映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ジャスティス・リーグ」「火花」「ギフテッド」「光」etc.

ミア・ワシコウスカ

アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅

アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅 MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
アリスは父の形見であるワンダー号での航海を終えて3年ぶりにロンドンに戻るが、雇い主から大切な船を奪われそうになる。失意のアリスの前に、青い蝶アブソレムが現れ、マッドハッターの危機を告げる。過去に心を奪われ、帰らぬ家族を待ち続けるハッターを救うため、アリスは再びワンダーランドを訪れ、白の女王、チェシャ猫ら、懐かしい仲間たちと再会。アリスは、大切な友だちであるマッドハッターのため、時間の番人・タイムが持つ、時間をコントロールできる“クロノスフィア”を盗み、過去を変える禁断の旅に出るが…。

大ヒットした「アリス・イン・ワンダーランド」の待望の続編だが、ティム・バートンは今回は製作にまわり、「ザ・マペッツ」のジェームズ・ボビン監督がメガホンをとっている。これがそもそもマズい。バートンという特濃の才能を意識するあまり、没個性の演出に陥った本作は、タイムトラベルものにつきものの矛盾を差し引いても、何だか魅力に乏しいものだ。相変わらずの凝りに凝った映像はクラクラするほどの色彩にあふれ独特の世界観を堪能できるが、ジョニー・デップ演じるマッド・ハンターが終始暗いのでさっぱり楽しくない。怪演が個性のサシャ・バロン・コーエンも重要な役どころなのに、どこかパンチ不足だ。赤の女王と白の女王の姉妹の不和の原因が明かされるのは、興味深いエピソードだったが、原作である「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」から、前作以上に大きく離れた物語は、原作ファンにとっては不満が残るかもしれない。何しろ、ワンダーランドの可愛らしいキャラクターたちはほとんど活躍しないのだから。とはいえ、過去は変えられないが、未来へと向かって進むことの大切さは、時間は決して敵ではないと気づくことで、しっかりと伝わってきた。ラストにはちょっぴりフェミニズムの香りも。何よりも、前作では新人だったミア・ワシコウスカが、着実なキャリアを積んで、堂々とした存在感を示す女優になっているのが頼もしい。続編としての魅力には欠けるが、時間と折り合いをつけて生きることを学ぶアリスの成長物語としてギリギリセーフといったところだ。
【55点】
(原題「ALICE THROUGH THE LOOKING GLASS」)
(アメリカ/ジェームズ・ボビン監督/ジョニー・デップ、アン・ハサウェイ、ミア・ワシコウスカ、他)
(カラフル度:★★★★☆)
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クリムゾン・ピーク

クリムゾン・ピーク ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]
20世紀初頭のアメリカ、ニューヨーク。10歳のとき、死んだ母の幽霊と遭遇して以来、イーディスは、霊を見ることができるようになる。ある日、母の亡霊から「クリムゾン・ピークに気を付けなさい」という不思議な警告を受ける。成長し作家になる夢を抱いたイーディスだったが、謎めいた英国人男性トーマスと運命的な恋に落ち、結婚。英国に移り住むことに。トーマスの姉ルシールとともに暮らすようになったその屋敷は、山頂にある広大なゴシック建築で、冬になると地表に露出した赤粘土が雪を赤く染めることから“クリムゾン・ピーク”と呼ばれていた。イーディスが新しい生活に慣れてきた頃、体を真紅に染めた亡霊たちがイーディスの前に次々に現れ、奇妙な警告をする。やがてイーディスは、屋敷と姉弟に隠された衝撃的な秘密を知ることになるのだが…。

