを試みるが、多くが取材拒否。このことがかえって彼らの存在をどす黒く印象付けた。アメリカだけでなく、アイスランドやフランス、中国にまで取材をしたこの力作は、同じ題材を扱ったマイケル・ムーアの「キャピタリズム」と多くの部分が共通するが、よりショッキングなのは、企業だけでなく、大学という教育の場にまで悪事が蔓延していたことを暴いているから。経済学の“御用教授”がまるでアルバイト感覚で、企業の手先になっているのだから、もう何を信じていいのか分からない。何よりも、危機を招いた張本人たちがまったく悪びれずに、いまだに大金を手にしている姿には心底怒りがこみ上げる。。ナレーションを務めるのはマット・デイモン。第83回アカデミー賞でドキュメンタリー長編賞を受賞した作品だ。
【70点】
(原題「INSIDE JOB」)
(アメリカ/チャールズ・ファーガソン監督/ナレーション:マット・デイモン)
(憤り度:★★★★★)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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