映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
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◎ 今週の気になる映画 ◎
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」「ユダヤ人を救った動物園」etc.

メッセージ

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突如、地球上の各地に謎の巨大球体型飛行物体が現れる。彼らがどこから来たのか、目的は何なのか、何もかもが不明だった。言語学者のルイーズは、彼らの言語を解読し、その意図を探るように軍から要請される。黒い煙状の表意文字を解読するうちに、ルイーズは、彼らが人類とはまったく異なる時間の観念を持っていることに気付く。物理学者のイアンと共に、彼らと友好的に交信しようとするルイーズだが、各国は彼らを敵とみなし攻撃の準備を始める。ルイーズは、地球を救い、彼女自身の思いを伝えるため、思い切った行動に出るが…。

未知なる飛行物体のメッセージを読み解くことで、人間の存在意義を問う異色SF「メッセージ」。原作は、テッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語」だ。人間に対して友好的にせよ、攻撃的にせよ、人類が宇宙人と遭遇するSF映画は、過去にも多く作られた。だが本作は、ビジュアル、ストーリー、観念的かつ崇高な志という点で、今までのどの映画ともテイストが異なる。言語学者のルイーズは、幼い娘ハンナを病で失ってから深い喪失感の中にいる。そんなルイーズの母性にも似た寛容が、未知のエイリアンに対し、根気強くコンタクトを求め、攻撃ではなく別の可能性を見出すという設定は非常に興味深い。この物語の主人公がヒーローではなく、ヒロインであることに大きな意味があるのだ。縦型のアーモンドのような宇宙船の造形や、7本脚(ヘプタポッド)のエイリアンのビジュアルは独創的で、黒い煙状のサークル型の表意文字は、美しいアートのようである。ルイーズが感じ取る、時間を逆行するような感覚と、やがて知る驚きの真実は、少々複雑で分かりにくいのだが、悲しみの中でも彼女が生きてきた意味が解明され、深い感動を味わえるだろう。ルイーズは人生や宇宙、時間という概念の真実を知り、混乱しながらも、未知なるものを受け入れ、愛することを止めないと決意する。このことが、本作を、宇宙人との遭遇という平凡なSF映画から、深淵な人間ドラマへと昇華していった。派手なバトルやヒロイックな戦闘などは登場しない。だが、各国が一触即発の非常事態に陥る愚かさと、パーソナルな悲しみや迷い、それでも保ち続ける理性と愛をも描くことで、現実を巧みに照射している。エイミー・アダムスをはじめ、実力派俳優たちの丁寧な演技が、深い人間ドラマを紡ぎ、生きることの意味を問う壮大な物語を作り上げた。またしても俊英ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の才能に驚かされた1本だった。
【85点】
(原題「ARRIVAL」)
(アメリカ/ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督/エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー、他)
(独創的度:★★★★☆)
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メッセージ そして、愛が残る

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悲痛な死や喪失感以上に、ポエティックな映像美の印象が残る人間ドラマ。観ている時のインパクトは弱いのだが、死と向きあうことで生を意識するというテーマが、あとからじんわりと立ち上がってくる。NYの法律事務所に勤めるネイサンは、幼い息子を亡くして以来、妻とも離婚し心を閉ざしていた。そんな彼の前にケイという名の医師が現われ、自分は死を予見し死期が迫った人に運命と向き合う手助けをしていると告げる。半信半疑だったネイサンは、やがてケイがネイサンの前に現われたのは、自分に死期が迫っているからと確信。今は別れて暮らす妻と和解しようと彼女のもとへ向かうが…。

原作はフランスのベストセラーで、死を予見しそれを伝えるメッセンジャーの役割を描く非常にスピリチュアルなもの。死を感じるには生の触感が必要だが、心を閉ざした主人公ネイサンにはそれがない。息子の死のショックから立ち直れず仕事に逃避するネイサンの前に、なぜケイというメッセンジャーが現われたのか、そして彼は何を伝えようとしているのかという謎が次第に解き明かされていく。冒頭から子供が溺れたり凄惨な交通事故や臨死体験が描かれるが、ホラー的な要素は皆無だ。人間の最期は尊厳あるもので、愛する誰かがそばにいてこそ充足感を得るものだという精神論が根底にある。それは宗教を越えた共通の思いだ。物語のテンポはとてもゆっくりとしているのだが、ネイサンが冷え切った心を開いて、息子の死という悲劇を乗り越え、もう一度妻と寄り添おうと努力する過程にはこのテンポがちょうどいいように思う。ついに妻と心が通じ合ったとき、思いがけない事実が発覚。この“驚き”によって物語は寓話になる。仏人俳優ロマン・デュリスが、母国語ではない英語の芝居に挑戦。セリフは最小限に抑えられているが、悲しみに満たされた人生をゆっくりと解放する主人公にはその寡黙さが効果的だった。さらにまるで催眠術のように静かで独特のテンポで話すジョン・マルコビッチの存在も効いている。撮影は名カメラマンのリー・ピンピン。まるで掌の上の砂が指の間からこぼれ落ちるような悲しみと、生きることの輝きを見事に映像化していた。
【60点】
(原題「AFTERWARDS」)
(独・仏・カナダ/ジル・ブルドス監督/ロマン・デュリス、ジョン・マルコヴィッチ、エヴァンジェリン・リリー、他)
(スーパーナチュラル度:★★★★☆)

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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