鬼才ギレルモ・デル・トロ監督によるゴシック・ロマン「クリムゾン・ピーク」。朽ち果てた古い屋敷、いわくありげな美しい姉弟、屋敷に隠された秘密に亡霊たちの警告…と、怪奇幻想ムード満載のミステリーホラーだが、正直、怖さはほとんとない。むしろ美しさを堪能する作品だ。母親の亡霊のビジュアルが強烈すぎてビビッたのだろうか、せっかくの警告をヒロインのイーディスはまったく活かせない。母の亡霊は、大人になり本当に危機に陥った娘をサポートするかと思えばそういうわけではない。イーディスをめぐるトーマスと幼馴染の医者アランとの恋愛描写も、中途半端な印象だ。ミステリーなので謎解きの詳細は明かせないが、終盤のバトルは強引すぎるし、そもそもこの対決、必要なのか?!と首をかしげた。だがそれでもなお、この作品に引きこまれるのは、ギレルモ・デル・トロ監督ならではの美意識が画面の隅々まで行き届いていて、完璧に幻想世界を作り上げているから。さらにワシコウスカ、ヒドルストン、チャステインというキャスティングの妙が効いている。特に姉ルシールを演じるジェシカ・チャステインは、今、最もノッている女優の一人だけあって、底知れない狂気と美しさをたたえていた。物語の細部より、ダークで華麗な映像美を楽しみたい作品だ。
【60点】
(原題「CRIMSON PEAK」)
(アメリカ/ギレルモ・デル・トロ監督/ミア・ワシコウスカ、トム・ヒドルストン、ジェシカ・チャステイン、他)
(耽美度:★★★★★)
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クリムゾン・ピーク@ぴあ映画生活

奇跡の2000マイル

奇跡の2000マイル [DVD]
24歳の女性ロビンは、うまくいかない人生と決別するため、オーストラリア西部の砂漠を単独で横断し、インド洋を目標に旅に出る。荷物を積むためのラクダ4頭と愛犬一匹を連れて徒歩でいくという無謀な旅だ。大自然の中、ロビンは7ヶ月もの間、貴重な出会いと経験を積み重ねていく…。

1977年にオーストラリア西部の3,000キロに及ぶ砂漠を単独横断した実在の女性ロビン・デビッドソンの回顧録を原作とした「奇跡の2000マイル」。原題の「TRACKS」とは轍(わだち)の意味で、自分が通ってきた道は、そのまま生きる道程と重なっている。ラクダ牧場で調教を学び、孤独な旅に出るヒロインは、人とうまく距離を取ることはできないが、物言わぬ動物たちとは分かり合っている。冒険家だった父や自殺した母のことが時折回想シーンで登場するが、この孤独な旅は、ロビンが「自分は何者か、何のためにこんな旅をしているのか」と自問するための儀式のようだ。自然に同化しようとするかのようなロビンの姿は、どこか「イントゥ・ザ・ワイルド」の主人公を思わせる。だがロビンは、スポンサーでもあるナショナル・ジオグラフィックのカメラマンや、案内人である先住民アボリジニ、荒野で出会う人々の好意を素直に受けることで、生き伸びることに成功するのだ。日本でいえば北海道から鹿児島までに相当する砂漠の長旅は過酷ではあるがストーリーは起伏に乏しい。だがその分、圧倒的な自然の神々しさが際立った。主演のミア・ワシコウスカの熱演も鮮烈に記憶に残る。
【65点】
(原題「TRACKS」)
(オーストラリア/ジョン・カラン監督/ミア・ワシコウスカ、アダム・ドライバー、ライナー・ボック、他)
(サバイバル度:★★★★☆)
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奇跡の2000マイル@ぴあ映画生活

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ



21世紀を生きる吸血鬼の男女の奇妙なラブ・ストーリー「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」。音楽を重要な脇役にするあたり、ジャームッシュらしい。

アメリカ・デトロイトの寂れた屋敷に隠れるように暮らすアダムは、表舞台には姿を現さないが、どんな弦楽器も引きこなすカリスマ・ミュージシャン。実はアダムは何世紀も生き続けている吸血鬼で、純粋な血液を病院からひそかに調達して生きている。その一方で、堕落し蛮行を繰り返す人間たちに眉をひそめていた。ある時、何世紀も恋人として愛し合ってきた同じ吸血鬼の恋人のイヴがモロッコのタンジールからアダムに会いにやってくる。甘い時間を過ごす二人だったが、そこにイヴの妹で型破りな性格のエヴァが現れたことから、彼らの運命が狂いはじめる…。

オフビートな作風が魅力のジム・ジャームッシュの新作は、吸血鬼映画。昨今流行のファンタジーやアクションものとは一線を画す、アンニュイなラブ・ストーリーだ。何世紀も生きている吸血鬼の恋人同士の名前がアダムとイヴとは随分と古典的だが、アダムが天才ミュージシャンという設定がいかにも音楽好きのジャームッシュらしい。夜のドライブではジャック・ホワイトの生家、元ミシガン劇場の跡地などを巡ってみせる。財政破綻して寂れたデトロイトの夜景は不思議なほど魅力的だ。だが街の荒廃が自己破壊的な人間の姿に重なり、高潔な吸血鬼がそれを嘆くという構図や、吸血鬼が人間をゾンビと呼ぶなど、随処にシニカルな視点がうかがえる。アダムとイヴがあたりかまわず人間を襲って血を吸ったりせず、病院で調達する“上物の血液”しか飲まないのは、人間を軽蔑しているからなのだ。イヴの妹で少々問題児のエヴァは運命を転がすトリックスターで、彼女の登場でアダムとイヴは、デトロイトを離れざるをえなくなる。だが頼りにしていた、キットこと異端の作家クリストファー・マーロウは、汚染された血をうっかり飲んで死に至る。この世はもはや吸血鬼が生きるにはあまりにも汚れた世界なのか。しかし衰弱していく恋人たちが選択する道は、原初的な欲望に立ち返るものだ。原点回帰こそ生きる活路ということだろうか。吸血鬼カップルを演じるのは、不健康な美しさが持ち味のトム・ヒドルストンとティルダ・スウィントン。知的で獰猛、エレガントでスタイリッシュな吸血鬼役は、あまりにもハマッていた。
【65点】
(原題「ONLY LOVERS LEFT ALIVE」)
(米・英・独/ジム・ジャームッシュ監督/トム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントン、ミア・ワシコウスカ、他)
(シニカル度:★★★★☆)
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21世紀を生きる吸血鬼の男女の奇妙なラブ・ストーリー「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」。音楽を重要な脇役にするあたり、ジャームッシュらしい。 アメリカ・デトロイトの寂れた屋敷に隠れるように暮らすアダムは、表舞台には姿を現さないが、どんな弦楽器も引きこなすカリスマ・ミュージシャン。実はアダムは何世紀も生き続けている吸血鬼で、純粋な血液を病院からひそかに調達して生きている。その一方で、堕落し蛮行を繰り返す人間たちに眉をひそめていた。ある時、何世紀も恋人として愛し合ってきた同じ吸血鬼の恋人のイヴがモロッコのタンジールからアダムに会いにやってくる。甘い時間を過ごす二人だったが、そこにイヴの妹で型破りな性格のエヴァが現れたことから、彼らの運命が狂いはじめる…。 オフビートな作風が魅力のジム・ジャームッシュの新作は、吸血鬼映画。昨今流行のファンタジーやアクションものとは一線を画す、アンニュイなラブ・ストーリーだ。何世紀も生きている吸血鬼の恋人同士の名前がアダムとイヴとは随分と古典的だが、アダムが天才ミュージシャンという設定がいかにも音楽好きのジャームッシュらしい。夜のドライブではジャック・ホワイトの生家、元ミシガン劇場の跡地などを巡ってみせる。財政破綻して寂れたデトロイトの夜景は不思議なほど魅力的だ。だが街の荒廃が自己破壊的な人間の姿に重なり、高潔な吸血鬼がそれを嘆くという構図や、吸血鬼が人間をゾンビと呼ぶなど、随処にシニカルな視点がうかがえる。アダムとイヴがあたりかまわず人間を襲って血を吸ったりせず、病院で調達する“上物の血液”しか飲まないのは、人間を軽蔑しているからなのだ。イヴの妹で少々問題児のエヴァは運命を転がすトリックスターで、彼女の登場でアダムとイヴは、デトロイトを離れざるをえなくなる。だが頼りにしていた、キットこと異端の作家クリストファー・マーロウは、汚染された血をうっかり飲んで死に至る。この世はもはや吸血鬼が生きるにはあまりにも汚れた世界なのか。しかし衰弱していく恋人たちが選択する道は、原初的な欲望に立ち返るものだ。原点回帰こそ生きる欲望ということだろうか。吸血鬼カップルを演じるのは、不健康な美しさが持ち味のトム・ヒドルストンとティルダ・スウィントン。知的で獰猛。エレガントでスタイリッシュな吸血鬼役は、あまりにもハマッていた。【65点】(原題「ONLY LOVERS LEFT ALIVE」)(米・英・独/ジム・ジャームッシュ監督/トム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントン、ミア・ワシコウスカ、他)(シニカル度:★★★★☆)

欲望のバージニア

欲望のバージニア Blu-ray
禁酒法時代のアメリカで不死身伝説を打ち立てた3兄弟の実話を描く犯罪ドラマ「欲望のバージニア」。腐敗した権力に立ち向かう無法者たちの生き様が熱い。

禁酒法時代のバージニア州。ボンデュラント3兄弟は密造酒ビジネスを営み、成功していた。中心は男気あふれる次男のフォレスト。怪力で酒びたりの長男ハワードと、気弱だが野心家の三男ジャックとともに「絶対に死なない」という伝説を打ち立てていた3兄弟だが、新任の特別取締官レイクスが町に現れ、法外な賄賂を要求する。周囲は次々に屈するが、ボンデュラント3兄弟だけは断固として拒否。その日を境に、彼らと周囲の人々は非道な脅迫にさらされることになる…。

1930年代、バージニア州のフランクリンは世界で最も密造酒の製造が盛んな地域だったそうだ。そんな土地で“上質な密造酒と健全な商売”で成功したボンデュラント3兄弟は、今も地元のヒーローとして尊敬を集めているという。本作は、ボンデュラント兄弟の末っ子ジャックの孫が、実話に数十年にわたる噂やゴシップを織り交ぜてつづった同名ベストセラー小説を原作としている。ということで、当然、脚色はあるにしても、3兄弟の生き様は無法者のそれなのに、たまらなく熱くカッコいいのだ。特に、寡黙だが度胸と気迫にあふれた次男のフォレストの求心力はすごい。シカゴから来たワケありの美女マギーの前ではオクテな彼だが、兄弟を守り、一家の誇りを守る姿に、レイクス特別取締官の側につかねばならないはずの町の保安官さえも、心の中では3兄弟に肩入れしてしまうほどだ。密造ビジネスという法の外での物語の中、正義と悪、田舎と都会、男と女と、あらゆる要素の対比が効いている。クライマックスにいたるまでもおびただしい血が流れるが、これは正義のワルと非道なワルとのガチンコ勝負。美しくも激しい復讐劇なのだ。妖艶なジェシカ・チャスティン、無垢なミア・ワシコウスカ、偏執的なガイ・ピアースと、出演俳優もメリハリが効いて豪華だが、ギャングのボスを演じるゲイリー・オールドマンの役割がはっきりしないところがちょっと惜しい。ラストには橋の上での“決闘”の後の後日談が語られる。幸せな家族風景と、不死身伝説が思いがけない形で崩れるエピソードが、激動の人生を歩んだ3兄弟の物語を味わい深く締めくくっていた。
【65点】
(原題「LAWLESS」)
(アメリカ/ジョン・ヒルコート監督/シャイア・ラブーフ、トム・ハーディ、ガイ・ピアース、他)
(流血度:★★★★☆)
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欲望のバージニア@ぴあ映画生活

イノセント・ガーデン

イノセント・ガーデン [Blu-ray]
鋭すぎる感覚を持つ少女が謎めいた叔父の秘密を知る「イノセント・ガーデン」。耽美な映像と流血描写が交じり合い、不思議な陶酔感を感じさせる。

繊細で研ぎ澄まされた感覚を持つ少女インディアは18歳の誕生日に謎めいた鍵を受け取る。最愛の父が急死し、葬儀の日に、長年行方不明だった叔父チャーリーが現れ、その日からインディアが住む外界から遮断された広大な屋敷に一緒に住むようになる。以前からインディアと折り合いが悪い美しい母は、洗練されたチャーリーを歓迎し、インディアもまたこの謎めいた叔父に惹かれていくが、周囲の人々が次々に姿を消していくことから、チャーリーの過去に疑問を持ち始める…。

「オールドボーイ」や「親切なクムジャさん」などの韓国の鬼才、パク・チャヌク監督がハリウッドデビュー作として手がけるサスペンス・ミステリーだ。繊細に作りこまれた映像、美しく謎めいた登場人物、秘められた忌まわしい過去に、情け容赦ない暴力描写と、この監督らしさは健在。だが流血シーンは、それまでの作品に見られる“痛い”描写というよりも、どこか耽美で幻想的だ。ヒロインのインディアは、視覚や聴覚などの感覚が人並み外れて鋭敏なことから、周囲になじめずにいる孤独な少女。すべてが完璧な美しい叔父チャーリーもまた同じ感覚の持ち主であることから、危険な香りが漂っていることを承知で運命的に彼の惹かれてしまうのだ。だが、ただ一人の理解者だった亡き父から仕込まれた狩猟の腕を持つインディアの秘めた凶暴性は、簡単には運命に屈しない。毎年誕生日に送られてくる同じデザインのサドルシューズを履くインディアは、最後にはその送り主からクロコダイルのハイヒールをプレゼントされる。彼女と同類であるべきと望む送り主の希望とは裏腹に、その大人びた靴はインディアを覚醒させてしまったようだ。冒頭、母親のブラウスに父親のベルトを身に着けたインディアが遠い目で草原を見つめている。それはすべてに決着がついたラストへと繋がっている。繊細だが意志の強さを感じさせるヒロインをミア・ワシコウスカが硬質な表情で好演。ハリウッドでの英語作品という環境でも、パク・チャヌク監督の暴力性と美意識は健在だ。
【65点】
(原題「STOKER」)
(アメリカ/パク・チャヌク監督/ミア・ワシコウスカ、マシュー・グード、ニコール・キッドマン、他)
(繊細度:★★★★☆)
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イノセント・ガーデン@ぴあ映画生活

アルバート氏の人生

アルバート氏の人生 [DVD]
性別を偽って生きる女性の数奇な人生を描く「アルバート氏の人生」。グレン・クローズにもオスカーをあげたいなぁ…。

19世紀のアイルランド。初老のアルバートは、長年、女性であることを隠してホテルでウエイターとして住込みで働き、ひっそりと目立たぬように暮らしている。ある時、ハンサムなペンキ職人のヒューバートがアルバートの部屋に泊ることになり、女であることを知られてしまう。だが、自分らしく生きるヒューバートの姿に影響を受け、アルバートは徐々に変わり始める。最愛のパートナーを得て、その人と小さな店を持つことができたらどんなにいいか。やがてアルバートは、ホテルのメイドで若く美しいヘレンに恋心を抱くようになるのだが…。

飢饉と疫病に見舞われた19世紀のアイルランドでは、貧しく身寄りがない女性が自立して生きる道はなかった。過酷な過去を持つアルバートは男装して職を得て生きてきたが、この映画は女性の自立や社会の不条理を叫ぶものではない。これまでも女性たちの複雑な生き様を描いて手腕を発揮してきたロドリゴ・ガルシア監督は、この物語を、長い間自分を偽ってきたがゆえにアイデンティティーを失い、いびつな性を生きるしかなかった女性の悲喜劇として描いている。男装した女であるアルバートが真面目な顔で年若いヘレンにプロポーズする様は、悲しくも笑える場面だ。だがそこには、男であろうと女であろうと、愛し愛される伴侶を得たいという、人間なら誰もが願う切実な思いがある。一度だけ女装して海辺を走るシーンもまた微苦笑を誘うのだが、女としての幸せが何なのかも判らず自分を見失った主人公を笑うことなど出来なかった。自分の夢を持った途端に、人生が崩れ落ち、悲劇的な結末へと至るアルバートの一生は、やはり悲しみを背負った人々にある種の安らぎを与えて幕を閉じる。まっすぐに結んだ口元、吸い込まれそうな青い瞳、凛としたたたずまいが美しい名女優グレン・クローズが、ほとんど無表情で演じる知的で温和なアルバートは、一世一代の当たり役。舞台で長年この役を演じ、満を持して映画化、入魂の演技でスクリーンに焼き付けた。誰もが認める大女優はこの作品でもオスカーを逃したが、彼女の実力と名演の到達点と言えよう。
【70点】
(原題「ALBERT NOBBS」)
(アイルランド/ロドリゴ・ガルシア監督/グレン・クローズ、ミア・ワシコウスカ、アーロン・ジョンソンジャネット・マクティア、他)
(やるせなさ度:★★★★☆)
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ジェーン・エア

ジェーン・エア [Blu-ray]ジェーン・エア [Blu-ray]
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封建的な時代に自分を貫き愛を勝ち取った女性の生き方を描く「ジェーン・エア」。何度も映画化された古典だが、今回はヒロインが魅力的だ。

幼い頃に両親を失くし孤児としてつらい日々を送ったジェーン・エア。成長し教師の資格を取って、ソーンフィールド邸に住み込みで働く家庭教師の職を得る。主不在の屋敷で働きながら静かな日々を送るジェーンは、ある時、主のロチェスター氏と出会う。暗く冷たい雰囲気を持つロチェスターだが、他人に媚びないジェーンに興味をいだき、ジェーンもまた彼の内面の優しさを知って、惹かれていく。互いに愛し合い、結婚を誓うが、ロチェスターは、人には言えない恐ろしい秘密を抱えていた…。

原作は英国の女流作家シャーロット・ブロンテの古典的名作。資料によると、劇場公開映画だけでも過去18回も映画化されているそう。そのため、物語は知り尽くされ、鮮度は低いのだが、フレッシュなのはキャストだ。ジェーンは、決して容姿には恵まれていないが意志が強く知的な女性。過酷な人生を凛として生きるヒロインを演じるミア・ワシコウスカが実にいい。小説の実年齢に近いせいか、違和感なくフィットしている。ずっと孤独に生きてきたジェーンは、初めての恋で、愛し、愛される喜びを知る。幸福を味わっただけに、ロチェスターの秘密を知った衝撃は彼女を打ちのめすが、ワシコウスカの真一文字に結んだ口元と眉間に寄せたシワ、さらに慎ましいが威厳のある外見が、ヒロインの芯の強さと優しさの両面を体現して、その後のジェーンの毅然とした行動に説得力を与えている。ロチェスター役のファスベンダーは、今最も注目の演技派だが、こちらも適役だ。ワシコウスカ&ファスベンダーのコンビの、硬質なみずみずしさが、ゴシック・ストーリーの要素が強い物語を、正統派ラブ・ストーリーの趣に変えたのだと思う。舞台となった英国ダービーシャー州の荒涼とした自然や、19世紀の衣装の優雅さ、重厚な家具調度品などの美術も大きな見所だ。
【65点】
(原題「JANE EYRE」)
(イギリス・アメリカ/キャリー・ジョージ・フクナガ監督/ミア・ワシコウスカ、マイケル・ファスベンダー、ジェイミー・ベル、他)
(みずみずしさ度:★★★★☆)
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マンイーター

マンイーター アンレイテッド・バージョン [Blu-ray]マンイーター アンレイテッド・バージョン [Blu-ray]
世界遺産を舞台に巨大ワニが大暴れするモンスターパニック「マンイーター」。環境保護などのヘタなメッセージがないところが潔い。

旅行ライターのピートはオーストラリア北部にある国内屈指の観光地カカドゥ国立公園へ取材にやってくる。ガイドのケイトが操る小型船で、他の観光客と一緒に、人気のリバークルーズに出かけるが、突如水中から何かが現れ、船に激突、船体に穴を開ける。川の中央にある小島に何とか避難するが、船は沈没してしまう。水中にはなんと体長8mほどもある巨大で凶暴な人喰いワニの姿が。満潮になれば島は沈み、逃げ場がなくなる。ひとり、またひとりと貪欲な牙のえじきとなる中、乗客たちは必死で脱出をはかるのだが…。

かすかなさざ波の中、いきなり水牛に襲いかかる大ワニの映像に唖然呆然。ワニ映画にはずれなし!と、モンスターパニックによくあるキャッチを思いだす。しかも本作では、美しい世界遺産のカカドゥ国立公園が地獄の修羅場と化すからたまらない。野生化し知恵をつけたワニは巨大化し、人喰いモンスターへと変貌するが、ワニらしさは残っていて、ゆっくりと音もなく獲物に近付き、一瞬にして襲ったかと思ったらすでにその姿はない。これは怖い。船の中にいる人物は、浮かれ気分の観光客に、余命いくばくもない妻を含めた家族、カメラマニア、愛妻の遺灰をまくのが目的の初老の男性など。絶体絶命の状況は、精一杯の勇気を示すものや、恐怖で身動きできないもの、さらに自分だけ助かろうとエゴ丸出しのものなど、それぞれの性格を浮き彫りにすることに。だが巨大ワニにとっては、そんなことはどうでもいいことなのだ。自分のテリトリーに入ってくるものはすべて敵。大アゴで容赦なく喰い殺す様は、世界遺産の環境保護もへったくれもない。助かる道はワニのいる川を渡ってロープをはり、対岸にたどり着くことのみ。人間たちの決死の行動を、水中スレスレのワニの視線でとらえたカメラワークが効果的だ。2006年の作品が今頃日本公開されているのが不思議だが、おかげで「アバター」のサム・ワーシントンや「アリス・イン・ワンダーランド」のミア・ワシコウスカなど、今のハリウッドの若手売れっ子のブレイク前の姿が拝めるのが楽しい。
【50点】
(原題「ROGUE」)
(米・オーストラリア/グレッグ・マクリーン監督/ラダ・ミッチェル、マイケル・ヴァルタン、サム・ワーシントン、ミア・ワシコウスカ、他)
(ワニ目線度:★★★★☆)
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永遠の僕たち

永遠の僕たち (初回生産限定ポストカード4枚組付き) [Blu-ray]永遠の僕たち (初回生産限定ポストカード4枚組付き) [Blu-ray]
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みずみずしい感性が光る異色の青春映画「永遠の僕たち」。死がテーマの物語だが最後には生きる希望へと至る。

両親を交通事故で失い、自らも臨死体験をした青年イーノックの趣味は、まるでゲームのように、見知らぬ人の葬式に参加すること。そんな彼は、とある葬式でアナベルという少女と知り合う。自分と同類と思ったが、アナベルは実は病で余命3ヶ月と宣告されていた。イーノックは、彼女との出会いや奇妙なデートを、唯一の友人であるヒロシと語り合う。実はヒロシとは、イーノックにしか姿が見えない、死者なのだ。ヒロシがそっと見守る中、イーノックとアナベルは惹かれあい、心の距離を近付けていくが…。

若さと死は、ガス・ヴァン・サントの得意とするテーマだが、この作品もその二つが際立つ物語である。主人公イーノックは臨死体験により死の世界を覗き、アナベルは難病で余命僅か、ヒロシは特攻隊員として戦死した幽霊なのだ。死に囚われているキャラクターばかりだが、ガス・ヴァン・サントは、切ないメルヘンとして、彼らの“生”を物語る。イーラックは時に不条理でもある死を理解できていない。ヒロシの霊としか友情を育めないのはそのためだ。そんなイーラックの前に現れたアナベルは、死にゆく自分のことよりも残されるイーラックを心配してしまうような女の子。イーラックとアナベルの恋は、切ないほど、ロマンチックだ。残された時間は少ないが、アナベルは生きることと自分の人生に深い愛情を注いでいることを、全身全霊でイーラックに教えることになる。難病ものにありがちな過剰な演出など皆無なところがとてもいい。故デニス・ホッパーの息子のヘンリー・ホッパーと、「キッズ・オールライト」のミア・ワシコウスカの二人が共に素晴らしい。また、重要にして奇妙な登場人物・ヒロシを演じる加瀬亮も好演だ。ずっと戦闘服だったヒロシが、ラストに正装し、アナベルの“長い旅”の供をすると申し出たとき、イーラックにも生の輝きが理解できたはず。青年の成長物語でもある繊細なラブ・ストーリーで、感動が心に染み入る。
【70点】
(原題「RESTLESS」)
(アメリカ/ガス・ヴァン・サント監督/ヘンリー・ホッパー、ミア・ワシコウスカ、加瀬亮、他)
(繊細度:★★★★☆)
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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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